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執着旦那と愛の子作り&子育て編

『親子ですね』って、言われちゃった・・・。

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子供達に夜の挨拶をしガリウスと友にシャリオンは2人の部屋と化した自室にいた。
セレスが戻ってくるのはまだ暫く掛かるのだが、それが待ち遠しい。
ガリウスが彼と連絡を取ってくれて、子供達の状況を話してくれたようで、聞くところによると数は少ないが、浮上することが出来るはいる様だ。
魔術は使う人間により強さが異なるが、2人が高いことはすでに分かっていたことだが、嬉しさの反面すぐ後ろは不安に包まれていた。

自分に与えられる困難は耐えられる。
しかし、我が子にはしなくていい苦労は遠ざけてしまいたい。

日々子供達の素晴らしい力を見るたびにその思いは強くなっていく。
領地の仕事をしながらも、日々子供達のことを考えていた。
少しでも環境を整える準備を始める。
シャリオンは余り子供達を幼い頃に王都には行かせたくなかった。
王族に近づくことで余計なやっかみを産む。
ハイシア家としてその気がないとシャリオンが言っても、余計な勘繰りを止めないのが貴族だ。

勿論、そう言った人間ばかりじゃないし、ガリウスと言う伴侶とライガーやルークと言う友を得られたことは、王都に行って良かった事と言えることだが。

それに公爵家の者として王都には建国記念日の際やその他招集には応じなければならない。
それだけでなく、親族として呼ばれることもあるだろう。
王都から一番近いだけでなく、これからは転移装置が出来き王都へ行くことは簡単になったわけで。
それに、籠ったら籠ったっで今度は何かを企んでいると邪推をたてられるに違いない。

考えてもすべてが良いという結果は出せなくて小さくため息をつく。
すると、ガリウスが苦笑を浮かべながら、まるでシャリオンの頭の中でも見えるかのように唐突に話始める。

「悩んでも仕方がないとは言え、つきませんね」
「え?」

前後は違う話をしていたはずだ。

確か子供達がまた大きくなった・・・・、
・・・いや、晩餐のメインディッシュの話だったっけ?
違う。それは昨日の話・・・あれ?

直前に何を言っていたかも分からなくなるくらい考え事をしていたようで、シャリオンはガリウスの反応に驚いたのちに苦笑した。

「・・・もしかして、僕・・・口にしてた?」
「いいえ。・・・ですが、子供達の事でしょう?」
「・・・、ちゃんとガリィのことも考えているよ・・・?」

その言葉にガリウスはじぃっとこちらを見てくる。
疑いの眼差しである。

「・・・ごめんね・・・?」
「・・・謝らないでください。
私も親なので子供達のことを同じように考えています。
でも・・・そうやって謝られるとしていなかった嫉妬心で・・・貴方を独占したくなってしまいます」

声色が拗ねたようなそれになる。
いつも冷静なガリウスのそんな所を見るとなんだかくすぐったく感じる。

「・・・ちょっと余裕がなくなっていたみたい」
「そのようですねぇ」

ガリウスの方にもたれかかると、髪に口づけられた。
こうして傍に居るだけなのに、何故こんなに安心できるのだろうか。
そう思ってしまうほどガリウスの隣は心地いい。

「・・・勘違いでしたら申し訳ないのですが」
「ん・・・?」
「シャリオンは子供たちを学園に通わせようとしていたことを忘れていないですよね」
「忘れてないよ・・・?」
「・・・。学園は王都にありますが」
「・・・、」

すっかり忘れていた。
シャリオンは学園に通わなかったのは途中まで領地に居たことも理由の一つだ。
しかし、その反応でガリウスは多くのことの見当が確信に変わったようで、苦笑を浮かべた。

「レオン様と同じですね」
「父上・・・?・・・そんなに、過保護かな」
「えぇ」

子供達のことでレオンの様だと言われるという事は、思い当たるのはそれしかない。
即答するガリウスにシャリオンは不満げに見上げる。

「僕はそこまでじゃないと思うけど」
「そうですか?すみません。てっきりシュリィやリィンを王都にはなるべく行かせずに、関係が良好ではない有力を遠ざけ、良好な貴族に守らせようと思っているのかと思いました」

流石に他家を巻き込んでのことは考えてはいなかったが、ほぼあっている。

「えーっと」
「心配なのはわかります。・・・私も2人を余計な勢力に巻き込みたくありません。
特にシュリィは要らぬ苦労をさせることは分かっています」
「・・・、」
「『キュリアスのトカゲ』というお話を知っていますか?」

シャリオン達が産まれるより以前の話だ。
滅んだとされていた龍がカルガリア国の山岳地帯で見つかり、人間が親龍の抱卵の代わりに魔法で温め孵化させたという話だ。
孵化させた民は龍の尊い命を神と崇めた。
猟は教えず危険な外に出すこともなく神殿の中で大切に育てた。
かゆいところがあれば掻いてやり、餌も水も口元まで運んでやる。
戦い方も知らない龍はとてもおとなしかった。

しかし、その龍を見た人々は一様に肩を落として『あれはトカゲのペットだ』と言うようになった。
大きさははるかに大きいのだが、人間が過保護に育てすぎてしまったため、かつて畏怖さえ感じるほどの神秘的で神聖な生き物はただのトカゲにしか見えなくなってしまったそうなのだ。
神聖な龍に対してそう言われていることを知った民は激怒し、そのあたり一帯の侵入を規制する様になった。
それは、例えカルガリアの国王であっても、その龍を見ることは出来ない。
そこから、あまりにも過保護が過ぎると『キュリアスのトカゲ』と言われるようになったそうなのだ。

「知ってる。けど」
「シャリオン。すべての危険を取りたくなる気持ちはわかります。
しかし、それは子供達の為になりません」
「けどっ・・・しなくてもいい苦労もある」

そう言うとガリウスは首を横に振った。

「確かに苦労はあるでしょう。しかし、それは無駄にはなりません。
経験は成功も失敗も糧になります。
・・・シャリオン。危険を取り上げてしまっては子供達の育つチャンスを奪ってしまうことになりますよ」
「!」

ガリウスがここまで厳しく言うことは珍しい。
だが、それに感謝をする。
子の成長を妨げることだけは、したくなかったからだ。
それはレオンにされて不満に感じていた事の一つだった。
シャリオンがやりたいと言っても、別に任せたいことがあるとスライドされるなんてことが良くあった。
それは、頭では『シャリオンの為』と思っていたが、心のそこでは自分の力が足りないからだと思ってしまっていたのである。

「っ・・・僕は・・・」
「大丈夫です。まだ貴方は何一つ実行していない。そうでしょう?」
「っ」
「・・・。それと、シャリオンにお願いがあるのです」
「・・・、何・・・?」

感謝をしつつも自分のしようとしていたことに落胆は隠せない。
沈んだ声でガリウスを見上げる。
ショックを受けたシャリオンに気付いたガリウスは、額に口づけた。

「・・・、私も親として何かしたいです」
「え?」
「駄目ですか?」

聞き返したのは反対だからではない。
苦笑交じりにそう言われた言葉は思ってもみなかった。

「え・・・?良いよ・・・?」
「ありがとうございます」

そう言ったガリウスはシャリオンを抱きしめた。
これまでも、ガリウスには相談し、2人で決めているつもりだった。
しかし、ガリウスはそう感じていなかったのだろうか。
それとも公爵家の将来のことに口を出せないと、気を使わせていた?
それはよくわからないが、言えることは一つだ。

「お礼なんて言わないで?
シュリィもリィンも間違いなく僕達の子供だよ。
ガリウスだって思う事があったら何でも言ってほしい」
「えぇ。一緒に考えましょう」
「うん」

そう返事をすると優しく頬を撫でられる。
そのぬくもりにすり寄らせながら、これからのことを考えるのだった。

☆☆☆

それから、酒も持ち出しガリウスとあれこれ言いあいながら話し合った。
子供達のことになると、少々熱くなってしまった。
酒の力で饒舌になったこともある。

そこで、王都に行かせたくないという話で、シャリオンは口を滑らせてしまう。

勿論、先に言ったようにしなくていい苦労をさせたくないのが一番だ。
しかし、その中には困った人間がいるのを言ってしまったのだ。

彼等の困るのは、ハイシア家に敵対心がなく、嫌味や暴言など言われたことは無い。
なのだが、・・・特に社交界で会うとあまり良い記憶はない。
流石にガリウスと婚約し、ここ最近2年はあって無いのだが、それまではやたらと触れられることがあったのだ。
酷い人間だと肩や腰を抱き寄せようとして、その度にゾルに止められているのだが懲りない。
それを、アシュリーとガリオンにさせたくないと言ってしまったのだ。

「心配なんだよぉ・・・・可笑しい?これも過保護すぎる・・・?」

今日は久しぶりに本当に飲みすぎてしまったと思う。
たったこれだけで、高ぶった感情は泣きたくなってしまっているのだから。

「・・・それはどなたです?」
「誰って・・・流石に全員は覚えきれない・・・」

貴族の名前と顔は覚えているが言い濁したのは、酔った頭でもその家に何かをするのではないかと勘繰ってしまったからだ。
最後に社交界に出たのは建国記念祭で、そこで何もされていないのだから、蒸し返して欲しくはない。
そもそも話に出したことを後悔してしまう。

「そうですね。シャリオンは最近社交界も出てないすし。・・・ところで、一人ではないという事ですか」
「?・・・うん」

必要以上に聞かれないことにホッとする。
しかし、それは少し甘かった。

「社交界は常に私と一緒に居ましょう。1人で夜会に出ては駄目です」
「・・・え?」

シャリオンとて出たくはない。
どうしてもと言うというのは、ガリウスの都合がつかなかった時だろうが。

「子供達にさせる苦労と、貴方がする苦労は別物ですよ」
「え・・・どうして・・・?」
「そもそも他の誰かに触れられているという事実が不愉快です」
「・・・、」
「私の為。約束してくれますね」

酷い嫉妬だと思いつつも引けない空気に、シャリオンは頷くしかない。

「うん」
「それと。・・・嫌と言える練習もしましょう」
「え・・・?」

はっきりと拒否を示せというのは分かるが、その練習と言うのが良くわからなくてガリウスに聞きなおす。
そのにっこりと微笑みつつもぎらつくようなその目は見覚えがある。
思わず『やってしまった・・・』と思うシャリオンだった。
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