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執着旦那と愛の子作り&子育て編
【別視点:ガリウス】読めない人だ。
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ここは城にあるルークの執務室。
そこには、ルークにライガー、ガリウスがいた。
いつかのような重い空気ではなく、少しホッとしたような和やかな空気が部屋で満たされていた。
「そうか。安定したか」
「このタイミングで安定期が来てくれたようで良かった」
「えぇ」
その笑顔は心から思っているように見えた。
先日、記念祭の時、シャリオンに誘われて2人で踊った時に、シャリオンは夢中になって気づいていなかったようだが、2人からの視線に気づいていた。
表面上はにこやかにしていたが、ルークのほんの一瞬見せた顔をガリウスは見逃さなかった。
そのことを思い出しながら、ルークの方をチラリと見れば訝し気に眉を顰める。
「なに?」
「いいえ」
「・・・今度は一体どんな嫌疑を掛けられたんだ俺は」
呆れたように言うルークの隣でライガーは可笑しそうに声を出して笑った。
「仕方ないな。少しでもシャリオンに友情以上の気持ちを見られる切っ掛けがあったなら、ルークの落ち度だな」
「心の中まで見れる魔法道具を作らせましょうか」
「心せまっ」
「セレドニオなら作れそうだな」
笑いながら言うライガーの言葉にガリウスは少し驚いたようにそちらを見た。
サーベル国への訪問にセレドニオをを付けたのはガリウスだが、旅道中はシャリオンのために我慢していたのだろうが、そんな反応は少し意外だった。
「彼の能力は本当に凄い。彼ならきっとそう言うのも作れると思うぞ」
「・・・。べた褒めだね。何かあったの?」
「いや。ただ今まで個人見ていなかったと思っただけだ」
「貴方の周りに居たあの家の血を持つ者は厄介でしたからね」
「それにしたって。・・・まさか暗示に掛けられてないよね」
「それは大丈夫です。ゾルには対策用の道具を持たせておきました」
「だけどセレドニオはこの国一の魔術師にも勝てないと言ったのはガリウスだ」
そういうルークにライガーは苦笑を浮かべた。
「ならば聞くが、今の俺を暗示に掛けてどうする?
それにあくまでもセレドニオはハイシア家に属する人間だ。
今度は宰相家を乗っ取って国の舵を切ろうともくろんでると?」
「どんなことをもくろんでるかは現段階では分からない。けど兄上の代わり様が変じゃないか」
「話して思ったんだ。『子は親を選べない』と。
あの男はファングスに恐怖心がありそして心の底から恨んでいる。
俺にとってはそれだけでも十分だ。
それに、ハイシア家ですでにシャリオンに逆らえない術を施しているだろう?」
「えぇ。・・・まぁそれがなくとも、あの男はシャリオンには逆らわないでしょう」
「そうだな」
「なになに??2人は一体何を知ってると言うの~?俺にだけ秘密??」
確信できる要素がないルークは話についてこれない。
拗ねたようにいうルークにライガーは苦笑する。
「王太子であるお前に秘密を作るわけがないだろう?
それに俺が幼い頃からお前の為だけに生きてきたのは知っているはずだ」
「・・・、俺はもっと自分勝手に生きてもらいたいけどね」
「そうは言ってもな。・・・それよりもこんな話をするために集まったわけじゃないだろう?」
「そうですね。殿下が納得いかないのであれば、後程二人の時にライガー様からたっぷり聞いいただきたい」
「でた。ガリウスの忙しいアピール」
「・・・バカだな・・・」
ルークのつぶやきにライガーは小声で苦笑を浮かべた。
ガリウスはルークの方に視線をやると、その冷たさにルークが息を飲んだ。
「ルーク殿下はそう思われていたのですね。そうですか。わかりました」
「えーっと」
「もうシャリオンにあうことは無いかもしれませんね」
「は?」
「アピールと言われてしまっては仕方ありません。
ご期待に添えさせていただきまして、私を通さずに直に貴方に行くように回します」
「!」
「そうなると、休む間もなくなるでしょう。
シャリオンの子が生まれたとしても貴方は忙しくてあえなくりますね」
「!!」
「ライガー様はどういうお考えで?」
「俺は・・・ガリウスにはよくやってもらっていると思うし、2人の子には会いに行きたい」
「そうですか。是非会いに来てください」
にっこりと笑みを浮かべてガリウスが言うとルークはグッと言葉を飲んだ。
「・・・。すまなかった。今のは失言だ」
「わかって下さればいいのですよ。
さて。・・・アボッドの件ですが、ウルフ家の人間にハドリー領やサーベル国内を捜査しておりますが、依然とし見つからないようです」
「どっかで野垂れん死んでるのか」
「だったらそれならそれで構いませんが」
「死体を見ないと安心できないねぇ・・・。
それよりも、それの協力をしてくれるという彼は、本当に使える人間なの?」
「カイザーか・・・。
先日、行儀を見ることになって話したが、面白いこともわかった」
サーベル国王とポンツィオ王子、そして英雄として護衛のために同行しているカイザー。
そのカイザーはポンツィオから許可がある時間は自由気ままに動き、想定できない動きをする。
先日もアポイントも取らずに公爵家であるハイシア家に突撃したり困った動きを取っている。
サーベル国の英雄として招待をしていることや、屋敷にはシャリオンに悪意を持った人間を入れない結界を張っている。それを踏まえると、カイザーは別にシャリオンに対して悪意を持っていないことになる。
その上での『側室』発言も見落とせない言葉なのだが。
大人しく帰るのであれば、突然の来訪は目をつむろうと思っていたが、悪意がないにしてもシャリオンを怖がらせるのなら話は別である。
ガリウスはハイシア家の名前を使い、サーベル国英雄から希望されていた講師の件を正式に居りつつも、正式に抗議をした。
子を成し安定期前であったことも併せて、シャリオンへの接触を禁止をした。
普通に考えれば厳しい判断でもあるが、ルーク達の父であるブルーノもそれには許可をした。
・・・もしかしたら、後ろでレオンが脅していたのかもしれないが。
そうすることでサーベル国の陛下とポンツィオ王子も今までよりも厳しくカイザーへと叱責してくれた。
その光景を見ている限り、カイザーがおとなしく言う事聞くように見えなかったのが頭が痛い所だが、今のところハイシア家への突撃はなくなったから良いことにしよう。
「ポンツィオ王子はどうやら後ろ盾があまりいないようだ」
「まぁ第四王子だからな・・・。だが、対外国などでは彼が出向いているのだろう?」
「そうだ。新興貴族や比較的に弱い立場の貴族たちの支持は得られているが、
第一王子の産みの親が有力な貴族であることや、元老院では第一王子を次期王にと押していて、日々第四王子を亡き者にしようとする動きが活発化しているようだ」
「そこで出てくるのが暗殺家業のコンドル家ですか」
「「・・・」」
ウルフ家からの満足に1人で歩けない状態で逃げ切ったアボット。
それを手助けしたのは、ウルフ家が袂を分かった、かつての本家であったコンドル家ではないかと思われていた。
「暗殺を主とした貴族が居るというのも恐ろしい国だな」
「表立って暗殺家業をうたっているわけではないようですがね。
歴史が深く絡み合っていて簡単には切り離せないのでしょう。
切ってしまえば自分達も沈む」
ライガーは深くため息をついた。
「王子たちがこちらの話に乗ったのはそのためかもしれないな」
「それも一理あると思いますね」
「他になにかあるのか」
「まぁ可能性として、・・・ですが。
彼等の目的はコンドル家を抑えたいのだと思います。
最良は解体、良くて組織としての弱体化、爵位剥奪。
ですが、それだけではないでしょう。
ポンツィオ王子の外交の強さを見せつけたいのもあると思いますよ。
だからこちらのクレームもおとなしく受けているのだと思います」
「なるほどな。
・・・ルーク。その手が本当なら乗ってもいいんじゃないのか?
アボッドを助け出したのがコンドル家じゃないにしても、うちとしては可能性を一つ潰せる。
それにサーベル国に恩を売ることが出来るチャンスだと思うが」
そういうライガーにガリウスはコクリと頷きつつ、ルークを見る。
「まぁ。父上達にも相談してみないとね。
レオン殿にはガリウスに任せる」
「はい」
「そう言えば、この後ポンツィオ王子がこの後お詫びにとくるみたいなんだけど、2人も同席する?」
「話を聞くのにいいタイミングですね」
☆☆☆
ブルーノの執務室に向かうと、そこにはブルーノとレオン、サーベル国側には陛下とポンツィオ王子、それにカイザーが居た。
カイザーは見知った顔が現れたことに喜んでいるのか、ライガーを見るなり嬉しそうにした。
嫌われるよりはいいかもしれませんが
そんな様子を見つつ内心ため息をつく。
何故なら、ガリウスはこのカイザーに心の底から嫌われているようだからである。
あの『側室』発言は、本気であったらしい。
しかし、シャリオンに『最愛は一人で十分で他に愛を分け与えられるものはない』と、断られてしまったためその原因であるガリウスにヤキモチを焼いているらしい。
これで使える男でなかったら即時に捨て置くところだが、利用価値があるからまだとっておかなければならない。
上等な服を身にまとった野生児を、早くライガーに調教してもらいたいと、心底思っている。
同席したガリウスの姿を見ると、サーベル国王が頭を下げた。
非公式であるからなのかもしれないが、これは想定外ことではあった。
あったとしても、息子であるポンツィオ王子からだと思っていた。
「うちの者が申し訳ない」
「いいえ」
『シャリオンを怯えさせたものは万死に値する』なんて言葉を飲み込みつつ、そう返事をする。
「シャリオンにもう近づかないのであればそれで結構です」
そう言ってカイザーの方を見れば、ジロリと視線を向けられた。
その鋭さは見事で、普段動じないガリウスでも恐怖を感じた。
厄介ですね
ガリウスにとっては『側室』発言は軟派な気持ちでしかないが、この男の中では何かが違うらしい。
なら余計に分からない。
この国に居る間だけでも『側室』になりたいなどと、本気なのに言えるその気持ちが。
ガリウスはシャリオンのすべてが欲しい。
だれかと分けるなんて考えられない。
「この国は側室を持てると」
「カイザー!」
「・・・すまない。
ガリウス殿。美しい伴侶殿に心を奪われてしまったようで・・・。
いや、いい訳にすぎぬな。
・・・今までその働きから多めに見ていたのだが、本格的に躾直す必要がある」
そういってサーベル国王がジロリとカイザーを睨んだ。
「私からもお詫びを言わせてほしい。すまなかった」
「頭を上げて下さい。・・・カイザー殿が私の最愛であるシャリオンに惹かれてしまったのは致し方がないことです。
この国でも結婚をし一年が過ぎようとしていますが、いまだに懸想を胸に抱くものは少なくありません。
ですが、シャリオンも私も他に愛を分けられるほど器用でも、心も広くもないのですよ」
ガリウスがポンツィオ王子を見ながらそう言っている間にも痛いくらい視線を感じていた。
「余程シャリオン殿を愛されているのですね」
ポンツィオ王子の言葉ににこやかに笑みを浮かべながらそう答えた。
本人から謝罪を聞きたいところであるが、期待はしていない。
それよりも本題に入る。
ブルーノの方へ視線を向け、発言の許可を求めるとコクリと頷いた。
「陛下、発言を宜しいでしょうか」
「うむ」
「サーベル国の皆さまにお伺いしたいことがあります」
「なんであろうか。答えられることはお答しよう」
「コンドル家の動きはいかがでしょうか」
「そちらで探しておられる、アボッドとの接触と言う事出れば現在も捜査中である」
独自にこちらでも調査はしているが、彼等にも依頼をしている件だ。
「いえ。陛下達がサーベル国からでてから動きがあるかと思いまして」
「それは無いと思います」
なんとも不安になる言い回しだ。
しかし、先ほどまで嫉妬の眼だった男も、今はその時じゃないと自覚したのか、会話に入ってきた。
「国から追従してきた者はいない。
おかしな気配だった男も途中で海に落ちてからはこっちには追ってきてない。
ただ、別の日にずらされるとどうかわからない」
自信というか確信をもって言うカイザー。
ゾルが複数人居るということを言わなければ、この発言も信じられなかったが。
「何故そう思うのです」
「見えなかったから」
その答えはぶっきらぼうではなかった。
本当にそうなのだというように言われた。
実は拗ねているからそんなことを言うのかと猜疑心の目で見ていると、
サーベル国王とポンツィオ王子がフォローをくれた。
「この男は異様に目が良く、また気配を追うのがうまいのです」
「その力を使い、他国からの侵入を薙ぎ払い英雄とまで言われるようになった。
なので、その点だけは信用していただいて大丈夫だ」
その2人の言葉にコクリと頷く。
目が良い・・・。それでゾル達を見分けられるのでしょうか
それは少々疑問だ。
数度、3人揃っているところに会ったことはあるが、別の衣服を着ていなかったらガリウスは見分けがつかなかったくらいだ。
だが、本人だけでなく国王と王子がそう言うのだ。
疑っても仕方がない。
彼等には今のところ偽ってメリットがないからだ。
それに、ライガーから聞いていた海に落ちた男はリュシと言う男だ。
その男をカイザー達も怪しいと思っていたのは初耳ではあるが、まだ納得が出来る。
さて。どうしましょうか
ガリウスは思考を巡らせる。
その間も、彼等の会話を表面上でしながら考えをまとめた。
そして、その懇談が終わると早急にレオンを捕まえる。
「一つ提案があります」
「だろうと思っていた。
途中からお前が聞かれることに飲み返事をしなくなった時点で何かを考えていることなど分かっていた」
そうにやりと笑う義父に苦笑を浮かべるのだった。
そこには、ルークにライガー、ガリウスがいた。
いつかのような重い空気ではなく、少しホッとしたような和やかな空気が部屋で満たされていた。
「そうか。安定したか」
「このタイミングで安定期が来てくれたようで良かった」
「えぇ」
その笑顔は心から思っているように見えた。
先日、記念祭の時、シャリオンに誘われて2人で踊った時に、シャリオンは夢中になって気づいていなかったようだが、2人からの視線に気づいていた。
表面上はにこやかにしていたが、ルークのほんの一瞬見せた顔をガリウスは見逃さなかった。
そのことを思い出しながら、ルークの方をチラリと見れば訝し気に眉を顰める。
「なに?」
「いいえ」
「・・・今度は一体どんな嫌疑を掛けられたんだ俺は」
呆れたように言うルークの隣でライガーは可笑しそうに声を出して笑った。
「仕方ないな。少しでもシャリオンに友情以上の気持ちを見られる切っ掛けがあったなら、ルークの落ち度だな」
「心の中まで見れる魔法道具を作らせましょうか」
「心せまっ」
「セレドニオなら作れそうだな」
笑いながら言うライガーの言葉にガリウスは少し驚いたようにそちらを見た。
サーベル国への訪問にセレドニオをを付けたのはガリウスだが、旅道中はシャリオンのために我慢していたのだろうが、そんな反応は少し意外だった。
「彼の能力は本当に凄い。彼ならきっとそう言うのも作れると思うぞ」
「・・・。べた褒めだね。何かあったの?」
「いや。ただ今まで個人見ていなかったと思っただけだ」
「貴方の周りに居たあの家の血を持つ者は厄介でしたからね」
「それにしたって。・・・まさか暗示に掛けられてないよね」
「それは大丈夫です。ゾルには対策用の道具を持たせておきました」
「だけどセレドニオはこの国一の魔術師にも勝てないと言ったのはガリウスだ」
そういうルークにライガーは苦笑を浮かべた。
「ならば聞くが、今の俺を暗示に掛けてどうする?
それにあくまでもセレドニオはハイシア家に属する人間だ。
今度は宰相家を乗っ取って国の舵を切ろうともくろんでると?」
「どんなことをもくろんでるかは現段階では分からない。けど兄上の代わり様が変じゃないか」
「話して思ったんだ。『子は親を選べない』と。
あの男はファングスに恐怖心がありそして心の底から恨んでいる。
俺にとってはそれだけでも十分だ。
それに、ハイシア家ですでにシャリオンに逆らえない術を施しているだろう?」
「えぇ。・・・まぁそれがなくとも、あの男はシャリオンには逆らわないでしょう」
「そうだな」
「なになに??2人は一体何を知ってると言うの~?俺にだけ秘密??」
確信できる要素がないルークは話についてこれない。
拗ねたようにいうルークにライガーは苦笑する。
「王太子であるお前に秘密を作るわけがないだろう?
それに俺が幼い頃からお前の為だけに生きてきたのは知っているはずだ」
「・・・、俺はもっと自分勝手に生きてもらいたいけどね」
「そうは言ってもな。・・・それよりもこんな話をするために集まったわけじゃないだろう?」
「そうですね。殿下が納得いかないのであれば、後程二人の時にライガー様からたっぷり聞いいただきたい」
「でた。ガリウスの忙しいアピール」
「・・・バカだな・・・」
ルークのつぶやきにライガーは小声で苦笑を浮かべた。
ガリウスはルークの方に視線をやると、その冷たさにルークが息を飲んだ。
「ルーク殿下はそう思われていたのですね。そうですか。わかりました」
「えーっと」
「もうシャリオンにあうことは無いかもしれませんね」
「は?」
「アピールと言われてしまっては仕方ありません。
ご期待に添えさせていただきまして、私を通さずに直に貴方に行くように回します」
「!」
「そうなると、休む間もなくなるでしょう。
シャリオンの子が生まれたとしても貴方は忙しくてあえなくりますね」
「!!」
「ライガー様はどういうお考えで?」
「俺は・・・ガリウスにはよくやってもらっていると思うし、2人の子には会いに行きたい」
「そうですか。是非会いに来てください」
にっこりと笑みを浮かべてガリウスが言うとルークはグッと言葉を飲んだ。
「・・・。すまなかった。今のは失言だ」
「わかって下さればいいのですよ。
さて。・・・アボッドの件ですが、ウルフ家の人間にハドリー領やサーベル国内を捜査しておりますが、依然とし見つからないようです」
「どっかで野垂れん死んでるのか」
「だったらそれならそれで構いませんが」
「死体を見ないと安心できないねぇ・・・。
それよりも、それの協力をしてくれるという彼は、本当に使える人間なの?」
「カイザーか・・・。
先日、行儀を見ることになって話したが、面白いこともわかった」
サーベル国王とポンツィオ王子、そして英雄として護衛のために同行しているカイザー。
そのカイザーはポンツィオから許可がある時間は自由気ままに動き、想定できない動きをする。
先日もアポイントも取らずに公爵家であるハイシア家に突撃したり困った動きを取っている。
サーベル国の英雄として招待をしていることや、屋敷にはシャリオンに悪意を持った人間を入れない結界を張っている。それを踏まえると、カイザーは別にシャリオンに対して悪意を持っていないことになる。
その上での『側室』発言も見落とせない言葉なのだが。
大人しく帰るのであれば、突然の来訪は目をつむろうと思っていたが、悪意がないにしてもシャリオンを怖がらせるのなら話は別である。
ガリウスはハイシア家の名前を使い、サーベル国英雄から希望されていた講師の件を正式に居りつつも、正式に抗議をした。
子を成し安定期前であったことも併せて、シャリオンへの接触を禁止をした。
普通に考えれば厳しい判断でもあるが、ルーク達の父であるブルーノもそれには許可をした。
・・・もしかしたら、後ろでレオンが脅していたのかもしれないが。
そうすることでサーベル国の陛下とポンツィオ王子も今までよりも厳しくカイザーへと叱責してくれた。
その光景を見ている限り、カイザーがおとなしく言う事聞くように見えなかったのが頭が痛い所だが、今のところハイシア家への突撃はなくなったから良いことにしよう。
「ポンツィオ王子はどうやら後ろ盾があまりいないようだ」
「まぁ第四王子だからな・・・。だが、対外国などでは彼が出向いているのだろう?」
「そうだ。新興貴族や比較的に弱い立場の貴族たちの支持は得られているが、
第一王子の産みの親が有力な貴族であることや、元老院では第一王子を次期王にと押していて、日々第四王子を亡き者にしようとする動きが活発化しているようだ」
「そこで出てくるのが暗殺家業のコンドル家ですか」
「「・・・」」
ウルフ家からの満足に1人で歩けない状態で逃げ切ったアボット。
それを手助けしたのは、ウルフ家が袂を分かった、かつての本家であったコンドル家ではないかと思われていた。
「暗殺を主とした貴族が居るというのも恐ろしい国だな」
「表立って暗殺家業をうたっているわけではないようですがね。
歴史が深く絡み合っていて簡単には切り離せないのでしょう。
切ってしまえば自分達も沈む」
ライガーは深くため息をついた。
「王子たちがこちらの話に乗ったのはそのためかもしれないな」
「それも一理あると思いますね」
「他になにかあるのか」
「まぁ可能性として、・・・ですが。
彼等の目的はコンドル家を抑えたいのだと思います。
最良は解体、良くて組織としての弱体化、爵位剥奪。
ですが、それだけではないでしょう。
ポンツィオ王子の外交の強さを見せつけたいのもあると思いますよ。
だからこちらのクレームもおとなしく受けているのだと思います」
「なるほどな。
・・・ルーク。その手が本当なら乗ってもいいんじゃないのか?
アボッドを助け出したのがコンドル家じゃないにしても、うちとしては可能性を一つ潰せる。
それにサーベル国に恩を売ることが出来るチャンスだと思うが」
そういうライガーにガリウスはコクリと頷きつつ、ルークを見る。
「まぁ。父上達にも相談してみないとね。
レオン殿にはガリウスに任せる」
「はい」
「そう言えば、この後ポンツィオ王子がこの後お詫びにとくるみたいなんだけど、2人も同席する?」
「話を聞くのにいいタイミングですね」
☆☆☆
ブルーノの執務室に向かうと、そこにはブルーノとレオン、サーベル国側には陛下とポンツィオ王子、それにカイザーが居た。
カイザーは見知った顔が現れたことに喜んでいるのか、ライガーを見るなり嬉しそうにした。
嫌われるよりはいいかもしれませんが
そんな様子を見つつ内心ため息をつく。
何故なら、ガリウスはこのカイザーに心の底から嫌われているようだからである。
あの『側室』発言は、本気であったらしい。
しかし、シャリオンに『最愛は一人で十分で他に愛を分け与えられるものはない』と、断られてしまったためその原因であるガリウスにヤキモチを焼いているらしい。
これで使える男でなかったら即時に捨て置くところだが、利用価値があるからまだとっておかなければならない。
上等な服を身にまとった野生児を、早くライガーに調教してもらいたいと、心底思っている。
同席したガリウスの姿を見ると、サーベル国王が頭を下げた。
非公式であるからなのかもしれないが、これは想定外ことではあった。
あったとしても、息子であるポンツィオ王子からだと思っていた。
「うちの者が申し訳ない」
「いいえ」
『シャリオンを怯えさせたものは万死に値する』なんて言葉を飲み込みつつ、そう返事をする。
「シャリオンにもう近づかないのであればそれで結構です」
そう言ってカイザーの方を見れば、ジロリと視線を向けられた。
その鋭さは見事で、普段動じないガリウスでも恐怖を感じた。
厄介ですね
ガリウスにとっては『側室』発言は軟派な気持ちでしかないが、この男の中では何かが違うらしい。
なら余計に分からない。
この国に居る間だけでも『側室』になりたいなどと、本気なのに言えるその気持ちが。
ガリウスはシャリオンのすべてが欲しい。
だれかと分けるなんて考えられない。
「この国は側室を持てると」
「カイザー!」
「・・・すまない。
ガリウス殿。美しい伴侶殿に心を奪われてしまったようで・・・。
いや、いい訳にすぎぬな。
・・・今までその働きから多めに見ていたのだが、本格的に躾直す必要がある」
そういってサーベル国王がジロリとカイザーを睨んだ。
「私からもお詫びを言わせてほしい。すまなかった」
「頭を上げて下さい。・・・カイザー殿が私の最愛であるシャリオンに惹かれてしまったのは致し方がないことです。
この国でも結婚をし一年が過ぎようとしていますが、いまだに懸想を胸に抱くものは少なくありません。
ですが、シャリオンも私も他に愛を分けられるほど器用でも、心も広くもないのですよ」
ガリウスがポンツィオ王子を見ながらそう言っている間にも痛いくらい視線を感じていた。
「余程シャリオン殿を愛されているのですね」
ポンツィオ王子の言葉ににこやかに笑みを浮かべながらそう答えた。
本人から謝罪を聞きたいところであるが、期待はしていない。
それよりも本題に入る。
ブルーノの方へ視線を向け、発言の許可を求めるとコクリと頷いた。
「陛下、発言を宜しいでしょうか」
「うむ」
「サーベル国の皆さまにお伺いしたいことがあります」
「なんであろうか。答えられることはお答しよう」
「コンドル家の動きはいかがでしょうか」
「そちらで探しておられる、アボッドとの接触と言う事出れば現在も捜査中である」
独自にこちらでも調査はしているが、彼等にも依頼をしている件だ。
「いえ。陛下達がサーベル国からでてから動きがあるかと思いまして」
「それは無いと思います」
なんとも不安になる言い回しだ。
しかし、先ほどまで嫉妬の眼だった男も、今はその時じゃないと自覚したのか、会話に入ってきた。
「国から追従してきた者はいない。
おかしな気配だった男も途中で海に落ちてからはこっちには追ってきてない。
ただ、別の日にずらされるとどうかわからない」
自信というか確信をもって言うカイザー。
ゾルが複数人居るということを言わなければ、この発言も信じられなかったが。
「何故そう思うのです」
「見えなかったから」
その答えはぶっきらぼうではなかった。
本当にそうなのだというように言われた。
実は拗ねているからそんなことを言うのかと猜疑心の目で見ていると、
サーベル国王とポンツィオ王子がフォローをくれた。
「この男は異様に目が良く、また気配を追うのがうまいのです」
「その力を使い、他国からの侵入を薙ぎ払い英雄とまで言われるようになった。
なので、その点だけは信用していただいて大丈夫だ」
その2人の言葉にコクリと頷く。
目が良い・・・。それでゾル達を見分けられるのでしょうか
それは少々疑問だ。
数度、3人揃っているところに会ったことはあるが、別の衣服を着ていなかったらガリウスは見分けがつかなかったくらいだ。
だが、本人だけでなく国王と王子がそう言うのだ。
疑っても仕方がない。
彼等には今のところ偽ってメリットがないからだ。
それに、ライガーから聞いていた海に落ちた男はリュシと言う男だ。
その男をカイザー達も怪しいと思っていたのは初耳ではあるが、まだ納得が出来る。
さて。どうしましょうか
ガリウスは思考を巡らせる。
その間も、彼等の会話を表面上でしながら考えをまとめた。
そして、その懇談が終わると早急にレオンを捕まえる。
「一つ提案があります」
「だろうと思っていた。
途中からお前が聞かれることに飲み返事をしなくなった時点で何かを考えていることなど分かっていた」
そうにやりと笑う義父に苦笑を浮かべるのだった。
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