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執着旦那と愛の子作り&子育て編

夢物語。

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『それと。・・・嫌と言える練習もしましょう』

そう笑みを浮かべるガリウスに嫌な予感しかしなかった。
普段はシャリオンにお伺いを立てるように物事を進めるのに、そんな風に断定した言い方をするガリウスは珍しい。
つまりそれ程不愉快だったという事なのだろう。

過ぎた話であることや今はされていないと抵抗してみたがあまり効力はなく、結局ガリウスの言われるがままだ。
寝間着だが着衣のまま寝具の上に横たわらせたシャリオンは焦らされ続けている。
項に口付けられながら際どいラインに触れられた。
ちゃんと触って欲しいのに、中々そうはしてくれないガリウス。
シャリオンの反応が見えているのに、遊んでるかのようなそれに名前を呼んで批難すれば、漸くはだけさせられた衣服の隙間から手が滑りこんできた。

「っ・・・」

指先で触れられただけで、体が期待に震えた。
やっと満たされると思った。
しかし、それ以降も焦れたシャリオンを弄ぶ様に触れるだけだった。
体は熱くなるのに中途半端に残された理性がちりつきそうだ。

興奮しすり減った理性では淫らな思考で、ガリウスの手に擦り付けるように体を動かしてしまう。
明確な快感に体が止まらなくなりそうだったのに、その手を遠ざけられてしまった。

なんて意地悪をするのだろう。

いつもの様にシャリオンが求めるまで待っているのかとも思ったがそれも違かった。
お願いをしても駄目で、ならばもう自分で触ってしまおうか。
困惑し焦れた感情は、涙目でガリウスを見つめると優しく口付けられた。
キスだけはちゃんと応えてくれる。

「・・・ガリィ・・・っ」

自分でも驚くほど頼りない声で呼び、そんのシャリオンにガリウスは小さくため息をついた。

「・・・。ちゃんと嫌なことは『嫌』と、言うと約束できますか?」
「っ・・・、・・・うんっ」

一瞬何を言われているのかわからなかったが、こんなことになってしまった切っ掛けを思い出し、慌てて返事をする。
そんな様子のシャリオンにガリウスは苦笑を浮かべると、眦に口づけてくれる。

「良く頑張りましたね」
「っ」

その言葉に機嫌が直ったのだと思った。
そして、やっと触ってもらえられる。
しかし、その期待を裏切るような言葉が続いた。

「もう。休んで良いですよ」

焦らされるのはやめて欲しいが言われた言葉に困惑していると、ガリウスの弄んでいた手がシャリオンから離れて行く。

「!!!」

視線の意味に気付いたのか、ガリウスは優しげな表情をしながらも、意地悪なことを口にする。

「明日も早いのでしょう?」

その表情からは揶揄っているようなそんな素振りは見えなかった。
後ろから抱きしめられていた時に、ガリウスの高ぶりも感じていたから、その気が無いわけじゃない様子なのに。
寝具から降りようとするガリウスの体に抱きつき引き留めた。

「私は湯浴みに、っ・・・シャリオン?」

咄嗟の行動にガリウスは驚いた様だった。
シャリオンはそのまま続ける。

「僕も入る」

その言葉に驚いた様にガリウスは見開いたが苦笑した。

「意地悪をしたつもりではないのですよ」
「・・・、」

腕をのばしシャリオンを撫でた。
納得いってない様子で見上げれば、脇の下に手を入れられ前に体を引き寄せられた。
いくら華奢とは言え、シャリオンは成人した大人である。
次期宰相として側近のガリウスは内勤であるにもかかわらず、相変わらず易々と持ち上げる。

「こういう事は、罰ですることではないでしょう?」

ならばなぜあんな風に触ったのかと、拗ねた様な目で見ると苦笑した。

「貴方が、それほど心身にダメージがなく、嫌な事と言ったら先程の事が適当なのでしたのです」

確かに嫌ではあったと思うが・・・、やはり納得いかない。

「そもそもガリィは勘違いしてる」
「何がです?」
「僕は嫌って言えないわけじゃない」
「家関係を気にして言わない事もあるでしょう」
「度が過ぎれば、僕だっていうよ」

心配してくれてのも分かるし、婚約する前は確かに適当にあしらっていた。
触れても過剰に反応しなかった。
だが、今は別だ。

「度が過ぎなくとも触らせては駄目です」
「・・・今は本当にないよ?」
「シャリオンを疑っているわけではないのです。
ですが、相手がどう出るかは分かりません。
私の目が届かない時、最悪な事態で敵の術中にはまりゾルやウルフ家の者が居なかった時。
いかなる時もそういう不埒なものに一切触れさせては駄目です」

いつも冷静なガリウスには珍しく感情的だ。
そんな非常事態の時、通常なら犯人を刺激しないようにするのがセオリーなのだが。
ピシャリと言う様は本気で、シャリオンを見てくる。
相変わらず心配性で思わず苦笑してしまう。
流石にもうあんなことが何度も続くことは無いのだろう。

その心配は過保護だと思うがシャリオンを想っての事で、疎ましく思う事があるわけもない。
だが、その相手を心配する気持ちは、シャリオンも同じである。

「約束する」

ガリウスが安心するなら何度だってそう言おう。
すると、その言葉にガリウスはホッとした様に息をついた。
優しく頬を撫でられ一度だけ唇を啄まれる。
しかし、覗き込んできた瞳が安堵を浮かべていたのはほんの少しだった。

「ガリィ?」
「もし」
「ん?」
「貴方も私も。・・・貴族でなかったら、攫っていたのですがね」

覗き込まれながら、ぽつりと呟かれた。
驚いた様子のシャリオンの頬に手を添えられる。
何かあったのかとじっと見つめれば考えを読んだのかガリウスは『心配するようなことは無いんです』と、続けた。それは以前のように隠していると言うわけではなく、不安からくる物なのだとなんとなくそう思った。

「貴方と私、それと子供達だけの生活は嫌ですか?」

ガリウスが心配性だというのは分かっていたつもりだが、先ほどのことでそこまで考えてしまったのだろう。
ガリウス以外の男に触られた事実は、過去だろうとなんだろうと変わらないのだ。

「嫌なわけないよ。
ガリィと一緒なら大丈夫な気がするな」

悩みもせずに簡単にそう言ったシャリオンに何故かガリウスは苦笑を浮かべる。
ガリウスが抱えている悩みは気になるが、ガリウスと子供達と一緒であるなら不安はない。
それに、その話はありえないことだが、シャリオンも好きな話である。

口では『公爵じゃなければ・・・』と、言っているが具体的には考えないようにしていた。
領民がいきなりいなくなることも、領主としての責任が突如なくなることもあり得ない話だから。

きっと、考えが・・・妄想が進めば欲が出てくる。
そしたらもっと逃げだしたくなっていたはずだ。

でも、今はガリウスがいる。
それだけで可笑しな夢物語に出来そうな気がした。

「大変だと思うけど楽しそうだね」
「私も貴方と一緒ならどこでも天国です。
ですが、貴族の暮らしが無くなるということは、
食事どころか家事もだけでなく、稼がなくてはなりません。シャリオンには大変な思いをさせますよ」
「それはガリィも一緒でしょう?
でも、そうだね。家事か・・・」

家事なんて今まで考えたこともなかった。
レオンの指示で湯浴みや着替えの手伝いは、たとえウルフ家の者でもつけられていないため、自分で服を着ることは出来きる。
しかし家事は別だ。
そもそも家事と言われる言葉は知っているが、具体的にどの範囲をさすのか曖昧である。

「家事は食事の準備もあるよね。
・・・料理はガリィ出来る・・・?」
「いいえ」

ガリウスは苦笑を浮かべて答える。

「そっか。じゃぁ覚えないとだよね。
食事・・・パンがあればなんとかならないかな・・・」

流石にシャリオンとて今出ている食事が平民ではおかしな事だとわかる。
そう呟くシャリオンの手にガリウスが重ねた。

「シャリオンのこの手て作っていただいたものなら何でもいただきます」
「どうせ食べるなら美味しい方が良いじゃない」
「ふふ。そうですね。
それに結構力のいることだと聞きます」

その言葉にシャリオンは首を傾げた。

「え。平民では・・・料理人が居ないわけだし、自分達で賄うわけでしょう?そう言う家はどうしてるの」
「恐らくですが、パンは主食で町でとても安価で売られています。
なので買っているのかもしれません。一日のパン代くらいは稼げますよ」

少し栄えた町でパン屋があるのは事実だ。
しかし、普通の平民は自分で作る。
それをガリウスは分かっていながらも敢えて作らせない方向に話を仕向けた。

「そうなんだ」
「えぇ。
それにパンだけでなく住むところも借りねばなりません。
当然、領主のような仕事も、・・・宰相のような仕事もありませんから、全く別な職を探さないとですね」
「そっか・・・ガリィは魔術があるからすぐに職が見つかりそうだ」
「そうでしょうか」
「うん。僕を何度も助けてくれた魔術だもの。自信をもって良いと思う」

そういうとガリウスは嬉しそうに微笑んだ。

「では私はギルド職業安定所に所属し狩りでもして生計に役立てましょうか。
であれば場所はカインの領の近くであればギルドが盛んです」

ギルド職業安定所』と聞くと一層に心が躍る。
物語の冒険家が行くところだからだ。
大きな体験を振り回し、魔物やドラゴンと戦うそんなイメージだ。
この世界の魔物は殆どがおとなしいもので襲うことは無いため、実際にはそんなことは無いのだが。
ガリウスが大剣を振り回しているところは想像できないが、得意の魔法で戦っているところは容易に想像が出来た。

「海の見える街か。なんだかワクワクするね」
「海はお好きですか?」
「好きと言うか、あまり見た事がないな。結婚したときに行った屋敷の湖畔は良く行ってたけど。
そもそも海に面したところはハドリー領しかないけれど、うちハイシア領と王都以外あんまりでないから良くわからないんだ」
「なるほど。ならば海に面した良い所にしたいですね。頑張って稼がないといけませんね」
「あまり無理はしては駄目だよ?」
「貴方がいるのにそんなことはしません」

倒れては元も子もないと言いたいのだろう。
しかし、それは今までのことを考えてもあまり説得力はない。

「ガリィはそう言って無理しそうだなぁ。
そうならないためにも僕も頑張らないとなんだけど・・・どうしよう」

自分のすぐに出来そうなことを探すも限られていて、渋い声を出した。

「裕福な商家の子供に行儀を教えたり勉強を教えるくらいしか思いつかないな。
それに体力もつけないといけないよね」

そう言いながらも、そんな家が何軒もあるとは限らない。
何にもできないことに自分でも呆れてしまう。
だとしたら、シャリオンができることは足を引っ張らないように、体を鍛える事も一つだ。

「確かに。この白くて細く美しい腕も愛おしいですが・・・、少々平民には合わないかもしれません」
「ほそっ・・・、・・・でも子供達を抱くようになって、少し太くなったでしょうっ」

美しいだとか細いと言われてもシャリオンは嬉しくない。
どちらかと言えば、ガリウス以上に・・・そう。
宮廷に居る騎士達のように凛々しくありたかった。
今まで殆ど筋肉らしい筋肉がなかった細腕をガリウスの前に出すと握らせた。
勿論、毎日触れているガリウスだから分かるのだが、そんな風に視聴するシャリオンにまるで幼児おさなごを見るかのように、微笑ましい笑みを浮かべた。

「えぇ。・・・(太くはなっていませんが)力を入れると筋肉で膨らむ部分が増えましたね」
「だよね・・・!・・・ふふっ」
「ですが、シャリオン。
お忘れですか?・・・私達2人で外に出ては子供達が危ないです。
なので家で子供達を守るというのはどうでしょう」
「そうだった。僕達2人だけだった。
・・・僕だけ家に残ってていいだなんてなんだか楽してるみたいだけど」

貴族としての生活が無いと分かっていても、ウルフ家の者達が居ないという事を今まで想像したことがなかったから、うっかり失念していた。
だが、そう考えると彼等が居るからシャリオンもガリウスも仕事に集中が出来るのだ。
それに感謝しつつも、話にのめりこむ。
自分だけ家の中で子育てをしているというのは、汗水たらして危険なギルドに所属するガリウスと比較すると、
なんだか申し訳なく思った。
しかし、ガリウスは首を横に振る。

「そうはならないと思います。・・・むしろ人間相手の私の方が楽かもしれません。
ターゲットをでギルドに連れてきたり、依頼主の護衛などが多いので、会話が出来るため、ある意味私の方が楽をさせてもらうことになるでしょう」
「え?・・・どうして?」
「今私達が子供達に接するときは大体機嫌がいい時にしか会いません。
悪い時は・・・どうなるか・・・想像すると怖いですねぇ・・・」

ガリウスは実兄の子供を見た事があると聞いたことがある。
それで知っているのだ。

「そう・・・なの?」
「天使が悪魔になるとも言われていますからねぇ。子供は」

その言葉に思わず息を飲んだが、シャリオンは首を横に振った。

「大丈夫。僕ちゃんと育てるよ」
「えぇ」
「あの子達はなんだか僕たちの言葉が通じているかのように感じるけど、幼いことはちゃんとわかってる」
「シャリオンが育てたら心優しい子達に育つでしょう」

親として子供達は最優先に守らねば。
責任感溢れながらそう言いながらガリウスは優しく微笑んだ。

「子供達が成長し話が出来きるくらいになったら、もう1人子供が欲しいですね」
「え」
「シュリィもリィンもきっと下の子を見てくれるでしょうし、シャリオンを独占されることは無いでしょうから」

子は暫くは良いと言っていたガリウスから次を提案されるとは思ってもみなかった。

「おや。シャリオンは子供好きではありませんか?」
「そんなことは無いけれど」

なんだかんだでアシュリーやガリオンを大切にしてくれているのは分かるが。

「貴方との子供なら幾らでも。ただ、貴方を子供たちにとられるのが嫌なだけですよ。
でも、確実に今よりも時間が増えるのですから、愛し合える時間は格段に増えます」
「そ、・・・そう」

恥ずかしげもなく言い切ったガリウスにシャリオンの頬は熱くなった。
何も愛し合うというのは体を重ねるだけではないというのに、なんだかそれも含まれるような気がしたのだ。
先ほど焦らされたからというのもある。

「シャリオンに似た子供も欲しいですしね」
「っ・・・僕はどちらでも嬉しいな」
「勿論、そうですが」

そんなありえない夢物語に胸が膨らむ。
まだ影すらない子供を心待ちにする。

それから、子供は何人欲しいかだとか、そもそも平民になったら何をしたいかという話になる。

やってみたいことは沢山ある。
体格をよくするために鍛えたいのもあるが、貴族としてはしたないと言われていたことを全部やってみたい。
お祭りで食べ歩きをしたり、笑いながら食事をして、みんなで騒いで踊ってみたい。
全て、本の中でしか知らないことだ。

「・・・、ガリィと子供達と一緒にお祭りに行ってみたいな」

領地でも王都でも祭りはあった。
しかし、それに参加したことは一度もない。
警備面もあったし、自分が貴族だという自覚があったから、行きたいと口に出したこともない。

「子供達はまだ人前に出すことは出来ませんが。
私とならお忍びで行けますよ」
「え?」
「もう間もなく来るでしょう?プロフェッショナルが」
「?・・・、・・・あぁセレスの事か。
・・・・ガリィ。
セレスを使いすぎだよ?」

当然のように言うガリウスにシャリオンは呆れたように言う。
立場や関係を考えたらガリウスが正しいのだが、シャリオンの中でセレスも被害者という認識の為どうしても甘くなってしまう。
それになんだかんだで、あの時セレスの・・・セレドニオのタリスマンがなければ助からなかった。
いや、ルシエルに捕まった時でさえもセレドニオの魔法道具が無かったら子供達は危なかった。

「良いのですよ。
子供ほど離れてる私達に好き勝手に使われるのに、あの人存外嫌そうではないようですし」

以前の考えではセレスをシャリオンに近づけることはしなかった。
しかし、今はシャリオンから子供達の魔術の教育にセレスを付けたのだ。
だから、シャリオンに合わせるようにそういうガリウス。

「いや・・・彼が動いてくれているのは罰でもあるし、・・・贖罪からでしょう・・・?」
「過労で倒れることが無いようにはさじ加減が出来てます。
・・・シャリオンには難しいかもしれませんが、彼には貴方の為になることが生きる理由なんですよ」

そう言った言葉は揶揄っているだとかそう言った感じではなかった。
シャリオンはガリウスほどセレスと会っていない。
だから、言っていることは正しいのだろうが・・・。

「お祭りに行くのに変身を掛けてもらうだけなのに大それすぎてない・・・?」
「そうですね。ですが彼は私達が街にいくのにする変装を見たら変身の魔法をかけると思いますがね」

シャリオンのそう言った言葉に、ガリウスは可笑しそうにクスクスと笑いながらもそう答えるのだった。

夢物語だと思っていた一つが本当に叶うとは思わなかった。
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