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執着旦那と愛の子作り&子育て編
虹色。
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ハイシア城。
サロンにてミクラーシュの説得が終わりホッとした束の間だった。
城を中心に雷鳴が鳴り響く。
結界と防御の魔法で護られている城の中でも、地響きで体を震わせるほどの大きな音だった。
咄嗟に子供達を抱きしめる。
魔法で調光を行っているはずの部屋の中が急に暗くなった。
その原因の一つであろう、窓の外に一斉に皆が向くと、
外には見慣れた景色ではなく、虹色の光の中に真っ黒で丸い球体が浮かんでいた。
「え?」
シャリオンの声に反応するかのように、その黒い玉は下がった。
あまりにも大きなものに気付かなかったがそれは体の一部の様に見えた。
「目?」
そう呟くのと同時に部屋の調光が調節されパっと明るくなる。
はずれて欲しかった嫌な予感は当たってしまったようで、明るさに反応したかのように黒色の球体は縦に細長くなった。
間違いないと確信するが、その目がシャリオンを見ているような気がした。
どういう事なのだろうか。
真意を探る様に見返しているとそれをゾルに遮られる。
「魔物の目を見る奴があるか!」
「ご・・・ごめん」
ゾルに厳しい声で叱られた。その途端。
窓の外に動きが荒ぶった。
「グァゴァァァァォ!!」
先程の雷鳴はこの魔物の鳴き声だったようだ。
そう理解するのと同時に、城中に警報が鳴り響いた。
ゾルは「遅い!」と吐き捨てるとシャリオンの腕を引いた。
1人でも重いと感じているのに、今は腕の中だ。
死んでも放す気は無いが、ふと見下ろすと場の緊迫とは裏腹に子供達は嬉しそうにキャッキャと声を上げる。
怖がって泣かない事にホッとしていると子供達が急にフワリと浮いた。ゾルに抱き上げられたのだ。
「やっぱり危ないのかな」
その呟きにゾルは眉を顰めた。
「音がなく現れたのに、こんな風に話せるほど時間をくれてるから」
害をもたらす人間はこちらのことを待ってくれなどしない。
そう言うとゾルの眉間の皺がより深くなってしまった。
つまりは、ゾルが守れなかったという事のわけで失言だったと気づいた。
慌て訂正をしようとしたのだが、別のゾルに腕を引かれた。
・・・2人同時に現れることでこれが異常事態なんだと理解する。
シャリオンはゾルに首を振った。
「ゾル。子供達を安全なところへ」
軽々と2人を抱き上げるゾルにそう言うと、ゾルは一瞬止まったがチラリともう1人のゾルを見るとコクリと頷いた。
シャリオンを連れて行こうとしていたゾルはそんなシャリオンにため息をつく。
「2人を安全なところに」
「「シャリオン!?」」
領主であるシャリオンが客を置いて先に逃げ出せるわけがない。
城下街はシャリオンが領主になるにあたって、防衛の強化を強めたから、外的要因の攻撃は受けにくいはずだ。
流石にこんな魔物が来ると思ってはいなかったが・・・その性能を信じるしかない。
であれば、今はこの2人を逃がすことが先決。
特にルークの伴侶になる人間だ。
命令通り護衛達は返事をすると、2人を守る様に連れて行こうとする。
「っ貴方はどうするのです!?」
「そんな事良いから早く!」
「っ」
ミクラーシュは驚いたようだったが事態を把握し護衛達に守られて出て行った。
しかし、アンジェリーンの方はこちらを厳しく睨んで足を踏みとどめた。
公爵家の者に手荒な真似も出来ずに、護衛達も焦っているのが見える。
「!っ・・・っ
魔力の無い貴方より先に逃げたなんて知られたら公爵家の者として恥です!
それに貴方を置いて行ったなんて殿下の耳に入ったら王配への道が無くなるでしょう!!」
「ルークはそんなことしないよ」
「そんなことわからないでしょう!」
「絶対しないよ。僕はもう自分だけ逃げるなんてしないって決めたんだ」
「!?」
「ッチ・・・お前達!構わないから連れて行け!あの男がどうにかする!」
動こうとしないアンジェリーンにゾルがついに苛立ったように声を荒げた。
アンジェリーンがどんなに動こうとしなかったとしても、体格の大きいサーベル国の生まれのウルフ家に敵うわけがない。いとも簡単に抱きかかえられると、部屋を退室していく。
その最中もずっと睨まれ続けた。
「さぁ次はお前だ。
お前がここにいると、アイツらも退出しないしウルフも攻撃が出来ない」
「わかってる」
4人が退室をするのを見届け、シャリオンも漸く脱出することが出来そうだ。
ここに残っては邪魔になってしまう。
しかし、その途端。
窓の外の魔物が咆哮を上げて、城を揺らし始めた。
「わぁっ」
「シャリオンッ」
ゾルに支えられたお陰で倒れることは無かった。
そんな時、強烈な閃光が走った。
・・・
・・
・
眩しいと思ったのと同時に、シャリオンの目には何も映らなかった。
それほどの強い光だった。
恐怖に駆られるがすぐに聞きなれた声が耳に届く。
「ちょっと。まだ終わってないんだけど」
珍しく苛立っているセレスの声。
彼は遠征に行っているのに何故?
ウルフ家の者達から緊急要請でも入ったのだろうか。
確かめたいのに、目が痛くてそれどころでは無い。
すると再び魔物の威嚇する鳴き声がする。
「グァガァォ!」
大人しく見えたのはあの時だけの様だ。
今はあらぶり城を揺るがすほどの咆哮を上げている。
流石にシャリオンも驚いていると、腰に当てられた腕と香りにハッとする。
シャリオンを1番安心させるものだ。
「ガリィっ・・・!」
「お待たせしました」
この魔物が来て3分も経っていない。
そんな事を言うガリウスに手探りで触れる。
「大丈夫ですよ。・・・やり過ぎです」
宥めるようにそう言うガリウス。
後半はセレスへの嗜めだ。
「そうでもしないとシャリオン様は動かないよ~?
結果オーライ!
そんなことよりも早く王都にでもなんでも連れて行きなよ」
セレスの口調はいつも通りだが、見えないのは不安に感じた。
「セレス!」
また無理をしているんじゃないだろうか。
必死のシャリオンに吹き出す声が響いた。
「ぶふっ
ちょっとー。ボクを信じてないの?」
「それとこれとは」
信頼しているから心配しないはイコールではない。
「あ。
シャリオン様ー。
ボク、結構頑張ったんだ。
あともう少し頑張るから後でご褒美ほしーな」
「っそんなのいくらでもあげるよ!」
そう言っているのに受け取らないのはセレスだ。
迷わずにそう言うと苦笑が漏れる。
「これが終わったら、おやすみが欲しい」
「うんっ」
ぞわぞわと這い上がる何かに嫌悪する。
見たいのに見れなくて目を擦ろうとするとガリウスにそれを止められた。
「シャリオン。ここにいてはセレスの邪魔になります。
わかりますね」
「でもっ」
セレスがここで残ると言うのはつまり、それほど大変な戦いになると言う事なのではないだろうか。
「城下街には結界を貴方が貼らせたでしょう?
それにセレスは大丈夫。
この国一の魔術師。
そうですね」
最後の一言をセレスに向けて言った。
すると、不敵な笑みが聞こえた。
「とーぜん!
ボクはこのハイシア一番の魔術師だよ?
舐めないでよね」
自身に満ちた声だった。
ガリウスの腕の中でシャリオンは不安が募る。
けれど。
「っ・・・っ後でね!」
間を置き、掠れた衣の音が聞こえた。
「もちろん!ご褒美の為にね」
その言葉を。
シャリオンは信じるしかなかった。
☆☆☆
シディアリアの移転の魔法石で別の場所に来た。
不安は消えないが、それが王都なのは香りで分かった。
数年でも通った記憶は消えない。
思わずガリウスの指先を握った。
「・・・、」
けれど。
安全に助けられたと思えば不安を見せてはいけない気がした。
握りかけた握力を弱めたそんなときだった。
ふと体を抱きしめられる。
華奢な手足。
ガリウスではないことは香りだけで分かる。
それはとても好きな香りだ。
ガリウスは言ったら嫉妬するかもしれないが、ずっと安心してきた優しい香りだった。
「父様・・・?」
「・・・えぇ。久しぶりですね」
「ここは・・・屋敷なのですか?」
シャーリーがいると言う事は王都のハイシア家の屋敷だろうか。
「いいえ。城ですよ」
「・・・、」
「シャリオンが領地から中々出て来てくれないから。・・・来るって旦那様に聞いてここで待ってたんだ」
「申し訳ありません。・・・子供達にかまけてました」
そういうとシャーリが驚いたようだったが、ふっと笑った。
「シャリオンと間違えたのかな。『シャー』って私をみて言ったよ」
「・・・、・・・え?」
それは可笑しい。
可笑しいのだが・・・。
「・・・いえ。・・・父上が父様を見た時に呼んでいる名前を覚えたのでしょう。
私が父上を現すときは『父上』なので・・・ガリウスとわけたのかも」
そう言って笑いながら言った。
「シャーリー様」
そう呼びかけたのは、アンジェリーンだ。
まさか呼び掛けられるとは思っていなかったのだろうか。
なんにしても視界が未だに直らないから確かめようがないが、一つ呼吸を置くシャーリー。
「わが領にお越しいただいている間に申し訳ございません」
「その様なことは良いのです。
それよりも公爵に無事だと言う事を早急にお知らせになっては?」
「!」
「!アンジェリーン・・・。
私は大丈夫です。父様。
アンジェリーンは私の事を思ってくれての事です」
親しくなったからかわかるようになったが、こういう棘のある発言はシャリオンを庇うものが多かったと改めて気づく。
そう庇おうとしたシャリオンの言葉に辛辣に被せてくる。
「宰相に報告するのは当然の事です。
それにあたって適任なのはシャーリー様と、ガリウスなだけです」
実際そうだ。
ウルフ家の者達がすでに伝えている可能性はあるが、シャリオンは様子をうかがうとガリウスの溜息が聞こえてきた。
「ここは城の私に与えられている部屋です」
シャリオンを安心させるようにそう教えてくれるガリウス。
そのガリウスの目論見通り、自分1人だったらガリウスの胸に飛び込んでいた。
「そうなんだ。邪魔してごめんね」
「貴方を邪魔に思うことなどありません」
そっと頬を撫でられる。
すり寄りたい気持ちを抑えながらも、ふと顔を上げた。
しかし。
言いたいことをが喉からでない。
すると、頬に唇が触れていく。
「貴方は間違っていません」
それだけを言うとシャリオンの近くから気配が消えた。
ガリウスは報告の為移動したのだろう。
シャーリーの声も聞こえない。
良くよく聞けば、ミクラーシュの声もしない。
深くため息をついた。
さっきのアレは一体何だったのだろうか。
シャリオンはハイシア領で育ったが、その頃にあんな魔物が襲撃してくることは無かった。
勿論王都に移ってもだ。
そもそも魔物たちはそんなに荒い気性のものは少ない。
そんな時だった。いないと思っていた部屋の中でアンジェリーンの声が耳に届く。
「先ほどのあれは何ですか」
突然の声に驚き体をびくつかせた。
それはとっくに席を外したと思っていた人間だからだ当然である。
驚いて顔を上げたのだが見えないことに不安に感じてしまっていると鼻で笑われた。
「・・・びっくりした」
「驚かせるつもりはないです。
気付けなかったのは、シャリオンの魔力の低さの所為でしょう?
私の所為ではありません」
相変わらず辛辣な言葉に苦笑を浮かべた。
「ゾル。黙って立っていては分からないでしょう」
「ゾルもいるの?」
「はい。お傍に控えておりますのでご安心ください」
入り口付近にいるのか、ゾルの声が遠い。
「そう。・・・視界が悪いのだけど」
「治療の者を呼んでいるところです」
「・・・見えるようになるかな」
タリスマンを持ったシャリオンに魔法をかけられたのは、セレスくらいだろう。
それにセレスが現れた途端、閃光が走り見えなくなったのだ。
不安げに呟くシャリオンにアンジェリーンがため息をついた。
「ゾル。早くシャリオンに子供達を。
抱かせれば不安も収まるのでしょう」
この部屋には子供達もいたらしい。
アンジェリーンの言葉に足音が近寄ってきた。
シャリオンに声を掛けると、膝の上に2人の重みを感じる。
確かにそばにいると分かると不思議と心が。
「あー・・・ちーち?」
「うー?」
「2人とも泣かなくて偉かったね」
静かだったのは眠くなっていたからの様だ。
とても体温が高くなった子供達に悪いことをしてしまったと思いつつ、撫でながら怪我がないか手で探る。
ゾルが見てくれていたのだから、それは大丈夫なのだろうが不安だ。
すると、子供達も手を伸ばしてきて頬に手を触れてきた。
そこからじんわりと熱が広がり、ゆっくりと広がっていく視界。
「!・・・ありがとう。
シュリィにリィン。2人のお陰で良く見える様になった」
「・・・。魔法・・・。いえ。もうおかしな事が起きても驚きません」
シャリオンの言葉にアンジェリーンが驚いたようにこちらを見ていた。
こくりと頷けばアンジェリーンはホッとしたように息をついた。
「まったく。城であの魔物に対面したときは呑気にしてたのも驚きですが。
あんな馬鹿気たことをしたのに理解に苦しみます」
「僕が一番に逃げる訳には行かないでしょう?」
「貴方は領主なのですよ?何かあったらどうするのです。
まさかあの男に代行をさせればよいなどと言う無責任なことは考えてませんね」
「そんなことは考えていないよ」
「ですが、貴方の先ほどの行動は軽はずみです。
今回はたまたま離脱できたのですよ」
「もう一度言うけど、お客様を残して自分だけ逃げるなんてこと」
「だから、数秒違うだけでしょう。
あの場で貴方が気にすべきは子供達くらい。
・・・いいえ。子供達はウルフ家の者が守っていたのです。
貴方はゾルが言った時にさっさと出て行くのが正しかった」
怒り心頭のようでアンジェリーンの視線は厳しいままだ。
「心配してくれてありがとう。
・・・なんかあの魔物・・・僕に用があった様に見えたんだよね」
最終的にはあばれはしていたが、それでもその間もずっとこちらを見てきていた様に感じる。
ゾルに叱られた為あまりじっと見ないようにはしていたが、そんな気がした。
「気のせいだと思うけど。・・・、・・・アンジェリーン?」
「・・・、」
アンジェリーンは信じられないようなものを見る目でシャリオンを見てきた。
そして何かを考えていたが、スッと視線を逸らした。
何故だか酷く怒っているように見えた。
「・・・。・・・わかりました」
「魔物の事・・・?」
「違います。気にしないで。どうせ貴方にはわかりませんかりません」
きっとお小言の続きなのだろう。
言ってもても無駄だとあきらめてくれたのは助かる。
「本当に貴族らしくない」
「・・・僕もわかってる。貴族らしくないって。・・・きっと平民であった方があってた」
「それは困りますね」
珍しく困った様に笑いながらこちらを見てくるアンジェリーン。
「貴族が嫌だと思ったことはないの?」
「付き合いが面倒だと思う事はありますけど。
平民になりたいと言うのは考えたことは無いですね」
「そうなんだ」
「平民になって何がしたいのですか」
「ガリウスと子供達が居てくれればそれで。
出来ることは何でもする。
・・・ううん。
なんでも出来る様にならないと」
「・・・。
あまり現実的ではありませんね」
「そうかな」
「貴方は・・・人に頼まれたらなんでも引き受けてしまいそうなところがあるので余計です」
「内容によるけど」
アンジェリーンは眉を潜めたがため息をつく。
「貴方は貴族です。
馬鹿なことを言っていないで全うしなさい。
・・・それより視界が回復したなら貴方も宰相のところに行くのでしょう?」
「・・・、」
現実逃避をするなと窘められて苦笑する。
行きたいと顔に出ていただろうか。
「責任感がある貴方が守られてばかりでは居られないでしょう」
ゾルをチラリと見上げる。
「誤解させたなら悪いが、別にシャリオンに隠したかったわけじゃない。
詳しくはあの男に聞いたらいい」
口調を崩しそう言うのは事実なのだろう。
「何度も言うが、あの男はシャリオンが聞いたなら答えるだろう」
その言葉にシャリオンはコクリと頷いた。
☆☆☆
宰相の執務室に向かえば、皆が驚いたようにこちらをみてくる。
シャーリーはすでに退出しているようで、この場にはいなかった。
シャリオンの緊急事態に城へと駆けつけてくれたのだろう。
部屋にはガリウスとレオン、それに陛下とルークとライガーも揃っていた。
ハイシア領での出来事という事だが事態が事態なだけに、防衛大臣と騎士団長統括も同席していた。
「もう大丈夫なのですか?」
「子供達が解いてくれたんだ」
「そうですか」
ガリウスの隣に立つと、ホッとしたように微笑んでいる。
「他に痛むところはないのか?」
「大丈夫です。父上。ご心配をお掛けしました」
「無理をするんじゃないぞ」
「陛下。ご心配をおかけし申し訳ありません」
シャリオンがそう言いながら頭を下げる。
「シャリオンが無事でよかったよ」
「殿下。大公閣下も申し訳ございません」
彼等にも頭を下げる。
今は他の貴族もいるので当然の対応だった。
「シャリオン、ちょうどいい。領主であるお前が聞くべき話だ」
レオンが渋い顔のままこちらをみる。
その傍らにはウルフ家の者が控えており、彼がどうやら報告をしている様だ。
「はい。なにか分かったのでしょうか」
「あの魔物は例の村と砦と関係があるかもしれません」
「どういうこと?」
「村と砦が再び出現し、砦からは連絡が交信できた」
「!・・・彼等は無事なの?」
「えぇ。・・・勝手に進めて申し訳ないですが、調査に進ませています」
聞くところによると、騎士団とは別の管轄である特殊部隊が同行し村と砦の調査をしているらしい。
特殊部隊がいるから、統括も揃っているのだろう。
「構わないよ。・・・それであの魔物は」
「い・・あの魔物は姿を消したそうだ」
「姿を消した?」
似たような事が起きている最中で驚いたように尋ねる。
「えぇ。セレスと共に」
「え?」
思っても見ない言葉にシャリオンは聞き返す。
しかし、ガリウスの視線は真剣そのものだ。
取り乱しそうになるのを落ち着かせながらそちらを見る。
「・・・安否は?」
「現状調査中です」
「・・・、・・・セレス・・・」
不安に飲まれそうになった。
しかし。それを踏みとどまるとまっすぐと前を向く。
「セレスは大丈夫。戻ってくると約束したから。
それよりもまずは村の調査待ちで」
魔物が消えたのは良かった。
約束を守り戻ってくる事を期待しながら、情報交換を続けるのだった。
サロンにてミクラーシュの説得が終わりホッとした束の間だった。
城を中心に雷鳴が鳴り響く。
結界と防御の魔法で護られている城の中でも、地響きで体を震わせるほどの大きな音だった。
咄嗟に子供達を抱きしめる。
魔法で調光を行っているはずの部屋の中が急に暗くなった。
その原因の一つであろう、窓の外に一斉に皆が向くと、
外には見慣れた景色ではなく、虹色の光の中に真っ黒で丸い球体が浮かんでいた。
「え?」
シャリオンの声に反応するかのように、その黒い玉は下がった。
あまりにも大きなものに気付かなかったがそれは体の一部の様に見えた。
「目?」
そう呟くのと同時に部屋の調光が調節されパっと明るくなる。
はずれて欲しかった嫌な予感は当たってしまったようで、明るさに反応したかのように黒色の球体は縦に細長くなった。
間違いないと確信するが、その目がシャリオンを見ているような気がした。
どういう事なのだろうか。
真意を探る様に見返しているとそれをゾルに遮られる。
「魔物の目を見る奴があるか!」
「ご・・・ごめん」
ゾルに厳しい声で叱られた。その途端。
窓の外に動きが荒ぶった。
「グァゴァァァァォ!!」
先程の雷鳴はこの魔物の鳴き声だったようだ。
そう理解するのと同時に、城中に警報が鳴り響いた。
ゾルは「遅い!」と吐き捨てるとシャリオンの腕を引いた。
1人でも重いと感じているのに、今は腕の中だ。
死んでも放す気は無いが、ふと見下ろすと場の緊迫とは裏腹に子供達は嬉しそうにキャッキャと声を上げる。
怖がって泣かない事にホッとしていると子供達が急にフワリと浮いた。ゾルに抱き上げられたのだ。
「やっぱり危ないのかな」
その呟きにゾルは眉を顰めた。
「音がなく現れたのに、こんな風に話せるほど時間をくれてるから」
害をもたらす人間はこちらのことを待ってくれなどしない。
そう言うとゾルの眉間の皺がより深くなってしまった。
つまりは、ゾルが守れなかったという事のわけで失言だったと気づいた。
慌て訂正をしようとしたのだが、別のゾルに腕を引かれた。
・・・2人同時に現れることでこれが異常事態なんだと理解する。
シャリオンはゾルに首を振った。
「ゾル。子供達を安全なところへ」
軽々と2人を抱き上げるゾルにそう言うと、ゾルは一瞬止まったがチラリともう1人のゾルを見るとコクリと頷いた。
シャリオンを連れて行こうとしていたゾルはそんなシャリオンにため息をつく。
「2人を安全なところに」
「「シャリオン!?」」
領主であるシャリオンが客を置いて先に逃げ出せるわけがない。
城下街はシャリオンが領主になるにあたって、防衛の強化を強めたから、外的要因の攻撃は受けにくいはずだ。
流石にこんな魔物が来ると思ってはいなかったが・・・その性能を信じるしかない。
であれば、今はこの2人を逃がすことが先決。
特にルークの伴侶になる人間だ。
命令通り護衛達は返事をすると、2人を守る様に連れて行こうとする。
「っ貴方はどうするのです!?」
「そんな事良いから早く!」
「っ」
ミクラーシュは驚いたようだったが事態を把握し護衛達に守られて出て行った。
しかし、アンジェリーンの方はこちらを厳しく睨んで足を踏みとどめた。
公爵家の者に手荒な真似も出来ずに、護衛達も焦っているのが見える。
「!っ・・・っ
魔力の無い貴方より先に逃げたなんて知られたら公爵家の者として恥です!
それに貴方を置いて行ったなんて殿下の耳に入ったら王配への道が無くなるでしょう!!」
「ルークはそんなことしないよ」
「そんなことわからないでしょう!」
「絶対しないよ。僕はもう自分だけ逃げるなんてしないって決めたんだ」
「!?」
「ッチ・・・お前達!構わないから連れて行け!あの男がどうにかする!」
動こうとしないアンジェリーンにゾルがついに苛立ったように声を荒げた。
アンジェリーンがどんなに動こうとしなかったとしても、体格の大きいサーベル国の生まれのウルフ家に敵うわけがない。いとも簡単に抱きかかえられると、部屋を退室していく。
その最中もずっと睨まれ続けた。
「さぁ次はお前だ。
お前がここにいると、アイツらも退出しないしウルフも攻撃が出来ない」
「わかってる」
4人が退室をするのを見届け、シャリオンも漸く脱出することが出来そうだ。
ここに残っては邪魔になってしまう。
しかし、その途端。
窓の外の魔物が咆哮を上げて、城を揺らし始めた。
「わぁっ」
「シャリオンッ」
ゾルに支えられたお陰で倒れることは無かった。
そんな時、強烈な閃光が走った。
・・・
・・
・
眩しいと思ったのと同時に、シャリオンの目には何も映らなかった。
それほどの強い光だった。
恐怖に駆られるがすぐに聞きなれた声が耳に届く。
「ちょっと。まだ終わってないんだけど」
珍しく苛立っているセレスの声。
彼は遠征に行っているのに何故?
ウルフ家の者達から緊急要請でも入ったのだろうか。
確かめたいのに、目が痛くてそれどころでは無い。
すると再び魔物の威嚇する鳴き声がする。
「グァガァォ!」
大人しく見えたのはあの時だけの様だ。
今はあらぶり城を揺るがすほどの咆哮を上げている。
流石にシャリオンも驚いていると、腰に当てられた腕と香りにハッとする。
シャリオンを1番安心させるものだ。
「ガリィっ・・・!」
「お待たせしました」
この魔物が来て3分も経っていない。
そんな事を言うガリウスに手探りで触れる。
「大丈夫ですよ。・・・やり過ぎです」
宥めるようにそう言うガリウス。
後半はセレスへの嗜めだ。
「そうでもしないとシャリオン様は動かないよ~?
結果オーライ!
そんなことよりも早く王都にでもなんでも連れて行きなよ」
セレスの口調はいつも通りだが、見えないのは不安に感じた。
「セレス!」
また無理をしているんじゃないだろうか。
必死のシャリオンに吹き出す声が響いた。
「ぶふっ
ちょっとー。ボクを信じてないの?」
「それとこれとは」
信頼しているから心配しないはイコールではない。
「あ。
シャリオン様ー。
ボク、結構頑張ったんだ。
あともう少し頑張るから後でご褒美ほしーな」
「っそんなのいくらでもあげるよ!」
そう言っているのに受け取らないのはセレスだ。
迷わずにそう言うと苦笑が漏れる。
「これが終わったら、おやすみが欲しい」
「うんっ」
ぞわぞわと這い上がる何かに嫌悪する。
見たいのに見れなくて目を擦ろうとするとガリウスにそれを止められた。
「シャリオン。ここにいてはセレスの邪魔になります。
わかりますね」
「でもっ」
セレスがここで残ると言うのはつまり、それほど大変な戦いになると言う事なのではないだろうか。
「城下街には結界を貴方が貼らせたでしょう?
それにセレスは大丈夫。
この国一の魔術師。
そうですね」
最後の一言をセレスに向けて言った。
すると、不敵な笑みが聞こえた。
「とーぜん!
ボクはこのハイシア一番の魔術師だよ?
舐めないでよね」
自身に満ちた声だった。
ガリウスの腕の中でシャリオンは不安が募る。
けれど。
「っ・・・っ後でね!」
間を置き、掠れた衣の音が聞こえた。
「もちろん!ご褒美の為にね」
その言葉を。
シャリオンは信じるしかなかった。
☆☆☆
シディアリアの移転の魔法石で別の場所に来た。
不安は消えないが、それが王都なのは香りで分かった。
数年でも通った記憶は消えない。
思わずガリウスの指先を握った。
「・・・、」
けれど。
安全に助けられたと思えば不安を見せてはいけない気がした。
握りかけた握力を弱めたそんなときだった。
ふと体を抱きしめられる。
華奢な手足。
ガリウスではないことは香りだけで分かる。
それはとても好きな香りだ。
ガリウスは言ったら嫉妬するかもしれないが、ずっと安心してきた優しい香りだった。
「父様・・・?」
「・・・えぇ。久しぶりですね」
「ここは・・・屋敷なのですか?」
シャーリーがいると言う事は王都のハイシア家の屋敷だろうか。
「いいえ。城ですよ」
「・・・、」
「シャリオンが領地から中々出て来てくれないから。・・・来るって旦那様に聞いてここで待ってたんだ」
「申し訳ありません。・・・子供達にかまけてました」
そういうとシャーリが驚いたようだったが、ふっと笑った。
「シャリオンと間違えたのかな。『シャー』って私をみて言ったよ」
「・・・、・・・え?」
それは可笑しい。
可笑しいのだが・・・。
「・・・いえ。・・・父上が父様を見た時に呼んでいる名前を覚えたのでしょう。
私が父上を現すときは『父上』なので・・・ガリウスとわけたのかも」
そう言って笑いながら言った。
「シャーリー様」
そう呼びかけたのは、アンジェリーンだ。
まさか呼び掛けられるとは思っていなかったのだろうか。
なんにしても視界が未だに直らないから確かめようがないが、一つ呼吸を置くシャーリー。
「わが領にお越しいただいている間に申し訳ございません」
「その様なことは良いのです。
それよりも公爵に無事だと言う事を早急にお知らせになっては?」
「!」
「!アンジェリーン・・・。
私は大丈夫です。父様。
アンジェリーンは私の事を思ってくれての事です」
親しくなったからかわかるようになったが、こういう棘のある発言はシャリオンを庇うものが多かったと改めて気づく。
そう庇おうとしたシャリオンの言葉に辛辣に被せてくる。
「宰相に報告するのは当然の事です。
それにあたって適任なのはシャーリー様と、ガリウスなだけです」
実際そうだ。
ウルフ家の者達がすでに伝えている可能性はあるが、シャリオンは様子をうかがうとガリウスの溜息が聞こえてきた。
「ここは城の私に与えられている部屋です」
シャリオンを安心させるようにそう教えてくれるガリウス。
そのガリウスの目論見通り、自分1人だったらガリウスの胸に飛び込んでいた。
「そうなんだ。邪魔してごめんね」
「貴方を邪魔に思うことなどありません」
そっと頬を撫でられる。
すり寄りたい気持ちを抑えながらも、ふと顔を上げた。
しかし。
言いたいことをが喉からでない。
すると、頬に唇が触れていく。
「貴方は間違っていません」
それだけを言うとシャリオンの近くから気配が消えた。
ガリウスは報告の為移動したのだろう。
シャーリーの声も聞こえない。
良くよく聞けば、ミクラーシュの声もしない。
深くため息をついた。
さっきのアレは一体何だったのだろうか。
シャリオンはハイシア領で育ったが、その頃にあんな魔物が襲撃してくることは無かった。
勿論王都に移ってもだ。
そもそも魔物たちはそんなに荒い気性のものは少ない。
そんな時だった。いないと思っていた部屋の中でアンジェリーンの声が耳に届く。
「先ほどのあれは何ですか」
突然の声に驚き体をびくつかせた。
それはとっくに席を外したと思っていた人間だからだ当然である。
驚いて顔を上げたのだが見えないことに不安に感じてしまっていると鼻で笑われた。
「・・・びっくりした」
「驚かせるつもりはないです。
気付けなかったのは、シャリオンの魔力の低さの所為でしょう?
私の所為ではありません」
相変わらず辛辣な言葉に苦笑を浮かべた。
「ゾル。黙って立っていては分からないでしょう」
「ゾルもいるの?」
「はい。お傍に控えておりますのでご安心ください」
入り口付近にいるのか、ゾルの声が遠い。
「そう。・・・視界が悪いのだけど」
「治療の者を呼んでいるところです」
「・・・見えるようになるかな」
タリスマンを持ったシャリオンに魔法をかけられたのは、セレスくらいだろう。
それにセレスが現れた途端、閃光が走り見えなくなったのだ。
不安げに呟くシャリオンにアンジェリーンがため息をついた。
「ゾル。早くシャリオンに子供達を。
抱かせれば不安も収まるのでしょう」
この部屋には子供達もいたらしい。
アンジェリーンの言葉に足音が近寄ってきた。
シャリオンに声を掛けると、膝の上に2人の重みを感じる。
確かにそばにいると分かると不思議と心が。
「あー・・・ちーち?」
「うー?」
「2人とも泣かなくて偉かったね」
静かだったのは眠くなっていたからの様だ。
とても体温が高くなった子供達に悪いことをしてしまったと思いつつ、撫でながら怪我がないか手で探る。
ゾルが見てくれていたのだから、それは大丈夫なのだろうが不安だ。
すると、子供達も手を伸ばしてきて頬に手を触れてきた。
そこからじんわりと熱が広がり、ゆっくりと広がっていく視界。
「!・・・ありがとう。
シュリィにリィン。2人のお陰で良く見える様になった」
「・・・。魔法・・・。いえ。もうおかしな事が起きても驚きません」
シャリオンの言葉にアンジェリーンが驚いたようにこちらを見ていた。
こくりと頷けばアンジェリーンはホッとしたように息をついた。
「まったく。城であの魔物に対面したときは呑気にしてたのも驚きですが。
あんな馬鹿気たことをしたのに理解に苦しみます」
「僕が一番に逃げる訳には行かないでしょう?」
「貴方は領主なのですよ?何かあったらどうするのです。
まさかあの男に代行をさせればよいなどと言う無責任なことは考えてませんね」
「そんなことは考えていないよ」
「ですが、貴方の先ほどの行動は軽はずみです。
今回はたまたま離脱できたのですよ」
「もう一度言うけど、お客様を残して自分だけ逃げるなんてこと」
「だから、数秒違うだけでしょう。
あの場で貴方が気にすべきは子供達くらい。
・・・いいえ。子供達はウルフ家の者が守っていたのです。
貴方はゾルが言った時にさっさと出て行くのが正しかった」
怒り心頭のようでアンジェリーンの視線は厳しいままだ。
「心配してくれてありがとう。
・・・なんかあの魔物・・・僕に用があった様に見えたんだよね」
最終的にはあばれはしていたが、それでもその間もずっとこちらを見てきていた様に感じる。
ゾルに叱られた為あまりじっと見ないようにはしていたが、そんな気がした。
「気のせいだと思うけど。・・・、・・・アンジェリーン?」
「・・・、」
アンジェリーンは信じられないようなものを見る目でシャリオンを見てきた。
そして何かを考えていたが、スッと視線を逸らした。
何故だか酷く怒っているように見えた。
「・・・。・・・わかりました」
「魔物の事・・・?」
「違います。気にしないで。どうせ貴方にはわかりませんかりません」
きっとお小言の続きなのだろう。
言ってもても無駄だとあきらめてくれたのは助かる。
「本当に貴族らしくない」
「・・・僕もわかってる。貴族らしくないって。・・・きっと平民であった方があってた」
「それは困りますね」
珍しく困った様に笑いながらこちらを見てくるアンジェリーン。
「貴族が嫌だと思ったことはないの?」
「付き合いが面倒だと思う事はありますけど。
平民になりたいと言うのは考えたことは無いですね」
「そうなんだ」
「平民になって何がしたいのですか」
「ガリウスと子供達が居てくれればそれで。
出来ることは何でもする。
・・・ううん。
なんでも出来る様にならないと」
「・・・。
あまり現実的ではありませんね」
「そうかな」
「貴方は・・・人に頼まれたらなんでも引き受けてしまいそうなところがあるので余計です」
「内容によるけど」
アンジェリーンは眉を潜めたがため息をつく。
「貴方は貴族です。
馬鹿なことを言っていないで全うしなさい。
・・・それより視界が回復したなら貴方も宰相のところに行くのでしょう?」
「・・・、」
現実逃避をするなと窘められて苦笑する。
行きたいと顔に出ていただろうか。
「責任感がある貴方が守られてばかりでは居られないでしょう」
ゾルをチラリと見上げる。
「誤解させたなら悪いが、別にシャリオンに隠したかったわけじゃない。
詳しくはあの男に聞いたらいい」
口調を崩しそう言うのは事実なのだろう。
「何度も言うが、あの男はシャリオンが聞いたなら答えるだろう」
その言葉にシャリオンはコクリと頷いた。
☆☆☆
宰相の執務室に向かえば、皆が驚いたようにこちらをみてくる。
シャーリーはすでに退出しているようで、この場にはいなかった。
シャリオンの緊急事態に城へと駆けつけてくれたのだろう。
部屋にはガリウスとレオン、それに陛下とルークとライガーも揃っていた。
ハイシア領での出来事という事だが事態が事態なだけに、防衛大臣と騎士団長統括も同席していた。
「もう大丈夫なのですか?」
「子供達が解いてくれたんだ」
「そうですか」
ガリウスの隣に立つと、ホッとしたように微笑んでいる。
「他に痛むところはないのか?」
「大丈夫です。父上。ご心配をお掛けしました」
「無理をするんじゃないぞ」
「陛下。ご心配をおかけし申し訳ありません」
シャリオンがそう言いながら頭を下げる。
「シャリオンが無事でよかったよ」
「殿下。大公閣下も申し訳ございません」
彼等にも頭を下げる。
今は他の貴族もいるので当然の対応だった。
「シャリオン、ちょうどいい。領主であるお前が聞くべき話だ」
レオンが渋い顔のままこちらをみる。
その傍らにはウルフ家の者が控えており、彼がどうやら報告をしている様だ。
「はい。なにか分かったのでしょうか」
「あの魔物は例の村と砦と関係があるかもしれません」
「どういうこと?」
「村と砦が再び出現し、砦からは連絡が交信できた」
「!・・・彼等は無事なの?」
「えぇ。・・・勝手に進めて申し訳ないですが、調査に進ませています」
聞くところによると、騎士団とは別の管轄である特殊部隊が同行し村と砦の調査をしているらしい。
特殊部隊がいるから、統括も揃っているのだろう。
「構わないよ。・・・それであの魔物は」
「い・・あの魔物は姿を消したそうだ」
「姿を消した?」
似たような事が起きている最中で驚いたように尋ねる。
「えぇ。セレスと共に」
「え?」
思っても見ない言葉にシャリオンは聞き返す。
しかし、ガリウスの視線は真剣そのものだ。
取り乱しそうになるのを落ち着かせながらそちらを見る。
「・・・安否は?」
「現状調査中です」
「・・・、・・・セレス・・・」
不安に飲まれそうになった。
しかし。それを踏みとどまるとまっすぐと前を向く。
「セレスは大丈夫。戻ってくると約束したから。
それよりもまずは村の調査待ちで」
魔物が消えたのは良かった。
約束を守り戻ってくる事を期待しながら、情報交換を続けるのだった。
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