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執着旦那と愛の子作り&子育て編
死山。
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今日は朝からテンションが上がらない。
苦しく押しつぶされそうな気分だ。
頭ではガリウスには考えがあっての事だと分かっている。
それに、なんだかいつものガリウスとは様子が違っていた様にも感じて、それが余計に気になってしまう。
ガリウスは攫われた時は『大丈夫です』とは言ったものの、今の段階でもそうかと言ったら別の話かもしれない。
しかし・・・。
朝連絡を貰ってから考えてばかりだ。
思考共有を掛けているゾル曰く『生命の危機や洗脳の気配は感じられなかった』と言われたが、心配をするなと言うのが無理な話である。
鬱々としながらも、書類に目を通していると、部屋の扉が開いた。
「「っちちうぇ~っっ」」
大きな涙粒を流しながら、シャリオンの胸に飛び込んでくる2人を抱きとめる。
憂鬱な気分だったが、我が子が泣いていると思ったら少しだけおさまった。
「どうしたの?そんなに泣いて」
2人の涙をハンカチで拭いてやりながら、魔法で飛んできたことを注意することも忘れてしまう。
「とうさまぁ・・・」
「・・・おへんじくれない」
えぐえぐと泣く子供達に、ハッとした後ギュッと抱きしめた後、膝に乗せた子供達の背中を優しく撫でる。
「大丈夫。父様は今お仕事中だからだよ」
「でもぉっ・・・せれしゅっ」
「せれすみたいねんねしたままになっちゃ」
「・・・、」
子供達は魔力が高く素質もある為、思考共有以外にも出来ることが有るのだろうか。
とても不安になったが、ガリウスは『催眠の歌』を歌われたと言っていた。
それなら、対策を打っている筈だ。
・・・大丈夫。きっと大丈夫。
自分に言い聞かせ、子供達を安心させるように言う。
「父様は働き者でしょう?
だから少しお休みしているんだよ」
「ちちうえのそばじゃないのに?」
「とうさま、ちちうえのそばがいちばんすきっていってた」
慰めようとしたのに、まさか逆に慰められた。
「ガリィ・・・そんなこと言ってたの?」
「「うんっ」」
そう力強く返事をする2人に苦笑をする。
「起こせたらいいんだけどね」
ガリウスもセレスも何か目的があるのかも知れないが。
特に今朝知らせてきたガリウスは何かしている最中なのかも知れない。
「いいの?」
「え?」
「ちちうえとせれす、起こしてもいい?」
「おこ、せるの?」
「「うん!」」
てっきりシャリオンは存在は分かるが、それだけだと思っていた。
今ならドラゴンも上空にいるわけで、セレスの危機は大分下がったのではないだろうか。
「お願い・・・!」
そう、2人にお願いしようとしたところだった。
「まちなさい」
音もなく現れたのは、黒魔術師ジャンナだった。
皆一斉にそちらを見れば、彼女はとても厳しい顔をしている。
ゾルは警戒し、シャリオンとジャンナの直線状に割って入る。
『・・・シャリオン。気を引き締めろ』
思考共有されたゾルからの言葉にコクリと頷く。
以前、ハイシアの専属黒魔術師になりたいと言っていたから、セレスを助け出されたらその話もなくなると思っているのだろうか。
「悪いけどもう待てない。
セレスは1ヶ月は意識がないままだ。
手立てが見つかったならもう時間はかけられない」
「1ヶ月以上も放置していたのです。
彼でなくても良いでしょう」
酷く冷たく事務的に言われたその言葉は、シャリオンの琴線に触れそうになるのを、
寸前のところで押さえた。
「確かに1ヶ月以上も見つけられなかったのは、
僕の落ち度だ」
ウルフ家に頼みハイシアだけでなく、アルアディア全域を探しているが未だ見つからない。
魔法で突如消えたセレスの足取りはなかなか追えてない。
彼等はよくやってくれている。
指示を考えられないシャリオンのせいだ。
「けど、セレスの代わりなんて誰にもなれない」
「・・・。魔力がなくなり使えなくなってても?」
「え?魔力は回復するでしょう?」
「過剰な魔力の消費で人体ともに傷を負っているなら、自己修復などが使えないならその可能性もありますわ」
「そんな可能性があるの?!」
「現に使えなくなった黒魔術師が居ます」
「?!」
シャリオンの体から一気に血の気が引いた。
しかし、そんな様子にジャンナは侮蔑を含んだ冷笑を浮かべた。
「当たり前でしょう。・・・貴方も所詮同じ」
「っ2人とも!早くセレスを起こして場所を聞いて!」
「「はーい」」
その言葉にジャンナは驚いていたが、シャリオンはそれどころではない。
「ゾル!派遣できる人物を招集!急いで!!」
「わかった」
「っどうしよう・・・生きてるって言うから、どうにかしてるのかと・・・っ」
怪我をしていても、セレスは治癒も出来て造血の魔法道具もあるのだから、どこか大丈夫なのではないかと思ってしまっていた。
「落ち着けシャリオン。生きてる事には違いない」
「魔力がない状態じゃ生身で満足に動けるわけないでしょう!!」
「だからって、慌てて視野を狭くするな。深呼吸しろ」
「っ」
ゾルの言葉にハッとした。
こんな時に取り乱しては駄目だ。
駄目だと分かっているのに、こういう状況になるとどうしても一点しか考えられなくなってしまう。
そんな時にはゾルがいつもシャリオンを落ち着けてくれる。
シャリオンは反省しながらも、素直に深呼吸する。
脈拍が落ち着いてくるのを見計らって、未だジャンナを警戒し間に立つゾルに声を掛けた。
「・・・ごめん、ありがとう。ゾル」
「気にするな」
「それよりこれを」
もう1人ゾルが現れた。
最近人を気にすると言う事が少し薄れてきた様に思う。
いや。
ゾル達がこのジャンナをそれだけ警戒しているのだ。
机の上に広げられたのはアルアディア全域の地図。
シャリオンは子供達を見下ろした。
「起こせた?」
「んー?」
「なんか、よくわかんない」
「それは、・・・返事が、出来ないということ?」
「でもいきてるよ」
「おきてるのにむしするー」
混乱して思わずゾルを見上げると、小さく舌打ちをした。
「お2人とも。場所はわかりませんか。
セレスの見てるものなどなにか」
「んー。くろい!」
「かたい!」
幼い子供にはそれくらいしか表現できないらしい。
最低限の魔力があれば、ゾルは地図に晒させようと思っていたのだが、それすらも難しいらしい。
そんな時だった。
ジャンナが気配なくシャリオンの隣りに立つと、ゾルが一気に殺気立ち首元にスティレットを押し当てた。
「私の頸動脈を切る前にお三方の首が飛びますわよ?」
「っ」
「それより、お子様に触れても宜しいでしょうか」
シャリオンを見てくるジャンナ。
何を考えてるかわからない視線にシャリオンも怖くなる。
「僕じゃダメ?」
「シャリオンっ」
そんなシャリオンにクスクスと笑った。
「物騒なこと言われて、はいどうぞ。なんて言えないよ」
「怖くないんですの?」
「親なんだから当然でしょう」
「魔力の高い子供の親でそんなものですわ。
大抵魔力が強いんだから自分でどうにかしろってなります」
周りに魔力が高い人間なんて1組しか見たことがないが、それで十分だ。
「僕の知ってる魔力が高い子も、家族に愛されてた。
けど、他の人が愛されてるとか愛されてなかったとか関係ないよ。
僕はこの子達に危険な目に合わせると言ってる人に、触れさせたくない」
「その魔術師がどうなってもいいのですか?」
そのオニキスの瞳からの視線はまるで見定めるかの様だった。
「僕では難しい?」
「えぇ。貴方では魔力がなさすぎて」
「子供達がセレスの気配を感じ取れるのが重要なの?
貴方は何をするつもりなの」
今度はシャリオンがジャンナを見返せば、彼女は少し考えたのちに口を開いた。
「本当に害は与えませんわ。
ただ、みている先を特定するだけですわ」
「そんなこと、出来るの?」
「えぇ。黒魔術師ですから」
なんでも出来てしまうなんて。
シャリオンからしたら、上空のドラゴンよりよっぽど神の様な能力だ。
ただ、それが真実かわからないし、子供達に害を与えないとは言えない。
疑いの眼差しを向ける。
これがセレスなら何も気にせず信用できるのだが。
すると、ジャンナは小さくため息をついた。
「・・・私も彼をなくしたくないのです」
「突然そんなことを言われても」
散々セレスを排除しようとしていたのに、そんな事信じられない。
「行き過ぎた魔力はどの世も力の持った者に道具の様に支配されます。
セレドニオは黒魔術師でしょう」
「!」
「そして、隷属魔法が掛けられている」
なぜ彼の本名を知っているのか気になる。
しかし、隷属魔法を出されると思考がそちらに向いた。
シャリオンはそれを外したいと思っているが、レオンやガリウス、セレドニオ本人までがそれを許さない。
「うん。そうだよ。
僕を攫った罪でそうなった」
隠してもしょうがない。
素直にそう答えればジャンナは冷笑を浮かべた。
「謝罪は受け入れなかったのですね」
「受け入れてるけれど、本人が拒否をするんだ。
もしかしたら洗脳をしているのかな・・・
帰ってきたら状態異常回復を掛けてみようか」
「・・・シャリオン。無駄なことはするな」
「無駄なことじゃないよ。セレスは十分にハイシアにもアルアディアにも・・・と、この話は良いね。
ジャンナ様。素晴らしき力を有した貴方なら僕を介して子供達の見えている物を特定できるのではありませんか」
シャリオンのその言葉にジャンナは小さくため息をついた。
「私が信用を先に欠いたのですから仕方がないですわね。
しかし、無駄なことですわ」
シャリオンは魔力が無さ過ぎて、例え間にいようとも全く意味を成さない。
つまり、シャリオンの自己満足にしかならないし、その分魔力が掛かる為無駄なことだった。
その理由を正しくシャリオンは理解できていないが、やはり子供に触れさせるのは怖い。
しかし、セレスも諦められない。
それで悩んでいると折れたのはジャンナの方だ。
「シャリオン様は意外と頑固でらっしゃるのですね。
えぇ。わかりました。シャリオン様に触れさせて」
「まってくれ!」
普段ゾルは来客と話している時は絶対に入らない。
側近の立場だが、元は使用人の性質があり主人のやることに口を出さないのが鉄則だからだ。
そんな彼が口を挟むのは珍しいが、それよりも今は時間がなく訝し気な声になる。
「ゾル?」
「頼むシャリオン。その役目俺にさせてくれ」
「これは親としての」
『責任だ』そう言おうとしたのだが、ゾルは普段の読めない様子はなく必死にこちらに食い下がる。
「もう2度とお前を危険な目に合わせないと誓ったんだ。頼む」
「ゾル・・・」
「例えここでお前が俺を使ってもそれはお前が親としても逃げた事にはならない。
お前は俺の望みを叶えただけだ」
「・・・、」
どうしようかと迷っているところだった。
子供達がふわりと浮きがると、ジャンナの手に触れた。
「「!!」」
それはほんの一瞬ではあったが、ジャンナが読み取るには十分だったらしく、彼女は地図を指さした。
その場所は・・・。
「死山・・・」
人も、動植物も長くは生きていけない山。
常に高濃度のガスが充満しており、足を一歩踏み入れれば死が待ち受けるそんな場所だった。
苦しく押しつぶされそうな気分だ。
頭ではガリウスには考えがあっての事だと分かっている。
それに、なんだかいつものガリウスとは様子が違っていた様にも感じて、それが余計に気になってしまう。
ガリウスは攫われた時は『大丈夫です』とは言ったものの、今の段階でもそうかと言ったら別の話かもしれない。
しかし・・・。
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思考共有を掛けているゾル曰く『生命の危機や洗脳の気配は感じられなかった』と言われたが、心配をするなと言うのが無理な話である。
鬱々としながらも、書類に目を通していると、部屋の扉が開いた。
「「っちちうぇ~っっ」」
大きな涙粒を流しながら、シャリオンの胸に飛び込んでくる2人を抱きとめる。
憂鬱な気分だったが、我が子が泣いていると思ったら少しだけおさまった。
「どうしたの?そんなに泣いて」
2人の涙をハンカチで拭いてやりながら、魔法で飛んできたことを注意することも忘れてしまう。
「とうさまぁ・・・」
「・・・おへんじくれない」
えぐえぐと泣く子供達に、ハッとした後ギュッと抱きしめた後、膝に乗せた子供達の背中を優しく撫でる。
「大丈夫。父様は今お仕事中だからだよ」
「でもぉっ・・・せれしゅっ」
「せれすみたいねんねしたままになっちゃ」
「・・・、」
子供達は魔力が高く素質もある為、思考共有以外にも出来ることが有るのだろうか。
とても不安になったが、ガリウスは『催眠の歌』を歌われたと言っていた。
それなら、対策を打っている筈だ。
・・・大丈夫。きっと大丈夫。
自分に言い聞かせ、子供達を安心させるように言う。
「父様は働き者でしょう?
だから少しお休みしているんだよ」
「ちちうえのそばじゃないのに?」
「とうさま、ちちうえのそばがいちばんすきっていってた」
慰めようとしたのに、まさか逆に慰められた。
「ガリィ・・・そんなこと言ってたの?」
「「うんっ」」
そう力強く返事をする2人に苦笑をする。
「起こせたらいいんだけどね」
ガリウスもセレスも何か目的があるのかも知れないが。
特に今朝知らせてきたガリウスは何かしている最中なのかも知れない。
「いいの?」
「え?」
「ちちうえとせれす、起こしてもいい?」
「おこ、せるの?」
「「うん!」」
てっきりシャリオンは存在は分かるが、それだけだと思っていた。
今ならドラゴンも上空にいるわけで、セレスの危機は大分下がったのではないだろうか。
「お願い・・・!」
そう、2人にお願いしようとしたところだった。
「まちなさい」
音もなく現れたのは、黒魔術師ジャンナだった。
皆一斉にそちらを見れば、彼女はとても厳しい顔をしている。
ゾルは警戒し、シャリオンとジャンナの直線状に割って入る。
『・・・シャリオン。気を引き締めろ』
思考共有されたゾルからの言葉にコクリと頷く。
以前、ハイシアの専属黒魔術師になりたいと言っていたから、セレスを助け出されたらその話もなくなると思っているのだろうか。
「悪いけどもう待てない。
セレスは1ヶ月は意識がないままだ。
手立てが見つかったならもう時間はかけられない」
「1ヶ月以上も放置していたのです。
彼でなくても良いでしょう」
酷く冷たく事務的に言われたその言葉は、シャリオンの琴線に触れそうになるのを、
寸前のところで押さえた。
「確かに1ヶ月以上も見つけられなかったのは、
僕の落ち度だ」
ウルフ家に頼みハイシアだけでなく、アルアディア全域を探しているが未だ見つからない。
魔法で突如消えたセレスの足取りはなかなか追えてない。
彼等はよくやってくれている。
指示を考えられないシャリオンのせいだ。
「けど、セレスの代わりなんて誰にもなれない」
「・・・。魔力がなくなり使えなくなってても?」
「え?魔力は回復するでしょう?」
「過剰な魔力の消費で人体ともに傷を負っているなら、自己修復などが使えないならその可能性もありますわ」
「そんな可能性があるの?!」
「現に使えなくなった黒魔術師が居ます」
「?!」
シャリオンの体から一気に血の気が引いた。
しかし、そんな様子にジャンナは侮蔑を含んだ冷笑を浮かべた。
「当たり前でしょう。・・・貴方も所詮同じ」
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「「はーい」」
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「ゾル!派遣できる人物を招集!急いで!!」
「わかった」
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怪我をしていても、セレスは治癒も出来て造血の魔法道具もあるのだから、どこか大丈夫なのではないかと思ってしまっていた。
「落ち着けシャリオン。生きてる事には違いない」
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「だからって、慌てて視野を狭くするな。深呼吸しろ」
「っ」
ゾルの言葉にハッとした。
こんな時に取り乱しては駄目だ。
駄目だと分かっているのに、こういう状況になるとどうしても一点しか考えられなくなってしまう。
そんな時にはゾルがいつもシャリオンを落ち着けてくれる。
シャリオンは反省しながらも、素直に深呼吸する。
脈拍が落ち着いてくるのを見計らって、未だジャンナを警戒し間に立つゾルに声を掛けた。
「・・・ごめん、ありがとう。ゾル」
「気にするな」
「それよりこれを」
もう1人ゾルが現れた。
最近人を気にすると言う事が少し薄れてきた様に思う。
いや。
ゾル達がこのジャンナをそれだけ警戒しているのだ。
机の上に広げられたのはアルアディア全域の地図。
シャリオンは子供達を見下ろした。
「起こせた?」
「んー?」
「なんか、よくわかんない」
「それは、・・・返事が、出来ないということ?」
「でもいきてるよ」
「おきてるのにむしするー」
混乱して思わずゾルを見上げると、小さく舌打ちをした。
「お2人とも。場所はわかりませんか。
セレスの見てるものなどなにか」
「んー。くろい!」
「かたい!」
幼い子供にはそれくらいしか表現できないらしい。
最低限の魔力があれば、ゾルは地図に晒させようと思っていたのだが、それすらも難しいらしい。
そんな時だった。
ジャンナが気配なくシャリオンの隣りに立つと、ゾルが一気に殺気立ち首元にスティレットを押し当てた。
「私の頸動脈を切る前にお三方の首が飛びますわよ?」
「っ」
「それより、お子様に触れても宜しいでしょうか」
シャリオンを見てくるジャンナ。
何を考えてるかわからない視線にシャリオンも怖くなる。
「僕じゃダメ?」
「シャリオンっ」
そんなシャリオンにクスクスと笑った。
「物騒なこと言われて、はいどうぞ。なんて言えないよ」
「怖くないんですの?」
「親なんだから当然でしょう」
「魔力の高い子供の親でそんなものですわ。
大抵魔力が強いんだから自分でどうにかしろってなります」
周りに魔力が高い人間なんて1組しか見たことがないが、それで十分だ。
「僕の知ってる魔力が高い子も、家族に愛されてた。
けど、他の人が愛されてるとか愛されてなかったとか関係ないよ。
僕はこの子達に危険な目に合わせると言ってる人に、触れさせたくない」
「その魔術師がどうなってもいいのですか?」
そのオニキスの瞳からの視線はまるで見定めるかの様だった。
「僕では難しい?」
「えぇ。貴方では魔力がなさすぎて」
「子供達がセレスの気配を感じ取れるのが重要なの?
貴方は何をするつもりなの」
今度はシャリオンがジャンナを見返せば、彼女は少し考えたのちに口を開いた。
「本当に害は与えませんわ。
ただ、みている先を特定するだけですわ」
「そんなこと、出来るの?」
「えぇ。黒魔術師ですから」
なんでも出来てしまうなんて。
シャリオンからしたら、上空のドラゴンよりよっぽど神の様な能力だ。
ただ、それが真実かわからないし、子供達に害を与えないとは言えない。
疑いの眼差しを向ける。
これがセレスなら何も気にせず信用できるのだが。
すると、ジャンナは小さくため息をついた。
「・・・私も彼をなくしたくないのです」
「突然そんなことを言われても」
散々セレスを排除しようとしていたのに、そんな事信じられない。
「行き過ぎた魔力はどの世も力の持った者に道具の様に支配されます。
セレドニオは黒魔術師でしょう」
「!」
「そして、隷属魔法が掛けられている」
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しかし、隷属魔法を出されると思考がそちらに向いた。
シャリオンはそれを外したいと思っているが、レオンやガリウス、セレドニオ本人までがそれを許さない。
「うん。そうだよ。
僕を攫った罪でそうなった」
隠してもしょうがない。
素直にそう答えればジャンナは冷笑を浮かべた。
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「受け入れてるけれど、本人が拒否をするんだ。
もしかしたら洗脳をしているのかな・・・
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「・・・シャリオン。無駄なことはするな」
「無駄なことじゃないよ。セレスは十分にハイシアにもアルアディアにも・・・と、この話は良いね。
ジャンナ様。素晴らしき力を有した貴方なら僕を介して子供達の見えている物を特定できるのではありませんか」
シャリオンのその言葉にジャンナは小さくため息をついた。
「私が信用を先に欠いたのですから仕方がないですわね。
しかし、無駄なことですわ」
シャリオンは魔力が無さ過ぎて、例え間にいようとも全く意味を成さない。
つまり、シャリオンの自己満足にしかならないし、その分魔力が掛かる為無駄なことだった。
その理由を正しくシャリオンは理解できていないが、やはり子供に触れさせるのは怖い。
しかし、セレスも諦められない。
それで悩んでいると折れたのはジャンナの方だ。
「シャリオン様は意外と頑固でらっしゃるのですね。
えぇ。わかりました。シャリオン様に触れさせて」
「まってくれ!」
普段ゾルは来客と話している時は絶対に入らない。
側近の立場だが、元は使用人の性質があり主人のやることに口を出さないのが鉄則だからだ。
そんな彼が口を挟むのは珍しいが、それよりも今は時間がなく訝し気な声になる。
「ゾル?」
「頼むシャリオン。その役目俺にさせてくれ」
「これは親としての」
『責任だ』そう言おうとしたのだが、ゾルは普段の読めない様子はなく必死にこちらに食い下がる。
「もう2度とお前を危険な目に合わせないと誓ったんだ。頼む」
「ゾル・・・」
「例えここでお前が俺を使ってもそれはお前が親としても逃げた事にはならない。
お前は俺の望みを叶えただけだ」
「・・・、」
どうしようかと迷っているところだった。
子供達がふわりと浮きがると、ジャンナの手に触れた。
「「!!」」
それはほんの一瞬ではあったが、ジャンナが読み取るには十分だったらしく、彼女は地図を指さした。
その場所は・・・。
「死山・・・」
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