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執着旦那と愛の子作り&子育て編
今回は・・・流石にむりかぁ。でも駄目だと思うと気になっちゃうよね。⑥
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その日は朝から雨が降っていた。
夜に掛けて強くなりそうな、そんな分厚い雲を纏う空。
だが、天気で予定が変更できるほど今日以降の日程にも時間の余裕は無い。
最近『お前は一人なんだぞ?』と優秀な側近からチクチクと言われることに気づかないようにしている今日この頃である。
そんな今日は早い時間にも関わらず王都のハイシア家の屋敷には来客予定がある。
少し相談したいと連絡を入れたら、どんな様かも聞かずにすぐさま来てくれると言う。
シャリオンの記憶では多忙な人間だと思うのだが、フットワークの軽さは感謝している。
待っている間に少しでも仕事を進めていると、ゾルに声を掛けられた。
「ライガー様が見えた様だ」
「ん?あぁ。うん。通してもらえる?」
立ち上がり準備を始めゾルに手渡されたローブに腕を通す。
足首まですっぽりと隠れるものだ。
この後の日程はのジェネ・フローラルに向かうのだが既に着替えている為だ。
ライガーが来るのは突然だったという理由はあまり関係がなく、ガリウスから着替えるのは自分のいるときにして欲しいとお願いされてしまった為だ。
最初は脱ぐときだけだったのだが・・・。
勿論理由も聞いて、納得は出来ないがガリウスのお願いに弱いシャリオンは無下に出来なかった。
それに女性の服を着ていたとしても、シャリオンの執務室は殆ど人がいない為仕事は進む。
暫くしてノック音の後に入室を許可すると、使用人に連れられてライガーがやって来た。
そのライガーは挨拶の途中にピタリと表情を固まらせながらも近寄って来た。
「リオ・・・化粧している?」
「え。あ。うん。
・・・変だよね、、ごめん」
ガリウスはシャリオンが照れるからかあまりそう言うことは言わない。だが気づかないわけがないか。
友人に見せたという事に途端に熱くなる頬。
「えっいや、変じゃないけど、なんでまた?
今までしなかったじゃないか」
目の前にまで来たライガーを見上げると頬が赤く、驚きサファイアの瞳が大きく開かれている。
なんだがいずらい。
「あー・・・うん」
濁したシャリオンに直ぐに勘づいたらしい。
「また無理してるのか」
呆れを含ませながらそう言うと、見つめられていた視線がすっと外される。
その態度にムッと拗ねた様にいい返す。
「無理はしてないよ」
ライガーは慣れた様子でソファーの方に向かうと掛けた。
先ほどまでの照れ交じりの視線は怒っているかのようだ。
「勿論、ガリウスは知ってるのかな?」
「うん」
「そうか」
ふぅ。と、ため息を吐きながらこちらを見てくるので、シャリオンもソファーに行くと向かい合わせに掛けた。
「そんな化粧をしてどこに行くんだ?・・・あっいや今のはその普段しないからであって」
前者は不満げに、だが途中でハッとして何故か途端にワタワタと慌てるライガーに怪訝そうに首を傾げつつ答えた。
気まずそうにしながらも、そこからすぐに態度はいつものライガーになった。
「リジェネ・フローラルだよ」
「あぁ。あそこか。最近シュリィがよく行っている」
「え?そうなの?・・・王城からもう1人でも行ってるんだ。
ちゃんとルーとアンジェには許可取ってるんだよね?」
「それは勿論。
あの2人はシュリィをかなり可愛がっているからな。
誰かさんに似てよく頭を突っ込むから困るとよく話してる」
険悪な2人だがアシュリーの事になると仲が良くなるらしい2人に安心をしつつも聞き捨てならない。
「そんな事は・・・ないと」
「リィンの話も聞いたぞ」
シャリオンは話していないというのに、なんでそんなに伝わるのが早いのだろう。
アシュリーにさえガリオンの事は話していない。
「あーいや・・・あれは・・・やりたいと言ってくれたというか・・・。
まぁ2人とも僕より利口に立ち回れる子になる気がするよ」
落ち着いて考えてもそう思う。
そんな親バカな発言をしていると呆れられてしまう。
「・・・ところで何故リオが女装する必要があるか?
あそこはハイシアの持ち物だろう」
「女性だけが利用できるようになってるからね」
「いや、だからハイシアの」
「僕が所有者としても規則は規則なのだから。
大々的に告知して見に行ったら見たいものが見れないでしょう?」
「・・・あの話は本当なのか」
「あの話って?」
「恥ずかしながら王城に努めるメイドの中に勤務態度が相応しくない者がいるという話だな」
シャリオンが知っているよりも、城で育ち時折泊っている様子のライガーが知らないわけがなかった。
聞くところによると、アシュリーの為に増員したメイド達だが何を勘違いしているのか、おかしな行動をしているそうだ。
「可笑しな行動?」
「彼女達はシュリィのメイドなのだからそれに集中してもらいたいのだが」
していないから、リジェネ・フローラルに着ているのだと解るのだが。
「リジェネ・フローラルの話をしているの・・・?」
「・・・まぁ・・・そんな話をしている人間もいるらしいが」
「??ほかに理由があるの?ライ。ここまで来たら言って」
回りくどく言い濁すライガーにシャリオンがそう尋ねればライガーは小さくため息を吐いた。
「城中の未婚・独身関係なく、・・・いや。男女関係なく優秀な人材に迫っているそうだ」
「ん?」
「俺に怒られても」
どうやら無意識に不機嫌そうにしてしまったらしい。
シャリオンは咳ばらいをして自分を落ち着けた。
「どうやら城に婿探しに来ているようだ」
呆れてしまうが、実際城で知り合って仲を深めた人もいるのだが。
「王族のライガーの耳に入るほどなんて。・・・ね」
「仕事もせずにそんな事ばかりをしている人に興味を示すわけがないんだがな」
ライガーはそう言うがシャリオンとしては微妙だった。
シャリオン自身も仕事をしていない人間が好きなわけではないのだが、婚期を気にする貴族達が手段を択ばないのを知っている。
「ルーは何か言っているの?」
「シュリィに止められている」
「え・・・?」
「実際、シュリィが動き始めて表面上では収まっているからな」
「そう」
「安心してほしい。シュリィはルーとアンジェにはしっかりと話している。
何があったか言うのがルーとしている約束だからな」
「そう・・・」
「大丈夫だ。シュリィが罰を望んでいない。
ルーは・・・いや。アンジェと2人でかなり怒っていたけど・・・逆にシュリィが宥めていたくらいだ」
「そうなんだ。・・・あの・・・ロザリアは・・・元気?」
先日、仕事中に手を止めさせてまで話をしていたというのに、勝手に理想を押し付けてしまった。
とても見えないが高齢の女性だと言うのを失念していた。
「元気だよ。昨日も城を闊歩していた。
・・・聞いたけど、リオが足を直したんだって?」
「僕は魔法の練習に付き合ってもらっただけだよ」
「ふーん。・・・まぁそれならいいけど」
「今の含んだ言い方、ルーそっくり」
クスクスと笑いながら言うと、ライガーはクスリと笑った。
「兄弟だからな。似ていて当然だ」
得意げに言うライガーに笑みを浮かべた。
それから思い出話を少しした後で、長く話している時間もなく本題に入った。
「それで今日呼んだ件だけれど」
「あぁ。なんだ?」
シャリオンのお願いに体を前に乗り出して尋ねてくるライガー。
「貴族の娘で最近結婚した令嬢が知りたいんだ」
「なんでそんな事聞くんだ」
理由を尋ねるのは当然だ。
こちらの要望だけが通るはずもなく、シャリオンは気まずそうに視線を逸らしながらも答えた。
「・・・実は以前はリジェネ・フローラルによく来ていたみたいなんだけれど、最近待ったく姿を見なくなってしまった人がいるという話があるんだ」
問題ある行動をしていたという事は伏せて言えば、ライガーのサファイアの瞳がジッとこちらを見てくる。
「心配するな。リオのお願いを断るわけがないだろう」
「!・・・ありがとう・・・!」
「一度帰って届けさせる形になるが」
「うんっ・・・本当にありがとう」
「これしきの事で容易いさ」
ふと、以前はシャリオン以上に詳しかったのを思い出していた。
「・・・。
リジェネ・フローラルに関連することだって解るけれど。
・・・本当に気を付けるんだぞ?
可憐な見た目が彼女達はその見た目なだけじゃない。
獰猛な女豹くらいに見て置いて安全だ」
「そんな大げさな・・・」
「大げさじゃない。・・・じゃぁ、俺は帰るから」
そう言うと、時刻は思ったより進んでいて、シャリオンはライガーを見送るのだった。
★★★
【別視点:ゾル】
シャリオンの執務室を出て門へと向かう。
ここからはワープリングでは飛べないからだ。
廊下を歩きながらライガーに話し掛けられた。
「リジェネ・フローラルに行くときは護衛は付いているのか?」
ハイシア家の事に通常なら答えはしない。
しかし、相手がライガーだからか、ゾルは間を置いた後に応えた。
「はい」
「君たちは?」
「当然ついています」
「そうか」
その言葉にホッとした様に息を吐くライガー。
ライガーのシャリオンへ抱く感情は複雑である。
それ故にこんな事になっているのだろう。
「それと」
「解っております」
「何がだ?」
「先ほどのシャリオン様への言動はガリウス様には報告しません」
「!・・・やっぱり・・・俺の発言はおかしかったか」
「はい。浮気を疑う男そのものでした」
そういうとライガーは小さくため息を吐いた。
「相手が・・・ガリウスなら別に何とも思わないんだが。
・・・他だと思うと小娘だとしても安心が出来ない。
あんな可愛いシャリオンを肉食獣の中に放り込んで本当に大丈夫なのか?
・・・君たちもいるし、ガリウスの事だから万全を期しているのだろうが」
「シャリオンの周りには赤蜘蛛達が控えています」
「アリアの?・・・そうか。
すっかり彼女達に助けられているな。・・・何かしてやれたら良いのだが」
「それは私ではなく、シャリオン様に相談されては如何でしょうか」
「それもそうだな。・・・、・・・もう爵位を与えても良いんじゃないのか」
そんなことを言うライガーにゾルは内心笑っていた。
ブルーノそっくりだからである。
ウルフ家にアルアディアの籍を与えたのは先々代の王である。
ブルーノは世話になっていハイシア家に対して何かしようと思い彼等を守るウルフ家に爵位を送るつもりでいた。
そして、今のライガーのセリフだ。
笑いたくもなるだろう。
ハイシア家は王家であるアルアディア家を支えている。
ブルーノにはレオンが、ルークにはガリウスが。
シャリオンはそんなルークとライガーの心の支えにもなっている。
大切なものに感謝したいという気持ちはわからないのでもないのだが。
「爵位を与えることで動きにくくなるという事もあります。
・・・彼女達に聞いてみないと解る事ではありませんが」
王命とならばそれも断ることは出来ない。
しかし、本当に喜ぶかどうかは聞くしかない。
「!・・・そうか・・・そうだな。
それに、家と称すには複雑だな」
「えぇ」
「・・・・。なら、こういうのはどうだろうか」
少々突拍子もない相談ごとにゾルは答える。
王族とは関係ない人間の意見を聞きたかったのだろう。
「(ガリウスがもっと話を聞いてやればいいんだ。
まったく。・・・あいつは頭が良いくせにシャリオン以外に適当すぎる)」
なんてそんなことを思うのだった。
★★★
それからシャリオンはリジェネ・フローラルの貴族達以外の者達が集まるフロアーに訪れていた。
フロアーの区別をつけたくなかったが、貴族達は高額の支援をしてくれる家もある。
それにジャスミンの部下でおるキャロルの様な人間を出さないためにも、立ち入り禁止とはしないが住み分けは必要であり、貴族が集まるフロアーはラグジュアリーフロアー。
平民があつまるフロアーを一般向けのフロアとした。
その一般フロアーにはすでにそれなりの女性が来ており驚いてしまう。
働かねば生きて行けぬが、外にいても中々仕事が取れない。
それでも昼間だというのに人で溢れている。
だが、シャリオンには外が女性にとって危険な場所なのかと思ってしまった。
これでも前王妃の女性保護団体のお陰で戸籍を持ち、家を借りれることが出来るようになったらしい。
王家や城に出入りしている者や目をつけられた人間からすれば、前王妃は生家も含めて厄介者であり存在を系譜から抹消するほどの人物だ。
しかし、一般人からすると女性の地位が向上したのは間違いない。
それが、父親であるファングスが先導し殆ど手をだしてなく、本人自身「女」をステータスだとし「王妃」なれる自分をあげ、ルーティへの嫌がらせだとしても、庶民の知らなことであり、若くして亡くなった王妃を憎む者はいない。
被害者の1人であるシャリオンも、アシュリーの親となった今、彼女のおかげと言えるところがいくつかあるのも事実である。
話がそれてしまった。
つまり、昔よりは少しずつ女性が外に出やすくなったというのに、こんなに人がいると言うのはそれ程職に困窮してるということ。早くどうにかせねばと思いながら、シャリオンは中に入っていく。
今日はアリアの部下であるクロエとソフィアを含めて数人を引き連れての来場だ。
ラーミア達との約束で読み書きを教えるために訪れる事数回。
以前は貴族のシャリオンをみて怯え気味だった女性達も、最近では逃げたり隠れたりせずに、漸くぎこちなくも挨拶してくれる様になった。
特に子供達は警戒心が低く、シャリオンを「お姫様!」と慕ってくれている。
ちなみに、その呼び名だけはやめてもらったのは言うまでもない。
「あ!ユーリア様!!」
「こんにちわー!」
「先生もこんには!」
シャリオン達に気付いた子供達が駆け寄ってきて、そんな子供達に微笑んだ。
「こんにちは。宿題はおわった?」
「はい!」
「そう。良かった。今日も先生を連れてきたから、勉強がんばってね」
「「はーい」」
キャッキャッと喜ぶ子供達。
その親達は慌てて駆け寄ってきながらも、苦笑いを浮かべて謝ってくるのを、気にしない様に言いながら奥へとすすんだ。
ここの空気もシャリオンに慣れてくれたからなのか柔らかくなったのを感じながらクロエ達を引き連れて中を見回る。
例の件でこの中の規則を守っていない者がいないか、目を光らせているのだ。
それは、この恥ずかしい格好をするのを我慢してでもやる必要がある事だ。
アシュリーが注意した者達だけが、おかしな空気を作っているわけではないはずだが見つからない。
それに、姿を消すって・・・どう言う意味なんだろう
他人を虐げる事で自分が上だと錯覚する様な人間ならば、急に消えると言うのがよくわからない。
ここによく来ると言う貴族の女性に尋ねるも、相変わらず夜会にも現れない様だ。
結婚し家に入ると共に以前の様に、夜会にでなくなることもあるだろうが。
ライの教えてくれる情報を待つしかないか・・・
そんなことを思いつつも、クロエ達に連れられるまま従業員が多く集まる部屋にたどり着いた。
第二のリジェネ・フローラルをハイシアに作ることが決まり、前回は中のデザインを検討するためにあちこち回っていたが、今回はここを回してくれる従業員達の意見を聞くために訪れたのだ。
より良いサービスをするためには皆に気持ちよく働いて貰いたいからだ。
ちなみここに男性もいるエリアである。
皆はシャリオンに気付くなり手を止め一斉に会釈をする。
「シャリオン様がみえたぞ」
その声に他の人間もこちらを見たが中には驚いている人間もいた。
先日すでに知らせてはいたがやはり目の前にすると驚く者だろう。
女性の格好で変わらずしてくれる事に頬が熱くなった。
「変なものを見せてごめん。
男の僕がこんな格好して・・・気分を悪くさせてると思うけど・・・」
「「「・・・」」」
恥ずかしさのあまり目を潤ませながらそんな風に言うシャリオンに、ここに居合わせた老若男女全員が見惚れていて、同時に自分の容姿が理解がない自分の領主が心配になった。
それと同時に邪な感情は一旦蓋を閉め、守らねば!と一致団結する。
「いいえ。それより本日はどのようなご用件で?」
それはここの従業員達に指示を出すチーフがこちらに近寄ってきた。
「この前の続きで、ここを見に来たんだ」
「なるほど。フロアーは2人がいるなら大丈夫でしょうがご入用があればお声かけ下さい」
「今日はフロアーではなくみんなが働くここを見に来たんだ」
「バックヤードを・・・?」
「うん。勿論こっちもそれを取り入れるつもりだよ?
ここもよくしたいんだ」
「それは、ありがたいです」
自分よりも一回りも幼いシャリオンだが嬉しそうに微笑むチーフ。
「あと、僕は不埒な事はしないから、安心してね」
「それは勿論」
ここには各家に出入りをしている使用人達も、利用してい人間にガリウスのシャリオンへの溺愛っぷりは有名な話であり、またそのシャリオンもガリウスを愛しているというのは、良く聞く話である。
それに、シャリオンの人相からはそんなことをしそうにはとても思えない。
思わず笑ってしまいそうになってしまうチーフだったが、年の功と言うべきか自領の領主がそんなことをいっても笑ったりはしなかった。
「僕の見張りとして2人もいるんだ」
そう言ってシャリオンがクロエ達を見せれば、一同が慌て始める。
「!お2人は護衛では無いのですか?!そう言えばゾル様はいらっしゃらないのですかっ」
「彼女達は護衛だよ。
けどここはか弱い女性が多いんだよ?
僕が可笑しな真似をしないか皆不安でしょう。
だから、僕の監視係でもあるんだ。
そんな危ない事はないと思うんだけど、ゾルもついくれてるよ」
「「シャリオン様は私達がお守りします」」
そう両サイドから歳下の女性にそう言われるのは複雑だ。
「今日は領主じゃなくて町娘だから、あんまり敬まらないで」
「シャリオン様。それは難しいと思いますよ」
「ふふふ」
女性の格好をしているのが恥ずかしくそんな事を言うシャリオンに、クロエは苦笑を浮かべソフィアは微笑んだ。
チーフは断ってから下がるととある人物に声を掛けた。
体格のいい男性は相談を受けるとコクリと頷いた。
そしてシャリオンの元に来てくれた。
どうやらチーフ自身が付いてくれるそうだ。
それからここに長く働いているという女性を引き連れて裏方の導線を確認し合った。
★★★
色々な話が聞けてシャリオンはほくほくとした気持ちで、ソフィアにメモを取らせた。
それを形にするのはジャスミンの仕事だ。
あれやこれを言いながら決まっていくことをに嬉しくなっていく。
家に帰ったら改めて屋敷の裏側も聞いてみようと思った。
そう思うくらい裏方が重要だと気が付いたのだ。
中を案内してくれた皆にお礼を言って別れた後、次はテラスの方に向かおうとした時だ。
不意に、エリザベト・ヴレットブラード侯爵令嬢と、フィロメナ・ユングストレーム伯爵令嬢に声を掛けられた。
「「ごきげんよう」」
「ごきげんよう」
先日ぶつかってしまい長く引き留められてしまい、咄嗟に逃げ出したくなるが無視はできない。
略式で簡単に対応し擦れ違後おうとしたのだが、腕を掴まれてしまった。
「ユーリア。まって。この後お時間ある?」
先日お茶をしてからすっかり懐かれてしまったらしい。
しかし、シャリオンは今日も暇ではない。
この間付き合ったのはぶつかってしまい怪我(?)をさせてしまった為に、彼女のお願いを聞いてお茶を5杯も飲むまで返してもらえなかったが、今日もそんな事を出来るわけがない。
「ごめなさい。きょu」
「貴女に傷付けられた腕が痛むの・・・」
そう言われると弱い。
言葉を詰まらせたのだが、心の中でゾルの声が響く。
『以前は足だ』
だから下手に出る必要が無いと言いたいのだろう。
ならば、すぐ様話を終わらせておきたくて自分の魔法を思い出した。
「治しましょうか?」
状態異常回復しか出来なかった『ヒーリング・ケア』が、流血以外の治療をする事が出来る様になった。
しかし、易々とそんな発言するのは良くなかったのかクロエが訂正する。
「貴女が?」
「ユーリア様。専任の方を派遣致しましょう」
「お話に割り込むなんて不躾ではなくって?」
遮ったクロエに一瞥をするエリザベト。
途端に見たことが無い程の冷たい視線に息をのんだ。
明らかに自分よりも幼い娘と、年下の女性たちのやり取りにシャリオンは一瞬怖気づいてしまう。
「クロエ・・・。
あれからしばらく経つのに治らないなら、ヴレットブラード家に派遣致しましょう」
そう言うとこエリザベトはころりと笑顔になりシャリオンの方に一歩近づいた。
「私はここでは家の話をしていないの。
皆が気にするでしょう?」
それはリジェネ・フローラルのルールでもあり、それを守ろうとしてくれるエリザベト達。
最初は強引だと思っていたわけだが、悪い人ではないのかもしれない。
「ごめんなさい。隠していたのに出してしまって。
貴女のこと家の者から聞いていたのです」
素直に謝罪をすればにこやかに笑みを浮かべてくるフィロメナ。
「まぁまぁ。・・・彼女は心が広いので大丈夫ですわ」
「勿論怒ってはないわ。
でも、そうね。
私貴女ともっと仲良くなりたいの。どこの夜会でも貴女を見たことないわ。
・・・とてもそっくりな人を知っているけれど」
「だから、出られないのあります」
「てっきり、前公爵の伴侶であるシャーリー様の生家の方かと思いましたわ」
やはりそう考えるだろう。
しかし、シャーリーの生家の事は説明できない。
伯爵家である事以外はほとんど知られていないだろう。
「違います」
「どこの家の方なのでしょう」
「私も家の事は話をしていなのです。
貴族ではないかも知れません」
「ふふふっ・・・貴女面白いわ。是非もっと親しくなりたい」
その言葉には明確には返事を返さなかった。
困っていることもあるのだが。
するとクロエが助け舟を出してくれた。
「ユーリア様」
「えぇ。こn」
「貴女、このリジェネ・フローラルに従者を従えてるの?」
「え」
クロエ達の振る舞いは確かに従者に見られても仕方がない様に思えてきた。
すると2人が違うと否定してくれる。
「いいえ」
「ユーリア様とはお友達よ。
私達が以前助けてもらったことがあるから、少し態度に出ているのかも知れないわ。
でも貴女に関係あるかしら?」
「そ、ソフィア」
クロエと比べておっとりとした雰囲気のソフィアが煽る様な事を言うとは思わなかった。
「そうね。不躾に尋ねすぎたわ。
でも貴女『ユーリ』とも親しいのね」
「そうね」
ユーリはアシュリーが忍び込んだ時の名前だ。
わざわざシャリオンに聞かせるのは、気付いているのかと緊張してしまう。
「不躾だなんて思っていないわね」
ソフィアがクスクスと笑うも、エリザベトもフィロメナもにこやかに笑みを浮かべながら答えなかった。
こ・・・こわい
『大丈夫だ。傍に居ろ。あまりにも怖いならあの男の事でも考えていればいい。
後はクロエとソフィアがどうにかしてくれる』
『そんな・・・僕態度に出ている?
いや、そうじゃなくて・・・。
皆ニコニコと笑顔を浮かべているのに、なんか棘があるような言い方をしているから・・・』
『貴族なんてこんなものだ』
『上辺だけの会話というのはそうだけど、こんな風なのは無いよ』
『それはシャリオンが「次期公爵」だったからだ。・・・良いから気にせずに適当に切り上げて平気だ』
女性同士のあからさまなやり取りを目の当たりにして怯えてしまう。
「ユーリ様の事も教えることは無いわ」
そういうクロエにエリザベトはニコリと笑みを浮かべる。
「彼女どこの令嬢なのかしら。
大方想像できるけれど、ちょっと勘違いしてるわ」
「勘違い?」
シャリオンが訊ねればエリザベトは勿体ぶりながら含んだ笑みを浮かべた。
「あの娘のせいで気後れしてしまった人がここに来なくなってしまったの」
「貴女・・・ご存知ないかしら?」
フィロメナがクロエに視線を向けるも首を横に振った。
前回アシュリーが一緒に回ったからだろう。
あの日目立っていたのは確かで、高圧的に見える場面もあった様に思える。
だが、あれは不真面目なメイドがいたからだ。
そう言えれば良いのだが、侯爵家と伯爵家の令嬢に言うわけにはいかず弁明をしなかった。
そんな2人に言えば、彼女達が注意してしまうという事もあり得ないわけではない。
あの日駆け出して行った彼女達を誰か知らないが、エリザベト達は解るだろう。
しかし、アシュリーが大事にしないと言ったのだ。
例の件でメイドが真面目になればそれでいい。
「悪いけれどここ以外で会う事はないわ」
「もし、次来たら貴女が話したいと言っている事を伝えてからおくわ」
クロエ達はそう答えながら視線で合図を送ってくる。
相手は話したげな様にみえるが長居はしない様にと言う事らしい。するとエリザベトがクスリと笑った。
「今日は本当に急いでいる様ね。
私も痛むからもう帰るわ」
「まぁまぁ。可哀想なベティ」
「・・・。なら、この後にお屋敷へ手配しても?」
「えぇ。お願い」
「絶対よ?」
「えぇ」
念を押して言われてしまい、シャリオンは頷くしかなかった。
侯爵ともなれば自分の所で治療士を呼べるだろうに。
不思議に思いながらもシャリオンは庭園の奥へと進んでいった。
姿が見えなくなったところで、クロエは周りを警戒しながら先ほどのことを注意してくれる。
「例の『おまじないの件』口にしては駄目です」
「あれ?僕が魔法を使えるようになったのを聞いているの?」
「団長から聞いてます」
「そうなんだ。へぇ・・・アリアの統括力と情報網は凄いなぁ。
でも何故駄目のなの・・・?」
そのアリアにさえ話していないのだから当然である。
きょとんとして隣をソフィアに訊ねれば少し悩んだ。
「今夜尋ねてみては如何でしょうか?」
『誰に』と言われずとも解って、シャリオンはコクリと頷いた。
「ユーリア様」
「ん?」
「・・・いいえ」
「ユーリア様」
「ん??」
今度はクロエに呼ばれて振り返る。
真剣な眼差しでこちらをみてくる。
「私達から絶対に離れないで下さいね」
「心配性だな~。うん。わかってるよ」
2人が警戒をしているのがわかるが、努めて明るく振る舞った。
★★★
王都にあるハイシアの屋敷。
戻った後は執務室で業務をこなす。
ガリウスの名案で土地の問題がクリアーになって忙しくなった。
ジャスミンに話すと『なるほどね!思いつかなかったわ。でもそうすると色々変わってくるわね。・・・4日・・・いえ、2日頂戴!考え直すわっ』と張り切って帰っていった。
なお、馬車屋のジョージに関して少し考えたいと言われている。
あの時の案内人であったゴードンも少し渋い表情をしながらも『説得をしているから、見捨てないでやって下さい』と、言われてしまった。
見捨てるもなにも売らないと言っているのはジョージであるのだが。
しかし、それを言ってもどうしようもない。
案内人にはそう言いながらも、最悪別なところの準備も進めてくれているが、あそこほど立地のいい場所はなく、メリットを提案していることもあるが、あの馬達の為にも馬車屋にはいい返事を貰いたい。
そんなことを考えながら、思い出したことに顔をあげた。
「あー・・・それと、あれも手配しておかないと」
「「「・・・」」」
ふと視線に気が付き視線を上げると眉間に皺を寄せているゾルとクロエ、そして心配気に見下ろしてくるソフィアだ。
「どうかした?」
きょとんと見上げているとクロエが手元の書類を手に取った。
「こちらは私が対応しておきますわ」
「え」
「おい」
ゾルが厳しい声で止めるがクロエはフンとあしらった。
「今日から私シャリオン様の部下にさせていただけますか」
「え?」
「ふふふ。クロエったら・・・でもそれは許してくれるかしら」
「シャリオン様からお許しがいただければそれですみますわ」
「それで済めばいいのだけれど。・・・、でもなら私もなろうかしら」
「おい。勝手に話を進めるんじゃない」
ゾルが苛立ったようにクロエが持った書類を奪い返そうとするが、クロエはそれを離さなかった。
それどころか、キッとゾルを睨む。
「甘やかしていてはシャリオン様はこのままでは死んでしまうわ!」
「死んでって・・・そんなことは無いけど」
「いいえ!倒れてからでは遅いのです。
そもそもシャリオン様、ゾル様から言われていないのですか」
「えーっと」
クロエの猛攻にシャリオンはたじたじと視線を逸らした。
怖いからではなく、耳が痛いからだ。
「ゾルは・・・言ってくれているよ?」
そう言うとクロエがなぜかゾルを見上げる。
その視線は『ほらいわんこっちゃない』と、言った様子でため息を吐きながらも、書類を引っこ抜いた。
「そういう訳ですから。
大丈夫です。安心してください。勝手に決定だとかしません。
私達はあくまでも決定を煽ぐまでで各方面の事情を聴いてきたりするだけです。
信用が置けないならウルフ家の方を付けて頂いても構いません」
「クロエ・・・ありがとう。それは助かる。
けど、見張りというよりも1人で動かすのが心配だな」
そう言ってゾルを見上げれば小さくため息を吐いた。
「俺がやると言っても最小限しかやらせてくれなかったのにな」
「え」
何故だか拗ねたような言葉にシャリオンが見上げると不機嫌そうだ。
「・・・ごめん」
「別に良い。けど、俺も減らしたかったから、クロエ達の行動は助かるのは事実だ」
「ゾル様は言い方が優しすぎるのです。
ウルフ家の宿命かなんだか知りませんが、これくらい強引取り上げ・・・いえ。仕事を引き受けないとシャリオン様は潰れてしまいます。
なので、今後こういうことがあったら私を呼んでください。
ゾル様の後ろから張り付いていますけれど、遠慮なく仕事を奪っ・・・引き受けますので」
ところどころ本音?のような強い言葉に苦笑を浮かべた。
そんな風にさせているのは、やっぱりシャリオンの所為である。
「僕は・・・恵まれているな・・・ありがとう」
「シャリオン様。そうではなくてですね」
「無駄だ。・・・それは頼む。・・・あと、これとこれもだ」
ゾルは流石解っているのか何束か拾い上げると、クロエに渡した。
「シャリオン様?私もいただけませんか?」
「ソフィアはだめ」
「!・・・何故です?」
「家の事が出来なくなるでしょう?」
「しかし」
「家がなくなってしまったら、もしヘインズの刑が軽くなり戻ってこれることになったのに、戻る場所がなくなっていたらどうするの」
「っ・・・」
「あの人にもう何も感じないというのなら良いけれど」
そう言うとソフィアは視線を落とした。
元は攫われてカスト・ヘインズの元に買われたのだが解放された直後には情があったというのも聞いて居る。
「・・・でも、・・・。・・・私もシャリオン様のお力になりたいです」
「ソフィア・・・」
「私を助けて下さり、再びクロエと引き合わせて下さったのはシャリオン様です。
その恩人の手助けをしたいと思うのは間違っていますでしょうか」
「間違ってはいない。間違っていないけれど、ではじゃぁヘインズはどうするの?
男爵家を守るのにヘインズの者はソフィアしか今いないでしょう」
「ですが、私は所詮あの家の人間ではありません」
「あの家の人間だよ。結婚とはそう言うものだよ。
ガリウスも結婚してハイシアになった。
それをどうこういう人もいるけれどそんなの関係ない」
「私とガリウス様は違います」
「違わない。カストが戻ってくる家を守れるのはヘインズの血じゃない。
ソフィアだけだ」
「っ・・・・」
「でも、こうして僕やアシュリーの手伝いをしてくれるのは本当に助かっている。
・・・だから・・・たまには手伝ってくれると嬉しい」
「!」
そう言うとパッと顔を上げるソフィア。
「ソフィアがしっかりしないと、カストだってヘインズ家で仕事をしている人間だって露頭に迷う事になるんだ」
「っ・・・私・・・家の事もっとちゃんとします」
「うん」
その真剣な眼差しにシャリオンは微笑んだ。
ソフィアはこれまで家の者にすべてを任せていた。
一応可否を尋ねられることはあったが、すべて許可を出していた。
それは自分が孤児であることや、売られたこともあり、いきなり男爵夫人にされた事に引け目を感じていた。
まだ、カストがいたころは皆の思考が分かったのだが、いなくなってしまいどうしていいかわからなかったのである。今そのパイプ役をしているのはクロエではあるが、これからソフィアが考えなおしシャリオンの振る舞いを見ならないながら、ヘインズ家を盛りなおしていくのは別の物語である。
シャリオンに許可を貰えたソフィアは嬉しそうに頷いた。
そして、パラパラと書類をめくり、一つの書類を取り出した。
「シャリオン様・・・これ」
「ん?あぁワインだね。うちはワイナリーが少ないんだ。
もうすぐハイシアで豊穣祭を行う予定なのだけれど、それが足りなくて」
「こちら我が家にお任せいただけませんか」
「うん。いいよ」
「!迷わないのですか」
「まぁソフィアだからね。正式にヘインズから贈られたものとして扱おうか」
「っ・・・ありがとうございます」
「そんな畏まらないで。で、という事は殆どお任せしていいという事だよね」
「はい!あと、こちらも」
そう言うと今度は家の事とは関係ない仕事もあげていく。
どちらが本音かわからないがシャリオンはどちらにしても助かることで喜んで返事をした。
それからクロエとソフィアは、その書類を持っていくと来客用のソファーに掛けながらあれこれやりだしたのをみていた。
やることが少し減ったのを見てホッとしながら思わずつぶやいた。
「そっか・・・こうやってゾルにもお願いをすればよかったんだね」
これまであまりにも仕事を無理しすぎるとゾルに仕事を取り上げられていたが、基本的にはゾルはシャリオンに言われたことを行う。
それはゾルが動かないわけではなく、シャリオンのやりたいようにさせてくれているのだ。
現に期限に近い物は上の方に置かれているし、それとなく関連する資料は準備されている。
「ゾルが良くしてくれているのは解っていたから、これ以上任せたら駄目だと思ったんだ」
「自覚が無いようだから言っておくが、お前が今からしようとしていることはそれなりに大きな事になるだろう。
だからその自分だけで片付けようとする癖を改めた方が良い」
「そ・・・そうだね」
「もっと、俺を使え。ガリウスを頼れ。あとジャスミンと専属契約の見直しをするべきだ」
「ん?」
ガリウスのぞんざいな扱いもだかジャスミンの専属契約に首をかしげる。
「ジャスミン?」
「・・・、・・・いやこれは俺が言い過ぎた」
「ん??」
良くわからなくて首を傾げたのだが、そんなときに思ってもみない知らせが来た
★★★
ガリウスがいるときしか着替えが出来ないとしたのが功を奏した。
あれが無ければとっくに着替えていたところだと言えば、ヴレットブラード侯爵家に向かう馬車の中でゾルに思い切り呆れられた。
「答える必要はなかったんじゃないか」
「そうです」
「追い返してきたならそうでしょう」
むっすりとして、クロエとソフィアも答える。
あれからシャリオンの執務室で仕事をしていると、リジェネ・フローラル経由でヴレットブラード侯爵家から電報が届いた。
怪我の治療士を手配したのだが、当の本人をよこす様にというものだった。
まぁそんな棘のあるものではないが、まぁ言いたいことをようやくすればそんな意味だ。
当然断りたくもあったが、リジェネ・フローラルに言って来たという事で無視は出来なかった。
「シャリオン様。けして私から離れないで下さいね」
「うん」
「彼女が家格を出してリジェネ・フローラルを脅してきても従っては駄目ですよ」
「解っているよ」
心配げな2人からの言葉にシャリオンは苦笑をした。
正面のゾルは顰め面だ。
「影武者を何故使わないんだ」
「まぁそれも良いのだけれど。相手の真意が知りたくてね」
「だが」
「僕が無理を出来るのはゾルのお陰」
「だが、俺達は安全なところに居てもらいたいのだがな」
「ヴレットブラード侯爵家が危険な場所かどうかなんてわからないでしょう?」
「お前は・・・どこで攫われたのかもう覚えていないのか」
「そうです」
ゾルとクロエの怒り顔にシャリオンは苦笑を浮かべた。
ちなみにガリウスにはもう報告済みだ。
ヴレットブラード侯爵家の令嬢と何があったかはまだ言っては無いが、今回の件は怪訝に思ったようだった。
そうこうしているうちに館にたどりついた。
侯爵というだけありかなり大きい豪邸だった。
ここからゾルは再び陰になり、代わりにシャリオンの隣にはクロエ達が付いた。
別馬車で着ていた治療士と合流をしヴレットブラード侯爵家にたどりつくと、使用人に案内されてサロンへと連れて来られた。
なんだかそわそわする気配にシャリオンは辺りを見回すがよくわからなかった。
すると、しばらくしてエリザベトが現れた。
「両サイドの使用人の方々は控えて下さる?あとそちらの方も」
「こちらは治療士の方です。それとクロエとソフィアは同席させます」
そういうとエリザべトはこちらを見てくる。
あの場所から出ても態度が変わらないシャリオンに少々驚いたようだ。
「貴女は利口な人だと思ったのだけれど」
「お怪我を診て頂けますか?」
そんなことを言うエリザベトには構わずに、連れてきた治療士に指示を出す。
「勝手に私に触れたら叫びますわよ?」
「・・・、」
治療士はそう言われると、シャリオンの方へとみてくる。
その様子に困りながらも頷くしか出来なかった。
「治療が必要ではないのなら私は帰らせていただきます」
「ならリジェネ・フローラルで大けがをしたと父上に言いますわ」
「どうぞ」
「貴女のお家なくなってしまうかもしれませんわ。
それに公爵家にも迷惑が掛かるんじゃなくって?」
その視線は重圧を感じる視線を帯びていた。
なんだか人をおもちゃの様に思っている振る舞いは、楽しいものではなかった。
しかしこれしきのことは飲み込んだ。
それにシャリオン自身にこんなことを言ってくる相手は初めてで新鮮だった。
「そう言う事をリジェネ・フローラルでもなさっているのですか?」
「私はどこでも私よ。なぜあの中だからと言って畏まらなければならないの?」
「あの中の規則です。
・・・貴女はそれが解っている様に感じたけれど」
「勿論解っているわ。貴女はそういう人間だと思ったから」
「?・・・どういう意味」
そう尋ねるとクスクスと笑った。
「貴女がこれから出来ることは2つよ。
その3人を追いだして私と2人きりでお話ししましょう」
「手当は」
その答えは返してくれなかった。
ハッキリ言って面倒だ。
もう帰ってしまいたいところだ。
しかし、相手の目的が良くわからなくて不気味だ。
シャリオンはクロエとソフィアを見ると、2人とも首を振るのだが仕方がない。
「2人は先生をお送りして」
「「!」」
「私は大丈夫です。後で屋敷に帰るわ」
「ですがっ」
「私がここに来たことは、2人が証明してくれるでしょう?」
「っ・・・」
その目には「何かあってからでは遅いのです!」と書いてあるようだったが、シャリオンは気づかないふりで2人に帰りを促した。
とても不服そうだったが2人は部屋か退出していくと、すとんとシャリオンの隣に掛けてくるエリザベト。
女性同士だと思っているからなのかやたら距離が近く、シャリオンはエリザベトの肩を押し返した。
「あの、・・・近いわ」
「少し・・・調教が必要かしら」
「え?」
そう言うとシャリオンの腕を掴み引き寄せられそうになった瞬間に、宙から手が伸びてきたかと思うと引き寄せられた。
全身が黒い影に覆われた存在にエリザベトは小さく悲鳴を上げて退いた。
シャリオンもそれに驚いたが、この存在が誰かわかった。
「あなた!一体何なのっ誰か!誰か!!」
エリザベトがそう叫ぶとドアが勢い良く開くがその時にはすでにその陰は消えており、むしろシャリオンを押し倒しているのはエリザベトで衛兵たちは困惑したような様子だった。
しかし、エリザベトは叫んだ。
「この屋敷に魔物がいるわ!」
「え」
「至急探し出しなさい!あれは間違いないわっ」
騒然とし始める雰囲気にシャリオンはこっそりと抜けだそうと試みるもがっしりと手首を掴まれた。
その表情は真剣そのもので顔色が少し悪く見えた。
「危ないわ」
「・・・」
先ほどの傲慢さは感じずにシャリオンは困惑した。
なんだか怯えているようにも見えた。
「大丈夫。何も怖くはないわ」
「・・・、」
「ここには貴女のお屋敷の兵士の方がいるのだから。ね?」
その言葉に衛兵達は誇らしげにしながらも頷いた。
「お2人はどうぞ安全なお部屋に!」
「ありがとう。エリザベト様は少し困惑していらっしゃるようだから、誰か」
「不要よ。私の傍にはユーリアがいるもの。そうでしょう?」
「え」
そんなことを言うエリザベトに困惑した様子のシャリオン。
しかし、衛兵や使用人たちまでもがこちらに願うようなそんな態度にシャリオンが無碍に断ることは出来なかった。
★★★
エリザベトの私室に連れていかれてしまった。
未婚の女性の部屋に入る事に抵抗をしたのだが、ここが安全と言われてしまえば抗う事は出来なかった。
エリザベトの部屋の壁は大きなカーテンがひかれているのが印象的で、あとは普通の部屋に感じる。
独特な香に目を顰めたが、我慢しながら入る。
先ほど陰におびえていた様子のエリザべトはもうおらず、余程ここが安全な部屋なのだろうと思った。
それから2人でお茶を飲んでいたのだが、不意に視線を感じてそちらを見るがあの壁一面にひかれたカーテンである。
「?」
「貴女は見た目によらず危険な事に巻き込まれることが多いのね」
「え?」
「このお茶毒が入っているの」
「なっ」
「嘘よ。・・・少し眠くなるだけ」
「!!」
「こないだのお茶にも仕込んでおいたのに、貴女全然寝ないのだもの」
「私には・・・そう言うのは効かないわ」
心底魔法の練習をしていてよかったとホッとした。
「何故そんなことをしようと思ったの」
「そうね。教えたら私の願いをかなえてくれる?」
何故対価を求めるのか不愉快にも感じたが仕方がない。
「ものによるわ」
「私、貴女が気に入ってしまったの。
貴女が欲しいわ」
「・・・それは無理だわ」
「そう・・・そう言うところも面白いわ。そういう人周りにいないもの」
「貴女の周りには沢山人がいるじゃない」
「あら。あれはいるだけよ。『侯爵』に群がっているだけ」
「・・・、」
その気持ちは少しわかった。
だが続いた物騒な言葉に体が固まった。
「私を楽しませるために親は私に娘は息子を差し出してくれるのよ」
「え・・・」
「ただの人形が手に入ってもつまらないだけ。後片付けをしてもあとからわいてくるし、困ってしまうわ」
「あと・・・かたづけ?」
「えぇ」
「どういう・・・こと?」
「そのままの意味よ」
これが別の意味に聞こえるならなんて思わせぶりな言葉なのだろう。
だが、そうは思えなかった。
先ほどからかすかに聞こえる物音がやたら耳に届いた。
「リジェネ・フローラルで・・・人が消えるという話を・・・聞いたのだけれど」
「それは怖い話ね。・・・でも1人だけは何故消えてしまったのかしらね」
「1人・・・?」
「アイリーンて娘がいたのだけれど」
「!!!」
「あら知っているの?」
驚いた様子にそんな風に言うエリザベト。
「あの子、ルーク様の側室になろうとして断られたのよ」
正確にはその親だ。
しかし、その次の瞬間歪な笑みを浮かべられた。
「ほんとっ!やれって言ったら本当にするんだもの!」
「っ・・・あれ・・・貴女が指示をしたというの」
そういうと、恍惚に喜んでいた瞳がぎろりと此方を向いた。
「貴女。あれを見ていたの?」
「・・・、」
「ねぇ・・・あの会場にいたの?ねぇ」
「っ・・・居たからと言って何だっていうんだ。
そんな事より、君は自分が何をしたのか解っているのか」
「解っているわ。だって煩かったの。
あれをするな。これをするなって。私に指示をしてくるの。
私の力が無ければ生きていけないというのに」
嘲嗤それに信じられないようなものを見る目で見てしまう。
シャリオンと比べたら10歳は違うだろうか。
アリアと同じ年頃の娘が、こんなにねじ曲がった考え方することに恐怖を感じた。
あのアイリスと親しかったわけではない。
数度見かけただけの人物なのだが、こんないう人物に引いてみてしまう。
「何故指示をしてきたの」
「忘れたわ」
「・・・、」
「本当に些細な事よ。大声で話すなとか。場所を考えろだとか」
それだけを聞くと何も間違えているようには聞こえなかった。
面倒見係が疎ましかっただけなのだろうか。
だとしても、男爵家の娘にあんなことをさせるのは愉快な話ではない。
「聞かれたからと言って何だって言うの?
私に逆らえる人間なんていないわ。
例え子猿が女王になったとしても、私に勝てるわけがないわ!」
「・・・。」
その言葉を発した瞬間不愉快度が振り切った。
シャリオンはすくりと立ち上がった。
「気分が悪くなったから失礼するわ」
「手が痛むのだけれど」
「貴女が怪我したのは足でしょう」
「・・・。そうだったかしら。
でもどうでも良いの。貴女は帰さないわ」
そう言うと、エリザベトはテーブルに置かれていた小物入れを開けると、そこに入っていたキューブ状の物を回した。
その瞬間、カーテンがサーっと両サイドに開かれる。
鉄格子の向こうは暗い、と思うのと同時にこの部屋も暗くなる。
ずりずりと地面をずる音と、金属が開けられる音がして息を飲んだ。
急に暗くなった部屋に困惑と恐怖を感じている中、シャリオンの体は抱き上げられる。
「!」
その気配はゾルだった。
「しっかりつかまっていろ」
「っ」
その体にしがみつくと、自然と体が震えているのが分かった。
★★★
屋敷をですぐにワープリングを使った。
ハイシア家の屋敷にたどり着き見慣れた景色に包まれても不安と恐怖が帯びていた。
落ち着かなければと足を歩みだした時だった。
エントランスの扉が開かれ、そこに立っていたのはガリウスだ。
余裕がないその表情だったが、シャリオンを見るとシャリオンの体を抱き寄せられた。
「っ・・・心配・・・かけて」
「違うでしょう」
「っ・・・、・・・、・・・怖かった」
そう言うとより一層に体を抱きしめられる。
暫くその状態でいたのだがゾルに「部屋に戻られては」と言う言葉にふわりと抱き上げられた。
部屋につく頃には落ち着いてきたのだが、ガリウスはシャリオンを自分の膝の上にのせたまま慰めるようにシャリオンを甘やかす。
「僕・・・咄嗟に叫んでた?」
「悪いことではありません」
気付かないうちにガリウスに助けを求めていたのだろうかと尋ねれば、ガリウスは首を横に振った。
「ヴレットブラード侯爵家に行っていたのだけれど・・・そこの令嬢の部屋に得体の知れない物がいて・・・でも真っ暗闇で見えなくて・・・」
暗闇にされると今でも怖い。
あの時の恐怖が蘇るようで、がくがくと震えだす体。
落ち着いたはずなのに、初めて攫われたことがフラッシュバックする。
そんなシャリオンをガリウスを抱きしめてくれた。
「あんなこと・・・いや・・・なにを・・・される・・・の、だったの」
恐怖と心配を掛けまいとしようとするのにおかしな言葉になる。
「関係ありません。考えなくて良いことです。
ゾルが助けてくれたでしょう?」
「っ・・・ん・・・もう・・・本当に」
シャリオンの見えないところで、ガリウスはゾルに合図を送った。
話しは後にしてシャリオンを慰めることが先決だからだ。
そのままシャリオンの首の裏に手を置くと引き寄せられた。
そして口づけられる。
「ん・・・」
「大丈夫。あの家にもう2度と近づくことはありませんし、リジェネ・フローラルも表には出ない様にしましょう」
「・・・、・・・でも」
「やり掛けで去るのが後味が悪いのは解ります。
ですがシャリオンは公爵なのです。
ですからそちらばかりにリソースが掛かるのも本末転倒でしょう。
表舞台にはソフィアがいます。
ハイシアから直接氏名を受けさせて管理者として据え置くのです」
「っ・・・でも」
「大丈夫です。ハイシアの名がなくなることはありません。
あれは貴方の功績です」
「そんなことを気にしているのではなくて・・・!」
ガリウスはシャリオンが安心するように何度も『大丈夫』とつぶやく。
そして、憤るシャリオンに首を振った。
「それでは駄目なんです。シャリオンはそう言うのが嫌いなのは解っています。
しかし、シャリオンはあそこに行くべきではありませんが、あそこにハイシアの名前が残っていなければソフィアの名前がつぶれてしまいます」
「っ」
「ヘインズは加害者でもありますが被害者でもあるのです。
そしてその理由は妻を守る為という体裁もあります」
「っ・・・」
「だからあなたが後ろ盾で居ることはおかしくないのです」
「っ」
「シャリオン・・・・お願いです・・・・。私の為に・・・あそこには行かないで下さい」
「っ」
その言葉にシャリオンは頷くしか出来なかった。
シャリオンとて怖いことはしたくはない。
けれど根の真面目さでそれが出来なかっただけだ。
だが、最愛のガリウスの沈痛な面持ちは余程心配をかけていたのだろうと理解が出来る。
「あなたが行かなくなるからと言って責任を放棄するわけではありません。
リジェネ・フローラルにはソフィアが行くことになりますが、中の事は逐一あなたに報告してくれるでしょう」
「ソフィアの・・・家の事だってありのに」
「あそこで指揮をとることは彼女の経験になります。
それにハイシア家と交流があるというのが知れるのは良いことです」
その言葉にこくりと頷いた。
そろりと顔を上げるとホッとした様なガリウスの眼差しと視線が絡んだ。
再び引き寄せられ、ちゅちゅと口づけられる。
優しく甘やかす空気にシャリオンの心はゆっくりと落ち着いてくる。
「・・・もっと深いキスをしてもよろしいでしょうか」
あまりそんなことを聞いたりなどしないのに、尋ねるガリウスにこくりと頷いた。
「僕も・・・ガリウスに触れていたい」
嬉しそうに微笑むガリウスと口づけを再開する。
触れるようなキスは深くなり、シャリオンの思考をどんどん奪っていく。
いつもより早い帰宅に、仕事が終わったのか?とか聞きたいこともあるのだが、今触れ合うこの時間に酔ってしまう。
肌が触れ合うだけで伝わる熱に貪欲になっていく。
口付けだけでは物足りなくなって行き、視線で訴えるもガリウスは口づけばかりだ。
「・・・ガリィ・・・」
「どうかしましたか」
「っ・・・我慢・・・出来ない・・・もう、・・・痛いの」
ガリウスのキスで貞操帯の中はきつくてどうにかしてほしくなってくる。
「がりぃ・・・」
もう一度情けない声で呼べばクスリと笑った。
「スカートの裾を掴んでいて下さい」
「・・・ん」
その言葉に手繰り寄せると、黒い革をひと撫でする。
厚いそこどうなっているかは上からではわからないはずだが、熱は伝わっているようだ。
そしてガリウスは魔法と解くと一番上の革を外すと勢いよく立ち上がるシャリオンのモノに頬が熱くなった。
「とても辛そうです。・・・こんなに赤くなって」
ちゅこちゅこと扱きながら、シャリオンの事を覗き込んでくる。
根本のバンドは外されることはなく、それどころかシャリオンの胸についているニップルクリップを服の上から引っ張った。
「ぁぁっ」
痛いはずなのに、ガリウスにされると思うとたまらなかった。
腰は甘く揺れて、ガリウスのその指先に翻弄される。
2・3度その動きを楽しむと、上半身を脱がすために隠しボタンを外していく。
そしてさらけ出された胸を撫でた。
「っ」
「逃げないで下さい。・・・・しっかりと胸を張って。・・・・そう上手です」
そう言うとガリウスはシャリオンのモノを扱きながら、乳首を口に含んだ
「んぁぁっっ」
レロレロと舌先で嬲ったかと思うと、じゅぅっと音立ててしゃぶられて、扱かれる刺激もあって、あっと言う間に軽く逝ってしまうシャリオン。
なんて気持ちが良いのだろうか。
ふわふわとした思考の中で、絶頂の揺れていると耳元で囁かれる。
「シャリオン。・・・立ち上がって下さいませんか」
「?・・・ん」
「足を開いていて下さい」
肩幅程足を開くように言われて、そのまま従うとガリウスの手がシャリオンの後孔に向かう。
いつの間にか準備をしていたのか指先は滑っていてシャリオンの反応を楽しむようにその縦に伸びた穴をつるつると撫でた。
それを合図に引くつきだすシャリオン。
早く続きをして欲しいのにガリウスの指は中々シャリオンの期待に応えてくれない。
「っ・・・が・・・りぃ」
「どうしましたか?」
こんなみっともない格好でガリウスを求めているのに、そんな意地悪な反応をするガリウス。
「そこ・・・っ・・・さわって」
「触っていますよ?・・・私の指に吸い付いてきますね」
「っ・・・さわる・・・だけじゃなくてぇ」
「中・・・触って欲しかったのですね」
「っ・・・んっ・・・そ・・・なのぉっ」
無意識のうちにガリウスの指に合わせて腰を動かすシャリオンはとんでもなく淫らだった。
舌なめずりしたくなる気持ちを抑えながら、中指のをクンと突き入れて第一関節まで入れて取り出す。
それを数回繰り替えすとシャリオンは腰をくねらせながら落とした。
しかしそれで中に入るわけもなく・・・。
「ゃぁ・・・・っ・・・・っっ」
焦らすガリウスにほろりと涙が零れた。
「シャリオン・・・・泣かないで下さい」
「っ・・・っ」
「すみません。とてもこの感触が好きなんです」
いつかもそんなことを言っていたが、好きだと言われたら怒れなくなってしまうではないか。
そんなこと良いから早くして!とみていると漸く入ってくるガリウスの指。
「ぁっ・・・んっ・・・ぁぁっっ」
前立腺をコリコリと撫でるとシャリオンの体がはねた。
「逃げてはだめですよ。・・・ほら、ちゃんと私の指を感じて下さい」
「!!!んぁぁっ・・・あぁぁ・・・んっ」
せき止められた痛みと、与えられる快楽に頭がおかしくなりそうだ。
その指に何度も追いやられながら、ガリウスの指が三本入る頃にはすでにその指と同じ分空イキをさせられた。
脚はがくがくと震えているとちゅぽんと指が抜かれる。
「やだ!」と追いかけようとしたのだが、前を寛げ始めるガリウスに息を飲んだ。
「が・・・り」
「膝の上に載ってください」
「ん・・・」
出されたモノはガリウスの見た目に反してごついそれを見せつけなはら、またがったシャリオンの孔に自分のモノを擦りつける。
「はぁ・・・ん・・・」
「力を抜いてください」
期待のあまりきゅっとするシャリオンにそう言うガリウス。
徐々に入ってくるその男根にシャリオンは声をあげた。
「ひぃぁっ・・・んんっ・・・あ!・・・あぁぁっ」
逃げそうになる腰をしっかりと押さえつけながら、前立腺をごりごりと擦りつけるとシャリオンの口からはひっきりなしに喘ぎ声が漏れた。
気持ちよくて、痛くて・・・シャリオンはガリウスにしがみついた。
「っ・・・がりぃ・・・これっ・・・とってっ・・・とってぇ」
「抜いてしまっていいのですか?」
「ちがっ・・・ぺ・・・にす・・・のねもとの」
「すみません・・・忘れていました」
「っっ」
そういうとガリウスは本当だったのかすぐに外してくれた。
そして再び動き出すガリウスの腰。
シャリオンの細い腰を掴み、持てあますことなく蹂躙していく。
「んぁっ・・・はぁっ・・・んんっ・・・あぁあぁ」
パンパンとぶつかり合う肉の音。
もうシャリオンの目には不安は残っておらずただ快楽を求め動いた。
「がりぃっ・・・がりぃっ・・・いいっ・・・気持ちイイッ」
「っ・・・シャリオン」
核に魔力が流れ振動し始めるとたまらなかった。
ガリウスの上で乱れ感じるシャリオン。
「ぁっ・・んぅぅ・・・はぁぁぅぅぅ・・・く・・・いくっ」
「えぇ・・・。好きなだけ逝って下さい」
溜まらずにそんなことを漏らすシャリオンは大きく突かれると、耐えきれず一気に絶頂に向かうのだった。
記憶を飛ばす直前。
ガリウスの腕に抱かれながら、ホッと安心をする。
そう思いながら深い眠りに落ちていくのだった。
┬┬┬
いや。まだ23日。10時。
きっとそう。
設定集を見直して、ソフィアは子爵→男爵の勘違いでした。
準男爵でありません。
夜に掛けて強くなりそうな、そんな分厚い雲を纏う空。
だが、天気で予定が変更できるほど今日以降の日程にも時間の余裕は無い。
最近『お前は一人なんだぞ?』と優秀な側近からチクチクと言われることに気づかないようにしている今日この頃である。
そんな今日は早い時間にも関わらず王都のハイシア家の屋敷には来客予定がある。
少し相談したいと連絡を入れたら、どんな様かも聞かずにすぐさま来てくれると言う。
シャリオンの記憶では多忙な人間だと思うのだが、フットワークの軽さは感謝している。
待っている間に少しでも仕事を進めていると、ゾルに声を掛けられた。
「ライガー様が見えた様だ」
「ん?あぁ。うん。通してもらえる?」
立ち上がり準備を始めゾルに手渡されたローブに腕を通す。
足首まですっぽりと隠れるものだ。
この後の日程はのジェネ・フローラルに向かうのだが既に着替えている為だ。
ライガーが来るのは突然だったという理由はあまり関係がなく、ガリウスから着替えるのは自分のいるときにして欲しいとお願いされてしまった為だ。
最初は脱ぐときだけだったのだが・・・。
勿論理由も聞いて、納得は出来ないがガリウスのお願いに弱いシャリオンは無下に出来なかった。
それに女性の服を着ていたとしても、シャリオンの執務室は殆ど人がいない為仕事は進む。
暫くしてノック音の後に入室を許可すると、使用人に連れられてライガーがやって来た。
そのライガーは挨拶の途中にピタリと表情を固まらせながらも近寄って来た。
「リオ・・・化粧している?」
「え。あ。うん。
・・・変だよね、、ごめん」
ガリウスはシャリオンが照れるからかあまりそう言うことは言わない。だが気づかないわけがないか。
友人に見せたという事に途端に熱くなる頬。
「えっいや、変じゃないけど、なんでまた?
今までしなかったじゃないか」
目の前にまで来たライガーを見上げると頬が赤く、驚きサファイアの瞳が大きく開かれている。
なんだがいずらい。
「あー・・・うん」
濁したシャリオンに直ぐに勘づいたらしい。
「また無理してるのか」
呆れを含ませながらそう言うと、見つめられていた視線がすっと外される。
その態度にムッと拗ねた様にいい返す。
「無理はしてないよ」
ライガーは慣れた様子でソファーの方に向かうと掛けた。
先ほどまでの照れ交じりの視線は怒っているかのようだ。
「勿論、ガリウスは知ってるのかな?」
「うん」
「そうか」
ふぅ。と、ため息を吐きながらこちらを見てくるので、シャリオンもソファーに行くと向かい合わせに掛けた。
「そんな化粧をしてどこに行くんだ?・・・あっいや今のはその普段しないからであって」
前者は不満げに、だが途中でハッとして何故か途端にワタワタと慌てるライガーに怪訝そうに首を傾げつつ答えた。
気まずそうにしながらも、そこからすぐに態度はいつものライガーになった。
「リジェネ・フローラルだよ」
「あぁ。あそこか。最近シュリィがよく行っている」
「え?そうなの?・・・王城からもう1人でも行ってるんだ。
ちゃんとルーとアンジェには許可取ってるんだよね?」
「それは勿論。
あの2人はシュリィをかなり可愛がっているからな。
誰かさんに似てよく頭を突っ込むから困るとよく話してる」
険悪な2人だがアシュリーの事になると仲が良くなるらしい2人に安心をしつつも聞き捨てならない。
「そんな事は・・・ないと」
「リィンの話も聞いたぞ」
シャリオンは話していないというのに、なんでそんなに伝わるのが早いのだろう。
アシュリーにさえガリオンの事は話していない。
「あーいや・・・あれは・・・やりたいと言ってくれたというか・・・。
まぁ2人とも僕より利口に立ち回れる子になる気がするよ」
落ち着いて考えてもそう思う。
そんな親バカな発言をしていると呆れられてしまう。
「・・・ところで何故リオが女装する必要があるか?
あそこはハイシアの持ち物だろう」
「女性だけが利用できるようになってるからね」
「いや、だからハイシアの」
「僕が所有者としても規則は規則なのだから。
大々的に告知して見に行ったら見たいものが見れないでしょう?」
「・・・あの話は本当なのか」
「あの話って?」
「恥ずかしながら王城に努めるメイドの中に勤務態度が相応しくない者がいるという話だな」
シャリオンが知っているよりも、城で育ち時折泊っている様子のライガーが知らないわけがなかった。
聞くところによると、アシュリーの為に増員したメイド達だが何を勘違いしているのか、おかしな行動をしているそうだ。
「可笑しな行動?」
「彼女達はシュリィのメイドなのだからそれに集中してもらいたいのだが」
していないから、リジェネ・フローラルに着ているのだと解るのだが。
「リジェネ・フローラルの話をしているの・・・?」
「・・・まぁ・・・そんな話をしている人間もいるらしいが」
「??ほかに理由があるの?ライ。ここまで来たら言って」
回りくどく言い濁すライガーにシャリオンがそう尋ねればライガーは小さくため息を吐いた。
「城中の未婚・独身関係なく、・・・いや。男女関係なく優秀な人材に迫っているそうだ」
「ん?」
「俺に怒られても」
どうやら無意識に不機嫌そうにしてしまったらしい。
シャリオンは咳ばらいをして自分を落ち着けた。
「どうやら城に婿探しに来ているようだ」
呆れてしまうが、実際城で知り合って仲を深めた人もいるのだが。
「王族のライガーの耳に入るほどなんて。・・・ね」
「仕事もせずにそんな事ばかりをしている人に興味を示すわけがないんだがな」
ライガーはそう言うがシャリオンとしては微妙だった。
シャリオン自身も仕事をしていない人間が好きなわけではないのだが、婚期を気にする貴族達が手段を択ばないのを知っている。
「ルーは何か言っているの?」
「シュリィに止められている」
「え・・・?」
「実際、シュリィが動き始めて表面上では収まっているからな」
「そう」
「安心してほしい。シュリィはルーとアンジェにはしっかりと話している。
何があったか言うのがルーとしている約束だからな」
「そう・・・」
「大丈夫だ。シュリィが罰を望んでいない。
ルーは・・・いや。アンジェと2人でかなり怒っていたけど・・・逆にシュリィが宥めていたくらいだ」
「そうなんだ。・・・あの・・・ロザリアは・・・元気?」
先日、仕事中に手を止めさせてまで話をしていたというのに、勝手に理想を押し付けてしまった。
とても見えないが高齢の女性だと言うのを失念していた。
「元気だよ。昨日も城を闊歩していた。
・・・聞いたけど、リオが足を直したんだって?」
「僕は魔法の練習に付き合ってもらっただけだよ」
「ふーん。・・・まぁそれならいいけど」
「今の含んだ言い方、ルーそっくり」
クスクスと笑いながら言うと、ライガーはクスリと笑った。
「兄弟だからな。似ていて当然だ」
得意げに言うライガーに笑みを浮かべた。
それから思い出話を少しした後で、長く話している時間もなく本題に入った。
「それで今日呼んだ件だけれど」
「あぁ。なんだ?」
シャリオンのお願いに体を前に乗り出して尋ねてくるライガー。
「貴族の娘で最近結婚した令嬢が知りたいんだ」
「なんでそんな事聞くんだ」
理由を尋ねるのは当然だ。
こちらの要望だけが通るはずもなく、シャリオンは気まずそうに視線を逸らしながらも答えた。
「・・・実は以前はリジェネ・フローラルによく来ていたみたいなんだけれど、最近待ったく姿を見なくなってしまった人がいるという話があるんだ」
問題ある行動をしていたという事は伏せて言えば、ライガーのサファイアの瞳がジッとこちらを見てくる。
「心配するな。リオのお願いを断るわけがないだろう」
「!・・・ありがとう・・・!」
「一度帰って届けさせる形になるが」
「うんっ・・・本当にありがとう」
「これしきの事で容易いさ」
ふと、以前はシャリオン以上に詳しかったのを思い出していた。
「・・・。
リジェネ・フローラルに関連することだって解るけれど。
・・・本当に気を付けるんだぞ?
可憐な見た目が彼女達はその見た目なだけじゃない。
獰猛な女豹くらいに見て置いて安全だ」
「そんな大げさな・・・」
「大げさじゃない。・・・じゃぁ、俺は帰るから」
そう言うと、時刻は思ったより進んでいて、シャリオンはライガーを見送るのだった。
★★★
【別視点:ゾル】
シャリオンの執務室を出て門へと向かう。
ここからはワープリングでは飛べないからだ。
廊下を歩きながらライガーに話し掛けられた。
「リジェネ・フローラルに行くときは護衛は付いているのか?」
ハイシア家の事に通常なら答えはしない。
しかし、相手がライガーだからか、ゾルは間を置いた後に応えた。
「はい」
「君たちは?」
「当然ついています」
「そうか」
その言葉にホッとした様に息を吐くライガー。
ライガーのシャリオンへ抱く感情は複雑である。
それ故にこんな事になっているのだろう。
「それと」
「解っております」
「何がだ?」
「先ほどのシャリオン様への言動はガリウス様には報告しません」
「!・・・やっぱり・・・俺の発言はおかしかったか」
「はい。浮気を疑う男そのものでした」
そういうとライガーは小さくため息を吐いた。
「相手が・・・ガリウスなら別に何とも思わないんだが。
・・・他だと思うと小娘だとしても安心が出来ない。
あんな可愛いシャリオンを肉食獣の中に放り込んで本当に大丈夫なのか?
・・・君たちもいるし、ガリウスの事だから万全を期しているのだろうが」
「シャリオンの周りには赤蜘蛛達が控えています」
「アリアの?・・・そうか。
すっかり彼女達に助けられているな。・・・何かしてやれたら良いのだが」
「それは私ではなく、シャリオン様に相談されては如何でしょうか」
「それもそうだな。・・・、・・・もう爵位を与えても良いんじゃないのか」
そんなことを言うライガーにゾルは内心笑っていた。
ブルーノそっくりだからである。
ウルフ家にアルアディアの籍を与えたのは先々代の王である。
ブルーノは世話になっていハイシア家に対して何かしようと思い彼等を守るウルフ家に爵位を送るつもりでいた。
そして、今のライガーのセリフだ。
笑いたくもなるだろう。
ハイシア家は王家であるアルアディア家を支えている。
ブルーノにはレオンが、ルークにはガリウスが。
シャリオンはそんなルークとライガーの心の支えにもなっている。
大切なものに感謝したいという気持ちはわからないのでもないのだが。
「爵位を与えることで動きにくくなるという事もあります。
・・・彼女達に聞いてみないと解る事ではありませんが」
王命とならばそれも断ることは出来ない。
しかし、本当に喜ぶかどうかは聞くしかない。
「!・・・そうか・・・そうだな。
それに、家と称すには複雑だな」
「えぇ」
「・・・・。なら、こういうのはどうだろうか」
少々突拍子もない相談ごとにゾルは答える。
王族とは関係ない人間の意見を聞きたかったのだろう。
「(ガリウスがもっと話を聞いてやればいいんだ。
まったく。・・・あいつは頭が良いくせにシャリオン以外に適当すぎる)」
なんてそんなことを思うのだった。
★★★
それからシャリオンはリジェネ・フローラルの貴族達以外の者達が集まるフロアーに訪れていた。
フロアーの区別をつけたくなかったが、貴族達は高額の支援をしてくれる家もある。
それにジャスミンの部下でおるキャロルの様な人間を出さないためにも、立ち入り禁止とはしないが住み分けは必要であり、貴族が集まるフロアーはラグジュアリーフロアー。
平民があつまるフロアーを一般向けのフロアとした。
その一般フロアーにはすでにそれなりの女性が来ており驚いてしまう。
働かねば生きて行けぬが、外にいても中々仕事が取れない。
それでも昼間だというのに人で溢れている。
だが、シャリオンには外が女性にとって危険な場所なのかと思ってしまった。
これでも前王妃の女性保護団体のお陰で戸籍を持ち、家を借りれることが出来るようになったらしい。
王家や城に出入りしている者や目をつけられた人間からすれば、前王妃は生家も含めて厄介者であり存在を系譜から抹消するほどの人物だ。
しかし、一般人からすると女性の地位が向上したのは間違いない。
それが、父親であるファングスが先導し殆ど手をだしてなく、本人自身「女」をステータスだとし「王妃」なれる自分をあげ、ルーティへの嫌がらせだとしても、庶民の知らなことであり、若くして亡くなった王妃を憎む者はいない。
被害者の1人であるシャリオンも、アシュリーの親となった今、彼女のおかげと言えるところがいくつかあるのも事実である。
話がそれてしまった。
つまり、昔よりは少しずつ女性が外に出やすくなったというのに、こんなに人がいると言うのはそれ程職に困窮してるということ。早くどうにかせねばと思いながら、シャリオンは中に入っていく。
今日はアリアの部下であるクロエとソフィアを含めて数人を引き連れての来場だ。
ラーミア達との約束で読み書きを教えるために訪れる事数回。
以前は貴族のシャリオンをみて怯え気味だった女性達も、最近では逃げたり隠れたりせずに、漸くぎこちなくも挨拶してくれる様になった。
特に子供達は警戒心が低く、シャリオンを「お姫様!」と慕ってくれている。
ちなみに、その呼び名だけはやめてもらったのは言うまでもない。
「あ!ユーリア様!!」
「こんにちわー!」
「先生もこんには!」
シャリオン達に気付いた子供達が駆け寄ってきて、そんな子供達に微笑んだ。
「こんにちは。宿題はおわった?」
「はい!」
「そう。良かった。今日も先生を連れてきたから、勉強がんばってね」
「「はーい」」
キャッキャッと喜ぶ子供達。
その親達は慌てて駆け寄ってきながらも、苦笑いを浮かべて謝ってくるのを、気にしない様に言いながら奥へとすすんだ。
ここの空気もシャリオンに慣れてくれたからなのか柔らかくなったのを感じながらクロエ達を引き連れて中を見回る。
例の件でこの中の規則を守っていない者がいないか、目を光らせているのだ。
それは、この恥ずかしい格好をするのを我慢してでもやる必要がある事だ。
アシュリーが注意した者達だけが、おかしな空気を作っているわけではないはずだが見つからない。
それに、姿を消すって・・・どう言う意味なんだろう
他人を虐げる事で自分が上だと錯覚する様な人間ならば、急に消えると言うのがよくわからない。
ここによく来ると言う貴族の女性に尋ねるも、相変わらず夜会にも現れない様だ。
結婚し家に入ると共に以前の様に、夜会にでなくなることもあるだろうが。
ライの教えてくれる情報を待つしかないか・・・
そんなことを思いつつも、クロエ達に連れられるまま従業員が多く集まる部屋にたどり着いた。
第二のリジェネ・フローラルをハイシアに作ることが決まり、前回は中のデザインを検討するためにあちこち回っていたが、今回はここを回してくれる従業員達の意見を聞くために訪れたのだ。
より良いサービスをするためには皆に気持ちよく働いて貰いたいからだ。
ちなみここに男性もいるエリアである。
皆はシャリオンに気付くなり手を止め一斉に会釈をする。
「シャリオン様がみえたぞ」
その声に他の人間もこちらを見たが中には驚いている人間もいた。
先日すでに知らせてはいたがやはり目の前にすると驚く者だろう。
女性の格好で変わらずしてくれる事に頬が熱くなった。
「変なものを見せてごめん。
男の僕がこんな格好して・・・気分を悪くさせてると思うけど・・・」
「「「・・・」」」
恥ずかしさのあまり目を潤ませながらそんな風に言うシャリオンに、ここに居合わせた老若男女全員が見惚れていて、同時に自分の容姿が理解がない自分の領主が心配になった。
それと同時に邪な感情は一旦蓋を閉め、守らねば!と一致団結する。
「いいえ。それより本日はどのようなご用件で?」
それはここの従業員達に指示を出すチーフがこちらに近寄ってきた。
「この前の続きで、ここを見に来たんだ」
「なるほど。フロアーは2人がいるなら大丈夫でしょうがご入用があればお声かけ下さい」
「今日はフロアーではなくみんなが働くここを見に来たんだ」
「バックヤードを・・・?」
「うん。勿論こっちもそれを取り入れるつもりだよ?
ここもよくしたいんだ」
「それは、ありがたいです」
自分よりも一回りも幼いシャリオンだが嬉しそうに微笑むチーフ。
「あと、僕は不埒な事はしないから、安心してね」
「それは勿論」
ここには各家に出入りをしている使用人達も、利用してい人間にガリウスのシャリオンへの溺愛っぷりは有名な話であり、またそのシャリオンもガリウスを愛しているというのは、良く聞く話である。
それに、シャリオンの人相からはそんなことをしそうにはとても思えない。
思わず笑ってしまいそうになってしまうチーフだったが、年の功と言うべきか自領の領主がそんなことをいっても笑ったりはしなかった。
「僕の見張りとして2人もいるんだ」
そう言ってシャリオンがクロエ達を見せれば、一同が慌て始める。
「!お2人は護衛では無いのですか?!そう言えばゾル様はいらっしゃらないのですかっ」
「彼女達は護衛だよ。
けどここはか弱い女性が多いんだよ?
僕が可笑しな真似をしないか皆不安でしょう。
だから、僕の監視係でもあるんだ。
そんな危ない事はないと思うんだけど、ゾルもついくれてるよ」
「「シャリオン様は私達がお守りします」」
そう両サイドから歳下の女性にそう言われるのは複雑だ。
「今日は領主じゃなくて町娘だから、あんまり敬まらないで」
「シャリオン様。それは難しいと思いますよ」
「ふふふ」
女性の格好をしているのが恥ずかしくそんな事を言うシャリオンに、クロエは苦笑を浮かべソフィアは微笑んだ。
チーフは断ってから下がるととある人物に声を掛けた。
体格のいい男性は相談を受けるとコクリと頷いた。
そしてシャリオンの元に来てくれた。
どうやらチーフ自身が付いてくれるそうだ。
それからここに長く働いているという女性を引き連れて裏方の導線を確認し合った。
★★★
色々な話が聞けてシャリオンはほくほくとした気持ちで、ソフィアにメモを取らせた。
それを形にするのはジャスミンの仕事だ。
あれやこれを言いながら決まっていくことをに嬉しくなっていく。
家に帰ったら改めて屋敷の裏側も聞いてみようと思った。
そう思うくらい裏方が重要だと気が付いたのだ。
中を案内してくれた皆にお礼を言って別れた後、次はテラスの方に向かおうとした時だ。
不意に、エリザベト・ヴレットブラード侯爵令嬢と、フィロメナ・ユングストレーム伯爵令嬢に声を掛けられた。
「「ごきげんよう」」
「ごきげんよう」
先日ぶつかってしまい長く引き留められてしまい、咄嗟に逃げ出したくなるが無視はできない。
略式で簡単に対応し擦れ違後おうとしたのだが、腕を掴まれてしまった。
「ユーリア。まって。この後お時間ある?」
先日お茶をしてからすっかり懐かれてしまったらしい。
しかし、シャリオンは今日も暇ではない。
この間付き合ったのはぶつかってしまい怪我(?)をさせてしまった為に、彼女のお願いを聞いてお茶を5杯も飲むまで返してもらえなかったが、今日もそんな事を出来るわけがない。
「ごめなさい。きょu」
「貴女に傷付けられた腕が痛むの・・・」
そう言われると弱い。
言葉を詰まらせたのだが、心の中でゾルの声が響く。
『以前は足だ』
だから下手に出る必要が無いと言いたいのだろう。
ならば、すぐ様話を終わらせておきたくて自分の魔法を思い出した。
「治しましょうか?」
状態異常回復しか出来なかった『ヒーリング・ケア』が、流血以外の治療をする事が出来る様になった。
しかし、易々とそんな発言するのは良くなかったのかクロエが訂正する。
「貴女が?」
「ユーリア様。専任の方を派遣致しましょう」
「お話に割り込むなんて不躾ではなくって?」
遮ったクロエに一瞥をするエリザベト。
途端に見たことが無い程の冷たい視線に息をのんだ。
明らかに自分よりも幼い娘と、年下の女性たちのやり取りにシャリオンは一瞬怖気づいてしまう。
「クロエ・・・。
あれからしばらく経つのに治らないなら、ヴレットブラード家に派遣致しましょう」
そう言うとこエリザベトはころりと笑顔になりシャリオンの方に一歩近づいた。
「私はここでは家の話をしていないの。
皆が気にするでしょう?」
それはリジェネ・フローラルのルールでもあり、それを守ろうとしてくれるエリザベト達。
最初は強引だと思っていたわけだが、悪い人ではないのかもしれない。
「ごめんなさい。隠していたのに出してしまって。
貴女のこと家の者から聞いていたのです」
素直に謝罪をすればにこやかに笑みを浮かべてくるフィロメナ。
「まぁまぁ。・・・彼女は心が広いので大丈夫ですわ」
「勿論怒ってはないわ。
でも、そうね。
私貴女ともっと仲良くなりたいの。どこの夜会でも貴女を見たことないわ。
・・・とてもそっくりな人を知っているけれど」
「だから、出られないのあります」
「てっきり、前公爵の伴侶であるシャーリー様の生家の方かと思いましたわ」
やはりそう考えるだろう。
しかし、シャーリーの生家の事は説明できない。
伯爵家である事以外はほとんど知られていないだろう。
「違います」
「どこの家の方なのでしょう」
「私も家の事は話をしていなのです。
貴族ではないかも知れません」
「ふふふっ・・・貴女面白いわ。是非もっと親しくなりたい」
その言葉には明確には返事を返さなかった。
困っていることもあるのだが。
するとクロエが助け舟を出してくれた。
「ユーリア様」
「えぇ。こn」
「貴女、このリジェネ・フローラルに従者を従えてるの?」
「え」
クロエ達の振る舞いは確かに従者に見られても仕方がない様に思えてきた。
すると2人が違うと否定してくれる。
「いいえ」
「ユーリア様とはお友達よ。
私達が以前助けてもらったことがあるから、少し態度に出ているのかも知れないわ。
でも貴女に関係あるかしら?」
「そ、ソフィア」
クロエと比べておっとりとした雰囲気のソフィアが煽る様な事を言うとは思わなかった。
「そうね。不躾に尋ねすぎたわ。
でも貴女『ユーリ』とも親しいのね」
「そうね」
ユーリはアシュリーが忍び込んだ時の名前だ。
わざわざシャリオンに聞かせるのは、気付いているのかと緊張してしまう。
「不躾だなんて思っていないわね」
ソフィアがクスクスと笑うも、エリザベトもフィロメナもにこやかに笑みを浮かべながら答えなかった。
こ・・・こわい
『大丈夫だ。傍に居ろ。あまりにも怖いならあの男の事でも考えていればいい。
後はクロエとソフィアがどうにかしてくれる』
『そんな・・・僕態度に出ている?
いや、そうじゃなくて・・・。
皆ニコニコと笑顔を浮かべているのに、なんか棘があるような言い方をしているから・・・』
『貴族なんてこんなものだ』
『上辺だけの会話というのはそうだけど、こんな風なのは無いよ』
『それはシャリオンが「次期公爵」だったからだ。・・・良いから気にせずに適当に切り上げて平気だ』
女性同士のあからさまなやり取りを目の当たりにして怯えてしまう。
「ユーリ様の事も教えることは無いわ」
そういうクロエにエリザベトはニコリと笑みを浮かべる。
「彼女どこの令嬢なのかしら。
大方想像できるけれど、ちょっと勘違いしてるわ」
「勘違い?」
シャリオンが訊ねればエリザベトは勿体ぶりながら含んだ笑みを浮かべた。
「あの娘のせいで気後れしてしまった人がここに来なくなってしまったの」
「貴女・・・ご存知ないかしら?」
フィロメナがクロエに視線を向けるも首を横に振った。
前回アシュリーが一緒に回ったからだろう。
あの日目立っていたのは確かで、高圧的に見える場面もあった様に思える。
だが、あれは不真面目なメイドがいたからだ。
そう言えれば良いのだが、侯爵家と伯爵家の令嬢に言うわけにはいかず弁明をしなかった。
そんな2人に言えば、彼女達が注意してしまうという事もあり得ないわけではない。
あの日駆け出して行った彼女達を誰か知らないが、エリザベト達は解るだろう。
しかし、アシュリーが大事にしないと言ったのだ。
例の件でメイドが真面目になればそれでいい。
「悪いけれどここ以外で会う事はないわ」
「もし、次来たら貴女が話したいと言っている事を伝えてからおくわ」
クロエ達はそう答えながら視線で合図を送ってくる。
相手は話したげな様にみえるが長居はしない様にと言う事らしい。するとエリザベトがクスリと笑った。
「今日は本当に急いでいる様ね。
私も痛むからもう帰るわ」
「まぁまぁ。可哀想なベティ」
「・・・。なら、この後にお屋敷へ手配しても?」
「えぇ。お願い」
「絶対よ?」
「えぇ」
念を押して言われてしまい、シャリオンは頷くしかなかった。
侯爵ともなれば自分の所で治療士を呼べるだろうに。
不思議に思いながらもシャリオンは庭園の奥へと進んでいった。
姿が見えなくなったところで、クロエは周りを警戒しながら先ほどのことを注意してくれる。
「例の『おまじないの件』口にしては駄目です」
「あれ?僕が魔法を使えるようになったのを聞いているの?」
「団長から聞いてます」
「そうなんだ。へぇ・・・アリアの統括力と情報網は凄いなぁ。
でも何故駄目のなの・・・?」
そのアリアにさえ話していないのだから当然である。
きょとんとして隣をソフィアに訊ねれば少し悩んだ。
「今夜尋ねてみては如何でしょうか?」
『誰に』と言われずとも解って、シャリオンはコクリと頷いた。
「ユーリア様」
「ん?」
「・・・いいえ」
「ユーリア様」
「ん??」
今度はクロエに呼ばれて振り返る。
真剣な眼差しでこちらをみてくる。
「私達から絶対に離れないで下さいね」
「心配性だな~。うん。わかってるよ」
2人が警戒をしているのがわかるが、努めて明るく振る舞った。
★★★
王都にあるハイシアの屋敷。
戻った後は執務室で業務をこなす。
ガリウスの名案で土地の問題がクリアーになって忙しくなった。
ジャスミンに話すと『なるほどね!思いつかなかったわ。でもそうすると色々変わってくるわね。・・・4日・・・いえ、2日頂戴!考え直すわっ』と張り切って帰っていった。
なお、馬車屋のジョージに関して少し考えたいと言われている。
あの時の案内人であったゴードンも少し渋い表情をしながらも『説得をしているから、見捨てないでやって下さい』と、言われてしまった。
見捨てるもなにも売らないと言っているのはジョージであるのだが。
しかし、それを言ってもどうしようもない。
案内人にはそう言いながらも、最悪別なところの準備も進めてくれているが、あそこほど立地のいい場所はなく、メリットを提案していることもあるが、あの馬達の為にも馬車屋にはいい返事を貰いたい。
そんなことを考えながら、思い出したことに顔をあげた。
「あー・・・それと、あれも手配しておかないと」
「「「・・・」」」
ふと視線に気が付き視線を上げると眉間に皺を寄せているゾルとクロエ、そして心配気に見下ろしてくるソフィアだ。
「どうかした?」
きょとんと見上げているとクロエが手元の書類を手に取った。
「こちらは私が対応しておきますわ」
「え」
「おい」
ゾルが厳しい声で止めるがクロエはフンとあしらった。
「今日から私シャリオン様の部下にさせていただけますか」
「え?」
「ふふふ。クロエったら・・・でもそれは許してくれるかしら」
「シャリオン様からお許しがいただければそれですみますわ」
「それで済めばいいのだけれど。・・・、でもなら私もなろうかしら」
「おい。勝手に話を進めるんじゃない」
ゾルが苛立ったようにクロエが持った書類を奪い返そうとするが、クロエはそれを離さなかった。
それどころか、キッとゾルを睨む。
「甘やかしていてはシャリオン様はこのままでは死んでしまうわ!」
「死んでって・・・そんなことは無いけど」
「いいえ!倒れてからでは遅いのです。
そもそもシャリオン様、ゾル様から言われていないのですか」
「えーっと」
クロエの猛攻にシャリオンはたじたじと視線を逸らした。
怖いからではなく、耳が痛いからだ。
「ゾルは・・・言ってくれているよ?」
そう言うとクロエがなぜかゾルを見上げる。
その視線は『ほらいわんこっちゃない』と、言った様子でため息を吐きながらも、書類を引っこ抜いた。
「そういう訳ですから。
大丈夫です。安心してください。勝手に決定だとかしません。
私達はあくまでも決定を煽ぐまでで各方面の事情を聴いてきたりするだけです。
信用が置けないならウルフ家の方を付けて頂いても構いません」
「クロエ・・・ありがとう。それは助かる。
けど、見張りというよりも1人で動かすのが心配だな」
そう言ってゾルを見上げれば小さくため息を吐いた。
「俺がやると言っても最小限しかやらせてくれなかったのにな」
「え」
何故だか拗ねたような言葉にシャリオンが見上げると不機嫌そうだ。
「・・・ごめん」
「別に良い。けど、俺も減らしたかったから、クロエ達の行動は助かるのは事実だ」
「ゾル様は言い方が優しすぎるのです。
ウルフ家の宿命かなんだか知りませんが、これくらい強引取り上げ・・・いえ。仕事を引き受けないとシャリオン様は潰れてしまいます。
なので、今後こういうことがあったら私を呼んでください。
ゾル様の後ろから張り付いていますけれど、遠慮なく仕事を奪っ・・・引き受けますので」
ところどころ本音?のような強い言葉に苦笑を浮かべた。
そんな風にさせているのは、やっぱりシャリオンの所為である。
「僕は・・・恵まれているな・・・ありがとう」
「シャリオン様。そうではなくてですね」
「無駄だ。・・・それは頼む。・・・あと、これとこれもだ」
ゾルは流石解っているのか何束か拾い上げると、クロエに渡した。
「シャリオン様?私もいただけませんか?」
「ソフィアはだめ」
「!・・・何故です?」
「家の事が出来なくなるでしょう?」
「しかし」
「家がなくなってしまったら、もしヘインズの刑が軽くなり戻ってこれることになったのに、戻る場所がなくなっていたらどうするの」
「っ・・・」
「あの人にもう何も感じないというのなら良いけれど」
そう言うとソフィアは視線を落とした。
元は攫われてカスト・ヘインズの元に買われたのだが解放された直後には情があったというのも聞いて居る。
「・・・でも、・・・。・・・私もシャリオン様のお力になりたいです」
「ソフィア・・・」
「私を助けて下さり、再びクロエと引き合わせて下さったのはシャリオン様です。
その恩人の手助けをしたいと思うのは間違っていますでしょうか」
「間違ってはいない。間違っていないけれど、ではじゃぁヘインズはどうするの?
男爵家を守るのにヘインズの者はソフィアしか今いないでしょう」
「ですが、私は所詮あの家の人間ではありません」
「あの家の人間だよ。結婚とはそう言うものだよ。
ガリウスも結婚してハイシアになった。
それをどうこういう人もいるけれどそんなの関係ない」
「私とガリウス様は違います」
「違わない。カストが戻ってくる家を守れるのはヘインズの血じゃない。
ソフィアだけだ」
「っ・・・・」
「でも、こうして僕やアシュリーの手伝いをしてくれるのは本当に助かっている。
・・・だから・・・たまには手伝ってくれると嬉しい」
「!」
そう言うとパッと顔を上げるソフィア。
「ソフィアがしっかりしないと、カストだってヘインズ家で仕事をしている人間だって露頭に迷う事になるんだ」
「っ・・・私・・・家の事もっとちゃんとします」
「うん」
その真剣な眼差しにシャリオンは微笑んだ。
ソフィアはこれまで家の者にすべてを任せていた。
一応可否を尋ねられることはあったが、すべて許可を出していた。
それは自分が孤児であることや、売られたこともあり、いきなり男爵夫人にされた事に引け目を感じていた。
まだ、カストがいたころは皆の思考が分かったのだが、いなくなってしまいどうしていいかわからなかったのである。今そのパイプ役をしているのはクロエではあるが、これからソフィアが考えなおしシャリオンの振る舞いを見ならないながら、ヘインズ家を盛りなおしていくのは別の物語である。
シャリオンに許可を貰えたソフィアは嬉しそうに頷いた。
そして、パラパラと書類をめくり、一つの書類を取り出した。
「シャリオン様・・・これ」
「ん?あぁワインだね。うちはワイナリーが少ないんだ。
もうすぐハイシアで豊穣祭を行う予定なのだけれど、それが足りなくて」
「こちら我が家にお任せいただけませんか」
「うん。いいよ」
「!迷わないのですか」
「まぁソフィアだからね。正式にヘインズから贈られたものとして扱おうか」
「っ・・・ありがとうございます」
「そんな畏まらないで。で、という事は殆どお任せしていいという事だよね」
「はい!あと、こちらも」
そう言うと今度は家の事とは関係ない仕事もあげていく。
どちらが本音かわからないがシャリオンはどちらにしても助かることで喜んで返事をした。
それからクロエとソフィアは、その書類を持っていくと来客用のソファーに掛けながらあれこれやりだしたのをみていた。
やることが少し減ったのを見てホッとしながら思わずつぶやいた。
「そっか・・・こうやってゾルにもお願いをすればよかったんだね」
これまであまりにも仕事を無理しすぎるとゾルに仕事を取り上げられていたが、基本的にはゾルはシャリオンに言われたことを行う。
それはゾルが動かないわけではなく、シャリオンのやりたいようにさせてくれているのだ。
現に期限に近い物は上の方に置かれているし、それとなく関連する資料は準備されている。
「ゾルが良くしてくれているのは解っていたから、これ以上任せたら駄目だと思ったんだ」
「自覚が無いようだから言っておくが、お前が今からしようとしていることはそれなりに大きな事になるだろう。
だからその自分だけで片付けようとする癖を改めた方が良い」
「そ・・・そうだね」
「もっと、俺を使え。ガリウスを頼れ。あとジャスミンと専属契約の見直しをするべきだ」
「ん?」
ガリウスのぞんざいな扱いもだかジャスミンの専属契約に首をかしげる。
「ジャスミン?」
「・・・、・・・いやこれは俺が言い過ぎた」
「ん??」
良くわからなくて首を傾げたのだが、そんなときに思ってもみない知らせが来た
★★★
ガリウスがいるときしか着替えが出来ないとしたのが功を奏した。
あれが無ければとっくに着替えていたところだと言えば、ヴレットブラード侯爵家に向かう馬車の中でゾルに思い切り呆れられた。
「答える必要はなかったんじゃないか」
「そうです」
「追い返してきたならそうでしょう」
むっすりとして、クロエとソフィアも答える。
あれからシャリオンの執務室で仕事をしていると、リジェネ・フローラル経由でヴレットブラード侯爵家から電報が届いた。
怪我の治療士を手配したのだが、当の本人をよこす様にというものだった。
まぁそんな棘のあるものではないが、まぁ言いたいことをようやくすればそんな意味だ。
当然断りたくもあったが、リジェネ・フローラルに言って来たという事で無視は出来なかった。
「シャリオン様。けして私から離れないで下さいね」
「うん」
「彼女が家格を出してリジェネ・フローラルを脅してきても従っては駄目ですよ」
「解っているよ」
心配げな2人からの言葉にシャリオンは苦笑をした。
正面のゾルは顰め面だ。
「影武者を何故使わないんだ」
「まぁそれも良いのだけれど。相手の真意が知りたくてね」
「だが」
「僕が無理を出来るのはゾルのお陰」
「だが、俺達は安全なところに居てもらいたいのだがな」
「ヴレットブラード侯爵家が危険な場所かどうかなんてわからないでしょう?」
「お前は・・・どこで攫われたのかもう覚えていないのか」
「そうです」
ゾルとクロエの怒り顔にシャリオンは苦笑を浮かべた。
ちなみにガリウスにはもう報告済みだ。
ヴレットブラード侯爵家の令嬢と何があったかはまだ言っては無いが、今回の件は怪訝に思ったようだった。
そうこうしているうちに館にたどりついた。
侯爵というだけありかなり大きい豪邸だった。
ここからゾルは再び陰になり、代わりにシャリオンの隣にはクロエ達が付いた。
別馬車で着ていた治療士と合流をしヴレットブラード侯爵家にたどりつくと、使用人に案内されてサロンへと連れて来られた。
なんだかそわそわする気配にシャリオンは辺りを見回すがよくわからなかった。
すると、しばらくしてエリザベトが現れた。
「両サイドの使用人の方々は控えて下さる?あとそちらの方も」
「こちらは治療士の方です。それとクロエとソフィアは同席させます」
そういうとエリザべトはこちらを見てくる。
あの場所から出ても態度が変わらないシャリオンに少々驚いたようだ。
「貴女は利口な人だと思ったのだけれど」
「お怪我を診て頂けますか?」
そんなことを言うエリザベトには構わずに、連れてきた治療士に指示を出す。
「勝手に私に触れたら叫びますわよ?」
「・・・、」
治療士はそう言われると、シャリオンの方へとみてくる。
その様子に困りながらも頷くしか出来なかった。
「治療が必要ではないのなら私は帰らせていただきます」
「ならリジェネ・フローラルで大けがをしたと父上に言いますわ」
「どうぞ」
「貴女のお家なくなってしまうかもしれませんわ。
それに公爵家にも迷惑が掛かるんじゃなくって?」
その視線は重圧を感じる視線を帯びていた。
なんだか人をおもちゃの様に思っている振る舞いは、楽しいものではなかった。
しかしこれしきのことは飲み込んだ。
それにシャリオン自身にこんなことを言ってくる相手は初めてで新鮮だった。
「そう言う事をリジェネ・フローラルでもなさっているのですか?」
「私はどこでも私よ。なぜあの中だからと言って畏まらなければならないの?」
「あの中の規則です。
・・・貴女はそれが解っている様に感じたけれど」
「勿論解っているわ。貴女はそういう人間だと思ったから」
「?・・・どういう意味」
そう尋ねるとクスクスと笑った。
「貴女がこれから出来ることは2つよ。
その3人を追いだして私と2人きりでお話ししましょう」
「手当は」
その答えは返してくれなかった。
ハッキリ言って面倒だ。
もう帰ってしまいたいところだ。
しかし、相手の目的が良くわからなくて不気味だ。
シャリオンはクロエとソフィアを見ると、2人とも首を振るのだが仕方がない。
「2人は先生をお送りして」
「「!」」
「私は大丈夫です。後で屋敷に帰るわ」
「ですがっ」
「私がここに来たことは、2人が証明してくれるでしょう?」
「っ・・・」
その目には「何かあってからでは遅いのです!」と書いてあるようだったが、シャリオンは気づかないふりで2人に帰りを促した。
とても不服そうだったが2人は部屋か退出していくと、すとんとシャリオンの隣に掛けてくるエリザベト。
女性同士だと思っているからなのかやたら距離が近く、シャリオンはエリザベトの肩を押し返した。
「あの、・・・近いわ」
「少し・・・調教が必要かしら」
「え?」
そう言うとシャリオンの腕を掴み引き寄せられそうになった瞬間に、宙から手が伸びてきたかと思うと引き寄せられた。
全身が黒い影に覆われた存在にエリザベトは小さく悲鳴を上げて退いた。
シャリオンもそれに驚いたが、この存在が誰かわかった。
「あなた!一体何なのっ誰か!誰か!!」
エリザベトがそう叫ぶとドアが勢い良く開くがその時にはすでにその陰は消えており、むしろシャリオンを押し倒しているのはエリザベトで衛兵たちは困惑したような様子だった。
しかし、エリザベトは叫んだ。
「この屋敷に魔物がいるわ!」
「え」
「至急探し出しなさい!あれは間違いないわっ」
騒然とし始める雰囲気にシャリオンはこっそりと抜けだそうと試みるもがっしりと手首を掴まれた。
その表情は真剣そのもので顔色が少し悪く見えた。
「危ないわ」
「・・・」
先ほどの傲慢さは感じずにシャリオンは困惑した。
なんだか怯えているようにも見えた。
「大丈夫。何も怖くはないわ」
「・・・、」
「ここには貴女のお屋敷の兵士の方がいるのだから。ね?」
その言葉に衛兵達は誇らしげにしながらも頷いた。
「お2人はどうぞ安全なお部屋に!」
「ありがとう。エリザベト様は少し困惑していらっしゃるようだから、誰か」
「不要よ。私の傍にはユーリアがいるもの。そうでしょう?」
「え」
そんなことを言うエリザベトに困惑した様子のシャリオン。
しかし、衛兵や使用人たちまでもがこちらに願うようなそんな態度にシャリオンが無碍に断ることは出来なかった。
★★★
エリザベトの私室に連れていかれてしまった。
未婚の女性の部屋に入る事に抵抗をしたのだが、ここが安全と言われてしまえば抗う事は出来なかった。
エリザベトの部屋の壁は大きなカーテンがひかれているのが印象的で、あとは普通の部屋に感じる。
独特な香に目を顰めたが、我慢しながら入る。
先ほど陰におびえていた様子のエリザべトはもうおらず、余程ここが安全な部屋なのだろうと思った。
それから2人でお茶を飲んでいたのだが、不意に視線を感じてそちらを見るがあの壁一面にひかれたカーテンである。
「?」
「貴女は見た目によらず危険な事に巻き込まれることが多いのね」
「え?」
「このお茶毒が入っているの」
「なっ」
「嘘よ。・・・少し眠くなるだけ」
「!!」
「こないだのお茶にも仕込んでおいたのに、貴女全然寝ないのだもの」
「私には・・・そう言うのは効かないわ」
心底魔法の練習をしていてよかったとホッとした。
「何故そんなことをしようと思ったの」
「そうね。教えたら私の願いをかなえてくれる?」
何故対価を求めるのか不愉快にも感じたが仕方がない。
「ものによるわ」
「私、貴女が気に入ってしまったの。
貴女が欲しいわ」
「・・・それは無理だわ」
「そう・・・そう言うところも面白いわ。そういう人周りにいないもの」
「貴女の周りには沢山人がいるじゃない」
「あら。あれはいるだけよ。『侯爵』に群がっているだけ」
「・・・、」
その気持ちは少しわかった。
だが続いた物騒な言葉に体が固まった。
「私を楽しませるために親は私に娘は息子を差し出してくれるのよ」
「え・・・」
「ただの人形が手に入ってもつまらないだけ。後片付けをしてもあとからわいてくるし、困ってしまうわ」
「あと・・・かたづけ?」
「えぇ」
「どういう・・・こと?」
「そのままの意味よ」
これが別の意味に聞こえるならなんて思わせぶりな言葉なのだろう。
だが、そうは思えなかった。
先ほどからかすかに聞こえる物音がやたら耳に届いた。
「リジェネ・フローラルで・・・人が消えるという話を・・・聞いたのだけれど」
「それは怖い話ね。・・・でも1人だけは何故消えてしまったのかしらね」
「1人・・・?」
「アイリーンて娘がいたのだけれど」
「!!!」
「あら知っているの?」
驚いた様子にそんな風に言うエリザベト。
「あの子、ルーク様の側室になろうとして断られたのよ」
正確にはその親だ。
しかし、その次の瞬間歪な笑みを浮かべられた。
「ほんとっ!やれって言ったら本当にするんだもの!」
「っ・・・あれ・・・貴女が指示をしたというの」
そういうと、恍惚に喜んでいた瞳がぎろりと此方を向いた。
「貴女。あれを見ていたの?」
「・・・、」
「ねぇ・・・あの会場にいたの?ねぇ」
「っ・・・居たからと言って何だっていうんだ。
そんな事より、君は自分が何をしたのか解っているのか」
「解っているわ。だって煩かったの。
あれをするな。これをするなって。私に指示をしてくるの。
私の力が無ければ生きていけないというのに」
嘲嗤それに信じられないようなものを見る目で見てしまう。
シャリオンと比べたら10歳は違うだろうか。
アリアと同じ年頃の娘が、こんなにねじ曲がった考え方することに恐怖を感じた。
あのアイリスと親しかったわけではない。
数度見かけただけの人物なのだが、こんないう人物に引いてみてしまう。
「何故指示をしてきたの」
「忘れたわ」
「・・・、」
「本当に些細な事よ。大声で話すなとか。場所を考えろだとか」
それだけを聞くと何も間違えているようには聞こえなかった。
面倒見係が疎ましかっただけなのだろうか。
だとしても、男爵家の娘にあんなことをさせるのは愉快な話ではない。
「聞かれたからと言って何だって言うの?
私に逆らえる人間なんていないわ。
例え子猿が女王になったとしても、私に勝てるわけがないわ!」
「・・・。」
その言葉を発した瞬間不愉快度が振り切った。
シャリオンはすくりと立ち上がった。
「気分が悪くなったから失礼するわ」
「手が痛むのだけれど」
「貴女が怪我したのは足でしょう」
「・・・。そうだったかしら。
でもどうでも良いの。貴女は帰さないわ」
そう言うと、エリザベトはテーブルに置かれていた小物入れを開けると、そこに入っていたキューブ状の物を回した。
その瞬間、カーテンがサーっと両サイドに開かれる。
鉄格子の向こうは暗い、と思うのと同時にこの部屋も暗くなる。
ずりずりと地面をずる音と、金属が開けられる音がして息を飲んだ。
急に暗くなった部屋に困惑と恐怖を感じている中、シャリオンの体は抱き上げられる。
「!」
その気配はゾルだった。
「しっかりつかまっていろ」
「っ」
その体にしがみつくと、自然と体が震えているのが分かった。
★★★
屋敷をですぐにワープリングを使った。
ハイシア家の屋敷にたどり着き見慣れた景色に包まれても不安と恐怖が帯びていた。
落ち着かなければと足を歩みだした時だった。
エントランスの扉が開かれ、そこに立っていたのはガリウスだ。
余裕がないその表情だったが、シャリオンを見るとシャリオンの体を抱き寄せられた。
「っ・・・心配・・・かけて」
「違うでしょう」
「っ・・・、・・・、・・・怖かった」
そう言うとより一層に体を抱きしめられる。
暫くその状態でいたのだがゾルに「部屋に戻られては」と言う言葉にふわりと抱き上げられた。
部屋につく頃には落ち着いてきたのだが、ガリウスはシャリオンを自分の膝の上にのせたまま慰めるようにシャリオンを甘やかす。
「僕・・・咄嗟に叫んでた?」
「悪いことではありません」
気付かないうちにガリウスに助けを求めていたのだろうかと尋ねれば、ガリウスは首を横に振った。
「ヴレットブラード侯爵家に行っていたのだけれど・・・そこの令嬢の部屋に得体の知れない物がいて・・・でも真っ暗闇で見えなくて・・・」
暗闇にされると今でも怖い。
あの時の恐怖が蘇るようで、がくがくと震えだす体。
落ち着いたはずなのに、初めて攫われたことがフラッシュバックする。
そんなシャリオンをガリウスを抱きしめてくれた。
「あんなこと・・・いや・・・なにを・・・される・・・の、だったの」
恐怖と心配を掛けまいとしようとするのにおかしな言葉になる。
「関係ありません。考えなくて良いことです。
ゾルが助けてくれたでしょう?」
「っ・・・ん・・・もう・・・本当に」
シャリオンの見えないところで、ガリウスはゾルに合図を送った。
話しは後にしてシャリオンを慰めることが先決だからだ。
そのままシャリオンの首の裏に手を置くと引き寄せられた。
そして口づけられる。
「ん・・・」
「大丈夫。あの家にもう2度と近づくことはありませんし、リジェネ・フローラルも表には出ない様にしましょう」
「・・・、・・・でも」
「やり掛けで去るのが後味が悪いのは解ります。
ですがシャリオンは公爵なのです。
ですからそちらばかりにリソースが掛かるのも本末転倒でしょう。
表舞台にはソフィアがいます。
ハイシアから直接氏名を受けさせて管理者として据え置くのです」
「っ・・・でも」
「大丈夫です。ハイシアの名がなくなることはありません。
あれは貴方の功績です」
「そんなことを気にしているのではなくて・・・!」
ガリウスはシャリオンが安心するように何度も『大丈夫』とつぶやく。
そして、憤るシャリオンに首を振った。
「それでは駄目なんです。シャリオンはそう言うのが嫌いなのは解っています。
しかし、シャリオンはあそこに行くべきではありませんが、あそこにハイシアの名前が残っていなければソフィアの名前がつぶれてしまいます」
「っ」
「ヘインズは加害者でもありますが被害者でもあるのです。
そしてその理由は妻を守る為という体裁もあります」
「っ・・・」
「だからあなたが後ろ盾で居ることはおかしくないのです」
「っ」
「シャリオン・・・・お願いです・・・・。私の為に・・・あそこには行かないで下さい」
「っ」
その言葉にシャリオンは頷くしか出来なかった。
シャリオンとて怖いことはしたくはない。
けれど根の真面目さでそれが出来なかっただけだ。
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「あなたが行かなくなるからと言って責任を放棄するわけではありません。
リジェネ・フローラルにはソフィアが行くことになりますが、中の事は逐一あなたに報告してくれるでしょう」
「ソフィアの・・・家の事だってありのに」
「あそこで指揮をとることは彼女の経験になります。
それにハイシア家と交流があるというのが知れるのは良いことです」
その言葉にこくりと頷いた。
そろりと顔を上げるとホッとした様なガリウスの眼差しと視線が絡んだ。
再び引き寄せられ、ちゅちゅと口づけられる。
優しく甘やかす空気にシャリオンの心はゆっくりと落ち着いてくる。
「・・・もっと深いキスをしてもよろしいでしょうか」
あまりそんなことを聞いたりなどしないのに、尋ねるガリウスにこくりと頷いた。
「僕も・・・ガリウスに触れていたい」
嬉しそうに微笑むガリウスと口づけを再開する。
触れるようなキスは深くなり、シャリオンの思考をどんどん奪っていく。
いつもより早い帰宅に、仕事が終わったのか?とか聞きたいこともあるのだが、今触れ合うこの時間に酔ってしまう。
肌が触れ合うだけで伝わる熱に貪欲になっていく。
口付けだけでは物足りなくなって行き、視線で訴えるもガリウスは口づけばかりだ。
「・・・ガリィ・・・」
「どうかしましたか」
「っ・・・我慢・・・出来ない・・・もう、・・・痛いの」
ガリウスのキスで貞操帯の中はきつくてどうにかしてほしくなってくる。
「がりぃ・・・」
もう一度情けない声で呼べばクスリと笑った。
「スカートの裾を掴んでいて下さい」
「・・・ん」
その言葉に手繰り寄せると、黒い革をひと撫でする。
厚いそこどうなっているかは上からではわからないはずだが、熱は伝わっているようだ。
そしてガリウスは魔法と解くと一番上の革を外すと勢いよく立ち上がるシャリオンのモノに頬が熱くなった。
「とても辛そうです。・・・こんなに赤くなって」
ちゅこちゅこと扱きながら、シャリオンの事を覗き込んでくる。
根本のバンドは外されることはなく、それどころかシャリオンの胸についているニップルクリップを服の上から引っ張った。
「ぁぁっ」
痛いはずなのに、ガリウスにされると思うとたまらなかった。
腰は甘く揺れて、ガリウスのその指先に翻弄される。
2・3度その動きを楽しむと、上半身を脱がすために隠しボタンを外していく。
そしてさらけ出された胸を撫でた。
「っ」
「逃げないで下さい。・・・・しっかりと胸を張って。・・・・そう上手です」
そう言うとガリウスはシャリオンのモノを扱きながら、乳首を口に含んだ
「んぁぁっっ」
レロレロと舌先で嬲ったかと思うと、じゅぅっと音立ててしゃぶられて、扱かれる刺激もあって、あっと言う間に軽く逝ってしまうシャリオン。
なんて気持ちが良いのだろうか。
ふわふわとした思考の中で、絶頂の揺れていると耳元で囁かれる。
「シャリオン。・・・立ち上がって下さいませんか」
「?・・・ん」
「足を開いていて下さい」
肩幅程足を開くように言われて、そのまま従うとガリウスの手がシャリオンの後孔に向かう。
いつの間にか準備をしていたのか指先は滑っていてシャリオンの反応を楽しむようにその縦に伸びた穴をつるつると撫でた。
それを合図に引くつきだすシャリオン。
早く続きをして欲しいのにガリウスの指は中々シャリオンの期待に応えてくれない。
「っ・・・が・・・りぃ」
「どうしましたか?」
こんなみっともない格好でガリウスを求めているのに、そんな意地悪な反応をするガリウス。
「そこ・・・っ・・・さわって」
「触っていますよ?・・・私の指に吸い付いてきますね」
「っ・・・さわる・・・だけじゃなくてぇ」
「中・・・触って欲しかったのですね」
「っ・・・んっ・・・そ・・・なのぉっ」
無意識のうちにガリウスの指に合わせて腰を動かすシャリオンはとんでもなく淫らだった。
舌なめずりしたくなる気持ちを抑えながら、中指のをクンと突き入れて第一関節まで入れて取り出す。
それを数回繰り替えすとシャリオンは腰をくねらせながら落とした。
しかしそれで中に入るわけもなく・・・。
「ゃぁ・・・・っ・・・・っっ」
焦らすガリウスにほろりと涙が零れた。
「シャリオン・・・・泣かないで下さい」
「っ・・・っ」
「すみません。とてもこの感触が好きなんです」
いつかもそんなことを言っていたが、好きだと言われたら怒れなくなってしまうではないか。
そんなこと良いから早くして!とみていると漸く入ってくるガリウスの指。
「ぁっ・・・んっ・・・ぁぁっっ」
前立腺をコリコリと撫でるとシャリオンの体がはねた。
「逃げてはだめですよ。・・・ほら、ちゃんと私の指を感じて下さい」
「!!!んぁぁっ・・・あぁぁ・・・んっ」
せき止められた痛みと、与えられる快楽に頭がおかしくなりそうだ。
その指に何度も追いやられながら、ガリウスの指が三本入る頃にはすでにその指と同じ分空イキをさせられた。
脚はがくがくと震えているとちゅぽんと指が抜かれる。
「やだ!」と追いかけようとしたのだが、前を寛げ始めるガリウスに息を飲んだ。
「が・・・り」
「膝の上に載ってください」
「ん・・・」
出されたモノはガリウスの見た目に反してごついそれを見せつけなはら、またがったシャリオンの孔に自分のモノを擦りつける。
「はぁ・・・ん・・・」
「力を抜いてください」
期待のあまりきゅっとするシャリオンにそう言うガリウス。
徐々に入ってくるその男根にシャリオンは声をあげた。
「ひぃぁっ・・・んんっ・・・あ!・・・あぁぁっ」
逃げそうになる腰をしっかりと押さえつけながら、前立腺をごりごりと擦りつけるとシャリオンの口からはひっきりなしに喘ぎ声が漏れた。
気持ちよくて、痛くて・・・シャリオンはガリウスにしがみついた。
「っ・・・がりぃ・・・これっ・・・とってっ・・・とってぇ」
「抜いてしまっていいのですか?」
「ちがっ・・・ぺ・・・にす・・・のねもとの」
「すみません・・・忘れていました」
「っっ」
そういうとガリウスは本当だったのかすぐに外してくれた。
そして再び動き出すガリウスの腰。
シャリオンの細い腰を掴み、持てあますことなく蹂躙していく。
「んぁっ・・・はぁっ・・・んんっ・・・あぁあぁ」
パンパンとぶつかり合う肉の音。
もうシャリオンの目には不安は残っておらずただ快楽を求め動いた。
「がりぃっ・・・がりぃっ・・・いいっ・・・気持ちイイッ」
「っ・・・シャリオン」
核に魔力が流れ振動し始めるとたまらなかった。
ガリウスの上で乱れ感じるシャリオン。
「ぁっ・・んぅぅ・・・はぁぁぅぅぅ・・・く・・・いくっ」
「えぇ・・・。好きなだけ逝って下さい」
溜まらずにそんなことを漏らすシャリオンは大きく突かれると、耐えきれず一気に絶頂に向かうのだった。
記憶を飛ばす直前。
ガリウスの腕に抱かれながら、ホッと安心をする。
そう思いながら深い眠りに落ちていくのだった。
┬┬┬
いや。まだ23日。10時。
きっとそう。
設定集を見直して、ソフィアは子爵→男爵の勘違いでした。
準男爵でありません。
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