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執着旦那と愛の子作り&子育て編

絡まれた。

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急遽参加することになった晩餐会。
招待された貴族として参加するべきなのだろうと理解できる。
しかし、今は領地のことも気がかりなため、ガリウスに一旦領地に戻ってもう一度来ると伝えると、晩餐会自体は知っていたが顔だけ出して早々に帰る予定だったと知らされた。

ガリウスもルークもそしてレオンも、領地のことで大変だと言う事が分かっているからシャリオンに話を出さなかったのだろうか。
レオンも『困ったお方だ・・・。大丈夫か?』と心配げに尋ねてくれる。

アンジェリーンには参加すると言ったのだ。もう今頃準備がなされているだろう。

もし、それが間に合わなくて席が無かったとしても、元々参加予定ではなかったしプライドを傷つけられるとか、全く思わない。挨拶をしてさっさと帰る。
だが、一度は顔を出して確認しておかないと、同じ公爵家の誘いを無断で断ったという形にとられるのは困る。
ガリウスが陛下やルークに許可を取れば問題ないと掛け合ってくれようとしたが、シャリオンはそれを止めた。
確認を取って断ると角が立つように思えた。
そういったことを考えるくらいなら出てしまった方が無難だ。

と言うのは建前である。
嫌われていると思っていた相手に、それは勘違いで親しくなりたいと言われることに嫌な気はしない。

「まぁ、調査に進捗があったら出れないけど」
「えぇ。そうなったら晩餐会は私に任せて下さい」

心強い言葉にシャリオンは感謝をするのだった。

・・・
・・


領地での調査に進捗はあった。
それが気になったシャリオンはその詳細を知りたくなって、やはり断ろうと思ったのだが。

「ん~。
・・・今出来ることは待ってもらうだけしかないし、
シャリオン様はお城で貴族やってきていいよ~?」

と、送り出されてしまい、結局晩餐会に出ることになった。


☆☆☆

夜。
屋敷に着くころは、すっかりと暗くなっていた。
主催はとある有力貴族だが、呼ばれたのは王家に馴染みの深い家ばかりだ。
おまけに陛下の要望でいつもよりラフに楽しめる様にと席はあえて決められていなかった。
しいて決まっているのは、戴冠式に参加したものはなるべく離れて掛けると言う事だ。
ただし陛下とルーティ、そしてシャリオンとガリウスは隣同士だが。

部屋に入るなり目ざとくシャリオンを見つけたアンジェリーンがこちらに近寄ってきた。

「ちゃんと来ましたね」
「さっき約束したでしょう?」

人の顔を見るなり、意地悪気に微笑む。
シャリオンにとって領地が第一優先だがセレスが送り出してくれたのもあるし、約束したのだから参加をする。
だが、シャリオンも領地に引きこもっている自覚はあるので悪い所もある。
そう苦笑しながら答えると、くすりと美しい笑みを浮かべた後、彼はルークの元へ行き傍の椅子に掛けた。

「・・・。本当に宜しかったのですか?」
「ん?あぁ・・・セレスにね。今は領地にいてもすることないから、行って来いっていわれちゃって」

まるで追い出すような言い方に、思い出しても笑ってしまう。

「まぁでも進捗はあったよ」
「後で聞かせてください」
「うん。勿論。僕もガリィの意見が聞きたい」

シャリオンは魔法についての知識が疎い為、ガリウスの意見はとても助かる。
そういうと、ガリウスはふっとにこやかに微笑んだ。

暫くすると主催者が挨拶をする。
和やかな音楽と空気のまま晩餐会は始まり、皆は興味津々にサーベル国の話を聞きたがる。
その会話の中に少しでも有益な話が無いか探すのだ。
シャリオン達にもその話題が振られ尋ねられる。

仕方なしに行ったアンジェリーンの贈り物探しだったが、ガリウスと2人で街を歩くと言う楽しみ以外にも、見た事のない品々に興味も引かれたし勉強にもなった。
その中でもいくつかは取引をしようと考えているものもいくつかある。
サーベル国のことを思い出すと楽しいこともあって普段の夜会よりも饒舌に話した。

「なるほど。それは興味深いですな。
陛下のお陰で転移装置が出来たのでハドリー領へは気軽に行ける様になりましたが、流石に海の向こうは日数が掛かりますからな」
「確かに唐突に行くには難しい距離ですね」

行くとなったら普通なら事前準備が必要だ。
ハイシア家にはウルフ家と言う強い味方がいるから、比較的に簡単に行きやすいが。

「ところでシャリオン様。
ずっと気になっていたのですが・・・何故サーベル国から直接誘いがあったんです?」

そう言う貴族は興味津々と言った感じだった。
まぁ確かに前回の建国祭の時も専任の案内役の貴族として選ばれたわけではない。
気になるのはもっともで説明をしようと所だった。

皆が外国の話に触れ盛り上がっている所で、ここでは似つかわしくない物音を立てて誰かが立ち上がった。
咄嗟に視線を向けた先の人物に、驚きを隠せない。

・・・ミクラーシュ?

今宵の晩餐会にはルークの婚約者候補の2人も出席する事になっている。
その事自体にはなんの思いもなかった。
むしろ、この時期には当然だとさえ思った。

しかし、その行動には驚いてしまう。
同時に酷く嫌な予感がした。
案の定ミクラーシュはシャリオンを指をさしてくる。
幾らフランクな場と言ってもそれは良い行為ではない。
そして・・・。

「あいつは危険だ!」

ミクラーシュの怒声は一斉にしんと鎮まりかえった。
あるものは困惑し、あるものは聞き耳を立て楽しむかの様に交互にこちらを見てくる。
そしてそれを止めようとしたのはルークだ。
静かに口元を拭くと、ナフキンをテーブルの上に置き、そちらに視線をやる。

「ミクラーシュ」

名を呼ぶ声も視線も聞いたことがないくらいに冷たい声だった。

「っあいつは国家転覆を企んでいます!」

その視線にびくつくミクラーシュだったがそれは一瞬で、なおも続けた。
しかし、ルークは不快そうに眉を顰める。

「・・・。それ以上口を開くな」
「殿下!本当です!あの男は殿下の絶対的な信頼を利用し、領地で魔法の研究をしているっ
私は彼の領地の城から爆発音がするのを聞きました!!
領民もそれを聞いていますっ」

子供達の魔力が暴発してしまった時の事だ。
ルークはこちらを一瞬見てきたので、シャリオンはコクリと頷く。

「その事実は聞いている」

そう言った瞬間。
ミクラーシュは絶望したかのような声を上げた。

「っ・・・何故!!!・・・・何故殿下は彼を守られるのですか!」
「・・・それはお前に応える必要があるのか?」
「っ・・・っ・・・私は婚約者候補です!!」

周りがざわざわとざわめき始める。
幾らよく知った仲の者達だとしても、これは良くない。
それにそんなことを言ったら、ルークはミクラーシュを婚約者候補から外すだろう。
だが、シャリオンにはいい案が浮かばなかった。
そうしているうちに・・・。

「あの男の子供がっ・・・殿下の子供だからですか!!」

その途端、一瞬騒めいた空間が再びしんと静まり返った。

「・・・お前は何を」
「聞いたんです!からっ」

周りの視線がアンジェリーンとシャリオンにも注がれた。
シャリオンは同時に何かがプツリと切れた気がする。
先日、ガリウスへの気持ちを疑われたのと同じくらい、腹が立った。
ナフキンを机の上に置くと立ち上がり、ミクラーシュの元へ歩み寄っていく。

「シャリオン、どうされる気ですか」

ガリウスの抑止も聞かずにミクラーシュの元に近寄る。
一言、・・・いや、とにかく訂正させたかった。
同席しているレオンやシャーリーが止めてきたとしてもだ。

すると、どういう事だろうか。
シャリオンが近づくにつれて、ミクラーシュが途端に顔を歪ませた。
それは嫌悪だとかではなく、・・・苦しんでいるかのように見えて、また周りが騒めき始める。

「っ・・・ちがう・・・いや、・・・はいしあ、家は・・・奪った!っ・・・くぅ」
「・・・?」
「くる、・・なっ・・・くるな!泥棒っっちがう!!」

明らかに可笑しい様子だった。
来るなと言うのに近寄る姿に、咄嗟に周りの貴族たちもシャリオンを遠ざけようとする。
その間にゾルがミクラーシュと対峙し、庇うようにシャリオンに言った。

「あの男に用があるのならばこの状態でどうぞ」
「っ・・・ゾル」
「ですが、あの男」

ゾルはそう言うと男を観察しているようだった。

「マインドコントロールを掛けられている様です」

しれっと言われた言葉に、すぐには飲み込めなかった。

「!?それを先に言ってよ!」

庇う様にたったゾルに感謝をした束の間。
そんなことを言う彼に思わずそう叫んだ。

「恐らくシャリオン様のタリスマンによって術が崩れかけているのでしょう」
「!」

このタリスマンはシャリオンが社交界を再び出ようと思った切っ掛けの時に、セレスから送られたものでシャリオン以外にも周りの人間が掛かっている場合は術解くことが出来る。
だが、ミクラーシュを見ると苦しんではいるがまだ解けていないように見えた。

セレスより魔力が高い術者と言う事・・・?

そんな不安に駆られた時だった。
ミクラーシュは体をふらつかせた後、崩れる様に床に倒れる。
レオンはジュリアゾルの母親にシャーリーを任せると、陛下達を守る様に立った。

「陛下。おさがり下さい。衛兵!」

そう声を掛けると扉から続々と兵士が入ってくる。
怒涛の勢いに困惑しているとぐいっと腕を引かれシャリオンもガリウスに守る様に抱き寄せられた。
シャリオンに安心させるようににこやかに微笑んだ後。
その表情は一転し冷たい声が響く。

「術解が出来る魔術師をこちらに」


☆☆☆


それから、ミクラーシュのマインドコントロールの解術は早急に行われた。
かなり強固なもので解除にかなりの時間を有するようで未だに対応中だ。

そしてそれと同時にアンジェリーンにも容疑が掛けられた。

アンジェリーンが不確かな情報で操った様にも見えたからだ。
疑いを掛けられたアンジェリーンは一切抵抗も抗議もせずに、捜査に協力すると言った。
連れて行かれる際、一度だけこちらを見てきたが、結局彼は何も言わずに部屋を出て行くのを見ながらシャリオンは複雑な気分だった。

信用したいと思いかけたところだったこともあり、酷く落ち込んでいる。
だが以前ミクラーシュが乗り込んできた時を思い出す。
ミクラーシュは誰かにそそのかされたようだった。

・・・親しくなりたいと言ったのは嘘だったのかな

その犯人が、アンジェリーンだったら・・・。
そう思うと辛く思った。
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