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執着旦那と愛の子作り&子育て編
王女。①【別視点】
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【別視点:筆頭メイド ロザリア】
女性王族の身の回りは女性が付くの常である。
その為に、王城には女性王族や側室のお世話をする為の使用人部屋がある。
その部屋には今、数少ない女性貴族がかき集められている。
家督の継がない若い娘達で、その様子に緊張した様子はないが、半分ほどはここに居ることに不満を抱いている。
そんなやる気のない彼女達に長々と老女が言い聞かせる。
名前はロザリアで男爵家の者だ。
しかし毎日同じ内容を聞かされている彼女達の中には、うんざりとしているものがいるようだ。
「女王はアルアディアの歴史でも数少ないことです。
私達は姫様が過ちなきよう導くためにおります。
純粋な系譜ではありませんがアルアディアの血を引くお方で間違いはありません。
皆さん。くれぐれも失礼な態度が無いように」
「「「はい」」」
含みのある言い方である。
その返答の中には心のこもっていない返事も紛れている。
素直に聞く者もいるが、あざ笑ったり、またある者は懐疑的に批判的に思っているようだ。
ロザリアはここ王城の使用人で一番発言力のある人物だ。
亡き元王妃や王太子の元婚約者も知っている人間でつまりはかなりの高齢なのだが、この度本人の志願により現場の復帰に至った。
ブルーノも王命で指示をしたい所だったが、なにせ高齢である。自分よりも歳上であり控えていたのだが、自ら志願してくれたなら拒否するわけがない。
その為今日も彼女は王家の為に熱弁を振るうのだ。
「それと。・・・ハイシアから数名来ていますが、協力はしても手出ししないように」
改めて注意する言葉に一人の使用人が手をあげた。
「学もなく仕事も出来ない無知な人間など追い出したらどうなんです」
「発言を許可しておりません」
「っ・・・質問をよろしいでしょうか」
小さくした舌打ちまでする、その表情は碌でもない。
由緒ある家の者とは思えない振る舞いに、ロザリアは呆れながらもその質問に答える。
「その必要はありません。
それよりも。貴方は・・・顔に出しすぎです。
そんな調子では奉公したと口にされるのは王家の恥になります」
「!」
注意された若い使用人は謝罪を口にしつつもまったく理解しておらず、嫌味を言われたことにあからさまに顔を顰めた。
ロザリアはそれを冷ややかに見ながらもすぐに視線を逸らす。
この後直ぐ去るであろう者に時間をかける暇はない。
ルークの婚約者候補として集められ育てた者達は結婚してしまい数名しか戻ってこなかったため、早急に彼女達を育てる必要があるのだ。
アシュリーの専属であるアリア達が出来る者だとしても圧倒的に数が少ないのである。
奉公に出される者達の中には家督を継がない為に甘く育てられ世間知らずで我儘な傾向があり、今まで使用人がいた生活が一転し仕える側になる事に、ある程度各自の家で行儀見習いの手ほどきを受けているにもかかわらず、やはり最初はついていけない者が多い。
ルークの子供が女性だった場合は気軽に声をかけてくれと言っていた家も、養子となったら無理だという者ばかり。
アシュリーの為に集められた使用人達は未熟な者が多く、そのために高齢でありながら彼女の志願が許可されたのもある。
『この中で一体どれほどが残るのでしょうねぇ』と、ロザリア思う。
彼女は彼女なりに王家の為にアシュリーの筆頭使用人になったのだ。
とは言えかなりの高齢で杖をつき腰が90度に曲がっている彼女は、現場に頻繁に出ることは出来ない。
ある時から突如痛み出した足腰は痛み長い距離は歩けないのだ。『もう少し若ければ』なんて、何度思ったことか。
そうであれば自分がバリバリ動いて、このような小娘達の考えを改めさせるというのに。
若い2人に養子と言うことに驚きが隠せなかったが、しかしながら陛下も認められているこの状況に、逆に良かったと思っている。
なぜならばルークの子どもとなると、その頃にはロザリアに口出しすることが恐らくできないだろう。
長く生きた体はガタがきている。
足腰だけでなく関節は衰えからか常に痛み、医者から処方された痛み止めを飲んでここに立っている。
現場を直接見て口出しを出来ないことに歯がゆさを感じるが、今に感謝しなければ。
何故こんなにも焦燥感があるかと言うと、若い使用人達が王女になるアシュリーを見下していることを肌で感じているからだ。
どの様な決定でも使用人が口を出すことではない。
だから老女はアシュリーに仕える気持ちはあるのだが・・・。
ハイシアからつけたられた女性使用人を思い浮かべる。
幼い娘を養子に出すのに家の者をつけたくなる親としての心情は解る。
しかし、付けた者が宜しくなかった。
アリア達やウルフ家の者が悪いという事ではない。
能力はとても素晴らしい。
ハイシア家がサーベル国の出であるウルフ家をアルアディアのハイシアに国籍を移させ自らの使用人にしていることは有名な事で一般人もで知られている話だ。
しかし、それは悪い意味での根っからの『貴族』の娘達には良くなかったのだ。
専属につけられるのが『貴族ではない事』と、そしてそれが『公爵家の令嬢』だからと言う事だ。
女王になるアシュリーを見下していることが許せないのだ。
ロザリアはアルアディア家に心から尊敬し敬愛を抱いている。
故に昨今続いている王家に流れる良くない話をこれ以上悪化するわけにはいかないのだ。
「アシュリー様に仕えられることを幸せに思いなさい」
ただの王族であればここまでは苦労もしないし、彼女現場復帰などせずに家で王家の吉報を喜んでいただろう。
そう伝えると、ロザリアは彼女を達を部屋から退出させる。
「・・・なんとしても王族に平穏もたらさねば」
厳しい目つきをしながらこれからのことを考えるのだった。
★★★
【別視点:???(B)】
口うるさい筆頭使用人であるロザリアから解放されると思い切りため息を吐く。
王城には防音魔法が使われており、部屋の中には聞こえないことを知っているからだ。
「なんなのですの?あの婆さんは!」
「!?声を抑えて下さい。誰かに聞かれるかもしれません」
そう注意されつつも彼女の悪態は止まらず、まだ幼さの残る若い声は広く長い廊下に響いた。
「部屋の中には聞かれませんが、廊下にいる誰かには聞かれてしまいます」
「煩いのは貴女ですわ。
私のすることに口出しするおつもり?」
「・・・」
「それに私は事実しか言っておりませんわ。
それに男爵家の家の出の者に減り下っては我が家の面子にも関わります。
あの婆さん・・・父上に言って黙らせようかしら」
凶悪な表情を浮かべて、廊下を闊歩する同僚にそれを聞いて居る者達は苦笑を浮かべる。
彼女の家格は確かに上位であるが、王城の中で問題を起こすわけには行かないし、この奉公が終わったあとに嫁ぐことになる。その相手がこの城の中に居るかもしれないからだ。
「毎日同じことしか言えず耄碌しているならさっさとおやめになればいいのに。
陛下が再び勤務する事を許可したと言いますけれど、高齢の老婆に絆されただけでしょう。
それを良くあれだけ威張れますわ」
忌々しそうにそう呟いた後ため息を吐いた。
「それよりも不愉快なのは、・・・例の件です」
この奉公は親に無理やり入れられており不満しかない。
親にはアシュリーと親密になるようにと命じられているが、常に最上級の者を与えられた彼女は王太子の実子でもない子供に仕えるのは面白く思っていない。
だが、その話題になると一緒に歩いていたはずの同僚の使用人たちはパラパラとはけて行くが、彼女は気づいていない。残っているのは彼女の取り巻きや、彼女の家と親しくなりたい者達であった。
「何故私が碌に話せない小娘の面倒見なければならないのかしら。
それも孤児を専属使用人につけなければならない程ハイシアは落ちぶれているということではありませんか」
「王族の方と懇意になさってるから何か援助でもあるのでは?」
「それは当然でしょう。
殆ど王家の血も残っていないような公爵家でしょうに。
得意の色仕掛けで依怙贔屓され図に乗っているんですわ」
「王家の方が降格されたのはいつ頃だったのでしょう」
「知りませんわ。古臭い家であることは間違いありませんけれど。
陛下や殿下に強請り娘を養子に出すなんて。
殿方に『天使』だなんてちやほやされていたいましたけれど、実は真っ黒でしたたかな方なんですのね。あの男は」
彼女が辛辣に言うのも一応理由があった。
「一目ぼれをして婚約を申し込んだ方がハイシア公爵を慕っていて袖にされたことをまだ根に持っていらっしゃるの?」
おっとりとした口調だが言っていることは辛辣だ。
言われた娘は彼女はキっと睨んだ。
「違いますわ!私があの家の狡猾さも見ぬけない愚図だとこちらから破棄したんです!!!」
苛烈に怒りを露わにする。
その声は今まで以上に響いた。
「ちょっ・・・流石に声が大きいです!抑えて!」
友の呼びかけは事実だが、つまらなそうにフン!そっぽを向いた。
「私、どうせならアンジェリーン王太子配殿下に仕えたかったですわ」
「けれど、アンジェリーン王太子配殿下の相談役は・・・」
「アンジェリーン王太子配殿下だって、そんな廃れゆく家よりも私の方が良いと言うに決まっております。
どうせ、相談役も王太子殿下から同情で付けられた立場でしかありませんわ。
幼馴染というのを悪用するなんて貴族の風上にも置けません。
とにかく、これ以上あの家をこれ以上調子づかせてはいけないのです。
王太子配殿下もアンジェリーン王太子配殿下もお若いのですから、お二人のお子を諦めさせては駄目なのです。
・・・、・・・そう。そうよ・・・!
あの男もしかしてその可能性があるのにも関わらず潰して自分の娘を女王に仕立てて王家を乗っ取ろうとしているんじゃありません!?
えぇ。・・・・、えぇ!きっとそう!」
謎の思考回路を肯定し興奮し始め、振りむいた彼女は意地の悪い笑みを浮かべている。
「私が目を覚まさせて差し上げれば全て万事休すですわ。
そしてお二人の間にもし男児が生まれたら・・・フフっ」
「さすがに歳の差が過ぎると思いますわ」
「あら。陰謀を阻止したのですから、それくらいあっても良いですわ」
「でもそうするとあの家もどうなるのでしょうね。
温情で取り潰しにはならないでしょうが」
否定してもそういう風に言うとムッとする。
「どうでも良いですわ。・・・本当に忌々しい」
「以前はそんなに毛嫌いしてなかったですのにね。寧ろ・・・」
暗に含ませて言った後、くすりと笑った。
「ふふっ・・・貴女、こっそり囲っていそうですわね」
それに否定をせずに嗜虐的な笑みを浮かべると、自分で振ったくせに大げさに驚いて見せた。
「まぁ。怖い」
「そんな事よりも、いつになったら、その問題の小娘に会えるのかしら。
私との格の違いを見せてやろうと思ったのだけれど。
・・・あぁ、まだ言葉も話せない馬鹿なのだからわかりませんわね」
高飛車にそう言う女性に、ついに一緒にいた女性が我慢できなくなったようだ。
「心の中でどんな風に思っていても構わないけれど、それを口にだして良い場所かよく考えて欲しいわ」
そう言ったところでおっとりと口調の女性が、サッと手を広げ遮った。
それは攻撃的に注意した女性を冷ややかに見だ。
「まぁまぁ。そんな風に強く言ったら怖いですわ」
目が笑っていない女性がそれを止めると、注意した女性は口をつぐみ謝罪を口にする。
「・・・失礼いたしました」
「だそうですわ。
そもそも言われなくとも貴女は解ってらっしゃるわよね」
「解っているに決まっているでしょう。・・・いちいち注意しないで頂戴。
あんまりしつこいと父上に報告するから」
高飛車な女性に睨まれると女性は息を飲んで頭を下げた。
「!・・・っ・・・申し訳ありません」
「まぁまぁ。『お友達』が謝ったのですから。ね?
・・・それよりもお城にはたくさん人がいらっしゃるのですから、いろいろお話を聞きに行きませんか?
面白いお話が聞けるかもしれません」
高飛車な女性はまだむしゃくしゃとしていたが盛大にため息を吐いた後、その提案にコクリと頷き仕事もそっちのけで城を闊歩し始めるのだった。
「それもいいけれど。・・・ねぇ。もう帰ってしまいませんこと」
「それは流石に。家に戻ったらバレてしまいますわ。使用人に与えられた部屋にということですの?」
「違いますわ。ここではあまり自由にお話も出来ませんもの」
今まで散々話していたというのに、何を言い出すのだろうか。
それはつまり王城の外を意味さす。
すると、太鼓持ちで居た者達が息を飲んだ。
「あの小娘に集められたのは数十名。数人いなくなっても解りませんわよ」
「まぁ。それは良いですわね」
「・・・。私は残ります」
今まで注意していた女性がそう言うと、一緒にいた女性がわらわらと賛同する。
「私もとてもご一緒したいのですけれど、この後予定がありますの」
「・・・。それは、仕方がありませんね。
逆にちょうどいいかもしれません。
全員が行ってしまったらフォローが付きませんので」
傲慢な女性に注意を促していた女性がそう言うと、賛同していた女性たちがホッとした。
人数が減ったことに文句を言うかもしれないとも思ったが、今はロザリアからの叱責の方が面倒なようだ。
「あら。ありがとう。あの婆さんを上手くだまして置いてちょうだいね」
そういうと、高飛車な女は残った人間にニコリと微笑んだ。
「子猿に毛が生えた程度の小娘を見るために私たちが努力するなどバカげたことはやめて、ご一緒しませんこと?」
それはまるで悪魔なような微笑みに、逃げ出したくとも出来ない雰囲気だった。
この話を誰かに聞かれているとも見当もつかずに、彼女達は目的の場所へ遊びに出るのだった。
★★★
【別視点:ライガー&ルーク&アンジェリーン】
ー・・・、話は数日後。
王太子自室。
部屋の主と、ライガー。そしてアンジェリーンがいる。
優雅に酒をたしなみながらお話をしている。・・・わけなく。
結界や警備が敷かれたここはすっかり作戦会議室と化している。
なお、会話は怪しげだが酒を楽しむでいる。
手元のワインのせいで顔を赤く染めながらも、いつも以上に饒舌だ。
色素が薄く赤くなりやすいが酒は強いアンジェリーン。
「まったく。他人の家に煩いことこの上ない」
「まぁ・・・俺達は貴族とは違うからな」
苛立たしげに悪辣を吐く、2人を宥めるのはライガーの役目になりつつある。
アンジェリーンに事実を言うと、ルークがアンジェリーンを賛同する様に文句を言う。
「シャリオンと立場が同じだったら絶対言わないね。
あいつ等はそう言う奴らだ」
「そういう人間ばかりじゃないだろう」
「「(兄上)(ライガー)はどちらの味方なの(です)!!」」
「えーっと」
腹立たしげに2人揃って吠えるものだから、ライガーは苦笑を浮かべた。
文句を言う相手では無くてアンジェリーンは視線を逸らし、ルークもアンジェリーンの空いたグラスにワインを満たしながら矛盾にも文句を言う。
なお、ライガーとルークはブランデーを、アンジェリーンは赤ワインをたしなんでいる。
一度酒を呑んだ時から、素面よりもマシと言う理由と目の前で親がしている光景に、好かないが運命共同体になってしまったアンジェリーンに気を使う様になった。
しかし、それは愛し合った伴侶にするのとは違う。
「おい。面倒だからここで潰れないでね」
「ふん。たとえそうなったとしても使用人を呼びます。・・・ライガー頼みましたよ」
「あはは・・・あぁ」
「兄上は小間使いじゃないんだが?」
「(だったら何故お前も注ぐんだ)」
もしもの時は使用人は呼んでくれるようにライガーに頼むアンジェリーンに、ルークが苛立った様に文句を言うがアンジェリーンはうざったそうに言い返す。
「だれもそんな事思ってません。それとも私がここで酔いつぶれても良いのですか」
「冗談は寝て冷めてから言ってくれない?
ベッドなんて貸さないからな」
「その方がありがたいです。変に親切心を出されて共に目を覚ました朝なんて地獄以外何物でもありません」
「っ・・・そうなったら、俺はソファーに行こうと思ってたけど。
やっぱり廊下に放りだしてやる」
「えぇ。その方がありがたいです」
そういう2人にライガーはため息を吐きながら目の上に手を当てた後、まだしばらく文句を言いあっている2人に視線を向けた。
「わかった。わかった。俺が責任をもってアンジェリーンの使用人を呼ぶから」
「頼みましたよ」
「兄上がそんな事しなくていい」
「ルー。良いから。
・・・この部屋を見てくれている使用人は信用がおける家ばかりのはずだがそうじゃない場合もあるだろう。
そんな人間に泥酔している王配を廊下に放りだしたとなったら、最悪どこまで飛び火する?」
「・・・、」
「・・・申し訳ありません。私も少々過ぎました。安心してください。そこまではもうしません」
ライガーの言葉にルークは嫌そうにしながらも頷き、アンジェリーンもハッとして謝罪を口にする。
以前、あまりにも面白くない話を聞いたときに、勢いに任せて飲みすぎてしまったことがあり、あまりにも帰ってこないアンジェリーンに専属の使用人が迎えに来てくれたのだ。
「そもそも、その使用人に時間になったら迎えに来させれば良いんじゃないか?
「あら。その時に話が盛り上がっていたら興がそがれるでしょう」
「・・・お前は何時まで俺の部屋を占拠するつもりだ」
「私の気が済むまで。貴方方も寝かせませんよ?」
なんて横暴なのだろう。
これが、同じセリフで同じ目的だったとしても『彼』に言われたならば、口では注意をしながら、どきどきとして嬉しいのは間違いないのだが。それは言った本人でさえ思っている。
暴君なアンジェリーンに呆れた様にため息を吐きながらもルークは肘掛けに肘を置き手に顎をつく。
「それよりも例の件はちゃんと進んでるんだろうね」
「えぇ。ちょうどいい人間と連絡を取れました」
「誰だ」
「秘密です。本人がいまだに駄々をこねているのです」
「それは・・・大丈夫なのか?」
不安になるような言葉に、ルークを眉を顰めた。
この計画の要がそんな様子では困る。
ライガーとルークが顔を見合わせた後、ルークが低い声で答えた。
「やはり、俺の方で準備する」
「だから貴方では駄目なのです。何度も言っているではありませんか」
信用が出来ない人間に依頼するのは不安だというルークの意見も解るが、実際の所アンジェリーンの言葉も解るライガーは頷いた。
「そうだな。
・・・どうしたらその人間を本気にさせることが出来る?」
「気の小さい男ですから・・・。より強力な後ろ盾がいると知れたなら力を貸します」
「『大公』の名前を貸すのはいくらでもできる。が、本当に信頼できるか問題だ」
ライガーの言葉にルークも頷くと、アンジェリーンは『フフフっ』と笑った。
「土壇場になって逃げだしてしまうような男ではありません。
自分が大丈夫だと判断できるまでが慎重なだけです。
その代わりに引き受けたなら完璧にこなすでしょう」
自信満々で言うその姿にならば聞きたくなるところだが、アンジェリーンはその名を明かさなかったが、言い切るその様子から余程信用できる人物なのだろ思った。
「・・・問題は、あの男にいかにバレないようにするかだけですね」
この計画はどうしても失敗したくない。
しかし、いくつかある問題の中で一番の懸念点は『あの男』に知られてはいけない。
知られたら最後計画をぶち壊されてしまうからだ。
慎重に進めなければ。と、意気込むアンジェリーンにライガーはクスクスと笑った。
「君まさかバレないと思っているのか?」
「・・・どういうことです」
「とっくに知られているよ。その上で放置されているんだ。ガリウスはそう言う男だ」
「そうだね。で。自分は(シャリオンに)『知らなかった』って、言う体裁をとるね」
「そん、なこと」
「アンジェリーンの先鋭部隊を使ったとしてもね。俺のを使っても同じ。いや、本当に優秀で頼もしいよね」
知られているというのに満足げに頷くルークにアンジェリーンは眉を吊り上げる。
「待ってください。ならば、何故、何も言ってこないのですか」
「『デメリット』がないからだろう。
じゃなければ、シャリオンのことについて誰にも触れさせたくないのが本心の男が許しておくわけがない」
そう言った後に、ルークが酒を煽る。
でもその表情は楽し気で余計にアンジェリーンはつまらなかった。
「自分の手柄にするということですか」
グラスを持つ手が怒りで震え表情は心底怒っている様子に2人は笑ってしまった。
まだアンジェリーンはガリウスと言う男が良くわかっていないようだ。
『手柄』だとかそんなことは考えない。
褒めて欲しいことや他人が信用できない事は自ら動くし、そうではない時はシャリオンの為になる時でそれについて監視しながら境界線を越えない限りは口も出さない。
「ふふっ・・・君の『ガリウス嫌い』は直らなそうだね」
「はぁ?・・・それは無理な話です。もともと嫌いな男なので」
ふん!と鼻息荒く言うと、ますます進む酒にライガーはルークが注ぐ前に取り上げた。
「明日も子供達と会うのだろう」
「・・・、そうでした」
睨まれた視線はその言葉にハッとして、諦めたようだ。
ライガーはグラスに水を注いでやりながらアンジェリーンに手渡す。
「明日の予定を取りやめるならいいが。酒が残っている状態で、いくら王配の君でも子供達には会わせられない」
「取りやめません。えぇ。そんな状態ではあの子達に会いません」
ライガーは怒られると思ったが、以外にも怒らずに承知した。
「ルーも。呑みすぎだぞ?お前はたとえ酒が残っていても執務に当たってもらうがな」
「当然。どっかの誰かと違って顔に出ないから」
「っ」
「ルー。・・・はぁ・・・お前は子供か」
「本当にそうです」
「・・・もとはと言えばアンジェリーンが俺に突っかかってきたのがいけない。
長くされてきたことに、今更仲良くしろなんて難しい」
表情から読み取れないが、サファイアの瞳をじっとりとさせてライガーに訴えてくる。
ライガーに言われて困るのだが、ここでアンジェリーンに言わないだけましだろう。
「シャリオンに。子供達に泣かれてしまいますから。・・・控えて下さい。私も気を付けます」
「・・・、・・・、・・・悪かった」
「・・・私こそ。申し訳ありません」
珍しくアンジェリーンが譲歩しライガーもルークも驚いた。
しかし、そうなるとルークも子供のような反応が恥ずかしくなり、謝るとアンジェリーンも素直に謝る。
ライガーはその様子を前から見ながら、小さくため息を吐いた。
放っておけばアンジェリーンと言う加速装置に、ルークが止められるわけもない。
最近では『止められないなら、そのまま突っ走ればいい』とでも思っているのか、煽るような節もある。
最終的に彼を止められるのはシャリオンで、同時にそれはシャリオンに怒られるというわけだ。
アンジェリーンの我儘にシャリオンが振り回されいう事を聞いてしまってあげているのが面白くないのだ。
だとしても我が弟ながら意地が悪いとも思い、注意をしてそれは少しは収まったのだが。
ライガーが2人を止めるのはバランス的な性質もあるがそれだけではない。
アンジェリーンの暴走が度を過ぎたら、止めて欲しいとガリウスに言われているのだ。
ガリウスが直接交わらないのは、これがシャリオンが嫌いなことだと理解している為手を出さない。
正確にはシャリオンとの約束で『手を出せない』と言った方が正しいだろう。
「そもそもガリウスに目を付けられて秘密裏に動くなんて無理だろう?」
「・・・。その話本当なのですか」
「あぁ。レオン殿から聞いたから間違いない。元ある力を封じていたのを解放したそうだ」
するとアンジェリーンの眉をが深く刻まれる。
「・・・。そうでしたね。・・・本当に、そんな神経質なわけないでしょうに。
でなければシャリオンは・・・っ」
ガリウスが魔力を封印してた話を聞いて居るアンジェリーンは本当に納得がいっていない。
当時、セレドニオが黒魔術師であったことを察知出来たのは後の話であり、当時を知らないアンジェリーンにはガリウスが怠っていた様に見えるのだ。
過去のことに烈火の如く怒り始めるアンジェリーンに、ライガーもルークも苦笑する。
「これからはそんなこともない」
「シャリオンを守れるのに最適なのはガリウスしかいない」
「・・・えぇ」
笑顔に出来るのも守るのもすべて出来るのは、ガリウスの隣だけだ。
そう、頭では理解しているのだ。
★★★
【シャリオン視点】
王城に与えられた部屋。
その中にある書斎を執務に充てている部屋で、シャリオンは今日最後の書類にサインをすると同時に盛大なくしゃみをする。
「へっくしゅっ」
くしゃみと共にふわりと掛けられたのはストールだ。
ゾルにお礼を言おうと思うとそこにいたのはガリウスだった。
「大丈夫ですか?」
「!!」
心配げに覗き込んで来るガリウスに笑顔を浮かべた。
いつ部屋に帰ってきたのだろうか?
隣に立ったのも気づかなかったのでシャリオンは驚いてしまった。
「ガリィ。お仕事終わったの?お疲れ様」
「シャリオン。その前に書類をよこせ」
すると、ガリウスとの会話を割くように手が伸びてきた。
「あ・・・あぁ。じゃぁこれ、ゾルよろしく。今ので最後だよね?ゾルも下がっていいよ」
「あぁ。おつかれ。もう俺の目的は叶った。後は好きなだけ、いちゃつけばいい」
会話が始まる前に素早く書類を回収していくと、意地悪気に頬笑みながらシャリオンとガリウスに今日の挨拶をすると部屋を出て行った。
そんな様子に苦笑を浮かべた。
「酷いですねぇ。・・・今のは風邪ではないですか?」
「うん。ちょっとした埃だと思う。
昼間に名簿を見てたんだけどそれからなんかくしゃみが止まらないんだ」
すると、ガリウスがするりと指を絡ませる。
「ではそう言うときは『ヒーリングケア』をしましょう」
「あ。そうだったね」
もう一人で出来るようになったが、やはりガリウスと行うと効き目というか自信が違う。
2人で手をつなぎ魔力を感じ合いながら、シャリオンはガリウスを含めてこの部屋いっぱいに『良くなりますように』と願った。
終わった後、瞳を開けるとアメジストの瞳がこちらを真っすぐとみていて、なんだか恥ずかしかった。
幼いころから魔法を使うという習慣がなかったシャリオンは、思考共有もそうだがするのを忘れがちである。
毎日、魔法の練習を短い時間ながらに練習をしていながらも、肩こりに魔法を使おうという発想がわかない。
「うん。鼻がすっきりした気がする」
「それなら良かったです。私の方もすっきりしました」
「どこか悪い所があったの・・・?」
城に居れば防衛している魔術師達のお陰で状態異常にかかることはないと思っていた。
すると、肩を揉みしだきながら笑顔を浮かべた。
「肩こりが楽になった気がします」
「肩こりにも効くんだ」
「そのようです」
『へぇ』と驚きながら、シャリオンも立ち上がった。
仕事が終わったならリビングに移動したい。
子供達はもう休んでしまったし、早めの夕食は取った後だ。
これからはもう2人の時間である。
「あ。・・・本当だ。僕も肩が痛いのが取れた気がする。
・・・でも不思議だね。『痛み』は解消できなかったのに何が違うのだろう」
「どういう事ですか?」
「セレスが大けがした時にね。
あまりにも痛そうだったから『痛み』だけでも取れないかと思って掛けてみたんだけど・・・利かなかったんだ」
あの時のセレスは魔力も切れ元の姿に戻り、痛みに苦痛で眉を顰めっぱなしだった。
穢れを取ることでセレスが身に着けていた造血の魔法道具はみるみる間に効力を発揮したが、それでも痛みだけには苦しんでいる様子で自分の出来ることの少なさに落ち込んだことを話すと、ガリウスは『そもそも穢れをなくせるのはシャリオンしかいません』と、言われけして力が無いなんてことは無いと言われる。
書斎を出ると2人でソファースペースに戻ってくると、ガリウスが少し離れると2人で楽しむための酒を手にする。
こうして過ごすのが2人の日課である。
酒とグラスをテーブルに置き、準備させている軽食をテーブルに置いた。
シャリオンに合わせ2人が呑むのは白ワインだ。
準備を終えると2人で注ぎ合うと乾杯をする。
「セレスが怪我をした時と言うのは、ドラゴンの穢れの影響などはありませんでしたか?」
「うん。あったよ。魔法でその穢れはとれたんだけど」
「なるほど。・・・、今なら。出来るかもしれませんね」
「え?」
「魔法に名前を付けた後という事と、あの頃のシャリオンと今のシャリオンでは魔法力が変わっていますから」
「・・・技術が足りなかったということ・・・?」
「そうだと思います。もしくは・・・。・・・、」
すると、ガリウスは少し考えた後に、軽食のサンドイッチをカットする為においてあったナイフを手に取った。
そしてシャリオンに見えない様に背で隠した後に、こちらを向くと手の甲を見せてくる。
「もう一度『ヒーリングケア』を掛けて頂けますか?」
「?・・・うん」
言われるがままにシャリオンは先ほどの通りにガリウスに魔法を掛ける。
暖かい光に包まれた後、ガリウスは見せていた手の甲を裏返し手のひらを見せてきた。
「・・・」
そう言いながら手を凝視している様子にシャリオンは首を傾げた。
「どうかした?」
「いいえ。効力が上がっていることに驚いたのです。
ちゃんと努力しているのですね」
その言葉に嬉しくなる。
シャリオンは毎朝、ガリウスと子供達に魔法を掛けている。
今日一日無事に過ごせるようにと願いながらだ。
「今のだけで解るんだ。凄いね。ガリィは。・・・そっか」
「貴方の日々の努力は着実に身になっています」
「聞いていたの・・・?」
「いいえ。忙しい貴方を考えれば、すぐにわかります」
「ふふっ・・・まぁ普通の魔術師からしたら全然足りないし、痛みが消えるようになっただけで、結局は治癒は出来ないからね。それに治癒が出来たとしても失った血は補填されないし」
それを解決したセレスはやはり優れた黒魔術師なのだろう。
そう言えば今頃どうしているだろうか。
「えぇ」
「治癒が出来きたらもっと役に立つのにね」
「とはいえ、貴方は公爵で領主なのですから、魔法に治癒がなくとも良いと思います。
治癒を出来る魔術師に任せましょう」
「まぁそうなんだけど」
すると、ガリウスは思い出したように話題を変える。
「そう言えば。先ほど仰っていた名簿と言うのは何でしょうか」
「あぁ。前に王都に立てた施設に新しい建物を追加しようと思って」
「そうなんですか?」
「うん」
シャリオンは公爵であり、領主だ。
その為に常日頃考えているのは、領にとっての利益だ。
勿論私腹を増やすためと言うよりも、領民に豊かな暮らしをして欲しいという願いからで、今は領に学校を作りたいと思っている。
そのためには資金がどうしても必要で、そこを補うために試行錯誤しているのだ。
正直なところ、ハイシアには目立った工芸品などは無い。
多少の製法の違いはあるが王都とさして変わらないのである。
勿論、今の所ワープリングの売り上げは好調である。
無料で使える国が設置したワープゲートもあるが、入口から入口まで移動できるリングは国内ではとても反響だ。
様々なところで資金を増やすことに着手している。
先日ワープリングを作っている者達から、人以外の物ならものを変えて送ることは出来ると言われたときは転機だった。セレスの様にフリーには作れないが、彼が作った制約の中ではいくらでも作れるという事だ。
なのでシャリオンは単一に送る方法や、永続的にものを送る方法がないか職人に聞いて居るところだ。
単一な方法は勿論出来るが、永続的になるとやはり難しかった。
原因は魔力不足である。
詳しいことはシャリオンには解らないが、引き続き職人たちには研究をお願いしている。
その道は今後の投資として残して置きながら、利益を増やすにはやはり人を動かしかない。
そこでシャリオンは、以前作った女性の集いの場を参考にリニューアルすることにしたのだ。
シャリオンは以前、多額の慰謝料と損害賠償を得た時に、殆どを孤児や女性の為に寄付をした。
その時に、女性が気軽に来れるサロンを作った。
名義はハイシア家は出しておらず、誰しもが気安い環境を目指した。
売り上げすべてが領というわけではなく、数パーセントの給料を課税することにし、優先的にハイシアの人間を雇用するようにしている。
施設は広く、表舞台は女性であるが裏側は男性も入るから平等になるはずだ。
「最初は女性専用と言う珍しさから人が来ていたけれど、物珍しさがなくなってしまったからね」
「具体的に何を作ろうと思っているのですか?」
「うん。総合施設をね。お茶会だけでなく、ドレスや化粧品や小物を取り扱ってる店舗を置こうと思って。
ジャスミンにも相談をしているところなんだ」
「以前のサロンはどうしてしまうのですか?」
「うーん。似たようなのが何個もあっても母数が少ないからね・・・。
あっちは売ってしまうのもいいし、出会いの場として取っておくのもいいかもね」
現状貴族の出会いは社交の場しかない。
「うまく行ったら、ハイシアにも作りたいしね」
「そうですね。ワープゲートを作ったとはいえ、自領にあればその方が良いでしょう」
「うん。今までそう言う総合的なものがなかったからね・・・。
まずは王都で試しで作って、ハイシアには特別なものを取り扱おうと思っているんだ。
本当は直接入って内容を確かめたいけれど、表舞台は男子禁制だからね」
王都には人が集まる。
実験をするにはもってこいなのだ。
「・・・。頑張る貴方を応援しておりますが。・・・あまり頑張りすぎて私を忘れないで下さいね」
「忘れないよ」
「本当に?」
「うん」
「先ほど気づいていただけませんでした」
「!」
そう言うとガリウスは拗ねた様にグイっと体を寄せてくる。
勿論、シャリオンの手からワイングラスを取りテーブルに置くのは同時である。
すとんと後ろに押し倒されるシャリオン。
「っ・・・ごめん。わざとではないのだけれど」
「えぇ。知っています。私が勝手に嫉妬しているだけです」
そう言いながらもシャリオンの上から退こうとしないガリウス。
何を求められているかわかるから、頬は熱くなっていく。
「・・・、体を。・・・沐浴してからね」
そう言うとガリウスは嬉しそうに微笑んだ。
すくりと立ち上がったと思うとシャリオンを抱き上げる。
「っ・・・わぁ」
「ご一緒します」
慌てているシャリオンの首筋に口づける。
そして、なんとも良い笑顔でいうガリウスにシャリオンはクスクスと笑うのだった。
女性王族の身の回りは女性が付くの常である。
その為に、王城には女性王族や側室のお世話をする為の使用人部屋がある。
その部屋には今、数少ない女性貴族がかき集められている。
家督の継がない若い娘達で、その様子に緊張した様子はないが、半分ほどはここに居ることに不満を抱いている。
そんなやる気のない彼女達に長々と老女が言い聞かせる。
名前はロザリアで男爵家の者だ。
しかし毎日同じ内容を聞かされている彼女達の中には、うんざりとしているものがいるようだ。
「女王はアルアディアの歴史でも数少ないことです。
私達は姫様が過ちなきよう導くためにおります。
純粋な系譜ではありませんがアルアディアの血を引くお方で間違いはありません。
皆さん。くれぐれも失礼な態度が無いように」
「「「はい」」」
含みのある言い方である。
その返答の中には心のこもっていない返事も紛れている。
素直に聞く者もいるが、あざ笑ったり、またある者は懐疑的に批判的に思っているようだ。
ロザリアはここ王城の使用人で一番発言力のある人物だ。
亡き元王妃や王太子の元婚約者も知っている人間でつまりはかなりの高齢なのだが、この度本人の志願により現場の復帰に至った。
ブルーノも王命で指示をしたい所だったが、なにせ高齢である。自分よりも歳上であり控えていたのだが、自ら志願してくれたなら拒否するわけがない。
その為今日も彼女は王家の為に熱弁を振るうのだ。
「それと。・・・ハイシアから数名来ていますが、協力はしても手出ししないように」
改めて注意する言葉に一人の使用人が手をあげた。
「学もなく仕事も出来ない無知な人間など追い出したらどうなんです」
「発言を許可しておりません」
「っ・・・質問をよろしいでしょうか」
小さくした舌打ちまでする、その表情は碌でもない。
由緒ある家の者とは思えない振る舞いに、ロザリアは呆れながらもその質問に答える。
「その必要はありません。
それよりも。貴方は・・・顔に出しすぎです。
そんな調子では奉公したと口にされるのは王家の恥になります」
「!」
注意された若い使用人は謝罪を口にしつつもまったく理解しておらず、嫌味を言われたことにあからさまに顔を顰めた。
ロザリアはそれを冷ややかに見ながらもすぐに視線を逸らす。
この後直ぐ去るであろう者に時間をかける暇はない。
ルークの婚約者候補として集められ育てた者達は結婚してしまい数名しか戻ってこなかったため、早急に彼女達を育てる必要があるのだ。
アシュリーの専属であるアリア達が出来る者だとしても圧倒的に数が少ないのである。
奉公に出される者達の中には家督を継がない為に甘く育てられ世間知らずで我儘な傾向があり、今まで使用人がいた生活が一転し仕える側になる事に、ある程度各自の家で行儀見習いの手ほどきを受けているにもかかわらず、やはり最初はついていけない者が多い。
ルークの子供が女性だった場合は気軽に声をかけてくれと言っていた家も、養子となったら無理だという者ばかり。
アシュリーの為に集められた使用人達は未熟な者が多く、そのために高齢でありながら彼女の志願が許可されたのもある。
『この中で一体どれほどが残るのでしょうねぇ』と、ロザリア思う。
彼女は彼女なりに王家の為にアシュリーの筆頭使用人になったのだ。
とは言えかなりの高齢で杖をつき腰が90度に曲がっている彼女は、現場に頻繁に出ることは出来ない。
ある時から突如痛み出した足腰は痛み長い距離は歩けないのだ。『もう少し若ければ』なんて、何度思ったことか。
そうであれば自分がバリバリ動いて、このような小娘達の考えを改めさせるというのに。
若い2人に養子と言うことに驚きが隠せなかったが、しかしながら陛下も認められているこの状況に、逆に良かったと思っている。
なぜならばルークの子どもとなると、その頃にはロザリアに口出しすることが恐らくできないだろう。
長く生きた体はガタがきている。
足腰だけでなく関節は衰えからか常に痛み、医者から処方された痛み止めを飲んでここに立っている。
現場を直接見て口出しを出来ないことに歯がゆさを感じるが、今に感謝しなければ。
何故こんなにも焦燥感があるかと言うと、若い使用人達が王女になるアシュリーを見下していることを肌で感じているからだ。
どの様な決定でも使用人が口を出すことではない。
だから老女はアシュリーに仕える気持ちはあるのだが・・・。
ハイシアからつけたられた女性使用人を思い浮かべる。
幼い娘を養子に出すのに家の者をつけたくなる親としての心情は解る。
しかし、付けた者が宜しくなかった。
アリア達やウルフ家の者が悪いという事ではない。
能力はとても素晴らしい。
ハイシア家がサーベル国の出であるウルフ家をアルアディアのハイシアに国籍を移させ自らの使用人にしていることは有名な事で一般人もで知られている話だ。
しかし、それは悪い意味での根っからの『貴族』の娘達には良くなかったのだ。
専属につけられるのが『貴族ではない事』と、そしてそれが『公爵家の令嬢』だからと言う事だ。
女王になるアシュリーを見下していることが許せないのだ。
ロザリアはアルアディア家に心から尊敬し敬愛を抱いている。
故に昨今続いている王家に流れる良くない話をこれ以上悪化するわけにはいかないのだ。
「アシュリー様に仕えられることを幸せに思いなさい」
ただの王族であればここまでは苦労もしないし、彼女現場復帰などせずに家で王家の吉報を喜んでいただろう。
そう伝えると、ロザリアは彼女を達を部屋から退出させる。
「・・・なんとしても王族に平穏もたらさねば」
厳しい目つきをしながらこれからのことを考えるのだった。
★★★
【別視点:???(B)】
口うるさい筆頭使用人であるロザリアから解放されると思い切りため息を吐く。
王城には防音魔法が使われており、部屋の中には聞こえないことを知っているからだ。
「なんなのですの?あの婆さんは!」
「!?声を抑えて下さい。誰かに聞かれるかもしれません」
そう注意されつつも彼女の悪態は止まらず、まだ幼さの残る若い声は広く長い廊下に響いた。
「部屋の中には聞かれませんが、廊下にいる誰かには聞かれてしまいます」
「煩いのは貴女ですわ。
私のすることに口出しするおつもり?」
「・・・」
「それに私は事実しか言っておりませんわ。
それに男爵家の家の出の者に減り下っては我が家の面子にも関わります。
あの婆さん・・・父上に言って黙らせようかしら」
凶悪な表情を浮かべて、廊下を闊歩する同僚にそれを聞いて居る者達は苦笑を浮かべる。
彼女の家格は確かに上位であるが、王城の中で問題を起こすわけには行かないし、この奉公が終わったあとに嫁ぐことになる。その相手がこの城の中に居るかもしれないからだ。
「毎日同じことしか言えず耄碌しているならさっさとおやめになればいいのに。
陛下が再び勤務する事を許可したと言いますけれど、高齢の老婆に絆されただけでしょう。
それを良くあれだけ威張れますわ」
忌々しそうにそう呟いた後ため息を吐いた。
「それよりも不愉快なのは、・・・例の件です」
この奉公は親に無理やり入れられており不満しかない。
親にはアシュリーと親密になるようにと命じられているが、常に最上級の者を与えられた彼女は王太子の実子でもない子供に仕えるのは面白く思っていない。
だが、その話題になると一緒に歩いていたはずの同僚の使用人たちはパラパラとはけて行くが、彼女は気づいていない。残っているのは彼女の取り巻きや、彼女の家と親しくなりたい者達であった。
「何故私が碌に話せない小娘の面倒見なければならないのかしら。
それも孤児を専属使用人につけなければならない程ハイシアは落ちぶれているということではありませんか」
「王族の方と懇意になさってるから何か援助でもあるのでは?」
「それは当然でしょう。
殆ど王家の血も残っていないような公爵家でしょうに。
得意の色仕掛けで依怙贔屓され図に乗っているんですわ」
「王家の方が降格されたのはいつ頃だったのでしょう」
「知りませんわ。古臭い家であることは間違いありませんけれど。
陛下や殿下に強請り娘を養子に出すなんて。
殿方に『天使』だなんてちやほやされていたいましたけれど、実は真っ黒でしたたかな方なんですのね。あの男は」
彼女が辛辣に言うのも一応理由があった。
「一目ぼれをして婚約を申し込んだ方がハイシア公爵を慕っていて袖にされたことをまだ根に持っていらっしゃるの?」
おっとりとした口調だが言っていることは辛辣だ。
言われた娘は彼女はキっと睨んだ。
「違いますわ!私があの家の狡猾さも見ぬけない愚図だとこちらから破棄したんです!!!」
苛烈に怒りを露わにする。
その声は今まで以上に響いた。
「ちょっ・・・流石に声が大きいです!抑えて!」
友の呼びかけは事実だが、つまらなそうにフン!そっぽを向いた。
「私、どうせならアンジェリーン王太子配殿下に仕えたかったですわ」
「けれど、アンジェリーン王太子配殿下の相談役は・・・」
「アンジェリーン王太子配殿下だって、そんな廃れゆく家よりも私の方が良いと言うに決まっております。
どうせ、相談役も王太子殿下から同情で付けられた立場でしかありませんわ。
幼馴染というのを悪用するなんて貴族の風上にも置けません。
とにかく、これ以上あの家をこれ以上調子づかせてはいけないのです。
王太子配殿下もアンジェリーン王太子配殿下もお若いのですから、お二人のお子を諦めさせては駄目なのです。
・・・、・・・そう。そうよ・・・!
あの男もしかしてその可能性があるのにも関わらず潰して自分の娘を女王に仕立てて王家を乗っ取ろうとしているんじゃありません!?
えぇ。・・・・、えぇ!きっとそう!」
謎の思考回路を肯定し興奮し始め、振りむいた彼女は意地の悪い笑みを浮かべている。
「私が目を覚まさせて差し上げれば全て万事休すですわ。
そしてお二人の間にもし男児が生まれたら・・・フフっ」
「さすがに歳の差が過ぎると思いますわ」
「あら。陰謀を阻止したのですから、それくらいあっても良いですわ」
「でもそうするとあの家もどうなるのでしょうね。
温情で取り潰しにはならないでしょうが」
否定してもそういう風に言うとムッとする。
「どうでも良いですわ。・・・本当に忌々しい」
「以前はそんなに毛嫌いしてなかったですのにね。寧ろ・・・」
暗に含ませて言った後、くすりと笑った。
「ふふっ・・・貴女、こっそり囲っていそうですわね」
それに否定をせずに嗜虐的な笑みを浮かべると、自分で振ったくせに大げさに驚いて見せた。
「まぁ。怖い」
「そんな事よりも、いつになったら、その問題の小娘に会えるのかしら。
私との格の違いを見せてやろうと思ったのだけれど。
・・・あぁ、まだ言葉も話せない馬鹿なのだからわかりませんわね」
高飛車にそう言う女性に、ついに一緒にいた女性が我慢できなくなったようだ。
「心の中でどんな風に思っていても構わないけれど、それを口にだして良い場所かよく考えて欲しいわ」
そう言ったところでおっとりと口調の女性が、サッと手を広げ遮った。
それは攻撃的に注意した女性を冷ややかに見だ。
「まぁまぁ。そんな風に強く言ったら怖いですわ」
目が笑っていない女性がそれを止めると、注意した女性は口をつぐみ謝罪を口にする。
「・・・失礼いたしました」
「だそうですわ。
そもそも言われなくとも貴女は解ってらっしゃるわよね」
「解っているに決まっているでしょう。・・・いちいち注意しないで頂戴。
あんまりしつこいと父上に報告するから」
高飛車な女性に睨まれると女性は息を飲んで頭を下げた。
「!・・・っ・・・申し訳ありません」
「まぁまぁ。『お友達』が謝ったのですから。ね?
・・・それよりもお城にはたくさん人がいらっしゃるのですから、いろいろお話を聞きに行きませんか?
面白いお話が聞けるかもしれません」
高飛車な女性はまだむしゃくしゃとしていたが盛大にため息を吐いた後、その提案にコクリと頷き仕事もそっちのけで城を闊歩し始めるのだった。
「それもいいけれど。・・・ねぇ。もう帰ってしまいませんこと」
「それは流石に。家に戻ったらバレてしまいますわ。使用人に与えられた部屋にということですの?」
「違いますわ。ここではあまり自由にお話も出来ませんもの」
今まで散々話していたというのに、何を言い出すのだろうか。
それはつまり王城の外を意味さす。
すると、太鼓持ちで居た者達が息を飲んだ。
「あの小娘に集められたのは数十名。数人いなくなっても解りませんわよ」
「まぁ。それは良いですわね」
「・・・。私は残ります」
今まで注意していた女性がそう言うと、一緒にいた女性がわらわらと賛同する。
「私もとてもご一緒したいのですけれど、この後予定がありますの」
「・・・。それは、仕方がありませんね。
逆にちょうどいいかもしれません。
全員が行ってしまったらフォローが付きませんので」
傲慢な女性に注意を促していた女性がそう言うと、賛同していた女性たちがホッとした。
人数が減ったことに文句を言うかもしれないとも思ったが、今はロザリアからの叱責の方が面倒なようだ。
「あら。ありがとう。あの婆さんを上手くだまして置いてちょうだいね」
そういうと、高飛車な女は残った人間にニコリと微笑んだ。
「子猿に毛が生えた程度の小娘を見るために私たちが努力するなどバカげたことはやめて、ご一緒しませんこと?」
それはまるで悪魔なような微笑みに、逃げ出したくとも出来ない雰囲気だった。
この話を誰かに聞かれているとも見当もつかずに、彼女達は目的の場所へ遊びに出るのだった。
★★★
【別視点:ライガー&ルーク&アンジェリーン】
ー・・・、話は数日後。
王太子自室。
部屋の主と、ライガー。そしてアンジェリーンがいる。
優雅に酒をたしなみながらお話をしている。・・・わけなく。
結界や警備が敷かれたここはすっかり作戦会議室と化している。
なお、会話は怪しげだが酒を楽しむでいる。
手元のワインのせいで顔を赤く染めながらも、いつも以上に饒舌だ。
色素が薄く赤くなりやすいが酒は強いアンジェリーン。
「まったく。他人の家に煩いことこの上ない」
「まぁ・・・俺達は貴族とは違うからな」
苛立たしげに悪辣を吐く、2人を宥めるのはライガーの役目になりつつある。
アンジェリーンに事実を言うと、ルークがアンジェリーンを賛同する様に文句を言う。
「シャリオンと立場が同じだったら絶対言わないね。
あいつ等はそう言う奴らだ」
「そういう人間ばかりじゃないだろう」
「「(兄上)(ライガー)はどちらの味方なの(です)!!」」
「えーっと」
腹立たしげに2人揃って吠えるものだから、ライガーは苦笑を浮かべた。
文句を言う相手では無くてアンジェリーンは視線を逸らし、ルークもアンジェリーンの空いたグラスにワインを満たしながら矛盾にも文句を言う。
なお、ライガーとルークはブランデーを、アンジェリーンは赤ワインをたしなんでいる。
一度酒を呑んだ時から、素面よりもマシと言う理由と目の前で親がしている光景に、好かないが運命共同体になってしまったアンジェリーンに気を使う様になった。
しかし、それは愛し合った伴侶にするのとは違う。
「おい。面倒だからここで潰れないでね」
「ふん。たとえそうなったとしても使用人を呼びます。・・・ライガー頼みましたよ」
「あはは・・・あぁ」
「兄上は小間使いじゃないんだが?」
「(だったら何故お前も注ぐんだ)」
もしもの時は使用人は呼んでくれるようにライガーに頼むアンジェリーンに、ルークが苛立った様に文句を言うがアンジェリーンはうざったそうに言い返す。
「だれもそんな事思ってません。それとも私がここで酔いつぶれても良いのですか」
「冗談は寝て冷めてから言ってくれない?
ベッドなんて貸さないからな」
「その方がありがたいです。変に親切心を出されて共に目を覚ました朝なんて地獄以外何物でもありません」
「っ・・・そうなったら、俺はソファーに行こうと思ってたけど。
やっぱり廊下に放りだしてやる」
「えぇ。その方がありがたいです」
そういう2人にライガーはため息を吐きながら目の上に手を当てた後、まだしばらく文句を言いあっている2人に視線を向けた。
「わかった。わかった。俺が責任をもってアンジェリーンの使用人を呼ぶから」
「頼みましたよ」
「兄上がそんな事しなくていい」
「ルー。良いから。
・・・この部屋を見てくれている使用人は信用がおける家ばかりのはずだがそうじゃない場合もあるだろう。
そんな人間に泥酔している王配を廊下に放りだしたとなったら、最悪どこまで飛び火する?」
「・・・、」
「・・・申し訳ありません。私も少々過ぎました。安心してください。そこまではもうしません」
ライガーの言葉にルークは嫌そうにしながらも頷き、アンジェリーンもハッとして謝罪を口にする。
以前、あまりにも面白くない話を聞いたときに、勢いに任せて飲みすぎてしまったことがあり、あまりにも帰ってこないアンジェリーンに専属の使用人が迎えに来てくれたのだ。
「そもそも、その使用人に時間になったら迎えに来させれば良いんじゃないか?
「あら。その時に話が盛り上がっていたら興がそがれるでしょう」
「・・・お前は何時まで俺の部屋を占拠するつもりだ」
「私の気が済むまで。貴方方も寝かせませんよ?」
なんて横暴なのだろう。
これが、同じセリフで同じ目的だったとしても『彼』に言われたならば、口では注意をしながら、どきどきとして嬉しいのは間違いないのだが。それは言った本人でさえ思っている。
暴君なアンジェリーンに呆れた様にため息を吐きながらもルークは肘掛けに肘を置き手に顎をつく。
「それよりも例の件はちゃんと進んでるんだろうね」
「えぇ。ちょうどいい人間と連絡を取れました」
「誰だ」
「秘密です。本人がいまだに駄々をこねているのです」
「それは・・・大丈夫なのか?」
不安になるような言葉に、ルークを眉を顰めた。
この計画の要がそんな様子では困る。
ライガーとルークが顔を見合わせた後、ルークが低い声で答えた。
「やはり、俺の方で準備する」
「だから貴方では駄目なのです。何度も言っているではありませんか」
信用が出来ない人間に依頼するのは不安だというルークの意見も解るが、実際の所アンジェリーンの言葉も解るライガーは頷いた。
「そうだな。
・・・どうしたらその人間を本気にさせることが出来る?」
「気の小さい男ですから・・・。より強力な後ろ盾がいると知れたなら力を貸します」
「『大公』の名前を貸すのはいくらでもできる。が、本当に信頼できるか問題だ」
ライガーの言葉にルークも頷くと、アンジェリーンは『フフフっ』と笑った。
「土壇場になって逃げだしてしまうような男ではありません。
自分が大丈夫だと判断できるまでが慎重なだけです。
その代わりに引き受けたなら完璧にこなすでしょう」
自信満々で言うその姿にならば聞きたくなるところだが、アンジェリーンはその名を明かさなかったが、言い切るその様子から余程信用できる人物なのだろ思った。
「・・・問題は、あの男にいかにバレないようにするかだけですね」
この計画はどうしても失敗したくない。
しかし、いくつかある問題の中で一番の懸念点は『あの男』に知られてはいけない。
知られたら最後計画をぶち壊されてしまうからだ。
慎重に進めなければ。と、意気込むアンジェリーンにライガーはクスクスと笑った。
「君まさかバレないと思っているのか?」
「・・・どういうことです」
「とっくに知られているよ。その上で放置されているんだ。ガリウスはそう言う男だ」
「そうだね。で。自分は(シャリオンに)『知らなかった』って、言う体裁をとるね」
「そん、なこと」
「アンジェリーンの先鋭部隊を使ったとしてもね。俺のを使っても同じ。いや、本当に優秀で頼もしいよね」
知られているというのに満足げに頷くルークにアンジェリーンは眉を吊り上げる。
「待ってください。ならば、何故、何も言ってこないのですか」
「『デメリット』がないからだろう。
じゃなければ、シャリオンのことについて誰にも触れさせたくないのが本心の男が許しておくわけがない」
そう言った後に、ルークが酒を煽る。
でもその表情は楽し気で余計にアンジェリーンはつまらなかった。
「自分の手柄にするということですか」
グラスを持つ手が怒りで震え表情は心底怒っている様子に2人は笑ってしまった。
まだアンジェリーンはガリウスと言う男が良くわかっていないようだ。
『手柄』だとかそんなことは考えない。
褒めて欲しいことや他人が信用できない事は自ら動くし、そうではない時はシャリオンの為になる時でそれについて監視しながら境界線を越えない限りは口も出さない。
「ふふっ・・・君の『ガリウス嫌い』は直らなそうだね」
「はぁ?・・・それは無理な話です。もともと嫌いな男なので」
ふん!と鼻息荒く言うと、ますます進む酒にライガーはルークが注ぐ前に取り上げた。
「明日も子供達と会うのだろう」
「・・・、そうでした」
睨まれた視線はその言葉にハッとして、諦めたようだ。
ライガーはグラスに水を注いでやりながらアンジェリーンに手渡す。
「明日の予定を取りやめるならいいが。酒が残っている状態で、いくら王配の君でも子供達には会わせられない」
「取りやめません。えぇ。そんな状態ではあの子達に会いません」
ライガーは怒られると思ったが、以外にも怒らずに承知した。
「ルーも。呑みすぎだぞ?お前はたとえ酒が残っていても執務に当たってもらうがな」
「当然。どっかの誰かと違って顔に出ないから」
「っ」
「ルー。・・・はぁ・・・お前は子供か」
「本当にそうです」
「・・・もとはと言えばアンジェリーンが俺に突っかかってきたのがいけない。
長くされてきたことに、今更仲良くしろなんて難しい」
表情から読み取れないが、サファイアの瞳をじっとりとさせてライガーに訴えてくる。
ライガーに言われて困るのだが、ここでアンジェリーンに言わないだけましだろう。
「シャリオンに。子供達に泣かれてしまいますから。・・・控えて下さい。私も気を付けます」
「・・・、・・・、・・・悪かった」
「・・・私こそ。申し訳ありません」
珍しくアンジェリーンが譲歩しライガーもルークも驚いた。
しかし、そうなるとルークも子供のような反応が恥ずかしくなり、謝るとアンジェリーンも素直に謝る。
ライガーはその様子を前から見ながら、小さくため息を吐いた。
放っておけばアンジェリーンと言う加速装置に、ルークが止められるわけもない。
最近では『止められないなら、そのまま突っ走ればいい』とでも思っているのか、煽るような節もある。
最終的に彼を止められるのはシャリオンで、同時にそれはシャリオンに怒られるというわけだ。
アンジェリーンの我儘にシャリオンが振り回されいう事を聞いてしまってあげているのが面白くないのだ。
だとしても我が弟ながら意地が悪いとも思い、注意をしてそれは少しは収まったのだが。
ライガーが2人を止めるのはバランス的な性質もあるがそれだけではない。
アンジェリーンの暴走が度を過ぎたら、止めて欲しいとガリウスに言われているのだ。
ガリウスが直接交わらないのは、これがシャリオンが嫌いなことだと理解している為手を出さない。
正確にはシャリオンとの約束で『手を出せない』と言った方が正しいだろう。
「そもそもガリウスに目を付けられて秘密裏に動くなんて無理だろう?」
「・・・。その話本当なのですか」
「あぁ。レオン殿から聞いたから間違いない。元ある力を封じていたのを解放したそうだ」
するとアンジェリーンの眉をが深く刻まれる。
「・・・。そうでしたね。・・・本当に、そんな神経質なわけないでしょうに。
でなければシャリオンは・・・っ」
ガリウスが魔力を封印してた話を聞いて居るアンジェリーンは本当に納得がいっていない。
当時、セレドニオが黒魔術師であったことを察知出来たのは後の話であり、当時を知らないアンジェリーンにはガリウスが怠っていた様に見えるのだ。
過去のことに烈火の如く怒り始めるアンジェリーンに、ライガーもルークも苦笑する。
「これからはそんなこともない」
「シャリオンを守れるのに最適なのはガリウスしかいない」
「・・・えぇ」
笑顔に出来るのも守るのもすべて出来るのは、ガリウスの隣だけだ。
そう、頭では理解しているのだ。
★★★
【シャリオン視点】
王城に与えられた部屋。
その中にある書斎を執務に充てている部屋で、シャリオンは今日最後の書類にサインをすると同時に盛大なくしゃみをする。
「へっくしゅっ」
くしゃみと共にふわりと掛けられたのはストールだ。
ゾルにお礼を言おうと思うとそこにいたのはガリウスだった。
「大丈夫ですか?」
「!!」
心配げに覗き込んで来るガリウスに笑顔を浮かべた。
いつ部屋に帰ってきたのだろうか?
隣に立ったのも気づかなかったのでシャリオンは驚いてしまった。
「ガリィ。お仕事終わったの?お疲れ様」
「シャリオン。その前に書類をよこせ」
すると、ガリウスとの会話を割くように手が伸びてきた。
「あ・・・あぁ。じゃぁこれ、ゾルよろしく。今ので最後だよね?ゾルも下がっていいよ」
「あぁ。おつかれ。もう俺の目的は叶った。後は好きなだけ、いちゃつけばいい」
会話が始まる前に素早く書類を回収していくと、意地悪気に頬笑みながらシャリオンとガリウスに今日の挨拶をすると部屋を出て行った。
そんな様子に苦笑を浮かべた。
「酷いですねぇ。・・・今のは風邪ではないですか?」
「うん。ちょっとした埃だと思う。
昼間に名簿を見てたんだけどそれからなんかくしゃみが止まらないんだ」
すると、ガリウスがするりと指を絡ませる。
「ではそう言うときは『ヒーリングケア』をしましょう」
「あ。そうだったね」
もう一人で出来るようになったが、やはりガリウスと行うと効き目というか自信が違う。
2人で手をつなぎ魔力を感じ合いながら、シャリオンはガリウスを含めてこの部屋いっぱいに『良くなりますように』と願った。
終わった後、瞳を開けるとアメジストの瞳がこちらを真っすぐとみていて、なんだか恥ずかしかった。
幼いころから魔法を使うという習慣がなかったシャリオンは、思考共有もそうだがするのを忘れがちである。
毎日、魔法の練習を短い時間ながらに練習をしていながらも、肩こりに魔法を使おうという発想がわかない。
「うん。鼻がすっきりした気がする」
「それなら良かったです。私の方もすっきりしました」
「どこか悪い所があったの・・・?」
城に居れば防衛している魔術師達のお陰で状態異常にかかることはないと思っていた。
すると、肩を揉みしだきながら笑顔を浮かべた。
「肩こりが楽になった気がします」
「肩こりにも効くんだ」
「そのようです」
『へぇ』と驚きながら、シャリオンも立ち上がった。
仕事が終わったならリビングに移動したい。
子供達はもう休んでしまったし、早めの夕食は取った後だ。
これからはもう2人の時間である。
「あ。・・・本当だ。僕も肩が痛いのが取れた気がする。
・・・でも不思議だね。『痛み』は解消できなかったのに何が違うのだろう」
「どういう事ですか?」
「セレスが大けがした時にね。
あまりにも痛そうだったから『痛み』だけでも取れないかと思って掛けてみたんだけど・・・利かなかったんだ」
あの時のセレスは魔力も切れ元の姿に戻り、痛みに苦痛で眉を顰めっぱなしだった。
穢れを取ることでセレスが身に着けていた造血の魔法道具はみるみる間に効力を発揮したが、それでも痛みだけには苦しんでいる様子で自分の出来ることの少なさに落ち込んだことを話すと、ガリウスは『そもそも穢れをなくせるのはシャリオンしかいません』と、言われけして力が無いなんてことは無いと言われる。
書斎を出ると2人でソファースペースに戻ってくると、ガリウスが少し離れると2人で楽しむための酒を手にする。
こうして過ごすのが2人の日課である。
酒とグラスをテーブルに置き、準備させている軽食をテーブルに置いた。
シャリオンに合わせ2人が呑むのは白ワインだ。
準備を終えると2人で注ぎ合うと乾杯をする。
「セレスが怪我をした時と言うのは、ドラゴンの穢れの影響などはありませんでしたか?」
「うん。あったよ。魔法でその穢れはとれたんだけど」
「なるほど。・・・、今なら。出来るかもしれませんね」
「え?」
「魔法に名前を付けた後という事と、あの頃のシャリオンと今のシャリオンでは魔法力が変わっていますから」
「・・・技術が足りなかったということ・・・?」
「そうだと思います。もしくは・・・。・・・、」
すると、ガリウスは少し考えた後に、軽食のサンドイッチをカットする為においてあったナイフを手に取った。
そしてシャリオンに見えない様に背で隠した後に、こちらを向くと手の甲を見せてくる。
「もう一度『ヒーリングケア』を掛けて頂けますか?」
「?・・・うん」
言われるがままにシャリオンは先ほどの通りにガリウスに魔法を掛ける。
暖かい光に包まれた後、ガリウスは見せていた手の甲を裏返し手のひらを見せてきた。
「・・・」
そう言いながら手を凝視している様子にシャリオンは首を傾げた。
「どうかした?」
「いいえ。効力が上がっていることに驚いたのです。
ちゃんと努力しているのですね」
その言葉に嬉しくなる。
シャリオンは毎朝、ガリウスと子供達に魔法を掛けている。
今日一日無事に過ごせるようにと願いながらだ。
「今のだけで解るんだ。凄いね。ガリィは。・・・そっか」
「貴方の日々の努力は着実に身になっています」
「聞いていたの・・・?」
「いいえ。忙しい貴方を考えれば、すぐにわかります」
「ふふっ・・・まぁ普通の魔術師からしたら全然足りないし、痛みが消えるようになっただけで、結局は治癒は出来ないからね。それに治癒が出来たとしても失った血は補填されないし」
それを解決したセレスはやはり優れた黒魔術師なのだろう。
そう言えば今頃どうしているだろうか。
「えぇ」
「治癒が出来きたらもっと役に立つのにね」
「とはいえ、貴方は公爵で領主なのですから、魔法に治癒がなくとも良いと思います。
治癒を出来る魔術師に任せましょう」
「まぁそうなんだけど」
すると、ガリウスは思い出したように話題を変える。
「そう言えば。先ほど仰っていた名簿と言うのは何でしょうか」
「あぁ。前に王都に立てた施設に新しい建物を追加しようと思って」
「そうなんですか?」
「うん」
シャリオンは公爵であり、領主だ。
その為に常日頃考えているのは、領にとっての利益だ。
勿論私腹を増やすためと言うよりも、領民に豊かな暮らしをして欲しいという願いからで、今は領に学校を作りたいと思っている。
そのためには資金がどうしても必要で、そこを補うために試行錯誤しているのだ。
正直なところ、ハイシアには目立った工芸品などは無い。
多少の製法の違いはあるが王都とさして変わらないのである。
勿論、今の所ワープリングの売り上げは好調である。
無料で使える国が設置したワープゲートもあるが、入口から入口まで移動できるリングは国内ではとても反響だ。
様々なところで資金を増やすことに着手している。
先日ワープリングを作っている者達から、人以外の物ならものを変えて送ることは出来ると言われたときは転機だった。セレスの様にフリーには作れないが、彼が作った制約の中ではいくらでも作れるという事だ。
なのでシャリオンは単一に送る方法や、永続的にものを送る方法がないか職人に聞いて居るところだ。
単一な方法は勿論出来るが、永続的になるとやはり難しかった。
原因は魔力不足である。
詳しいことはシャリオンには解らないが、引き続き職人たちには研究をお願いしている。
その道は今後の投資として残して置きながら、利益を増やすにはやはり人を動かしかない。
そこでシャリオンは、以前作った女性の集いの場を参考にリニューアルすることにしたのだ。
シャリオンは以前、多額の慰謝料と損害賠償を得た時に、殆どを孤児や女性の為に寄付をした。
その時に、女性が気軽に来れるサロンを作った。
名義はハイシア家は出しておらず、誰しもが気安い環境を目指した。
売り上げすべてが領というわけではなく、数パーセントの給料を課税することにし、優先的にハイシアの人間を雇用するようにしている。
施設は広く、表舞台は女性であるが裏側は男性も入るから平等になるはずだ。
「最初は女性専用と言う珍しさから人が来ていたけれど、物珍しさがなくなってしまったからね」
「具体的に何を作ろうと思っているのですか?」
「うん。総合施設をね。お茶会だけでなく、ドレスや化粧品や小物を取り扱ってる店舗を置こうと思って。
ジャスミンにも相談をしているところなんだ」
「以前のサロンはどうしてしまうのですか?」
「うーん。似たようなのが何個もあっても母数が少ないからね・・・。
あっちは売ってしまうのもいいし、出会いの場として取っておくのもいいかもね」
現状貴族の出会いは社交の場しかない。
「うまく行ったら、ハイシアにも作りたいしね」
「そうですね。ワープゲートを作ったとはいえ、自領にあればその方が良いでしょう」
「うん。今までそう言う総合的なものがなかったからね・・・。
まずは王都で試しで作って、ハイシアには特別なものを取り扱おうと思っているんだ。
本当は直接入って内容を確かめたいけれど、表舞台は男子禁制だからね」
王都には人が集まる。
実験をするにはもってこいなのだ。
「・・・。頑張る貴方を応援しておりますが。・・・あまり頑張りすぎて私を忘れないで下さいね」
「忘れないよ」
「本当に?」
「うん」
「先ほど気づいていただけませんでした」
「!」
そう言うとガリウスは拗ねた様にグイっと体を寄せてくる。
勿論、シャリオンの手からワイングラスを取りテーブルに置くのは同時である。
すとんと後ろに押し倒されるシャリオン。
「っ・・・ごめん。わざとではないのだけれど」
「えぇ。知っています。私が勝手に嫉妬しているだけです」
そう言いながらもシャリオンの上から退こうとしないガリウス。
何を求められているかわかるから、頬は熱くなっていく。
「・・・、体を。・・・沐浴してからね」
そう言うとガリウスは嬉しそうに微笑んだ。
すくりと立ち上がったと思うとシャリオンを抱き上げる。
「っ・・・わぁ」
「ご一緒します」
慌てているシャリオンの首筋に口づける。
そして、なんとも良い笑顔でいうガリウスにシャリオンはクスクスと笑うのだった。
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・固定カプ予定は無い
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・不定期
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