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執着旦那と愛の子作り&子育て編
豊穣祭①
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朝日が登るそれよりも前に目が覚める。
夜眠るときも気分が高ぶり眠りつけなかった。
今日はとても忙しくなるだろう。
あと、30分もしないうちに起き祭りの準備を進める。
次期宰相として常日頃動き詰めのガリウスに、昨日ばかりは朝も別の部屋で寝ることを提案したのだが却下された。
今日この日の為にガリウスは休暇を取得しているのだから大丈夫というのだ。
休暇についてはレオンとも争ったそうなのだが、そこは勝負に勝ったとかで丸1日とることが出来た。
レオンもシャーリーと行きたかったのだろうと思い謝罪を入れたのだが、シャリオンには怒りの片鱗を見せない猫なで声で普段のねぎらいを言われながら、1年無事納めてきたことを祝われた。
また自分の時には宰相の為に参加出来なかったことや領民達に感謝を伝えて欲しいと言われた。
勿論シャーリーも代理として豊穣祭は行っていたが、レオンに言っても駄目だと言われるのが目に見えているので、豊穣祭に参加したことはないそうだ。
だから豊穣祭に領主が参加するのは随分久しいことのようで、シャリオンには楽しんできて欲しいと言ってくれた。
それを証明するように2人からは、シャリオンとガリウスの衣装を仕立ててくれた。
深い青色に淡い水色で繊細な模様が編み込まれたもので、ハイシアの伝統的な衣装であり、それを身に纏うのも楽しみだ。
部屋の暗さを確認してからガリウスを見れば珍しく目を閉じている。
やはり疲れもあるのだろう。
今日もガリウスの安全を願いながら魔法を掛け、すやすやと眠るガリウスに愛おしさを感じてそっと口付けた。
しばらくその寝顔を堪能していると、気付いたガリウスが驚いたようで、大きく目が開かれる。
「おはよう。ガリィ」
「おはようございます」
するりと腕をまわされ引き寄せられた。
「起きていたのですね」
「うん。・・・緊張してるみたい」
「大丈夫です。傍にいます」
「ありがとう。どちらかというと不安よりも楽しみが強いんだ」
ガリウスと過ごせる時間はシャリオンにとってかけがえのない時間だ。
「それなら良いのですが」
「でも、良いの?僕の都合に合わせてくれるなんて」
ガリウスとハイシアの街を少しで良いから散策出来れば良いと思っていた。
しかし、朝からシャリオンに付き添ってくれると言う。
「宰相になってしまったら簡単にはできませんからね。
レオン様がご健在のうちに領の為に何かをしたいのです」
「ガリィ・・・」
貴族として伴侶として並んで立つことはあっても、領民の前では結婚式しか出ていないため、ガリウスも伴侶として領民の前に立ち領民のために何かをしたいのだと言う。そのことはもちろん嬉しい。
「ありがとう。領のことを考えてくれて」
ふわりと笑みを浮かべて言えば、ガリウスは嬉しそうに微笑んで口付けてきた。
キスを何度か繰り返す度に少しずつ深くなっていく。
今日は本当に時間がないと頭ではわかっているのに『もう少し』と甘えてしまう。
「・・・」
もう、本当に駄目だと思う頃にはガリウスの表情もその気になっている。
「シャリオン。私の頭に跨って頂けますか」
「え?」
よく分からなくて固まっているとクスリと笑われて『いいえ。私に任せてください』と、言われたかと思うと素早くネグリジェを捲られる。そして勃起し始めているそれを一撫でした。
徐々に近寄るガリウスにようやくわかり、咄嗟に抑えた。
「このまま恥ずかしい状態を領民に見せると言うのですか?」
「そっそんなこと!」
「シャリオンが領民の前で恥ずかしいことにならないようにするだけです」
瞬間的に見せた嫉妬を抑えたかと思えば、丸め込むようなそんなことをいうガリウス。
雪崩れ込もうとするのを引き止めた。
「駄目っ」
「シャリオン・・・」
「・・・僕だけじゃ、・・・、・・・」
恥ずかしくて黙ったシャリオンの頬を撫でるガリウスの表情は珍しく困っている。
だが譲れなくてシャリオンが下半身に手を伸ばすと掴まれてしまった。
「ずるいっ」
聞き分けのないことを言っているとシャリオンに意地悪気に微笑んだ。
「・・・そんなに。・・・なさりたいのですか・・・?」
耳元で熱ぽい声で囁かれる。
煽られているのがわかっているから恥ずかしくともコクリと頷けば驚いたようだが苦笑をした。
「シャリオンのためなんです」
「そんなの・・・!」
「貴方に口でしてもらって私が止まるはずないでしょう」
「と、・・・まだ少し大丈夫」
「今日は執務室の仕事でも無いのです。
貴方の可愛い顔を、いくら大切にしている領民にだって見せられません」
「それは・・・っ・・・なら、・・・、我慢する」
そう言うとガリウスから手を引いて起きあがろうとすると、腰を引き寄せられて首筋に口付けられた。
「ですから。・・・ここを大きくさせたままでは駄目と言っているんです」
「っ」
するり撫でられてゾクリと刺激を受けながらも、こんな風にした調本人を納得いかない目で見ていると、シャリオンに甘いガリウスは結局折れた。
普段シャリオンは我儘言わないが、他人を思っての事となれば別である。
殊更ガリウスのこととなれば甘くならないわけがないし、本音を言えばガリウスとて触れて欲しく無い訳では無いのだ。
それに頑なにシャリオンが1人だけ逝かされるのが嫌がるのにはガリウスがそうしてしまったからと言うのもある。
「・・・わかりました。
では、私はシャリオンのモノを愛でますので、シャリオンは私のを好きにして下さい」
「・・・いいの?」
少し投げやりな態度にも関わらず折れてくれたガリウスに、嬉しそうにするシャリオン。
ガリウスは思わず押し倒したくなる勢いだが、理性を総動員させた。
それに気づかないシャリオンは首を傾げた。
「えぇ」
「なら・・・口でも」
そんな言葉が出たのは手で扱いてガリウスを愛撫するよりも口でした方が感じてくれるのが実感できるからなのだが、ガリウスはその言葉に息を飲んだうちに言い聞かせるように額に口付けてきた。
「すみません。シャリオン。
・・・そうされてしまうと、本当に止まらなくなってしまうんです。
そのかわり今夜たくさん愛し合いましょう」
「っ・・・ごめん」
ジッと見てくるガリウスの視線にこくりと頷いた。
肌を重ねるたびにガリウスと傍に居たくなるのは自分がおかしいからなのだろうか。
随分甘えたに性格になってしまった。
「謝らないで下さい。
貴方が私を愛してくれようとしているのわかっています。
さぁそれより本当に時間がなくなってしまいます」
それにコクリと頷くとシャリオンはガリウスに後ろから抱き寄せられた。
ネグリジェの隙間から手を差し込まれ肌を撫でられる。
「シャリオン・・・こちらを見れますか?」
その言葉に振り返り見上げれば口づけられた。
辛い体勢ではあるがそれだけで昂った。
長いガリウスの指先がつぅっと撫でてくる。
シャリオンの様子を見ながら、ゆっくりと動くガリウスの手。
「っ・・・ふぅ・・・ん」
撫でる手に夢中になりながら、ガリウスのモノに手を伸ばせばしっかりと昂っている事にホッとした。
熱くて大きくて硬くなったモノを、根元からゆっくりと撫でた。
・・・おっきい
反り立つものに手を這わせると浮き出る血管の存在もわかる。
それをたどりながら手で握りこみゆるゆると扱き始める。
いまだにこんな大きなものが自分の中に入っていることが信じられない。
狂暴そうなガリウスのものはいつだってシャリオンの中に入ると、ガリウスとは違いシャリオンを乱していく。
そんなことを思い出すとまた体が期待してしまう。
ガリウスに感じて欲しくて頑張っているのだが、時間を増すごとに水音を鳴らすのはシャリオンで焦った。
するとキュッとシャリオンの乳首を摘み上げてくる。
「ぁっ・・・が・・・りぃ」
情けない声色にガリウスは笑みが崩れ苦笑した。
このままではシャリオンだけが逝ってしまう。
「シャリオン。すみません。
私のモノと一緒に扱いて頂けますか」
「んっ・・・?」
「私はこちらを愛しますので」
そう言うとピンと乳首を弾かれた。
「んぁぁっ」
「さぁ。早く・・・逝かせてください」
耳元で囁きながら2人のものを合わせられて、握らされる。
片手では収まらない大きさに両手握り、ガリウスのモノにも刺激を与えるように腰も動かした。
「ぁ!っ・・・んっ」
くちゅくちゅと水音が次第に大きくなり気持ち良くてもうガリウスしか見えなくなっていく。
「っ・・・が、・・・が・・・りぃ」
「・・・気持ちいですよ。シャリオン」
その言葉が嬉しくて頑張って手を動かす。
心地よさに揺られながら絶頂を迎えるまで繰り返すのだった。
★★★
少し休み落ち着いた後、準備を整え広間に向かえばまだ早い時間だというのに、沢山の人が集まってきている。
今年は特に大きい祭りになる為、皆には頑張ってもらっている。
第二のリジェネ・フローラルの礎になるように、城下町だけでなく各地にも足を運んでもらうべくゲートを使ってもらうつもりだ。
また、裕福な人向けに馬車で各地を回るツアーも用意している。
この協力をしてくれているのは馬車屋のジョージである。
馬車屋のやっていた土地を受け渡すことに難色を示したジョージ。
どうやら以前は力を貸してくれていた貴族に気を使っているようにも見えたが、
それは当然の反応である。
しかし、経営が厳しい中馬車を営業していくのには難しかった。
そこでガリウスから知恵を借りて、やる気があるならば新しい業務の提案した。
具体的な業務はゲートが出来てもそのゲートを使い運送を行う事や、今回のようなツアーの元締めを提案した。
特にハイシアに作るつもりのリジェネ・フローラルは各地に作るつもりだ。
それ故に材料の運搬には馬車が必要になる。
勿論、最初はいい返事をすぐにはもらえなかったが、しばらくしてゴードンを通してもらえた返事は承諾を貰えるものだった。
そんなわけで今馬車屋は全面改装中で、馬達は別の町で飼う事になった。
そのジョージには臨時の建物でこの祭りでも大いに働いて貰うつもりだ。
唐突な提案に最初困惑しているようだったが、突如沸いた仕事に彼らは喜んで引き受けてくれた。
ドラゴンが飛行する土地として知られつつあるハイシアは、それを見に来る人間も多くなる傾向がある。
シャリオンとしてはこの豊穣祭は昨年の豊作に感謝と、今年への祈りも含めているがそれ以上に人が沢山来てくれるようにと願っているのだ。
ゲートやリングが出来た事により、職を失う者もゼロではないのでそこは今後の課題であるが、今回の豊穣祭の成功はハイシアのリジェネ・フローラルの成功にもつながるのだ。
「ギルドでは職業の相談とか出来ないのかな」
「ギルドは依頼主の仕事を提供しているだけですから。
メインの仕事ではないので、相談に乗ってくれる者もいるかもしれませんが人によるでしょう」
「そう・・・」
「何を考えているのですか?」
「ん?・・・ん・・それまでの職で困窮になった時、困った人はどうしているんだろうなと思って」
「そうですね。周りの人に相談しているとは思いますが」
「・・・そう・・だよね」
だからこそゴードンが馬車屋のジョージを紹介してくれたのだ。
最初は普通の商売人のようにしか見えなかった。
だが、振り返ってみればゴードンは自分の利益を取ろうとはしていなかった。
高く売りつけようとしたのは、ジョージのためである。
その結果土地を買い上げた後、ジョージに新たな事業を持ち掛けていることを知ったゴードンからお礼のしなが感謝状とが届いた。
一見金を何よりも大事にしている様に見えたが、それだけではないようだ。
しかし、それはジョージの近くにゴードンがいたから彼は見つけれられたが、そんな風に相談出来る人間がいくらいるというのだろう。
それに市井の女性の仕事の無さもどうにかしなければならない。
思い悩んでいると肩をたたかれる。
「それについては今度考えていきましょう」
「・・・ありがとう」
「いいえ。一緒にこの領地の事を考えて貴方の力になれることは、私にとって嬉しいことなのです」
「またそうやって甘やかして・・・」
「甘やかされているのは私です。貴方に頼られて嬉しくないわけないでしょう?」
そう言って本当に嬉しそうに微笑むガリウスにシャリオンはもう一度お礼を言いながら微笑んだ。
考えることは沢山あるが、今日はお祭りの事をに集中せねば。
ガリウスが今止めたのはシャリオンの表情が曇り始めたのに気が付いたからだ。
広間に入っていくと、シャリオンとガリウスの姿を見るとハッとしてこちらに寄ってくる。
普段はハイシアの内政に携わりデスクワークが多い者達も、今日ばかりは動き回ることが多いようだ。
彼らにも今日の祭りの成功が今後のハイシアの発展に繋がることは話してある。
「おはようございます。シャリオン様、ガリウス様」
「おはよう」
「おはようございます」
「今日はよろしくね」
「はい!お任せください」
長年顔を合わせているメンバーに挨拶をしていく。
「お2人参加頂けるとのこと、とても嬉しく思います。
城下町には予め前触れを出しているのですがお祭り騒ぎだそうです。
・・・といってもお祭りなんで間違いないんですがね」
「あまり領の事で表に立ててないから・・・。でも喜んでくれているなら嬉しいよ」
城の内勤者とはシャリオンは直接会うが、それ以外の者は基本影武者が対面する。
それでも頻度は少ない。
例えばで言うと先日の、城壁にヴィスタが住んでいることに緊急な苦情を受けた時なんかは、影武者が対応してくれている。
「そんなことありません!
確かにここの城下町ではお姿を拝見する機会はありませんが、問題には早急に対応してくださっております」
それは領主としては当たり前の事である。
ハイシアにはゲートが出来ている関係で、シャリオンは時間が空けば視察に出ているのだが、城のふもとは近いこともあり後にまわしがち・・・いや、忘れがちなのである。
近さゆえに問題もすぐ上がってくるからだ。
「今回豊穣祭に合わせて街を歩いたけれど、今後はもっと時間を取るようにしないとね」
「いやいや・・・!お忙しいのは存じておりますゆえ」
そう言いながらもシャリオンが来ると知って皆嬉しそうにした。
普段ハイシアを守る身としたら領主にその過程を見られるのは嬉しいことなのである。
「今年の初の試みである、ハイシア全土の祭り!いやー楽しみです」
「そうだね。ちょっとそちらの方も見てこよう」
「えぇ!きっと皆喜ぶと思います。
それまでこちらはお任せください。
あ。一点だけ!・・・本日はガリオン様は・・・」
「今日はヴィスタと共に上空からハイシアを見守ることになっているよ」
「そうですか・・・。ヴィスタ様がおられるのですから仕方ないですな。
いや。承知いたしました」
次期当主であるガリオンが気になるのだろう。
しかし、魔物抑制の為と理解してくれたようだ。
そう言った役目を大々的に知らせてからは、ヴィスタへの苦情はなくなったようで安心している。
それからシャリオン達は各所へ向かった。
祭りは後数時間後に始まる。
それまでに労いの言葉をと、城中あちこち歩き回っていたのだが。
「シャリオン様」
「ん?」
少し後ろを歩くゾルの呼びかけに振り返る。
「皆がシャリオン様を探しているようです」
「入れ違いになってしまったかな?・・・あ。そんな時間か」
「はい」
思考共用で知らされてきたのだろう。
その呼びかけに頷くとそちらに向かうことにした。
★★★
広場に向かうと大きな銅鑼とラッパの音が鳴り響き、続いて始まりの花火が上がる。
明るい空に始まりの白い線がひかれると、街は賑わい出した。
シャリオンは城の前の大きな広場に集まった領民の前にガリウスと並ぶと、領主となってから豊穣祭で初めての挨拶をした。
なんだかんだでこれまで出来なかったことである。
伝統的な舞いは城で見るよりも迫力も雰囲気も断然良い。
初めての様子に感動しきりで、
子供達が小さな花やシルク布をはためかせながら舞い踊る。
上空にはヴィスタが舞うと、ひらひらと白い可憐な花びらが舞った。
「・・・リィンですね」
「綺麗だね」
久しぶりに見た魔法をうっとりと見つめながら、領民達が奇跡だと喜ぶ様子は、ガリオンとヴィスタを拒否を示してる様子はない。
そんな光景にホッとしながら楽しむのだった。
・・・
・・
・
窓の外から様子を楽しむしかなかった祭りを今年は参加できる。
それもガリウスと一緒というのは余計に心を弾ませる。
予定されていたことこなすと約束の時間だ。
ガリウスと街を歩くなど、サーベル国での城下町以来である。
ふとガリウスに振り返るとガリウスもハイシアの服を着ている。
朝からなのだが何度見ても不思議である。
「なんかガリウスがその服着ているのって不思議」
ローブ以外の姿は初めて見るのではないのだが、殆ど無いのは確かだ。
「シャリオンもです。・・・ちょっと心配ですね」
「何が?」
「ハイシアの服はシャリオンの良さを最大限に引き出しますね。
可愛いのが隠れていません」
真顔で言うものだから吹き出してしまう。
だが、シャリオンもガリウスに見惚れていた。
いつもの格好もカッコ良いのだが、それだけでなくて自分の領の服を着てるのだが違う感情がおきる。
それがなんだか恥ずかしくて、可笑しな事を言うガリウスの言葉に返した。
「可愛いわけないでしょう?おじさんなんだから」
シャリオンにとって可愛いというのはアシュリーやガリオンのような者をさし、成人した自分は該当しない。
そう言っているのだがガリウスはニコリと微笑みシャリオンの頬を甘やかすように撫でた。
「ゾル。しっかりと頼みますね。今日は結界が小さめですので」
「あぁ。わかってる」
「・・・攫われる前提みたいに言わないでほしい」
2人が心配性なのは今に始まったことではない。
いや、前科(?)があるのだから仕方がないのだが。
あきれた眼差しを向ければ、ガリウスは苦笑を浮かべた。
「シャリオンはいつも通りで良いのですよ。
ただ私達が心配性なだけですから」
そういうガリウスにゾルはそんなガリウスにも視線を向ける。
「今日はガリウスも護衛対象である事を忘れるな」
「・・・レオン様ですか?」
「シャリオンに夢中になってても大丈夫な様にだそうだ。
だから存分にイチャつけばいい」
ゾルのその言葉に少し驚いたようだがガリウスは笑った。
そしてシャリオンの腰を抱き寄せた。
「お許しが出ました」
「っ・・・もう」
「嫌ですか?駄目ですか?」
「ぅ」
「だが、シャリオンを困らせるなとも言われている」
「・・・上げて落として何をしたいのでしょうか」
じっとりとしたガリウスの視線にクスリと笑った。
「僕は、その、・・・恥ずかしいだけで、・・・でも、節度を守ってほしい、・・・けど」
「大丈夫です。シャリオンが嫌がることはしませんよ」
照れたシャリオンはなんだか満更でもない様子だ。
そんな様子はガリウスを喜ばせ結果シャリオンは少なからず困ると言うのに。
だが、なんだかんだでそれすらも本人は喜んでいるのだから、ゾルはなにも言わず2人の方を見る。
「そろそろよろしいでしょうか」
「あ、うん。行こうか」
そのまま放置していたらキスでもし始めそうな気配を察知したゾルに引き留められさっさと連れていくのだった。
★★★
護衛はゾル1人のみ。
だが、領民達はすぐにシャリオン達に気が付いた。
歓迎してくれるその視線ににこやかに返しながら、ふと手を繋がれた。
人前だと一瞬見上げたが周りも腕を組んだり似たようなものだと言われ、恥ずかしくも思いながらも手を繋いだまま街を歩く。
たくさんの人がいる中で距離感を保ちながらも領民達といろいろな店を歩き回る。
「シャリオン。あれはなんですか?」
「ん?アクセサリーを売ってるみたいだけど」
不思議に思いながら見るもシャリオンもよくわからない。
おじさんが中年男性と目が合うとにぃと笑った。
「さぁさぁ!これは世にも珍しい魔除けの指輪ですぞ!」
相手はこちらが誰か知っていての魂胆で商売魂にガリウスは苦笑を浮かべたが、シャリオンは不思議そうにしながら近づいていく。
「魔除けの指輪あったんだ。知らなかった」
「そうでしょう。そうでしょう。とても珍しいですからねぇ」
シャリオンは魔法を使えるが、あの魔法はとても珍しいものでまあるため一般的ではない。
これもっとちゃんと売り出した方が良いんじゃないのだろうかと真剣に考え始める。
「だれが作っているものなの?」
しかし、その言葉に店主はハッとした。
相手は転移のリングを作り売り出した人間である事を思い出した。
まさか、こんな子供騙しな売り出し文句をまさか信じてしまったのだろうか。
謝るべきだと思うのだが、真っ直ぐ真剣な眼差しで見てくる視線を落胆に染めてしまうのが怖くて、言葉に困っているとガリウスが店主を助けた。
「シャリオン。これはお呪いの一種です」
「え?」
納得のいってないシャリオンに今度は店主が頭を下げた。
「こ、これは!そのったしかに魔除けの指輪ではあるのですがっ」
「願いが込められた物。そうですね?」
「は、はい!そうですっっ持ち主に厄災が降り掛からないようにと祈りが込められているものなのですが、それを確約したものではないのです」
「!っ・・・そう。僕の早とちりだね。・・・恥ずかしいな・・・」
魔除けだとかそういったものは昔からあるものだ。
それを勘違いして大げさに言ってしまったことに恥ずかしくて、そう俯くシャリオンの頭をふわりと撫でた。
ガリウスのフォローに店主もホッとしたように息をついた後、別の指輪を出してきた。
「お2人にはこちらを」
「?これは?」
「こちらも祈りの込められたものになりますが、2つで1つのお守りで互いの幸せを願うものです」
「素敵だね・・・。それにきれい」
シャリオンの言葉にガリウスもコクリと頷いた。
いつだってそう願っているが、そんな意味を持つ指輪を大切そうに手に取った。
高価な宝石が使われているわけではないが、きれいに磨かれた宝石はとても綺麗だった。
「じゃぁこれを1組お願いします」
するとガリウスが懐から財布を取り出す。
これは防犯のためにガリウスが持つと言うことになったためだ。
領主で財布まで持っているのを知られる時のリスク下げるためだそうだ。
店主に渡されたのをガリウスが受け取った。
シャリオンは求められるままに手を差し出すと、その指輪をシャリオンの手に取り付けてくれた。
「僕もガリィにつけたい」
「お願いします」
差し出してくれた指に買ったばかりの指輪を付ける。
たったそれだけのことなのに少し緊張する。
お揃いのそれを眺めるとなんだかもうそれだけで幸せだ。
「これ。つけた本人も幸せになる気がするよ。ね?」
「えぇ」
店主にそういうと嬉しそうに微笑でいる。
「それは良かったです。
お2人が末永くお幸せである事を願っております」
「ありがとう」
そう言ってガリウスを見上げる。
「僕の幸せを願うなら、ガリィも自分が幸せになるように考えてね」
「貴方が幸せを感じてくれるなら、それが私の幸せですよ」
そんか些細な幸せを感じていると聞き馴染んだ咳払いがする。
ハッとしてあたりを見渡せば、人だかりが出来ていた。
どうやら視線を集めてきたらしい。
恥ずかしくなって2人は逃げ出すように歩き出した。
その日腕輪瞬く間に売れハイシアで売れるようになったのは言うまでもない。
┬┬┬┬
今日からしばらく毎日投稿します!(1週間程度)
明日の昼は別の話を上げるつもりなのでよろしかったらそちらも楽しんでいただけたら幸いです。
夜眠るときも気分が高ぶり眠りつけなかった。
今日はとても忙しくなるだろう。
あと、30分もしないうちに起き祭りの準備を進める。
次期宰相として常日頃動き詰めのガリウスに、昨日ばかりは朝も別の部屋で寝ることを提案したのだが却下された。
今日この日の為にガリウスは休暇を取得しているのだから大丈夫というのだ。
休暇についてはレオンとも争ったそうなのだが、そこは勝負に勝ったとかで丸1日とることが出来た。
レオンもシャーリーと行きたかったのだろうと思い謝罪を入れたのだが、シャリオンには怒りの片鱗を見せない猫なで声で普段のねぎらいを言われながら、1年無事納めてきたことを祝われた。
また自分の時には宰相の為に参加出来なかったことや領民達に感謝を伝えて欲しいと言われた。
勿論シャーリーも代理として豊穣祭は行っていたが、レオンに言っても駄目だと言われるのが目に見えているので、豊穣祭に参加したことはないそうだ。
だから豊穣祭に領主が参加するのは随分久しいことのようで、シャリオンには楽しんできて欲しいと言ってくれた。
それを証明するように2人からは、シャリオンとガリウスの衣装を仕立ててくれた。
深い青色に淡い水色で繊細な模様が編み込まれたもので、ハイシアの伝統的な衣装であり、それを身に纏うのも楽しみだ。
部屋の暗さを確認してからガリウスを見れば珍しく目を閉じている。
やはり疲れもあるのだろう。
今日もガリウスの安全を願いながら魔法を掛け、すやすやと眠るガリウスに愛おしさを感じてそっと口付けた。
しばらくその寝顔を堪能していると、気付いたガリウスが驚いたようで、大きく目が開かれる。
「おはよう。ガリィ」
「おはようございます」
するりと腕をまわされ引き寄せられた。
「起きていたのですね」
「うん。・・・緊張してるみたい」
「大丈夫です。傍にいます」
「ありがとう。どちらかというと不安よりも楽しみが強いんだ」
ガリウスと過ごせる時間はシャリオンにとってかけがえのない時間だ。
「それなら良いのですが」
「でも、良いの?僕の都合に合わせてくれるなんて」
ガリウスとハイシアの街を少しで良いから散策出来れば良いと思っていた。
しかし、朝からシャリオンに付き添ってくれると言う。
「宰相になってしまったら簡単にはできませんからね。
レオン様がご健在のうちに領の為に何かをしたいのです」
「ガリィ・・・」
貴族として伴侶として並んで立つことはあっても、領民の前では結婚式しか出ていないため、ガリウスも伴侶として領民の前に立ち領民のために何かをしたいのだと言う。そのことはもちろん嬉しい。
「ありがとう。領のことを考えてくれて」
ふわりと笑みを浮かべて言えば、ガリウスは嬉しそうに微笑んで口付けてきた。
キスを何度か繰り返す度に少しずつ深くなっていく。
今日は本当に時間がないと頭ではわかっているのに『もう少し』と甘えてしまう。
「・・・」
もう、本当に駄目だと思う頃にはガリウスの表情もその気になっている。
「シャリオン。私の頭に跨って頂けますか」
「え?」
よく分からなくて固まっているとクスリと笑われて『いいえ。私に任せてください』と、言われたかと思うと素早くネグリジェを捲られる。そして勃起し始めているそれを一撫でした。
徐々に近寄るガリウスにようやくわかり、咄嗟に抑えた。
「このまま恥ずかしい状態を領民に見せると言うのですか?」
「そっそんなこと!」
「シャリオンが領民の前で恥ずかしいことにならないようにするだけです」
瞬間的に見せた嫉妬を抑えたかと思えば、丸め込むようなそんなことをいうガリウス。
雪崩れ込もうとするのを引き止めた。
「駄目っ」
「シャリオン・・・」
「・・・僕だけじゃ、・・・、・・・」
恥ずかしくて黙ったシャリオンの頬を撫でるガリウスの表情は珍しく困っている。
だが譲れなくてシャリオンが下半身に手を伸ばすと掴まれてしまった。
「ずるいっ」
聞き分けのないことを言っているとシャリオンに意地悪気に微笑んだ。
「・・・そんなに。・・・なさりたいのですか・・・?」
耳元で熱ぽい声で囁かれる。
煽られているのがわかっているから恥ずかしくともコクリと頷けば驚いたようだが苦笑をした。
「シャリオンのためなんです」
「そんなの・・・!」
「貴方に口でしてもらって私が止まるはずないでしょう」
「と、・・・まだ少し大丈夫」
「今日は執務室の仕事でも無いのです。
貴方の可愛い顔を、いくら大切にしている領民にだって見せられません」
「それは・・・っ・・・なら、・・・、我慢する」
そう言うとガリウスから手を引いて起きあがろうとすると、腰を引き寄せられて首筋に口付けられた。
「ですから。・・・ここを大きくさせたままでは駄目と言っているんです」
「っ」
するり撫でられてゾクリと刺激を受けながらも、こんな風にした調本人を納得いかない目で見ていると、シャリオンに甘いガリウスは結局折れた。
普段シャリオンは我儘言わないが、他人を思っての事となれば別である。
殊更ガリウスのこととなれば甘くならないわけがないし、本音を言えばガリウスとて触れて欲しく無い訳では無いのだ。
それに頑なにシャリオンが1人だけ逝かされるのが嫌がるのにはガリウスがそうしてしまったからと言うのもある。
「・・・わかりました。
では、私はシャリオンのモノを愛でますので、シャリオンは私のを好きにして下さい」
「・・・いいの?」
少し投げやりな態度にも関わらず折れてくれたガリウスに、嬉しそうにするシャリオン。
ガリウスは思わず押し倒したくなる勢いだが、理性を総動員させた。
それに気づかないシャリオンは首を傾げた。
「えぇ」
「なら・・・口でも」
そんな言葉が出たのは手で扱いてガリウスを愛撫するよりも口でした方が感じてくれるのが実感できるからなのだが、ガリウスはその言葉に息を飲んだうちに言い聞かせるように額に口付けてきた。
「すみません。シャリオン。
・・・そうされてしまうと、本当に止まらなくなってしまうんです。
そのかわり今夜たくさん愛し合いましょう」
「っ・・・ごめん」
ジッと見てくるガリウスの視線にこくりと頷いた。
肌を重ねるたびにガリウスと傍に居たくなるのは自分がおかしいからなのだろうか。
随分甘えたに性格になってしまった。
「謝らないで下さい。
貴方が私を愛してくれようとしているのわかっています。
さぁそれより本当に時間がなくなってしまいます」
それにコクリと頷くとシャリオンはガリウスに後ろから抱き寄せられた。
ネグリジェの隙間から手を差し込まれ肌を撫でられる。
「シャリオン・・・こちらを見れますか?」
その言葉に振り返り見上げれば口づけられた。
辛い体勢ではあるがそれだけで昂った。
長いガリウスの指先がつぅっと撫でてくる。
シャリオンの様子を見ながら、ゆっくりと動くガリウスの手。
「っ・・・ふぅ・・・ん」
撫でる手に夢中になりながら、ガリウスのモノに手を伸ばせばしっかりと昂っている事にホッとした。
熱くて大きくて硬くなったモノを、根元からゆっくりと撫でた。
・・・おっきい
反り立つものに手を這わせると浮き出る血管の存在もわかる。
それをたどりながら手で握りこみゆるゆると扱き始める。
いまだにこんな大きなものが自分の中に入っていることが信じられない。
狂暴そうなガリウスのものはいつだってシャリオンの中に入ると、ガリウスとは違いシャリオンを乱していく。
そんなことを思い出すとまた体が期待してしまう。
ガリウスに感じて欲しくて頑張っているのだが、時間を増すごとに水音を鳴らすのはシャリオンで焦った。
するとキュッとシャリオンの乳首を摘み上げてくる。
「ぁっ・・・が・・・りぃ」
情けない声色にガリウスは笑みが崩れ苦笑した。
このままではシャリオンだけが逝ってしまう。
「シャリオン。すみません。
私のモノと一緒に扱いて頂けますか」
「んっ・・・?」
「私はこちらを愛しますので」
そう言うとピンと乳首を弾かれた。
「んぁぁっ」
「さぁ。早く・・・逝かせてください」
耳元で囁きながら2人のものを合わせられて、握らされる。
片手では収まらない大きさに両手握り、ガリウスのモノにも刺激を与えるように腰も動かした。
「ぁ!っ・・・んっ」
くちゅくちゅと水音が次第に大きくなり気持ち良くてもうガリウスしか見えなくなっていく。
「っ・・・が、・・・が・・・りぃ」
「・・・気持ちいですよ。シャリオン」
その言葉が嬉しくて頑張って手を動かす。
心地よさに揺られながら絶頂を迎えるまで繰り返すのだった。
★★★
少し休み落ち着いた後、準備を整え広間に向かえばまだ早い時間だというのに、沢山の人が集まってきている。
今年は特に大きい祭りになる為、皆には頑張ってもらっている。
第二のリジェネ・フローラルの礎になるように、城下町だけでなく各地にも足を運んでもらうべくゲートを使ってもらうつもりだ。
また、裕福な人向けに馬車で各地を回るツアーも用意している。
この協力をしてくれているのは馬車屋のジョージである。
馬車屋のやっていた土地を受け渡すことに難色を示したジョージ。
どうやら以前は力を貸してくれていた貴族に気を使っているようにも見えたが、
それは当然の反応である。
しかし、経営が厳しい中馬車を営業していくのには難しかった。
そこでガリウスから知恵を借りて、やる気があるならば新しい業務の提案した。
具体的な業務はゲートが出来てもそのゲートを使い運送を行う事や、今回のようなツアーの元締めを提案した。
特にハイシアに作るつもりのリジェネ・フローラルは各地に作るつもりだ。
それ故に材料の運搬には馬車が必要になる。
勿論、最初はいい返事をすぐにはもらえなかったが、しばらくしてゴードンを通してもらえた返事は承諾を貰えるものだった。
そんなわけで今馬車屋は全面改装中で、馬達は別の町で飼う事になった。
そのジョージには臨時の建物でこの祭りでも大いに働いて貰うつもりだ。
唐突な提案に最初困惑しているようだったが、突如沸いた仕事に彼らは喜んで引き受けてくれた。
ドラゴンが飛行する土地として知られつつあるハイシアは、それを見に来る人間も多くなる傾向がある。
シャリオンとしてはこの豊穣祭は昨年の豊作に感謝と、今年への祈りも含めているがそれ以上に人が沢山来てくれるようにと願っているのだ。
ゲートやリングが出来た事により、職を失う者もゼロではないのでそこは今後の課題であるが、今回の豊穣祭の成功はハイシアのリジェネ・フローラルの成功にもつながるのだ。
「ギルドでは職業の相談とか出来ないのかな」
「ギルドは依頼主の仕事を提供しているだけですから。
メインの仕事ではないので、相談に乗ってくれる者もいるかもしれませんが人によるでしょう」
「そう・・・」
「何を考えているのですか?」
「ん?・・・ん・・それまでの職で困窮になった時、困った人はどうしているんだろうなと思って」
「そうですね。周りの人に相談しているとは思いますが」
「・・・そう・・だよね」
だからこそゴードンが馬車屋のジョージを紹介してくれたのだ。
最初は普通の商売人のようにしか見えなかった。
だが、振り返ってみればゴードンは自分の利益を取ろうとはしていなかった。
高く売りつけようとしたのは、ジョージのためである。
その結果土地を買い上げた後、ジョージに新たな事業を持ち掛けていることを知ったゴードンからお礼のしなが感謝状とが届いた。
一見金を何よりも大事にしている様に見えたが、それだけではないようだ。
しかし、それはジョージの近くにゴードンがいたから彼は見つけれられたが、そんな風に相談出来る人間がいくらいるというのだろう。
それに市井の女性の仕事の無さもどうにかしなければならない。
思い悩んでいると肩をたたかれる。
「それについては今度考えていきましょう」
「・・・ありがとう」
「いいえ。一緒にこの領地の事を考えて貴方の力になれることは、私にとって嬉しいことなのです」
「またそうやって甘やかして・・・」
「甘やかされているのは私です。貴方に頼られて嬉しくないわけないでしょう?」
そう言って本当に嬉しそうに微笑むガリウスにシャリオンはもう一度お礼を言いながら微笑んだ。
考えることは沢山あるが、今日はお祭りの事をに集中せねば。
ガリウスが今止めたのはシャリオンの表情が曇り始めたのに気が付いたからだ。
広間に入っていくと、シャリオンとガリウスの姿を見るとハッとしてこちらに寄ってくる。
普段はハイシアの内政に携わりデスクワークが多い者達も、今日ばかりは動き回ることが多いようだ。
彼らにも今日の祭りの成功が今後のハイシアの発展に繋がることは話してある。
「おはようございます。シャリオン様、ガリウス様」
「おはよう」
「おはようございます」
「今日はよろしくね」
「はい!お任せください」
長年顔を合わせているメンバーに挨拶をしていく。
「お2人参加頂けるとのこと、とても嬉しく思います。
城下町には予め前触れを出しているのですがお祭り騒ぎだそうです。
・・・といってもお祭りなんで間違いないんですがね」
「あまり領の事で表に立ててないから・・・。でも喜んでくれているなら嬉しいよ」
城の内勤者とはシャリオンは直接会うが、それ以外の者は基本影武者が対面する。
それでも頻度は少ない。
例えばで言うと先日の、城壁にヴィスタが住んでいることに緊急な苦情を受けた時なんかは、影武者が対応してくれている。
「そんなことありません!
確かにここの城下町ではお姿を拝見する機会はありませんが、問題には早急に対応してくださっております」
それは領主としては当たり前の事である。
ハイシアにはゲートが出来ている関係で、シャリオンは時間が空けば視察に出ているのだが、城のふもとは近いこともあり後にまわしがち・・・いや、忘れがちなのである。
近さゆえに問題もすぐ上がってくるからだ。
「今回豊穣祭に合わせて街を歩いたけれど、今後はもっと時間を取るようにしないとね」
「いやいや・・・!お忙しいのは存じておりますゆえ」
そう言いながらもシャリオンが来ると知って皆嬉しそうにした。
普段ハイシアを守る身としたら領主にその過程を見られるのは嬉しいことなのである。
「今年の初の試みである、ハイシア全土の祭り!いやー楽しみです」
「そうだね。ちょっとそちらの方も見てこよう」
「えぇ!きっと皆喜ぶと思います。
それまでこちらはお任せください。
あ。一点だけ!・・・本日はガリオン様は・・・」
「今日はヴィスタと共に上空からハイシアを見守ることになっているよ」
「そうですか・・・。ヴィスタ様がおられるのですから仕方ないですな。
いや。承知いたしました」
次期当主であるガリオンが気になるのだろう。
しかし、魔物抑制の為と理解してくれたようだ。
そう言った役目を大々的に知らせてからは、ヴィスタへの苦情はなくなったようで安心している。
それからシャリオン達は各所へ向かった。
祭りは後数時間後に始まる。
それまでに労いの言葉をと、城中あちこち歩き回っていたのだが。
「シャリオン様」
「ん?」
少し後ろを歩くゾルの呼びかけに振り返る。
「皆がシャリオン様を探しているようです」
「入れ違いになってしまったかな?・・・あ。そんな時間か」
「はい」
思考共用で知らされてきたのだろう。
その呼びかけに頷くとそちらに向かうことにした。
★★★
広場に向かうと大きな銅鑼とラッパの音が鳴り響き、続いて始まりの花火が上がる。
明るい空に始まりの白い線がひかれると、街は賑わい出した。
シャリオンは城の前の大きな広場に集まった領民の前にガリウスと並ぶと、領主となってから豊穣祭で初めての挨拶をした。
なんだかんだでこれまで出来なかったことである。
伝統的な舞いは城で見るよりも迫力も雰囲気も断然良い。
初めての様子に感動しきりで、
子供達が小さな花やシルク布をはためかせながら舞い踊る。
上空にはヴィスタが舞うと、ひらひらと白い可憐な花びらが舞った。
「・・・リィンですね」
「綺麗だね」
久しぶりに見た魔法をうっとりと見つめながら、領民達が奇跡だと喜ぶ様子は、ガリオンとヴィスタを拒否を示してる様子はない。
そんな光景にホッとしながら楽しむのだった。
・・・
・・
・
窓の外から様子を楽しむしかなかった祭りを今年は参加できる。
それもガリウスと一緒というのは余計に心を弾ませる。
予定されていたことこなすと約束の時間だ。
ガリウスと街を歩くなど、サーベル国での城下町以来である。
ふとガリウスに振り返るとガリウスもハイシアの服を着ている。
朝からなのだが何度見ても不思議である。
「なんかガリウスがその服着ているのって不思議」
ローブ以外の姿は初めて見るのではないのだが、殆ど無いのは確かだ。
「シャリオンもです。・・・ちょっと心配ですね」
「何が?」
「ハイシアの服はシャリオンの良さを最大限に引き出しますね。
可愛いのが隠れていません」
真顔で言うものだから吹き出してしまう。
だが、シャリオンもガリウスに見惚れていた。
いつもの格好もカッコ良いのだが、それだけでなくて自分の領の服を着てるのだが違う感情がおきる。
それがなんだか恥ずかしくて、可笑しな事を言うガリウスの言葉に返した。
「可愛いわけないでしょう?おじさんなんだから」
シャリオンにとって可愛いというのはアシュリーやガリオンのような者をさし、成人した自分は該当しない。
そう言っているのだがガリウスはニコリと微笑みシャリオンの頬を甘やかすように撫でた。
「ゾル。しっかりと頼みますね。今日は結界が小さめですので」
「あぁ。わかってる」
「・・・攫われる前提みたいに言わないでほしい」
2人が心配性なのは今に始まったことではない。
いや、前科(?)があるのだから仕方がないのだが。
あきれた眼差しを向ければ、ガリウスは苦笑を浮かべた。
「シャリオンはいつも通りで良いのですよ。
ただ私達が心配性なだけですから」
そういうガリウスにゾルはそんなガリウスにも視線を向ける。
「今日はガリウスも護衛対象である事を忘れるな」
「・・・レオン様ですか?」
「シャリオンに夢中になってても大丈夫な様にだそうだ。
だから存分にイチャつけばいい」
ゾルのその言葉に少し驚いたようだがガリウスは笑った。
そしてシャリオンの腰を抱き寄せた。
「お許しが出ました」
「っ・・・もう」
「嫌ですか?駄目ですか?」
「ぅ」
「だが、シャリオンを困らせるなとも言われている」
「・・・上げて落として何をしたいのでしょうか」
じっとりとしたガリウスの視線にクスリと笑った。
「僕は、その、・・・恥ずかしいだけで、・・・でも、節度を守ってほしい、・・・けど」
「大丈夫です。シャリオンが嫌がることはしませんよ」
照れたシャリオンはなんだか満更でもない様子だ。
そんな様子はガリウスを喜ばせ結果シャリオンは少なからず困ると言うのに。
だが、なんだかんだでそれすらも本人は喜んでいるのだから、ゾルはなにも言わず2人の方を見る。
「そろそろよろしいでしょうか」
「あ、うん。行こうか」
そのまま放置していたらキスでもし始めそうな気配を察知したゾルに引き留められさっさと連れていくのだった。
★★★
護衛はゾル1人のみ。
だが、領民達はすぐにシャリオン達に気が付いた。
歓迎してくれるその視線ににこやかに返しながら、ふと手を繋がれた。
人前だと一瞬見上げたが周りも腕を組んだり似たようなものだと言われ、恥ずかしくも思いながらも手を繋いだまま街を歩く。
たくさんの人がいる中で距離感を保ちながらも領民達といろいろな店を歩き回る。
「シャリオン。あれはなんですか?」
「ん?アクセサリーを売ってるみたいだけど」
不思議に思いながら見るもシャリオンもよくわからない。
おじさんが中年男性と目が合うとにぃと笑った。
「さぁさぁ!これは世にも珍しい魔除けの指輪ですぞ!」
相手はこちらが誰か知っていての魂胆で商売魂にガリウスは苦笑を浮かべたが、シャリオンは不思議そうにしながら近づいていく。
「魔除けの指輪あったんだ。知らなかった」
「そうでしょう。そうでしょう。とても珍しいですからねぇ」
シャリオンは魔法を使えるが、あの魔法はとても珍しいものでまあるため一般的ではない。
これもっとちゃんと売り出した方が良いんじゃないのだろうかと真剣に考え始める。
「だれが作っているものなの?」
しかし、その言葉に店主はハッとした。
相手は転移のリングを作り売り出した人間である事を思い出した。
まさか、こんな子供騙しな売り出し文句をまさか信じてしまったのだろうか。
謝るべきだと思うのだが、真っ直ぐ真剣な眼差しで見てくる視線を落胆に染めてしまうのが怖くて、言葉に困っているとガリウスが店主を助けた。
「シャリオン。これはお呪いの一種です」
「え?」
納得のいってないシャリオンに今度は店主が頭を下げた。
「こ、これは!そのったしかに魔除けの指輪ではあるのですがっ」
「願いが込められた物。そうですね?」
「は、はい!そうですっっ持ち主に厄災が降り掛からないようにと祈りが込められているものなのですが、それを確約したものではないのです」
「!っ・・・そう。僕の早とちりだね。・・・恥ずかしいな・・・」
魔除けだとかそういったものは昔からあるものだ。
それを勘違いして大げさに言ってしまったことに恥ずかしくて、そう俯くシャリオンの頭をふわりと撫でた。
ガリウスのフォローに店主もホッとしたように息をついた後、別の指輪を出してきた。
「お2人にはこちらを」
「?これは?」
「こちらも祈りの込められたものになりますが、2つで1つのお守りで互いの幸せを願うものです」
「素敵だね・・・。それにきれい」
シャリオンの言葉にガリウスもコクリと頷いた。
いつだってそう願っているが、そんな意味を持つ指輪を大切そうに手に取った。
高価な宝石が使われているわけではないが、きれいに磨かれた宝石はとても綺麗だった。
「じゃぁこれを1組お願いします」
するとガリウスが懐から財布を取り出す。
これは防犯のためにガリウスが持つと言うことになったためだ。
領主で財布まで持っているのを知られる時のリスク下げるためだそうだ。
店主に渡されたのをガリウスが受け取った。
シャリオンは求められるままに手を差し出すと、その指輪をシャリオンの手に取り付けてくれた。
「僕もガリィにつけたい」
「お願いします」
差し出してくれた指に買ったばかりの指輪を付ける。
たったそれだけのことなのに少し緊張する。
お揃いのそれを眺めるとなんだかもうそれだけで幸せだ。
「これ。つけた本人も幸せになる気がするよ。ね?」
「えぇ」
店主にそういうと嬉しそうに微笑でいる。
「それは良かったです。
お2人が末永くお幸せである事を願っております」
「ありがとう」
そう言ってガリウスを見上げる。
「僕の幸せを願うなら、ガリィも自分が幸せになるように考えてね」
「貴方が幸せを感じてくれるなら、それが私の幸せですよ」
そんか些細な幸せを感じていると聞き馴染んだ咳払いがする。
ハッとしてあたりを見渡せば、人だかりが出来ていた。
どうやら視線を集めてきたらしい。
恥ずかしくなって2人は逃げ出すように歩き出した。
その日腕輪瞬く間に売れハイシアで売れるようになったのは言うまでもない。
┬┬┬┬
今日からしばらく毎日投稿します!(1週間程度)
明日の昼は別の話を上げるつもりなのでよろしかったらそちらも楽しんでいただけたら幸いです。
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