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執着旦那と愛の子作り&子育て編

守護を貰いました。

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一週間はあっという間に過ぎた。
毎日各国の来賓客だけでなく、このタイミングで王都に来ていた貴族と話をしたりと忙しい日々を過ごした。
ポンツィオ達以外の来賓客は、明日王都を断つ予定だ。
その為、今日はアルアディアでは休日だが、ガリウスは仕事だった。
外套に袖を通したガリウスの元に行くとふわりと微笑む。

「おはようございます。辛くはないですか?」
「おはよう。ガリィ。大丈夫だよ」

昨晩の出来事をさされているような気がして頬が熱くなる。
その頬にそっと手を当てられるとひやりとして気持ちが良い。
心地よさに目を細めると、親指で頬を撫でられる。

「すみません。・・・今日は本当なら中庭で2人で過ごす予定だったのですが」
「仕方ないよ。仕事だもの。それに来客もあるし」

「ディディ殿には私もお会いしたかった。もし取得できるなら術の極意などを聞けるなら伺いたかったです。
・・・ですが」

そう言うとガリウスは苦笑した。

「寂しがって頂けないのですか?」
「!」

なんてことをいうガリウスはあざといのに、可愛く見えてしまう。

「・・・そんなわけないでしょう?」

少し拗ねたように言えば嬉しそうにほほ笑むと、シャリオンの顎をすくうと唇を啄む。
しかし、すぐに離れて行ったガリウスを見上げると、シャリオンの瞳を見つめる。

「・・・がりぃ?」

笑みがスッと消え不安気に呼べば、頬から手を滑らせシャリオンの首裏に回り、何事かと思っていると急にぐっと引き寄せられた。

「!・・・んっ」

そしてその勢いのまま唇を重ねられた。
先ほどのような啄むようなキスではなく、深いキスに困惑しながらも甘受していると後ろから咳払いが聞こえてハッとした。

「仲が良いのは大変よろしいことではありますが、エントランスではお止め下さい」
「っ~」
「数秒くらい多めにみていただいても宜しいのではないでしょうか。
それであなたのご主人様シャリオンは幸せになれるのですよ?」
「っ~・・・!」
「その数秒で誰も立ち入れない状況になったことが、この屋敷のそこかしこで何度あったか数えきれないのですが。
それとも、それを理由に本日の執務を取りやめになると言う事であれば、レオン様に支障があるわけで、・・・その後のことはどうなるか私は責任持ちませんが」
「!!」

ウルフ家はハイシア家の不利になることは徹底的に排除しようとする。
ゾルの視線が『やめさせろ』と、シャリオンに言っているのが分かる。

「がっ・・・ガリウス!やっぱり、エントランスでは」
「はい?」
「だから」
「そうではなく。なんと呼びましたか?」
「っ・・・ガリィっ・・・、ここでは、よくないと思う」
「貴方がそういうのであれば仕方ありませんね。
・・・ですが、シャリオン?
一つ訂正させてください。
確かに私はレオン様と顔を合わせて仕事をするよりも、貴方を愛でていたいですが、それで仕事をすっぽかすような人間ではありませんよ?」

そんな風にいうガリウスにゾルが後ろから盛大にため息をついた。

「ちゃんとわかってるよ?
・・・だけど、僕もそういう時のガリィを誰にも見せたくないから、ここでは・・・ね?
僕もちゃんと頑張って起きるから」

そもそも、朝起き上がれない自分の体力がなさすぎるのだ。

「申し訳ありません、シャリオン様。
失礼いたしました。
どうかわたくし共の事はお気になさらずに」

呆れ諦めたような物言いにシャリオンの頬はこれ以上ないくらいに赤くなった。

「っ~~・・・!」
「やりすぎてしまいました。私もあなたのそう言う表情を彼等にも見せたくないので、自重しましょう」

ガリウスはクスリとほほ笑むと頬にちゅっと口づけた。
そして時間が押しているのか、その後はすぐにガリウスは城へと向かった。
名残惜しそうに出掛けるガリウスを見届けながらシャリオンも支度に戻るのだった。


☆☆☆


約束の時間になると、屋敷にシディアリアの代表である司祭のディディが訪れた。
サロンに迎えたのだが、彼はどこかそわそわと少し落ち着かないようだった。

「どうかされましたか?」
「!・・・っあ、いや・・・。島には無い立派なものが多くて」

シディアリアは王族も貴族もいない。
島一番の魔力保持者が司祭になるが、物事を決めることに皆の総意がなければならず、司祭が一番偉いというわけではないらしい。
だからと言うわけではないのだが、貴族のような調度品にこだわりはなく、実用性が高いものが多い。
神殿は島外の来訪者に向けて作られているため、大陸の人間が好きそうな装飾が施されているが、普段自分達が使うものは素朴なものが多い。
それは装飾がないということではないのだが、アルアディアと好むものが違う。

「シディアリアは豊かな自然に調和したものが多く心が安らぐと聞いています。
・・・そうするとアルアディアのものは賑やかでしょう。部屋を変えましょうか」

苦笑を浮かべながらそういうとディディはそれを否定した。

「いや。とても珍しくて見入ってしまいました」
「それならよいのですが・・・」
「あの、ところで、伴侶様は今日はいらっしゃらないのでしょうか。たしかこの国では今日は休日ですよね」
「えぇ。ですが、急を要するものがありますため、本日は城へ。
・・・ガリウスへ何か用がありましたか?」
「え、あ・・・いや」
「・・・、」

ディディの反応は肯定だった。
そわそわしていた理由はどうやらガリウスが居ないからのようだ。
仕事の話ならガリウスを直接指名するはず。
しかし、シャリオンに手紙を寄こしたのは同席をもくろんでいたのだろう。
その為にわざわざこの国の休日を調べ、今日にしたのだろうか。
落胆した彼を見ていると、なんだか不安になってくる。

もしかして、・・・ガリィのことが・・・?

そんな不安がシャリオンに沸き始めた時だった。
ピクリと肩を揺らしたシャリオンに気づいたのかハッとしたように、ディディは首を振った。

「ちッ・・・違います!私は島にパートナーがちゃんとしますから!!!」
「!・・・そう、ですか。・・・あの、・・・ならば、・・・何故でしょうか・・・?」

否定してはくれたが不安がぬぐえずに尋ねれば、ディディは苦笑した。

「結婚されているとは言え、2人きりになるのは良くないと思いまして」

そういう彼は嘘をついているように見えず、シャリオンは漸くホッとする。
それと共に、気にしすぎた自分が恥ずかしく感じてしまう。
頬を熱くさせながら、シャリオンはディディに謝る。

「・・・失礼しました。・・・私としたことが」
「いいえ。仲が良いのですね」
「っ・・・ぉ・・・・、お恥ずかしいです」

露骨な好意を見せたわけではないのに、嫉妬して子供みたいな真似をしまった。
そんなシャリオンを驚いたように見てから、困った様にディディはほほ笑んだ。

「ハイシア様は噂以上な方だ」
「噂・・・ですか」
「慈愛の天使や至高の宝石と。儚い美しさに皆ハイシア様に虜でしたよ」

聞けば先日の夜会の時にそんな話で持ち切りだったそうだ。
昔は容姿のことを言われるのは余り好きではなかったが、今はそれほど不快に感じることはなかった。
しかし、どう反応してよいかわからず、曖昧に笑みを浮かべた。

「皆さん褒めすぎですね・・・。
あの子の事も・・・それも皆話しておりましたか?」
「いいえ。それは話してなかったですね」

そのことにホッとする。
先日、すでに領地には知らせたから、もしかしたら帰り道に知ったものもすでに居るかもしれないが。
商人達があちこちで言っている様ではないのは良かった。
だが、それなら何故ディディには知らせたのか不思議に思ったが、彼の人柄やシディアリアの子の加護を気にしてなのだろうか。

「それなら良いのです。・・・ところで、をするような者はいませんでしたか」

当日ディディは多くの貴族に囲まれていた。
普段あまり島から出てこないからだけでなく、『転移』を使える唯一の種族だ。
それ故に、その力を得ようと企む貴族がいる。
シャリオンの言葉に微妙そうな表情を浮かべるディディ。

「・・・、」
「もし、不快な思いをなさったなら教えてください。それでシディアリアが不利になることはさせません」

そう言うとディディは視線を逸らした。

「あの、・・・先に神からの御加護をお渡ししても宜しいでしょうか」
「!?・・・こちらでですか?」
「はい。今の状態でハイシア様は長旅は無理でしょうから」

そう言われればそうだ。
まさか、加護をそれもここで与えられるとは思わなかった。
だが、子のためにしてもらえるのは嬉しい。
シャリオンはこくりと頷いた。
そして、ディディの言われるがままに彼の目の前に立つ。

「お子様のお名前は決まっていますか?」
「はい。・・・2つあって決めあぐねておりまして」
「?・・・それなら大丈夫です。お子様は2人いるので」
「え」
「え?」

シャリオンから聞き返されるとは思わなかったらしいディディは驚いたようにこちらを見てくる。

「・・・お解かりになるのですか?」
「!・・・あぁ、はい。そうです。一応司祭ですので」

そう言って苦笑を浮かべるディディ。
シャリオンはシディアリアのことは知識としては知っているが、行ったことがないためよくわかっていなかった。
どうやらシディアリアとしては普通の事のようだ。

「ガリオンとアシュリーです」

ディディに名前を言うと手のひらを胸の前で組む。
そして島の言葉なのか何やら呪文を唱え始めた。
暫くしてシャリオンの周りには光の玉が集まり始め囲んでいく。
不思議な光景に魅入ってしまう。
新婚旅行で湖畔に月明りに集まった夜蝶のようだ。
手を差し出すと、その周りに光がくるくると舞って、思わず笑顔になる。

「・・・。ハイシア様は好かれてらっしゃるようですね」
「好かれる?」
「この子達は、神霊ですが・・・なんだか可愛いでしょう?
島で加護をおろすときは大体この達が現れます。
きっと天から加護を運んできてくれてるんですね」
「・・・神様なんですね。この子達を・・・ガリオンとアシュリーをお願いします」

シャリオンの言葉に答えるようにふわふわと浮かぶ。

「神は子を愛します。ですので、どんな人間が来ても子を愛します。
しかし、汚れてしまった大人には寄り付きません。
・・・以前加護を与えられた人物だったとしても」

ディディはその光に手を伸ばそうとしたが、その腕をストンと落とした。

「・・・。ハイシア様が島で加護を受けられたかはわかりませんが、神から愛されている様です」

すると、シャリオンの周りにあった光は次第にゆっくりと消えていった。
幻想的な雰囲気に、シャリオンはなんだか心があらわれるような気分だった。

それから二人は再びソファーに戻ると話始める。
加護は魔力をかなり使うようで、ディディはなんだか疲れ果てているように見えた。

「・・・ハイシア様は転移の魔法石は見た事がありますか?」
「はい。・・・何度もその魔法石に助けられました」
「そうですか。・・・これは島で作ったものなのですが、今流通している物と変わりありますか?」
「?」

ディディはそう言うと懐から、青い宝石のような輝きの物を取り出した。
話しの流れからして、転移の魔法石のようだが、こんなに綺麗な青の石は初めてだった。
シャリオンは驚きながら首を横に振った。

「いいえ。美しいですね・・・ここまで綺麗なのは初めてです」
「そうですか。・・・どうか手に取ってみてください」
「宜しいのでしょうか」
「えぇ」

見た事がある転移の魔法石でさえ高価なものなのに、こんな美しいものは手に持ってみて良いのか困惑してしまうが、興味には勝てなかった。
そっと手に取ってよく見ると、石の奥はまるで水の様に淡く光が揺らめいているのが見えた。
とても綺麗で魅入ってしまう。

すると、か細く消え入りそうな声でつぶやいた。

「・・・ごめんなさい」
「え?」

その意味を聞き返したときだった。
閃光が部屋を満たすのと同時に、ゾルの叫ぶ声がする。



「シャリオンッッ!」

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