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婚約編
【最終話】2人だけの時間。
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さざめく波音を聞きながら夜の湖を眺める。
波は月明りを乱反射してとても綺麗だ。
無事に初夜を開け、昨日から予定通り別荘にきている。
ここには必要最低限の使用人と料理人しかない。
その彼等も時間に仕事をする以外は、呼ばない限り部屋から出てこない。
ガリウスと二人きりということに幸福を感じていた。
すると、湖畔を眺めているシャリオンの肩を抱かれ視線をあげる。
テーブルにはワインとチーズや生ハム、それにドライフルーツが並んでいた。
ガリウスが用意してくれたらしい。
月明りになると夜蝶が集まってくるのだが、
その夜蝶は淡い光を放ちながら舞うのだ。
それはとても幻想的でそれを見るために今日は出ていた。
・・・昨日見ることが出来なかったのは、着いて早々愛し合ってしまったからである。
「現れましたか?」
そう声をかけてきたのは、最愛の夫であるガリウスだ。
「まだみたい。・・・けど、月明りに反射した波がとても綺麗だよ」
そう答えるシャリオンの頬を撫でるガリウスの手のひらにすり寄ると、ガリウスは優し気に微笑んだ。
「夜の湖など初めてですが、綺麗です。・・・でもあなたの美しさには叶いません」
その言葉に頬が熱くなった。
ガリウスにしても両親にしても何故そんな事を真っ直ぐ見て言えるのだろうか。
先日の式のことを思い出して苦笑を浮かべた。
朝から晩まで『綺麗だ』のなんだの朝から晩までいっていたのだ。
「どうかしましたか?」
「僕はそんなことないけど。・・・いや、父様達が・・・酷かったなって」
「・・・、結婚式の話ですか?」
こくりと頷くと笑った。
「レオン様の涙など、この先見ることはないでしょうね」
「父上は結構簡単に泣くよ?父様よりも泣いている気がする」
「・・・。それは、本当ですか?」
「うん。僕がはじめて学院に通うときとか、卒業したときもすごかった」
「それは子供が出来たときはまた泣きそうですね」
確かに。
そう言われてみればそうで、思い浮かべた可笑しくてクスクスと笑った。
すると、どこからともなくひらひらと蝶が現れ、一匹二匹とシャリオンたちの周りを踊るように舞う。
それは2人の周りを仄かに照らし、幻想的な雰囲気を醸し出した。
その様に感動し、思わずシャリオンはガリウスを見上げると、そのガリウスはこちらを見ていた。
「!」
「どうかしましたか?」
「ぼ、・・・僕のことじゃなくて」
「もちろん綺麗です。貴方とこのような綺麗な景色を見れてとても幸せです。・・・でも、この景色に見とれている
貴方を見たくなってしまったんです。・・・すみません」
そういって眦に口づけられた。
「んっ・・・謝らなくていいけど、・・・僕なんて見て楽しい・・・?」
「えぇ。とても」
「・・・僕はガリウスだけ見てると大変だけど」
「大変ですか?」
「だって。・・・今は特に二人きりだから、・・・してしまいたくなっちゃう」
にこやかにほほ笑んでいるはずなのに、その唇に口づけたくなってしまうのだ。
・・・まぁ勿論今は誘っているのだが。
するとガリウスの指先が顎をすくうとチュっと口づけた。
なんでも、シャリオンの事が分かるガリウスにほほ笑んだ。
「ガリウス」
「何ですか?」
「誓約書。破棄しようか?」
「・・・よろしいのですか?」
驚いたように言うガリウスにコクリと頷いた。
「・・・何が気になっていたのですか?」
その言葉に苦笑を浮かべるシャリオン。
ルークに相談したときはあんなに不安だったのに。
体をつなげ、何度もささやかれた愛に、不安な気持ちはいつの間にかなくなっていた。
「えーっと・・・笑わない?」
「えぇ」
シャリオンはするりと指に手を絡めた。
でもずっと見ているのは恥ずかしくて、ひらひらと舞う蝶に視線を移す。
「・・・ガリウスがかっこよくてね。・・・その、・・・色々な人が集まるから、・・・素敵な人もあつまってくるだろうし、・・・わっ」
肝心なことを先延ばしにしていたのだが、するとガリウスに抱きしめられた。
シャリオンが誓約書を破棄しなかったのは『浮気』が怖かったのである。
だが、それはガリウスがシャリオンに対しての願いであり、ガリウスを縛るものじゃない。
落ちついてみれば分かるのだが、・・・あの時は曲解で捻じ曲げきれると思ったのだ。
そうだったとしてもガリウスは受け入れてくれそうだが。
「・・・本当に可愛い人ですね」
「恥ずかしい人だと思うけど・・・?」
「もう大丈夫なのですか」
「・・・うん。ガリウスの心変わりを、心配してたんだけど、ガリウスならきっとそんなことないと思う」
そういうと嬉しそうにほほ笑むガリウス。
もう一度ギュウと抱きしめられ、しばらくすると腕の力が抜かれた。
そろりと見上げれば、頬を赤く染めたガリウスがいる。
蝶達の所為だろうか・・・?
瞳がキラキラと輝いているように見えた。
腕を伸ばしその頬に手を添える。
「この先、・・・喧嘩とか・・・ふふふっ・・ガリウスとはしそうにないけど、なにかあってもちゃんと話あっていこう」
「えぇ」
少し泣きそうな表情のガリウス。
思わず手を広げるとシャリオンの肩に頭をうずめた。
泣いている声はしないが、抱きしめると頭を撫でた。
「・・・愛してます。シャリオン」
「僕もすき・・・、・・・。ガリウスを愛してる」
婚約した当時はあの態度の所為で最悪に感じていたのに。
実際に蓋を開けてみたら、シャリオンの辛いときにいつでも相談にのり知識を与えてくれた。
それはこれから先もそうなのだろう。
その安心間に支えられながら、シャリオンもガリウスを支えていきたい。
そうシャリオンは思うのだった。
【完結】
波は月明りを乱反射してとても綺麗だ。
無事に初夜を開け、昨日から予定通り別荘にきている。
ここには必要最低限の使用人と料理人しかない。
その彼等も時間に仕事をする以外は、呼ばない限り部屋から出てこない。
ガリウスと二人きりということに幸福を感じていた。
すると、湖畔を眺めているシャリオンの肩を抱かれ視線をあげる。
テーブルにはワインとチーズや生ハム、それにドライフルーツが並んでいた。
ガリウスが用意してくれたらしい。
月明りになると夜蝶が集まってくるのだが、
その夜蝶は淡い光を放ちながら舞うのだ。
それはとても幻想的でそれを見るために今日は出ていた。
・・・昨日見ることが出来なかったのは、着いて早々愛し合ってしまったからである。
「現れましたか?」
そう声をかけてきたのは、最愛の夫であるガリウスだ。
「まだみたい。・・・けど、月明りに反射した波がとても綺麗だよ」
そう答えるシャリオンの頬を撫でるガリウスの手のひらにすり寄ると、ガリウスは優し気に微笑んだ。
「夜の湖など初めてですが、綺麗です。・・・でもあなたの美しさには叶いません」
その言葉に頬が熱くなった。
ガリウスにしても両親にしても何故そんな事を真っ直ぐ見て言えるのだろうか。
先日の式のことを思い出して苦笑を浮かべた。
朝から晩まで『綺麗だ』のなんだの朝から晩までいっていたのだ。
「どうかしましたか?」
「僕はそんなことないけど。・・・いや、父様達が・・・酷かったなって」
「・・・、結婚式の話ですか?」
こくりと頷くと笑った。
「レオン様の涙など、この先見ることはないでしょうね」
「父上は結構簡単に泣くよ?父様よりも泣いている気がする」
「・・・。それは、本当ですか?」
「うん。僕がはじめて学院に通うときとか、卒業したときもすごかった」
「それは子供が出来たときはまた泣きそうですね」
確かに。
そう言われてみればそうで、思い浮かべた可笑しくてクスクスと笑った。
すると、どこからともなくひらひらと蝶が現れ、一匹二匹とシャリオンたちの周りを踊るように舞う。
それは2人の周りを仄かに照らし、幻想的な雰囲気を醸し出した。
その様に感動し、思わずシャリオンはガリウスを見上げると、そのガリウスはこちらを見ていた。
「!」
「どうかしましたか?」
「ぼ、・・・僕のことじゃなくて」
「もちろん綺麗です。貴方とこのような綺麗な景色を見れてとても幸せです。・・・でも、この景色に見とれている
貴方を見たくなってしまったんです。・・・すみません」
そういって眦に口づけられた。
「んっ・・・謝らなくていいけど、・・・僕なんて見て楽しい・・・?」
「えぇ。とても」
「・・・僕はガリウスだけ見てると大変だけど」
「大変ですか?」
「だって。・・・今は特に二人きりだから、・・・してしまいたくなっちゃう」
にこやかにほほ笑んでいるはずなのに、その唇に口づけたくなってしまうのだ。
・・・まぁ勿論今は誘っているのだが。
するとガリウスの指先が顎をすくうとチュっと口づけた。
なんでも、シャリオンの事が分かるガリウスにほほ笑んだ。
「ガリウス」
「何ですか?」
「誓約書。破棄しようか?」
「・・・よろしいのですか?」
驚いたように言うガリウスにコクリと頷いた。
「・・・何が気になっていたのですか?」
その言葉に苦笑を浮かべるシャリオン。
ルークに相談したときはあんなに不安だったのに。
体をつなげ、何度もささやかれた愛に、不安な気持ちはいつの間にかなくなっていた。
「えーっと・・・笑わない?」
「えぇ」
シャリオンはするりと指に手を絡めた。
でもずっと見ているのは恥ずかしくて、ひらひらと舞う蝶に視線を移す。
「・・・ガリウスがかっこよくてね。・・・その、・・・色々な人が集まるから、・・・素敵な人もあつまってくるだろうし、・・・わっ」
肝心なことを先延ばしにしていたのだが、するとガリウスに抱きしめられた。
シャリオンが誓約書を破棄しなかったのは『浮気』が怖かったのである。
だが、それはガリウスがシャリオンに対しての願いであり、ガリウスを縛るものじゃない。
落ちついてみれば分かるのだが、・・・あの時は曲解で捻じ曲げきれると思ったのだ。
そうだったとしてもガリウスは受け入れてくれそうだが。
「・・・本当に可愛い人ですね」
「恥ずかしい人だと思うけど・・・?」
「もう大丈夫なのですか」
「・・・うん。ガリウスの心変わりを、心配してたんだけど、ガリウスならきっとそんなことないと思う」
そういうと嬉しそうにほほ笑むガリウス。
もう一度ギュウと抱きしめられ、しばらくすると腕の力が抜かれた。
そろりと見上げれば、頬を赤く染めたガリウスがいる。
蝶達の所為だろうか・・・?
瞳がキラキラと輝いているように見えた。
腕を伸ばしその頬に手を添える。
「この先、・・・喧嘩とか・・・ふふふっ・・ガリウスとはしそうにないけど、なにかあってもちゃんと話あっていこう」
「えぇ」
少し泣きそうな表情のガリウス。
思わず手を広げるとシャリオンの肩に頭をうずめた。
泣いている声はしないが、抱きしめると頭を撫でた。
「・・・愛してます。シャリオン」
「僕もすき・・・、・・・。ガリウスを愛してる」
婚約した当時はあの態度の所為で最悪に感じていたのに。
実際に蓋を開けてみたら、シャリオンの辛いときにいつでも相談にのり知識を与えてくれた。
それはこれから先もそうなのだろう。
その安心間に支えられながら、シャリオンもガリウスを支えていきたい。
そうシャリオンは思うのだった。
【完結】
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