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執着旦那と愛の子作り&子育て編

いちゃいちゃ?・・・お散歩!(怒)

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領主城の執務室。
朝から休む間もなく仕事が続いていたが、昼過ぎに漸く休憩に時間を取れた。

少し前までは、ゾルに休憩を促されても『まだ大丈夫。ゾルは食事取ってきていいよ』などと言いっていたのだが、ついに見るに見かねたゾルにガリウスへ相談されてしまい、次に休憩を取らなかったら暫く子供達に接触禁止と言われてしまった。
例え朝晩にしか会って無いとはいえ、子供達に会えないのは何としても避けたい。
それに、それほどゾルにもガリウスにも心配をかけてしまったという事に、シャリオンも反省をしている。

ゾルの用意した軽食を取りながら、時計を見る。
仕事から思考が離れると、すぐに浮かぶのは子供達だ。

先日のことである。
核に子が宿ったときから見てもらっている魔術師に日の下に出て良いと言われたそうで、乳母とその子供達とテラス先を出たりしていると聞いたシャリオンはガリウスと子供達と庭園を散歩した。
その事を思い出すと自然と笑みにを浮かべてしまう。

「次は何時お散歩できるかな」

シャリオン1人なら昼にでも少し時間が取れるだろうが、出来ればガリウスも一緒が良い。
だが、中々時間が取れないのは知っている為、強くは言えないが。
シャリオンがそう言った言葉に、ゾルは側近用に設置された机から目をはなすとこちらを見てきた。

「足りないのか?」
「足り訳ないよ」

愛しい我が子とのふれあいが満たされることは無い。
思わずそう言いながらゾルを半眼で見ると、今度は呆れたようにため息をつかれてしまった。

貴族として自立した子に育てなければならず、子にベタベタするなと言いたいのだろう。
使用人ウルフ家達は、微笑ましそうに見てくれているが、ゾルだけは厳しい。
それはシャリオンの為を思って言ってくれることがあるから、今回のことも何かあるのかもしれないが、それがいまいち検討つかなかった。

シャリオンの幼少期、王都に居たレオンとの思い出は少ないが、一方のシャーリーはあふれんばかりの愛情を注いでくれた。
今思えばあの頃のシャーリーはシャリオンと同じように領主をしていたのに、良く時間を取ってくれたものだ。
レオンが傍に居ないことを感じさせないように頑張っていただのだろう。
だが、この城には王都にあるシャリオン達の屋敷と転移装置で繋がっている。
比較的にシャリオン達はレオン達よりも子供たちに接している時間が長いのだが、
そうは分かっていても、まだ可愛い盛りの子供達。
そんな態度のゾルに拗ねたように答えた。

「悪いことではないでしょう?」

貴族の家族愛は希薄だとシャリオンだって頭では分かっている。
しかし、ゾルが言ったのは子供達の事ではなかった。

「いちゃいちゃ・・・いや。睦合うのなら毎朝、毎晩しているだろう」

そのくらいの言葉は言い直さずとも、シャリオンにだってわかる。
思わず言われた言葉に頬が赤くなった。
確かに、あの時の出来事は少々やりすぎてしまったと反省はしているが。

・・・でも、ガリィ・・・止まらないし

そんなことを思いつつも、強く止めきれない自分も悪いと分かっている。
悪いと思いつつもまずは詫びた。

「っ・・・ごめんっ・・・で、でも。あれは子供達と」
「だが、あの男も一緒が良いのだろう?」
「それは・・・そうだけど。そんな、睦合うなんて・・・、・・・子供達もいるし外でそんな破廉恥な事してない」
「そうだったか?」
「そうっ」

キっと睨んで言うとゾルはクスリと笑みを浮かべた。
今日も乳母兄は意地悪である。

「あの男はシャリオンが言えばすぐに戻ってくるだろう。
何故呼ばない?俺の力を使い念じれば今すぐに呼べることを忘れたのか?
・・・あの男はあれで真面目だからな。レオン様のように羽目を外したりはしないぞ」
「父上が・・・羽目を外す・・・?」

シャリオンにとってレオンは過保護なところはあるが、仕事に真面目でそんなイメージはない。

「シャーリー様に何かと用事をつけて王都に呼び寄せていた」

そう言うゾルに首を傾げた。
どうやら、今日のゾルはシャーリーと共に領地の仕事を受け持っていたゾルの様だ。
しかしながらシャリオンは疑問に思う。

「え・・・でも、父様と王都であまりあったことなかったけど」
「それはそうだ。シャーリー様はお前に会うと親の顔になるからな。
レオン様はそれがお嫌なようだ」
「え?」
「レオン様は何時までもシャーリー様を独り占めしておきたいんだ」
「・・・なるほど」

何時までも仲が良いのは良いことだ。
ガリウスも似たようなところがあり、苦笑を浮かべるシャリオン。

「そうだったのか。・・・でも安心した」
「なにがだ」
「今は転移装置があるから、すぐに帰ってこれるけど父様はできなかったから。
・・・寂しい思いをしていたんじゃないかと思っていたんだ。
けど、たまにはお会いできていたんだな」

自分が幼いためにシャーリーが領地から離れられないと思っていた時期もあったくらいだ。
ホッとする様に言えばゾルは優しく微笑んだ。

「あぁ。それに、シャリオンのお陰で今お2人は一緒に居られている。
暫くは孫と居られると思っていたシャーリー様は孫に会えないことに嘆いている様子だが、
なんだかんだで今はお幸せそうだと聞いているぞ」
「そうなんだ」
「あの男も言っていた通り、誘ってみればいいんだ。駄目なら駄目だと言うだろう」
「それ本気で言ってる・・・?ガリィは絶対に僕を優先してくれるよ」
「後に移せるのなら移させればいいんだ。シャリオンはわがままに自分を通さないだろう?」

そうは言うが。
自分以上に忙しいガリウスを引き留めるのはやり気を遣うのだ。
小さくゾルはため息をつくと、シャリオンから視線を逸らすと再び書類に目を落とす。

「好きにするといい。
しかし、よく考えるんだな。
あの男はシャリオンの悩んでいることを察知するのがうまいのはいい加減分かっているだろう?
『練習』とやらをされたいなら止めないが」
「っっっ」

ゾルの言葉にシャリオンの頬は一気に熱くなった。

それは、散歩をする日の出来事だった。


☆☆☆


子供達を抱き上げるたびに、その重みに成長を感じる。
早く大きくなって話したい気もするし、赤ん坊なのは今しかないからゆっくりでいいような気持ちになる。

そんなある日。
子を授かった時からみてもらっていた魔術師達から、そろそろ日の下に出ても問題ないと言われ、シャリオンとガリウスは2人を連れて領主城にある庭園で散歩をすることにした。

たいして赤ん坊の世話をしたことがない2人では不安なので使用人と一緒だ。
散歩するための準備が終わったと言う知らせに、子供部屋に向かっていたのだが、扉を開けた瞬間ガリウスは眉を顰めた。

部屋の中に満たされた魔力が不愉快らしい。
先日のような事にならないように、彼の魔力を込めた魔法道具から微量に魔力を流しセレスに慣れさているのだ。
乳母車の中の子供たちはあの時とは違い、けろっとしている。
まるでガリウスとは違い、シャリオンはクスリと笑ってしまう。

「シャリオンは嫌ではないのですか?私達以外の魔力が子達につくのが」
「ふふっ・・・笑ってごめん」

不満げな声と納得いっていないその視線がなんだか可愛く見える。

「僕に魔力があったら他人からの魔力に敏感なのかもしれないけど。
僕が基本感じるのはガリィくらいだからなぁ」

それもガリウスがそう意図的に触れてくれるから気づいているが、それがなかったら全くわからない。
そもそも子を授かるまで他人からの魔力なんて意識したことがない。
だが、そう言ったシャリオンにガリウスは機嫌を良くさせた。

「いえ。・・・私が神経質すぎました。
子供達のため必要な事ですね」

『ガリウスしか感じた事がない』と言うのが、独占欲を満たしたのだ。
シャリオンがそれに気づくわけもなく、子供達に他の気配を嫌がるのは、ガリウスが子を大事にしている現われのようにも感じて嬉しく感じた。
そんなことなくてもガリウスはなんだかんだで、子供達のために王都でいろいろ買ってきてくるあたり、ちゃんと大切に思ってくれているのが分かるのだが、そういう所を見るたびにあたたかい気持ちになる。

なのだが。すぐに雲行きは怪しくなる。

「ですが。・・・、貴方に付くのだけは本当に嫌なんですよねぇ」

ガリウスはやはりガリウスで、その心の狭さに驚いた様に目を見開くシャリオン。
執着が強いとは思っていたが、目に見えない魔力にまで嫉妬するとは思わず笑ってしまう。

子供達の魔力を慣れさせるための魔法道具は、魔力の出力を加減できるように作り直させたというのに、まだ気に入らないらしい。

それにしても、ガリウスは婚約した当時よりも表情が本当に豊かになった。
怒らせてしまった時は別だが、基本シャリオンには笑顔で接してくれていたし、あまり自分を見せようとしなかった。
ガリウス曰く、良く見せたかったための行動らしい。

「ガリィは心配性だなぁ」

そんな言葉を呟くシャリオンの後ろに控えた、ゾルを含めた使用人達は何も口にはしなかったが『そんな可愛いもんじゃない』と、一同が思っていた。
レオンの側に仕え、シャリオンから好意を得るためにしていた行動悪質な婚約者を紹介するよう仕組んでいた事も、シャリオンに害を与えようとする人間に対して、冷徹且つ容赦ない事はよく知っているからだ。

「・・・。シャリオンは嫌ではないのですか?」

数秒前に言われた言葉をもう一度言われる。
同じ言葉だが、対象が違う。
ガリウスが今言ったのはガリウス自身にだ。
途端にシャリオンの表情は固まる。

ガリウスから誰かを感じるなんて事、想定でも考えたくもない。
視線を落として、逃げる様に乳母車に乗せられた子供達に視線を向けた。

「、・・・ガリウスはちゃんと僕を見てくれているだろうから」
「シャリオン」
「っ・・・?」

両頬に手を添えられ強引にガリウスの方に顔を向けささられた。

「本心を教えてください」

アメジストの瞳がこちらを真っ直ぐと見てくる。
あまりにも真剣な声にシャリオンも困惑したが、
小さく苦笑を浮かべた。

「・・・僕だって物わかりがよくカッコつけたいことあるんだよ?」
「私の前では取り繕う必要ありません」
「ずるい・・・」

シャリオンのそんな態度にクスリと笑うガリウス。
自分は隠すのに人のは見たいなんて。
だが、今し方色んなガリウスが見れるようになって嬉しく思っていたわけで、本気で怒っているわけではないが、拗ねたように言う。

「それに、僕だってヤキモチ妬くのを知ってるでしょう?それが子供達が産まれたからと言って変わるわけないじゃないか」

シャリオンの言葉に嬉しそうに微笑み、髪に口付けるガリウス。
気配を消していても、側にウルフ家の者が側にいるとというのに、恥ずかしげもなくそんな事をするガリウス。

「それなら良いのですが。
安心してください。
私はあなた以外に興味がありません。
・・・心配なら誓約書でも書きましょうか?
最高レベルのものでもいいですよ」

それはすでに断ったはずなのに、毎回出すのはガリウスがしてほしいと思っていることに、シャリオンは気付いていない。
今となっては恥ずかしい出来事を引っ張り出され一気に頬が熱くなる。

「っそ、・・・んなのっ要らないよ」
「そうですか?」

嬉しそうに微笑むそれはなんだか楽しんでるように見える。

「貴方と言う素敵な伴侶がいるのに、私に興味を持つ人間なんて居ませんよ。
万が一。人がいたとしても、それ以上になる事はありませんよ」
「ガリウスを好きになる、その人は可笑しくなんて無いよ。・・・とっても嫌だけど」

出会いも自身が次期宰相となってしまったしばらくの間も、ガリウスのことをあまり良くは思っていなかったが、婚約して今までと言う短い期間だが、ガリウスの良い所は十分に知っている。
その『良さ』はシャリオン限定なのは、シャリオンは気付いていないが。

「褒めていただけるのは嬉しいですが。・・・私はシャリオンにだけ愛されていたいのです」
「ガリィ・・・」
「・・・なので我慢されるより、素直に言っていただいたほうが嬉しいと言うのを忘れないでくださいね」
「うん・・・ありがとう、ガリィ」
「もし、お忘れのようなら、しましょう」
「!!!!!!」

せっかくその優しさに一層に愛しさを感じていたのに、意味ありげな表情に直ぐに引き戻された。
何を指したのか分かったシャリオンは、言われた出来事を思い出し恥ずかしくなった。
シャリオンがしてほしいことを言えるように、ベッドの中で何度も練習させられたのだ。

そんな時だった。
呆れ顔のゾルの咳払いが響く。
そちらに視線を向ければ、ゾルを覗いた使用人達は微笑ましい表情でこちらを見ている。
執事は『仲が宜しい様で良いことです』と言ってくれているのだが。

「本日は延期しますか?」
「少しくらい待てるでしょう」

ゾルの言葉にガリウスも呆れたように返した。

「私達はいくらでもお待ちできますが。
・・・お眠りになったお子様方をお連れになるのですか?」

乳母車の中に視線を下ろすと、小さく欠伸をする子供達。
しかし、2人の視線を気付くと手を伸ばしてる子達にシャリオンとガリウス苦笑を浮かべた。

「・・・それは可哀想ですね。
完全に寝てしまう前にでましょうか」
「うん」

今日を逃したらまたしばらく後になってしまう。
本当に寝てしまったなら戻るつもりだが、ゆっくりと歩きの出すのだった。

☆☆☆

美しく整えられた庭園を歩く。
子供達に日が当たりすぎない様に使用人達が日傘を差しながら、ガゼボに向かった。
ずっと歩き回っても子供達も慣れない外に疲れてしまうだろうし、景色も見えないだろうからだ。
ガゼボの屋根の下に入りアシュリーを抱き上げる。

愛しさをこめながら、アシュリーをシュリィ、ガリオンをリィンと呼ぶ。
子供達を覗き込み褒めると嬉しそうにキラキラと瞳が輝いた。

「シュリィ。ほら、綺麗な花だね」
「あぅー」

シャリオンに向かって手を伸ばしていたが、視界に見えた花に興味を示した様だ。

「リィンはどうですか?」
「うー!」

ガリウスに抱き抱えられたガリオンは、どちらかと言うと、ガリウスに接するほうが嬉しい様で手を伸ばしている。

「花はもう珍しくはないかな。
ルークに花贈ってたくらいだし、・・・部屋に飾られた花とか見てるのかな」
「そうかもしれませんね」
「シュリィもリィンも凄いなぁ・・・。
セレスの変身を見抜けてしまうし。
僕忘れてたけど、変身魔法を見てるのに全然気付かなかったよ」
「日常生活で普段接する事はないでしょう」

変身魔法はコンドル家の得意とする魔法で、あのルシエルも変身した姿だったのにすっかり忘れていた。
シャリオンが魔法に疎いのは、幼い頃に学園には行かずに家庭教師によるものだったのもある。

「そうたけど。ガリィも気付いてた?」
「いいえ」
「・・・ガリィも分からなかったことを・・・。
凄いよ。2人とも!」

シャリオンが褒めるとガリオンが、ガリウスの腕の中かで、今度はシャリオンに向かって腕を伸ばしてきた。
その手にシャリオンの指を差し出すと指を握る。

「リィンは力持ちにもなるのかな。
ん?・・・シュリィどうしたの?」
「シャリオンの手を握ってるのが羨ましいのでしょう。・・・おや」

ガリウスがアシュリーに指を差し出すときゅうっとにぎり、ガリウスがフッと笑顔が浮かぶ。

「シャリオンではなくて良いのですか?」
「あー」
「うーー!」
「ガリウスもモテモテだ」
「シュリィもリィンも。
こうして手を出されたからと言って簡単に握ってはダメですよ?」
「「う?」」
「なぜ?」
「この子達を見ておかしな気を起こす人間もいないとも限りません」

まだ産まれたばかりの赤子に何を言っているのだろうか。
天使のように可愛いと思っているが、以下にせ早すぎで苦笑をしていたのだが、それに続く言葉に別の意味でも苦笑することになった。

「それに、シャリオンは・・・父上は父様のものですからね」

ガリウスがにこりと微笑みながら言うと、アシュリーが不満げに唸りはじめた。

「うーっ」
「・・・まだ良いんじゃないかな。
ねぇ、シュリィ?」
「あぅー」

ガリウスの指をパッと離しシャリオンの体にしがみつくアシュリーと、よりぎゅうっとシャリオンの指を握るガリオン。

「うー」
「リィンもですか。
いいですか?もう一度いいますが。
父上は私の愛する人です」
「が、ガリィ・・・
あの、まだそう言うのは良いんじゃないかな。
僕もまだこの子達に触れていたいし。
・・・もう少し成長したら、嫌でも触れられなくなるんだし」

親がこんな風に触れる歳はそう長くはない。
ヤキモチを妬くガリウスに言うが頑なにそれは引かなかった。

最終的には大人げないことに、アシュリーとガリオンが納得いった返事(?)をするまで続けられていた。


その後は普通(?)に散歩をし、アシュリーとガリオンが魔法を使い、以前より多くの花びらを出すと庭園を彩った。
小さな花びらがひらひらと舞い幻想的な光景をガリウスや子供達と一緒に眺めたのだった。


☆☆☆

あの出来事を思い出したシャリオンは冷静に思い直した。

「・・・。少し、・・・ガリィってやきもち妬きだよね」
「今さらだな」

相変わらず遠慮のない物言いに笑ってしまうのだった。
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