婚約破棄され売れ残りなのに、粘着質次期宰相につかまりました。

みゆきんぐぅ

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執着旦那と愛の子作り&子育て編

再会。②

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小屋の中に案内をされる。
そこには簡素な机と椅子がある。
当然二脚しかなくシャリオンたちがそこを譲られると、木桶をひっくり返した所にミクラーシュが座った。

エリックは結局落ち着く様子はなく外で畑仕事をしている。
客人を家の中でもてなすと言うことではなく、外でミクラーシュを攫われる事を懸念しているらしい。
そんなエリックに忌々し気にガリウスが呟いた。

「期待通り家の中から攫って差し上げましょうか」

苛立つガリウスにミクラーシュが息を飲んだ。
そんな脅すような事をいうガリウスを諌めるように視線を向けた。
そもそもワープリングは建物の中からでは使えないし、この結界の外からでないと駄目だと言ったのはガリウスだ。

「ミクラーシュ。ワープリングは室内では使えないから安心して欲しい。
ガリウスも脅す様なこといわないの。・・・もしかして持ってきたの?」

それが唯一出来るのがシディアリアの転移の魔法道具だ。

「いいえ。あれは高価なものなので嫌がらせには使いません」
「嫌がらせって・・・ん?」

ハッキリと『嫌がらせ』というガリウスに苦笑をしつつも、
否定をせずにニコリと微笑むだけのガリウスにハッとしてまじまじと見てしまった。

「・・・もしかして・・・ガリィ・・・」

明確にしないガリウスだが無言は肯定だ。

「凄い・・・!
ガリィ!ヴィンフリート様やジャンナ様のようだね!」

感動し驚き喜んでいるとミクラーシュが笑っているのに気が付いた。

「!・・・恥ずかしいところを見られちゃったな」

照れて答えると今更と言いながらミクラーシュは笑った後、真面目な顔をし頭を下げてきた。

「エリックの事・・・申し訳ない」
「大j」
「最愛の人を奪われる苦しみを与えてやりたいくらいです」

怒りを隠しませず言い放つガリウスに、ミクラーシュはシャリオンに頭を下げてくる。

「っすまない」
「!大丈夫だよ。・・・ガリウス」

諌めるように名前を呼べばいつもなら止まってくれるのだが、ガリウスはこちらに視線をむけないまま続けた。
心底怒りを感じているのだろう。

「あまりの身勝手さに呆れます。
あの者は客観的に自分がしてきたことを振り返るという事が出来ないのでしょうか。
自身の目的のためにどれだけのものを壊したのか理解できていませんし、貴方があんな身勝手なのを選ぶのも理解不能です」
「っガリ」
「良いんだ。シャリオン」

止めようとしたシャリオンに苦笑するミクラーシュ。
すると、ガリウスは続ける。

「オーグレンの家がなくなったのも。それが原因で親が死んだのも。
最愛だというミクラーシュを自己満足のために洗脳をさせ、犯罪に手を染めさせたのも。
全てその場限りで浅はかな考えと行動の所為」
「それはっ・・・俺が」
「貴方は」
「じゃぁお前が同じようにシャリオンがそうだったら言えるのか!」

ガリウスが言おうとした言葉を被せるようにミクラーシュは抵抗した。
平身低頭で謝罪をしているミクラーシュだが、やはり伴侶が一方的に悪く言われるのは我慢できないのだろう。
それが事実だとしても、エリックがあんな行動をとってしまったのは、ミクラーシュの生家の影響で自分の所為だと思っているのだ。
だからガリウスが何を言おうとしたかはわからないが、否定的な言葉が続くとわかり遮った。
止めようとしていたシャリオンもなんで言って良いかわからずにいると、ガリウスが少し間を置いたのちに口を開いた。

「シャリオンはそんな事しません」

静かにそう言うと、ミクラーシュも少し冷静になったのか置き換えて考えてみた時に、シャリオンだけはあんな未来にならなかったと言える。

「っ・・・そう・・・、だな」

そう言うミクラーシュにガリウスは『ですが』と、つづける。

「洗脳もさせませんし、他の者に支配させたままなら私がシャリオンをどんな手段を使ってでも解き放ちます」
「!」
「それは、・・・お前が・・・シャリオンを・・・?いや、そんなわけ」

具体的なことは言わないが最悪な事態も想定しているのが解る。
ガリウスはそう言う男だ。
だが、ミクラーシュはそう言った言葉を信じられなかった。
ガリウスのシャリオンへの執着は国への忠誠心よりも高い。
寧ろそれ以外は多少の順列がある程度である。
そんなミクラーシュにアメジストの瞳が鋭く光る。

「私が他の人間に支配されたままのシャリオンを許せると思いますか?」
「それは、・・・ないが」

シャリオンを一番に考えるガリウス。
それは、一見ガリウス自身の心の問題かのように見えるが、実はそうではない。
シャリオンの為だった。
他人に支配されながら生きているなんて、シャリオンは絶対に望まない。
どんな状況になってもガリウスは絶対にシャリオンを裏切らない。

「ありがとう」

そう返事をすると困った様に小さく微笑みを浮かべるガリウス。

「出来れば最後までこの気持ちのままそばにいたいから解いて欲しいな」
「勿論です」
「うん。そうだね。でも・・・ガリィ、ちょっとだけ落ち着いて。ね?」

ガリウスの気持ちは嬉しいが今日のガリウスは少し短気だ。
やはり、エリックが影響しているのだろう。

「えぇ。ミクラーシュ。すみません。私も言葉が過ぎました」
「いや。
・・・さっきのエリックの態度は、シャリオンやガリウスにはあり得ない態度だったのだから仕方がない。
この生活ができてる理由は2人のお陰だというのに」
「そんな事は・・・ガリウスは確かに頑張ってくれたけど」
「その頑張る理由がシャリオンなんだ。
・・・例の件はあくまで巨大魔物による洗脳された。という話になってるが、そうしないで王配の座を狙い王太子殿下に近づいた事。それだけでなく公爵家の次期当主を危険に晒した。
最後を覚えていないか?
俺はシャリオンを誘拐したんだ」
「それは」
「それだけで十分厳しい刑を執行できた。
俺もエリックももう後ろ盾はなくただの平民だ。
それなのに『洗脳』を全面に出し話を進めたことで減刑されてる。
それはシャリオンが洗脳が解けた俺と一時にでも友人になってくれたから」
「っ」
「シャリオンは真面目だから私情で罪の重さを変えたと思うかもしれない。
でも俺はそれに感謝してるんだ。
シャリオンがガリウスの心を奪っていてくれたから、
エリックを生かせてこうして今一緒にいられる」
「ミクラーシュ・・・」
「ここは俺達にとっては天国だ。
家のしがらみも立場も恐ろしい魔物も来ない。
・・・なんて、司法の奴らに聞かれた目を釣り上げてきそうだな」

貴族がこの罰を与えられるのは貴族にとって苦痛な世界であるからだ。
死山よりも罰は軽いがそれでもここは今まで貴族をしていた者にとっては全て自分たちでやらなくてはならず過酷な世界なのだ。

「迷惑でしたか?」

不安そうな眼差しに首を横に振った。
ガリウスがシャリオンの気持ちを汲んで進めようとしても、それだけで刑を軽減できるわけがない。
陛下は勿論法務や各大臣に話を通してくれたのだろう。
そんなガリウスにシャリオンの一言で不安になんてさせたくない。

「そんな事ないよ。ありがとう。
・・・ごめんね?僕の望む形になっているのに、わがままを言うような真似をして」

そう言うとガリウスが少しホッとした様に目元を緩ませた。

「いいえ。貴方の考えてることが分かっているのに、あえてあの者を傷つける言葉を選んでしまった。
あの者が例え本来の刑罰を望んでも変えてやる気は無いのに、脅して抑えつけようとしてしまいました」

素直に反省を見せ許しを乞うように悲しげな表情を見せるそれは、相変わらず計算高い行動だとミクラーシュは思うが、言われているシャリオンはそんな事を思うはずもなくブンブンと首を横に振る。
本当に真っ直ぐに育ったものだ。

「っ・・・ガリウスはいつも僕が出来ない判断をしてくれる。
多分僕がその立場ならミクラーシュのいう通り私欲で罪を軽減して良いのかと悩んできっと出来なかった。
そして出来なかった事にも悩んでいたと思う。
嫌な事を沢山させてごめん」
「嫌だと思ったことは一度たりともありません。
貴方の為にしている事は私の為でもあるのですから」
「ガリィ・・・ありがとう」
「いいえ」
「ミクラーシュもごめんね」
「いや・・・」

そんな風に謝り合っていると、謝り合戦になっている事に気が付き笑ってしまった。

★★★

それから暫くして本題に入った。
今日ここへ来た目的は第一騎士団長の話を聞きに来たことを伝えた。

シャリオン達が謹慎を終え迎えに来たのは、ミクラーシュであるがその時の護衛はシュルヤヴァーラであった。
その時の会話が年齢が少し離れているにも関わらず仲がよさそうに見えたのだ。
本来、刑罰を受けてる最中の人間に聞くべきことではないとは思うのだが、シャリオンの周りには第一騎士団と親しい友人がいない。

「そんな事を聞くためにわざわざ・・・?」

ミクラーシュの疑問は最もでありシャリオンも苦笑した。

「僕は彼の周りの知り合いがいなかったから」

それはガリウスも同じだ。寧ろ知っている人物がいるのであれば最初に言ってくるはずである。

「それもあるんだけど、ミクラーシュ達の様子も気になって。
手土産の一つでも持ってきたかったんだけど、そう言うのは駄目みたい」

気に掛ける様子にミクラーシュは嬉しそうに微笑んだ。

「ふ・・・俺達は罪人だろう?どこに刑期中の人間に差し入れ出来るところがあるんだ」
「あ・・・うん」
「普通に接してくれてありがとう。
それで、クルトのことか。
・・・彼とは悪くはないな。元々同じ伯爵同士家のやり取りもあったからな」
「そうなんだ」
「あぁ。家が近いこともあって兄の様に慕っていた。
俺は家督は弟に譲ったが、クルトは伯爵でありながら騎士団長を務める器用さに憧れに似たものを抱いていた。
シャリオンも領主もやって公爵も務め、王太子王配殿下の相談役までこなして、本当に偉いな」

感嘆しながらそう言うミクラーシュに自分の事は良いから!と話を進めさせる。

「ところでこの質問は公的な何かか?」
「ううん。最近彼の様子が可笑しくて。
僕が話しかけやすい知り合いがミクラーシュだったからだよ」
「そうか。・・・いや。世話になった相手だからって虚偽や黙秘はしないから安心して欲しい。
それで何を聞きたいんだ?」
「彼はどんな人なのかな」
「人柄か。・・・さっきも言った通り責任感のある男だ。
使命を担ったら最後までやりきる。第一騎士団長になれる人物だからな。
家柄もあるがカリスマ性もあるし、団員からは好かれているな。
本当は俺が団長になりたかったが、クルトが束ねる結束力やすべてにおいて勝てる気はしなかった」

非の打ちどころもない完璧な人物像に街で見かけた不安が少しずつはがれていく気がした。
それは安堵ともに謎も小さくなっていく。やはり偶然だったのだと思えた頃。
ミクラーシュは一つ間をおいて話し始めた。

「あの頃はあまり問題視・・・というか気にしたこともなかったが、・・・やたら爵位を気にする。
第一騎士団自体が貴族しか所属していないのもあるだろうが、やたら貴族であることや爵位を重要視していた」
「!」

萎れかかった不安の芽がピタリと止まり、またむくむくと育ち始めそうだった。

「・・・そう言う面を聞きたいと言う事で良いかな?」
「うん。・・・そう。
彼はそう言う思想を持ってる人なんだね」
「騎士団の応募資格に『貴族のみ』とは書けないが、稀にくる入隊希望の平民は断るように指示していたな」

彼の『人格者』としての姿は貴族にだけ働く物なのだろうか。
だが、それなら何故あんな場所にいたのか余計に分からない。

「彼が頻繁に下町に出掛けてるみたいなんだけど何か知らないかな」
「・・・それは、どう言う事だ?」
「それがわからなくて。昔からだった?・・・勤務中に」

考えこむミクラーシュは眉顰めて腕を組んだ。
しばらくそうしているのを見て、しまったと思った。

「最近は会ったりはして無いんだよね」
「見張り以外はアンジェリーンが叱りに来た以来ないな」

その時に何かあったのかクスクスと笑うミクラーシュ。
先ほどのエリックがミクラーシュを守ろうとしたのは、アンジェリーンが懇々とミクラーシュを説教したからだそうだ。
それにしてもアンジェリーンが様子を知っていたのは使いの者を出したのかと思っていた。

「そうなんだ?本当にアンジェは・・・」

人に無茶をするなと言うのに王太子の王配が王都から出ることに呆れてしまう。
すると最近アンジェリーンの話をすると面白くないガリウスが話しを進めてきた。

「シャリオン。今日はあの男の思い出話をきたのでは無いでしょう?」

嫉妬しているとは知っているが相手は王配である。
シャリオンは慌てて止める。けれどいつもの言い訳をされてしまった。

「ふ、不敬だよ」
「ここには結界を張ってます。躾の悪いのも外に居ますので」

その視線は扉の外に向けられた。今日は本当に嫌味が止まらない。
そんなガリウスにミクラーシュは謝罪を口にした。

「すまない・・・」
「・・・。いえ。私もいい加減しつこかったですね。
貴方にも八つ当たりしてすみません」

諌めようとするとガリウスがミクラーシュに謝罪を口にする。

「ミクラーシュ。先程の質問を答えてください」
「最近の事は解らないが、良く彼は魔力の強い子供を探していた」

貴族が『魔力の高い子供を探している』というだけで、もう嫌な予感しかしない。

だが、それもおかしい。

今しがたシュルヤヴァーラは貴族至上主義者の様だと聞いたばかりである。
カリスマ性を持つ男ならそんな可笑しなことはしないだろうと思うのだが。
そんな疑問を説明をするように続きを説明してくれる。

「貴族の子供に養子として迎えさせてた」
「そうなんだ。身寄りの無い子供の為に動いていたんだ」

疑念を抱いてしまったことが恥ずかしい。
悲しい思いをした子供がいないと知ってホッと胸を下した。・・・のは、早かった。

「身寄りがない子供だけではない。平民や時には爵位の弱い家の子供をあえて選び貴族にし自分の管理する第一騎士団に所属させていた」

親がいる子供もとは随分強引な話だ。
だが、それは秀でた能力があるからという観点なのだろうか。
現にガリウスも若い頃から王都にあるレオンの屋敷に出入りをしていた。
まだ話はよくわからなくてミクラーシュの続ける言葉に耳を傾ける。

「それは騎士団全体の1/8程度。彼らには殆ど休みは与えられないが、賃金は階級の差はあれど他の騎士達と変わらないそうだ」

そしてそれを公言していたから平民が応募に来ることもあったと話していた。
不穏な空気を醸し出しながらも問題がなさそうなことをいうミクラーシュに緊張してしまう。

「その賃金は彼らの元に入っているのでしょうか」
「・・・流石目の付け所が違うな。
正直正確なところは解らない。家に入るからな。
が、・・・あれは本人はたいしてもらえて居なかったんじゃないかな」

当時の事を思い出す様に目を細めるミクラーシュ。
同じ空間にいてそんな仲間を見てもどこか下に見ていた。
それがおかしいと気付ける環境ではなく『平民だから仕方がない』と、思っていたのだ。
寧ろ子爵以上の家の養子になった人間を見ると、それが「エリックだったなら父上は反対をしないのだろうか」だなんて思うほど、その時のミクラーシュはその空気に染まってしまっていたのだ。
だが、ミクラーシュだけがおかしいわけではなく、貴族の中には一定数そう言う考え方を持っている人間はいる。
利益を見出さない他人に人はとことん興味がない。
だから同じように働いている仲間がどんなに弱って行っても気にしないのだ。

「搾取用という事ですね」
「今思えばそんな風に思う」
「・・・」

直接シュルヤヴァーラが手を下したわけではないし、少々強引でも人攫いをしてきたわけではない。
家に払われるものを団長が口を出すのもおかしな話だ。
国から出された兵士の給料と家が吸い上げているという構図に『人格者』という言葉が崩れ去っていく。

だが周りから見たら身寄りの無い、もしくは金銭的に余裕のない家の子供を救っているかのように見えるシュルやヴァ―ラは、周りから見たら『人格者』になるのだ。

これはあくまで想像であって確証はないがシュルヤヴァーラの印象が一気に下がった。
確かに他の貴族よりも社交の場に出るのは少ないが、そんな一面はきっと話の種になるはずだ。
まだ、心のどこかで中立を保ち否定したい気持ちでいるシャリオンの心を打ち砕くかのようにガリウスが質問を続けた。

「一定数を超えない様に管理していたというのは、何かあっても自分達が押さえつけられるからという理由でしょうか」
「!」
「はっきりとは言わない。だが、人数を調整している様にも思える」
「・・・」
「それと理由は明確にしないが確かに城の外に出かけることがあった」
「その・・・人数が増えない様にするなら、そんなに頻繁には行かないんじゃないの?」
「そうでもない。1・2年経つと彼等は騎士をやめる」
「契約か何かですか」
「いや。結婚だ」
「・・・子を産ませるためですか」
「かもしれないな」
「!」

歳を取り過ぎる前に辞めさせて家で跡継ぎを産ませるということらしい。
家を守るのに跡継ぎの重要性はわかるのだが先ほどの疑念がありなんだかモヤモヤするし、もし事実ならと思うと心が痛い。
だがここまで聞いて一つ分かったことは、問題ごとではあるが魔物の気配とは別の様だ。

「・・・アイツは何をしたんだ?何が関係しているんだ?」

話して良いかガリウスを見上げるとコクリと頷いた。

「関係しているかはわからない。
最近、王都で魔物の気配が察知されていて調査をしているんだ」

魔物の気配がするとは言わずに打ち明けると、『王都で魔物の気配』の言葉に微かに反応するミクラーシュ。
その動揺をガリウスが見逃すわけがない。

「何か知っているようですね」

視線を下ろし自分の手を見て考えた後顔を上げガリウスを見てくる。

「逆にガリウスは何か知らないのか?」
「私と関係していると言う事でしょうか」
「魔力が高いだろう?
それで見知らぬ貴族から声を掛けられたりしなかったか」
「・・・」
「クルトは常日頃良く第一騎士団の強化を考えていた。
最強であることに拘っていた。それが先ほど話したことにも関係がある」
「・・・、」
「それは検討が付きます。
しかし、街に魔物の気配が出た事に関係があるのですか?」
「いや。・・・いや」

ガリウスがそう尋ねるとミクラーシュは塞ぎこんだ。
そして視線を上げる扉の方を一度見て、1つ息を吐くと視線を上げた。

「すまない。不確かな事は・・・っ」

言えないと言おうとするミクラーシュだったが、ガリウスの視線の冷たさに息を呑んだ。
ミクラーシュは別に答えたくないと言うわけではなかった。
正確な事をしっかり聞き出したいと言う誠意だった。

「少し・・・時間をくれないか。
嘘や誤魔化しはしない。
信じられないなら魔法紙の誓約を結んでくれ」

その様子に嘘をついている様子はない。
ガリウスに合図を送ると小さくため息をついた。

「何日必要ですか」
「1日で構わない」
「宜しいでしょうか」
「うん」
「では、ミクラーシュ。
あの者がどんな経緯で何を取り入れているかしっかりと確認をして下さいね」
「!」
「彼から魔物の気配を感じます」
「え?エリックさん・・・そうなの?」

ミクラーシュが言い淀んだ理由がわかった。
それなら気を遣ってやりたいが、この問題が安全なのか危険なのか見極める必要がある。
あんな奇行もそのせいなのならば止めなければ。

「なぜ、・・・今までわかった人間は・・・、!
だからエリィをあんなにも遠ざけていたのか」
「それは違います。純粋に嫌いなんです」

ガリウスは即座に否定して嫌悪を示すと、ミクラーシュはどこかホッとした様に息をついた。

「ミクラーシュの洗脳されていた時の行動ってなんだかエリックさんの行動に少し似ているね」
「・・・エリックもいつもはあんな態度じゃないんだ。ただ不安が募るとあんな風になると言うか」
「それで余計に自分の首を絞めているのに気付いていない事が手に付けられませんね」
「ガリィ」
「申し訳ありません」

なんてニコリと微笑む。
口だけの謝罪である。

「・・・それに俺はあの当時ガリウスとシャリオンに嫉妬していたからな。
そんなに睨んできても恋情じゃないから安心してくれ」
「説明頂けますか」

魔物の気配とは話が脱線してしまうが、不機嫌なガリウスにミクラーシュは続ける。

「単純な事だ。俺は有名になりたかった」
「??」
「天才児で将来有望としてみなが認めるガリウスにエリックが心を奪われて、それならば自分も皆に認められればエリックが戻ってくると思っていたんだ。
だけど俺には領地と爵位しかないわけだが幸い弟はいるし、考えるよりも剣を振っていた方が早く有名になれると思っていた。
だから、第一騎士団団長を目指しそれから殿下に近寄った。
あの時は必死だったなんて言い訳に過ぎないが、・・・高嶺の花としてちやほやされるシャリオンが気に食わなかった」

団長、それも第一騎士団ともなれば強力な繋がりが必要だろう。実際、そう言う目的でライガーやルークの周りに人が集まってくる。

「ははっ僕にとってルーもライも幼馴染だよ」

一方のガリウスは眉を吊り上げる。

「本当に不愉快な話ですね」
「悪かったと思っている」
「もう大丈夫なんだから、落ち着いて。ね?」

気になっていた事がわかったシャリオンだが、ご機嫌が悪くなってしまったガリウスを宥めるのであった。

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