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執着旦那と愛の子作り&子育て編

おめでとうっ!

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最近何もしていないタイミングに考える時間が増えた。

アンジェリーンのあれは何だったのだろう。

貴族の結婚が恋愛感情があってするものじゃないと理解はしている。
けれど、それをわざわざシャリオンに言ってどうするのだろうか。
アンジェリーンとてシャリオンがルークと幼馴染で友人関係があることは知っているはずだ。
それなのに、王配にはなりたいと言う。

名誉が欲しいのだろうか

考えても想像の域を出なくて、全くわからない。
だが、あれからアンジェリーンの噂は良いものばかりが聞こえてくる。
以前の容姿のことではなく、態度が改善されてるそうなのだ。
彼はよく城勤めの兄の元へ行くことがあり、特に婚約者候補となってはルークに頻繁に接触しているようだ。
当然王太子なので周りに護衛や使用人がいたり、他貴族が居たりもするわけだが、その態度も改善されたらしい。
以前は必ず一回はトゲのあるような、そんな視線や言い回しを感じることがあったが、今は一切なくなった。
それは、ルークに対してだけではない。

彼・・・というか育ての親にだが過去邪険にされた者は『王族との婚約の為だ』と言い、それ以外の者達はそう言う事実が過去に合ったとしても、改心したならそれで良いと言う者の二分化されている。
城の中でも前者はミクラーシュを支持し、後者とアルカス家と繋がりのある家はアンジェリーンを指示した。

どうなるんだろう・・・

あまりこういうことを考えるのは得意ではない。
そんなときだった。
眉間に皺の酔ったシャリオンの前で破裂音がする。


パチン


「っ・・・びっくりした」

目の前で手を叩かれたのだ。
思考の淵に沈んでいたのを引き戻され、ハッとしたときには呆れ顔のゾルがいた。
だが、呆れさせるようなことをした覚えがない。

「あれ。もう夕方?」
「あぁ。そうだ」

窓から入ってくる日差しの傾きにその事を知る。

「えーっと」

時間の流れは早いものだ。
でも手が空いたなら子供達の所に行けばよかったと思いつつ、呼びかけられた理由を探す。

「シャリオンのすべきことはなんだ」
「え?なんかやる事あった?」

考え事をしている間のことは覚えていないが、それでも考え始める前には仕事の終了を確認してからだったはずだ。
考えている間になにか持ち掛けられたのだろうか。

「そう言う事を言ってるんじゃない。
シャリオンはなんだ」
「??え、・・・り、領主?」
「そうだ。それだけか?」
「次期、公爵」
「それから?」
「質問の意味がわからないよ・・・」
「あの男や子供達のことは良いのか」
「!・・・アシュリーとガリオンの親で、ガリウスの伴侶だよ」

質問の意図は分からなかったが、何を言わせたいのかは分かって答えると、ゾルはため息をついた。

「そうだな。では、改めて聞く。
シャリオンのすべき事はなんだ」

真っ直ぐこちらを見てくる目は、猛禽類の様で間違いを許さない雰囲気を醸し出していた。

「領地の事、家の事。子供達の事と、・・・
が、ガリィの事」
「そうだ。分かっているじゃないか。
あと、友人のことも忘れてやるな」

そう言って目の前に出されたのはたくさんのリストだ。

「なにこれ」
「ジジとディディの贈り物カタログだ。
シャリオンなら自分で選びたいと言い出すだろう」
「!うん!」

その返事にゾルは口角を少し上げて微笑んだ後、沢山並べた。
ポンツィオには既に贈るものは決まっている。

「うわー迷っちゃうな・・・。
花とか枯れてしまうし・・・」

国が違うと言うのも悩む所だった。
それに、あの2人はあまり豪奢なものは好まない。
しかし、ふとあの古城を思い出す。
あの中の様式はよく見覚えのあるものだった。
あの城に住んでた末裔が、今のシディアリアの民じゃないのだろうか。

「うーん」
「普段使うものにしたらどうだ」
「普段使うもの?」

反芻しながら持ってこられたカタログをめくる。
文字と絵柄のついたそれを見ながらどれもこれもいい物に見える。
ジジは細身ですらりとしているし、ディディは司祭にしては良い体格をしている。

「友好の証としてこの国の物を送るのも良いだろうな」

シャリオンが目を落としているページに気が付いたのだろう。

「服も良いけど、サイズが分からないじゃない?」
デザイナージャスミンなら分かるんじゃないか」
「そうかな」

そう言えば最近は服のサイズを測られた記憶がない。
それはシャリオンがもう大人で成長することがないのもある。

「一着作ってみても良いかもね」
「あぁ」
「あと、家具なんてどうだろう」
「家具?」
「とういうか、寝具。ガリィにね?このお城に来た時に寝具は好きな職人がいるからって作ってもらったでしょう?
あの寝具のお陰で良く寝られるんだ」

夢見が悪いことは一度もないし、朝目を覚める時はいつも晴れやかな気分になる。
ガリウスが勧めるだけあって素晴らしい寝具だと思っているのだ。
シャリオンがそう言うとゾルは可笑しそうにクスクスと笑った。

確かにガリウスの持ち込んだ寝具は一級品だが、特別な仕掛けなどない普通の高級寝具である。
ガリウスはその寝具でないと寝られないというのは偽りで、例え親でも同じ寝具をシャリオンが使うのが許せないと言う心の狭い考えからだ。
それに、シャリオンが寝つきが良いのも、目覚めが良いのもそれはガリウスがいるから。
確認はしていないが、もしシャリオンが夢でうなされるようなことがあったなら、ガリウスなら夢の中にでも邪魔しに行き、悪夢など見せないように睡眠の魔法をかけると思った。
しかし、過保護さに笑ったゾルに勘違いをしたらしい。

「寝具は可笑しいかな。・・・あ、急に送っても迷惑か」
「いや。屋敷を引っ越すと言っていたから、早めに言っておけばいいだろう。
その様に連絡を入れてみよう」
「でも今から連絡を取るの?」

確認してくれるのは嬉しいが、シディアリアは海の向こうだ。
ハドリー領まで今は転移装置があるからあっという間だが、それからしばらく船に乗らなければならない。

「心配ない。シディアリアとサーベル国にはウルフ家の者がいる」

それは初耳だった。
驚きながらレオンの采配に感心する。

「そうなんだ。父上には敵わないな」
「レオン様の指示ではなく、一族で出した結果だ」

レオンの指示でなかったというのは更に驚きだ。
しかしその原因は自分にあるだろうと思った。

「罪悪感が抱く暇があるなら、お前はあの男と子供達の傍で幸せになり笑っていろ」
「ありがとう。ゾルのお陰で幸せだよ」
「あぁ」

本当は言い足りない。
だが、ゾルはこれ以上は受け取ってくれない。
それは昔からだ。

・・・
・・


それからしばらくカタログを見たり、ゾルに相談しながらあれこれ悩んだ。
そうしているうちに、あれもこれも送りたくなってしまい、一旦落ち着こうと最後のめくったページに描かれていた沢山のタリスマンに目が留まる。
これまでもシャリオンのことをたくさん守ってくれたタリスマン。

「良いかもしれないな。だがうちにはがいるだろう」
「けど」

シャリオンも良いかもしれないと思った。
しかし、セレスにまた頼るのは気が引けた。

「聞くだけ聞いてみたらいい」
「今は子供達の世話もお願いしているし、転移の魔法石の件だってお願いしているのに」
「それが一般の人間であればな。・・・わかっているのか?あの男は死刑にも」
「うっ・・・わかった!わかってるから!」

呆れた眼差しで言うゾルにシャリオンはすべてが言い終わる前に慌ててその話を止める。
それは何度も聞いた話である。
ゾルにもガリウスにも。そしてまさかの本人からも『甘い』と散々言われている。

あの男ガリウスと作ったと知ったら、ジジ達も喜ぶんじゃないか」
「そうかな」

そう言われるとそんなような気もしてくる。

「あぁ。サーベル国では渡しやすいものを渡し、それ以外はシディアリアに贈る手配をするから今晩にでも2人で送るものを決めてくれ」

ゾルのその返事に安心をしながら、2人が喜ぶ姿を思い描いていた。


☆☆☆

戴冠式の為にサーベル国へと出発の日。
港に出国する準備が整い人々が集まっていた。
今回行くのは陛下とルーティ、王太子であるルークに外交担当であるライガー。
それに招待されたシャリオンとその伴侶であるガリウスだ。

その場にはハドリー侯爵やカイン、そして、・・・アンジェリーンが見送りに来ていた。
彼はルークに微笑みかけながら挨拶をする。

「いってらっしゃいませ」
「あぁ。わざわざ見送りありがとう」
「これも陛下が転移装置を各領地に手配下さったお陰です。
殿下。・・・ご無事に帰ってくるのを、お待ちしております」

そのミクラーシュがここにいない理由も気になるが、ここにアンジェリーンがいるのも気になる。
完璧な笑顔で見送るアンジェリーンと、外向けの表情で喜びを見せるルークはお似合いだとあちらこちらで囁かれているのが聞こえてくる気がした。
案の定同様に見送りに来ていた貴族たちからは、そんな声が上がっているようで彼等は微笑ましく2人を見ている。
そうも言いたくなるほどアンジェリーンの笑みは完璧だった。
今までのあの冷たい棘は、実はちょっとした仲違いがあって実は相思相愛だったんじゃないかと思わせるほど、2人は仲良さげである。

アンジェリーンはガリウスを含めた全員に挨拶を交わすと自分の前にもたった。
シャリオンの前に立つとの瞬間表面上の仮面が外れた・・・と言うよりも、いつも通りのアンジェリーンになった。

「お気をつけて」
「・・・お見送りありがとうございます」
「伴侶殿とウルフ家の者から絶対に離れては駄目ですよ」
「存じております」
「貴方は自分が攫われやすいのを自覚しなさい」

そんなことをわざわざ言いに来たのだろうか。
先日からやたらシャリオンにだけあたりが強くなったような気がする。
だが、その内容はシャリオンを心配した言葉で受け取っておく。

「必ず帰ってきてくださいね」
「?・・・はい」
「また拉致されたりしないこと」
「っ・・・はい」

こんな場所で『誘拐』された時のことを持ち出さなくても良いだろうに。
周りも驚いたようにこちらを見てきていた。

「あと、お土産はサーベル国の民族衣装が良いです」
「え」
「あの国は熱いからなのか少々薄着ですが、布の動きが風に乗って蝶のように見えてとても美しいと聞きます」
「えっと」

そう言うと、アンジェリーンはシャリオンに近寄ってくると誰にも聞かれないような声でそっと囁いた。

「貴方が私に似合うと思うものを選んでくださいね」
「???、・・・はい」
「貴方の分も含めて2着です」
「私のも・・・?」
「えぇ。貴方の物は伴侶殿にでも選んでもらいなさい。
頼みましたよ」

シャリオンの返事に笑みを浮かべるとアンジェリーンはお辞儀をし、もうやることは終わったと言うように後ろに下がっていった。
周りからの視線には気付かないようにしながらも無言の圧力がかかっているかのようで痛かった。

☆☆☆

航海中。
出航し2日くらいガリウスの様子が可笑しかった。

気付くとシャリオンをじっと見つめたり、何かを考えている。
そのうちに、目を閉じじっとしていることが多くなる。
仕事のことで考えているのかと思ったが、船酔いになってしまったらしい。
心配かけまいと頑張ていたらしいガリウスに、シャリオンはかいがいしく世話をし漸く直ってくれたようだ。
ゾルに助けを求めたけれど『アレはシャリオンにしか治せない。手でも握っていてやれ』と言われてしまった。
まだシャリオンがうまく出来ない魔力を必死に送ろうとした。
シャリオンはガリウスに魔力を与えてもらえると、気持ちが良くなるからだ。
でも、ちゃんと良くなってくれてよかった。
長い船旅少しでも快適に行きたい。

その後の海路は予定通りに進む。
途中で雨が降ったりもしたが荒れることもなかった。

少しずつ熱くなる気候に本当に海外に来たのだと実感していた。
それを感激をしながらも、船の中で領地に残ったウルフ家の者からゾルを通して連絡が入る。
内容はやはり嬉しくないない様で渋い顔をしていると、ルークに呆れられたように声を掛けられる。
見ればルークとライガーが揃って遊びに来ていた。
船の上では暇だ。
となるとやることも限られていて、2人は揃って良くシャリオンとガリウスのいるの2人の部屋に来ていた。

「仕事熱心だねぇ」
「何か急用なのか?」
「うん。ちょっとね」

そう答えるシャリオンにルークとライガーが不思議そうに首を傾げた。

「何があったんだ」

心配げなライガーにシャリオンは苦笑を浮かべた。
『なんでもない』と言う事も出来たが、それなら何故国から離れた今もする必要があるのか突っ込まれたら終わりだ。ごまかすのはやめて素直に答えた。

「最近、領地内のとある村へ続く橋を壊されるんだ」

あれから橋は建てられたが、また壊されてしまった上に、一番最初に派遣した行方不明者は見つかっていない。

「橋が?」
「うん。全部の町や村じゃないんだけど。
それで修復を手配したら、職人と警備の兵が行方不明になった」
「!」
「で、再度人を手配したら・・・今度は完成したらすぐ壊されてしまったみたいだ」
「なるほどな。・・・領地内に転移装置を作ってしまえばいいんじゃないのか。
あの転移装置はそう簡単に壊せないだろう」

ライガーの言っていることは分かる。むしろその予定だ。
だが、それは国内に廉価版の転移の魔法石と転移装置が馴染んでからにしようと思っていたのだ。

「うーん」
「ハイシア家にその技術を持っていると思われたくないのですよ」

返事に難色を示すと、ガリウスが答えてくれる。
しかし、それにルークは不思議そうに首を傾げる。

「ん~。
国内に設置するときもそう言ってたけど、ハイシア家に力があると何故思われたくないの?」
「余計な邪推を掛けられるでしょう?」
「あー。けど、ハイシア家はどう足掻いたってされると思うけど。ねぇ、兄上」
「まぁ・・・そうだな」
「特に、シャリオンは目をつけられちゃったみたいだし」
「え。だれに?」
「気付いてないとは。大変だね。ガリウス」


ルークが揶揄うようにガリウスに言えば冷たい目でルークを見る。

「一体どなたのせいなのでしょうか」
「え~?一概に俺だけじゃないと思う」
「そもそもシャリオンは元から気に入られてたからな・・・」

どうやら、3人中では共通認識のようだ。
訝しげに眉をひそめだかルークもライガーも苦笑を浮かべた後、ガリウスを見た。

「誰の事を言ってるの?」
「「ガリウスに任せる」」

まるで合わせたかのようにそう言う2人に、ガリウスは機嫌が悪そうに溜息をついた。

「・・・ガリィ?」
「・・・。シャリオン。まだ想像の域を超えてないのです。なので」
「超えたら荒れそうだけど~」
「殿下?」

ケラケラと笑いながら言ううルークに、ライガーは「馬鹿だな」と呟いた。
ガリウスはルークににっこり微笑み名前を呼んだ。

「なんでもなーい」
「・・・兎に角、真相が分かったらシャリオンにも言います。
それよりもシャリオンはその橋や、転移装置の件を進めなくては。
今お2人も言っていたようにハイシア家はレオン様や私が宰相という立場である以上、周りから何か言われるのは避けられないのです。
ならば、ここはもう開き直っては如何でしょうか」
「・・・、」
「幸い。子供達は順調に魔力のコントロールを得ている様子ですし」

あの事件以降は確かに暴発するようなことは無くなった。
セレスはシャリオンの願いを聞き、子供達の魔法の訓練をするときは結界を二重に張る様にしたこともあり、多少の爆発はしなくなったのもある。

「子供達の為に隠しておきたかったのか?」

ライガー心配げにこちらに尋ねてきた。

「アシュリーの容姿がね・・・」

先祖返りで王族の容姿を持つアシュリー。
ルークを愛しているならミクラーシュが王配になれば良いと思っているが、あの突撃してきた時のことを思い出すと、そういう風に考える人間もいると言うのが実感できた出来事でもあった。
そういう輩がアシュリーを見て邪推を起こすのも不愉快だし、子供達を自分以上に締め付けられた生活を送らせるのは何としても避けさせたかった。

「シャリオンは心配性だね~」
「普通の子くらいの魔力だったら特に気にしなかったよ」

簡単に言うが子供達は魔力がなく知識がない自分でも不安があった。
子供達には見せないようにはしていたが、・・・魔力吸引は人から奪う行為。
親しい知人には笑って許せる行為かもしれないが、貴族ならばそうは行かない。

「2人も見たでしょう?花びらを出したこと」

だが、先日のガリウスの兄であるガヴィーノに言われた、『普通にはなれないので比べないことが一番です』という言葉を思い出す。

「でも。・・・ガリィの言う通りなのかな。
順調に魔力を制御できる様になっているみたいだし」

何時までも守っていられるわけではないし、容姿のことだってデビュタントで知られてしまう。
いずれは学園に通うことになったら知られてしまうのだ。
それに、シャリオンがひた隠しにすることで、自分たちのルーツが恥ずべきものなのかと勘違いさせてしまうかもしれない。
すると、ガリウスがそっと肩を抱き寄せてくれた。

「子供を考えての事です。気に病みすぎるのも良くないですよ」

心配げにこちらを見てくるその瞳にホッとする。

「ふふ。そんなに弱くないよ。
けど、・・・今更ハイシア家が実は転移装置を造りましたって言ってもね」
「わざわざ言う必要ないだろう」
「ハイシア領にある転移装置についていちゃもん付けられたら、自領で賄ってますって言えば良いんじゃない?」

『いちゃもん』とは王家との癒着の事だろうが、その言葉で片付けるルークに苦笑する。

「大体それで国内の転移装置はハイシア家が設置したんだと勘づくだろうし。
むしろ、全国に配置することを優先し、且つ無料で良いと言ったことに対し見る目はよりいい物になると思うが。
ガリウスの見立てとしてはどう思う」
「そうですね。ライガー様の仰ることもあると思います」
「それならいいのだけど」

話しを聞いてもらって少し気分が楽になった。
ガリウスは勿論話を聞いてくれる。
しかし、シャリオンの願いを聞いて大きく反れるよなことは言わない。
もしかしたら、こういう機会を待っていたのだろうか。
ガリウスを見上げるとニコリと微笑まれた。

「じゃぁ。もう必要以上は隠そうとするのは止めようかな」
「そうすると良いよ~。俺もハイシア領になんか言うやつは圧力与えようかな」
「頭の悪いことを仰らないでください」
「面白がるんじゃない」

ルークのふざけた言葉に、ガリウスとライガーはため息をついた。
それが本気で言っているわけじゃないのは分かっているから、シャリオンもクスクスと笑った。

☆☆☆

サーベル国。

着いた初日は簡単に挨拶を済ませると用意された宮殿で休んだ。
見るもの全てが真新しく見える。
薄着に着替えたがそれでも熱く感じていたが、夜になって気温が下がってくると過ごしやすくなってくる。
早く気候に慣れないと戴冠式は厳しそうだ。

時間を多めに取られていることに感謝しつつも、2日目は街に出ることにした。
ガリウスだけでなく今回戴冠式の際の衣装の着付けに同行したジャスミンも来てもらう。
それは勿論、アンジェリーンへの土産を買う為だ。

アンジェリーンは知らなくて当然だが、シャリオンは服のセンスがない。
まともな服を着ているのはクローゼットにはセットでしまわれていて、気にせず着ているからだ。
それなのに、いつも華やかに聞かざるアンジェリーンに似合いそうな衣装と言われても困ってしまう。

おまけにあんなに大勢の前で言われてしまったのだ。
買わないなんて選択肢などない。
ガリウスにはシャリオンに似合うものを選んでもらい、2人でこんな風に歩くのは初めてでとても新鮮だった。
まず国内ではこんなこと出来ない。

するとジャスミンが首をかしげながら尋ねてくる。

「ところでこれって何処で着るの?」
「アルアディア」
「この薄着で??」
「・・・。魔法でどうにかするんじゃないかな」
「あちらのことは存じませんね」

なんてガリウスは冷たく言い放つ。
正直シャリオンもそう言いたい気分だ。

「でも、そうじゃなかったら風邪ひいちゃうよね」

まさかとは思うがそれで怒られたりするのではないかと考えてしまう。
昔よりもアンジェリーンの導火線が最近よくわからない。
するとジャスミンは布地を見た後、こちらを見てきた。

「・・・。見てたけど。要はこの布の漂う感じが欲しいのよね?」
「そんなことを言っていたね」
「わかったわ。なら作りましょう♪」

悪い。と、言おうとしたのだが、どうやらむしろやりたい様子で目を輝かせている。

「アンジェリーン様の衣装は一度作ったことがあるから大丈夫よ!」
「へぇ?」
「貴方の衣装を作ったと知って美しいと思って下さったんですって~」
「そうなんだ」
「シャリオン様のお陰で本当に店が潤って大助かりよ!」

上機嫌な笑いを上げるジャスミンに苦笑を浮かべた。

「そしたら私は布屋に行ってくるわ。ちなみにガリウス様はシャリオン様に要望があるの?」
「そうですね。・・・シャリオンは何を着ていても似合いますが。
・・・。
形はあちらと少々合わせても良いかもしれませんが、シャリオンと同じ色の物で私の小物を作って下さいませんか?」

そう言ったガリウスにジャスミンはニヤリと笑ったが、親指をグッとたてた。
ここは海外で人の目が少ないからか余計にジャスミンの素が出ている。

「わかったわ。ラブラブな感じを出して見せるわ」
「お願いします」

それにはガリウスも可笑しそうに口元に笑みを浮かべながら答えた。
しかし、シャリオンが婚約者候補の一方にだけ贈ったというと面倒臭くなるのが容易に見えた。

「あ。それとミクラーシュにも・・・でも、そんな時間無いかな」
「いいえ。大丈夫よ?なんてたってアルアディアに帰るまで何日と時間があるんですもの。
海の上で作れるわ。それにやることが出来てその方があっという間よ。
でもそのメンバーで作るなら殿下達のも作っておいた方が丸く収まるんじゃないかしら」
「でm」
「大丈夫よ!本当に貴族とは思えない人よね~
無理なこと口にするわけないでしょう!」

シャリオンが言い終わる前に遮ると、ジャスミンはクスリと笑った。

「さあ!時間が余ったならお2人でショッピングしてきなさいよ。
今日もたくさん護衛付けているんでしょう?楽しんできたらいいわ♪」

そう言うとジャスミンはさっそく店内に入っていくのが見える。
布の仕入れられる場所を探しに行ったのだ。
行動の早いジャスミンに思わず2人で顔を見合わせた後笑いあった。

2人で手をつないで歩く街並み。
異国の服を着ている自分達が誰で身分なんて分からないだろう。
いつもより自由に買い物を楽しむ時間はとても楽しかった。


☆☆☆



夜には簡単なビュッフェ形式の晩餐に招待される。
昼間に解散した
同行したジャスミンに着飾られガリウスと共に会場に向かう。

昼間は時間が取れなかった、陛下やポンツィオに挨拶をする。
第一王子が失脚し内情も安定したのだろうか。
ポンツィオはあの日よりも余裕がある様に見えた。
後ろに控えるカイザーも立派になった。

「ブルーノ様。此度は遠路はるばるありがとうございます」

公式の場ではないから少々崩した形で、ポンツィオが挨拶をする。
その隣には陛下の王配はいない。
第一王子が失脚してから彼もまた幽閉されている。
そこには見慣れない人物が数人並んでいるがポンツィオの兄弟、そして伴侶だろう。
サーベル国王は最初の挨拶をしたが、すぐにポンツィオに譲り見守る様に隣に立つ。

「こちらこそお招きいただき、ありがとうございます」

新しい王に、それも面識がある人物だ。
ブルーノもにこやかに目を細めた。

「若輩者でございますが、皆さまをしっかりとご案内できるようにつとめさせていただきます」
「その様に構えられなくて結構ですよ。・・・私も数年したら退く」
「では、ついにルーク殿下に」

前回、建国祭に来た時もその話が出ていたのだ。
・・・まぁその時は王太子妃候補と言う状態の伯爵令嬢が居たのだが。

「いえ。・・・ですが今回は早く決めてくれると思っておりますよ」

そう言ってブルーノがルークを見る目は少々鋭い。

「そうですね。次にお会いできるときは伴侶をご紹介出来ると思います」

にこやかにルークが答えるのを後ろで聞きながら、考えてしまう。

僕が考えたって仕方がないことなのに

ガリウスに見られていると気づかずに小さくため息をついた。


☆☆☆

シャリオンはハイシア家なので、別に帯同しなくても良いのだが、ガリウスが次期宰相と言う立場の為、外交担当のライガーのサポートに追従するため、シャリオンもそれに付き添った。
国内なら遠慮して近寄らないところだが、ガリウスやゾルにだけでなくアルアディア王家全員に言われてしまえば拒否は出来ない。
普段物静かなルーティにでさえ『シャーリーにしっかり見るように言われてる』と冗談交じりに言われてしまえば、従うしかない。

それにどんなに人がいる夜会でも攫われる事があると言うのは経験済みだ。
ガリウスの少し後ろに歩き、その後ろにはゾルが控える。

なんだか、可笑しな状態に笑ってしまうが。

人通り挨拶が終わると、ガリウスが漸く解放された。
というか、シャリオンに気遣い自由時間となったのだろう。
ルークがこちらに来ようとしたところに、何故かライガーが呆れて引き留めていたのが気になったが。

「流石に疲れましたね。・・・バルコニーに行きましょうか」
「うん」

先ほどまでは臣下として付き添っていたガリウスが、シャリオンの伴侶として切り替えたのかするりと腰に手を当てる。
より近くなった距離に香ったかおりに頬が熱くなった。

2人でバルコニーでるとそこには人がおらず、星々が輝いていた。

「見える星が違うね。別の世界に来たみたいだ」
「えぇ」
「・・・お城も造りが全然違うし。なんか楽しい」

はしたないのできょろきょろとはしていなかったが、見たい気持ちを精一杯抑えていた。
すると不意に人の気配がしてそちらを向くとゾルがこちらに視線を向けていた。
その向こうには懐かしい面々がいた。

「ジジ!」
「シャリオンっ」

驚いたように名前を呼べばジジが嬉しそうに駆け出して来て、ぎゅっとシャリオンを抱きしめた。
シャリオンよりも大きい体格のジジの背中を撫でながら苦笑を浮かべると、ディディも困った様に笑っていた。

「ジジ。来る前に約束しただろう?おしとやかに」
「あ」

そう言うと、パッと離すジジは照れたように頬を染めた。
大きな少年のようなジジは言動が幼い。

「あの、ごめんなさい」
「いいよ。僕もジジに会えて嬉しかった。
それに丁度良かった。ゾル」
「?」

不思議そうにするジジ。
シャリオンは構わず後ろのゾルを呼ぶと、どこからともなく小箱をとり出すと2人の前に差し出す。

「僕達家族から2人に贈り物だよ」

ジジとディディは顔を見合わせた後そっと中を開いた。
そして二対のタリスマンに嬉しそうに微笑んでくれた。
魔力がある2人には分かるのか、とても喜んでいる。

「4人からの贈りもの。とても嬉しいです」
「ありがとうっ」

最初ガリウスと2人でタリスマンに魔力をつくるつもりだった。
それをセリスが事情を聞き、それなら子供達の魔力を込めたらどうかと勧めてくれたのだ。

永遠に2人が健やかに暮らせますようにと願った。

どうやら、それは思っていた以上に喜んでくれたようで、・・・ジジはすでに潤み始めていた。

「お祝いで贈ったのに・・・そんなに泣かれてしまうと困ってしまうな」
「っ・・・嬉しくて」

無事に子供達が産まれたことを喜んでくれているのだ。

「僕もジジがディディ殿と結ばれた事。心の底から嬉しいよ」
「っ・・・!」

ジジはその言葉にホロリと涙を流したが、すぐに涙を拭いた。

「っ・・・私は強くなって、ディディ様を支えるって決めたのに駄目だな」

苦笑しながら目元に手を当てている。
大袈裟に見えるかもしれないが、ジジにとってはそれほど子供達の無事が大切なことなのだ。

「涙を流すことは弱いことじゃないよ」
「・・・シャリオン」
「問題はその後どうするかだよ」
「うんっ」
「ディディを支える司祭補佐と言う事はそれなりの立場になるのでしょう?これから沢山の・・・」
「え?」

尋ねたシャリオンに逆に尋ねられてしまい、ガリウスを見上げる。

「支えるという事は補佐になられると思ったのですが。違いましたか?」
「いや。あっています。けれど、ジジは分かっているものだと思っていたから、ちゃんと言っていなかったかもしれない」
「!!!」

目を白黒させたジジはディディに『私には、無理ですっ』と、尻込みをし始めた。
確かにジジは余りそう言うことをしたがる性格には見えない。
ディディは困っている様だが外す気はないようでどうにかなだめようとしているように見えた。

「一番傍で支えることができるなら良いポジションじゃない」
「!」
「どんな役職だってディディ殿を支えられるなら関係ないでしょう?それとも下げてもらって遠くに行く?
でも、そしたら司祭補佐よりは声が届かなくなると思うよ」
「っ・・・行かない!・・・私、頑張る」
「うん。応援しているよ」
「もし、次の子が産まれたら今度はシディアリアに行きますから、その頃にはジジさんも立派な司祭補佐になっているでしょうね」
「っ・・・うん!」

ディディの傍で支えられるというのは何よりも大切なようだ。
やる気を出したジジにはすでに気の迷いがない様でホッとする2人だった。


☆☆☆


パーティーも終盤に差し掛かった頃。
そろそろ終わりの合図が来るだろうかと思われた。
そんな時に声を掛けられる。

王族ともなれば別だが、この会場で話しかけられるのはシディアリアの2人しかいないと思っていたから少々驚いて振り返ると、そこにはアルアディアと同じ大陸にある国、カルガリアの国王と王配がいた。

「こんばんは。ハイシア公爵」
「ごきげんよう。カルガリア陛下」

ガリウスと揃ってボウ・アンド・スクレープをする。
次期公爵ではあるが、幸いなことに後継ぎ争いをしているわけでもないから、訂正はしなかった。

それにしてもまさか国王陛下から挨拶をされるとは思わなかった。
勿論ライガーとの婚約があったころ、顔を合わせた事があるがそれ以降に親しい交流があったわけではない。
先日の建国祭も招待しいらっしゃったが、その時でさえ有力貴族として各国のお客様を招き入れる立場であっただけ。
だが、カルガリアは短い領域だがハイシアと面している部分がある。
だからそう言った意味でも知っているのかもしれない。

「名前を憶えていただいていたとは光栄です」
「良く名前は存じております。お若いながらに立派な手腕で領地を束ねられていると。
我が国でもその敏腕さを見習いたいところです」
「お褒め頂きありがとうございます」
「こちらは・・・」

そう言ってカルガリア国王がガリウスに視線を向けた。

「私の伴侶でガリウスと申します」
「ガリウス・ハイシアです。次期宰相になります」
「そうでしたか。どこかでお見受けしたと思っていたのです」
「ご挨拶が申し遅れ申し訳ございません」

通常、宰相であれば自己紹介をするかもしれないが、その側近までは相手から求められた時くらいしかしない。
知らないのは当然であろう。
しかし、それは決まり文句なので言っておく。

「いや。今後ともよろしく頼みます。
それにしてもハイシア公爵」
「はい?」
「最近領地内で可笑しなことはありませんか」
「可笑しなこと。・・・どのようなことでしょうか」

実に分かりやすい尋ね方である。
しかし、抽象的過ぎて聞き返せば・・・後ろに控えていた王配のシオドアがぶふっと吹き出した。
その態度に一気に空気の緊張が解ける。

「シオドア・・・。・・・すみません。
あぁ、・・・これは伴侶で王配のシオドアです」

そういうと、シオドアは綺麗なボウ・アンド・スクレープを見せてくれたのでそれに返す。
陛下よりも随分若い男性だ。

「申し訳ありません。陛下は回りくどいことが嫌いなんです」
「大丈夫です。私も好きではありません」

シャリオンがキリっとして応えると、シオドアは一瞬間を置いたがクスクスと笑った。

「陛下。宜しいでしょうか?」
「・・・あぁ」

暗に不器用だと言われたのだが、それはなんとも思わないようでむしろホッとしたようにシオドアに任せる様に頷いた。

「実は10数年前にさかのぼるのですが、国で管理していた猛獣が逃げ出しまして」
「猛獣ですか・・・?」
「はい。長らく消息不明だったのでもう絶命をしたものかと思われていたのですが、それがアルアディア・・・ハイシア領に接する密林で目撃された情報がありまして。
・・・そちらとの境目には城壁がありますから大丈夫だと思うのですが」
「・・・、・・・、・・・」

それを聞きながらシャリオンは血の気が引いていくのが分かった。
そのあたりは丁度、橋が破壊されたあの場所の奥。つまりは村がある。
砦は行き来が出来ないように内側から石で閉じられてはいるが、嫌な予感は尽きない。
それに、もしそこが破壊をされているなら、砦から連絡があるはず。

もし、・・・その砦ごと潰されていたら

「っ・・・なるほど。・・・、・・・確認ですが。
もし、領地内で姿を見た時はどのようにしたらよいでしょう」

それよりも村人や見張りの兵士の安否が気になる。
だが、そんなことを感情的に聞けるわけがない。
努めて冷静を装いシャリオンは尋ねた。
しかし。

「どうしようもないでしょう」
「・・・どういうことでしょうか?」
「シオドア!・・・お前は・・・言葉遊びをするな。
はぁ・・・ハイシア殿。そのご理解難しいかもしれませんが、猛獣ですが人は襲いません」
「・・・、」

そんなもの猛獣とは言わないだろう。
意味が分からなくて尋ねようとしたが、それを遮ったのはガリウスだ。

「こちらで始末して構いせんね」

その言葉にシオドアは驚いた表情をしたが、困った様にする。

「出来ないと思うし、出来たとしたらしないで貰いたいのですが」

その言葉に何かが切れた。
シャリオンは基本気が長いが、とある方向には短い。

「こちらには領民の安全が掛かっているのです。
貴方方が言う通りにその猛獣は人は襲わないかもしれませんが、暴れたりして巻き込まれないという保証が何故言えるのですか」
「シャリオン」

興奮した様子のシャリオンの背中を撫でてくるガリウスに、少しだけ冷静になれた。

「シャリオン。国に関することに発展するかもしれません。発言しても宜しいですか?」

ガリウスの言葉にコクリと頷く。

「十数年前は人を襲う事が無かったとしても長らく自然にかえされた猛獣が何故人を襲わないという保証が?」
「っ・・・」
「これはアルアディアへの」
「ち、違う!」

カルガリア国王は慌てて否定をした後、ギっとシオドアを睨んだ。

「お前は・・・私が説明するッ
・・・先ほどハイシア殿が言っていた巻き込むことはあり得る。
これは申し訳ない。
しかし、人を意図的に襲い捕食することは断じてない。
そもそもあの猛獣は動いているものを食せない」
「どういうことですか」


「・・・。逃げたというのは・・・ドラゴンなのです」


「「・・・」」


その言葉にシャリオン達は何も言えなかった。
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