婚約破棄され売れ残りなのに、粘着質次期宰相につかまりました。

みゆきんぐぅ

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婚約編

早く言っておけばよかった。(夜会③・・・?)

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『       』





優し気な表情を浮かべたその眼差し。
何かを言っているのに聞き取れない。


「ガリウス・・・?」


もう一度言ってほしいのに、彼はそんな様子のシャリオンに苦笑を浮かべるだけだった。













☆☆☆






目が覚めて見えた視界は見覚えがなく、一瞬にしてシャリオンの体を固くさせた。

「・・・、」

起き上がり、見回すがやはり知らない部屋。
バクバクと心臓が早くなる。
こんな状況初めてだった。

「・・・、ここは」

どこなのだろうか。
見た限りそれなりの調度品が並び、貴族の家かホテルの様だ。
だがなぜここに居るのだろうか。
思い出せない。

「?」

今日は夜会最終日であったはずだ。
朝から前日、お茶を飲み可笑しくなったことを、みんなに散々注意された。
自分から参加させてもらいたいと申し出たが、侯爵主催でそれも主催者の出すお茶に薬が仕込まれているなんて思わない。・・・とは、とても言えなくて、素直に返事をする。
みんなにも心配も迷惑も掛けてしまったのは事実だ。
今日は飲み食いしないと心に決めて会場についた。

会場にはアボットはいなかったが、勉強会は今日はまだ開催されないということだった。
本当に良く席を外す主催者だ。

だが、パーティ会場でヘインズはいて、どう接触して奥方のことを聞き出そうか思案していたところだった。

「そうだ。・・・あの時急に真っ暗になったんだった」

部屋の中は夜でも魔法で明るかったのに、その部が屋急に光が落ちたのだ。
咄嗟にガリウスに抱かれて、しがみついた。
そして・・・気づいたらここに居た。

「・・・そうだ、・・・ガリウス」

ハッとして当たりを見回すが彼はいなかった。

「ガリウス・・・っガリウス!」

部屋の外にいるだろうか?
探しに行くために広いベッドの上を這いながら首の違和感に気づく。
嫌な予感がして、喉のあたりに何かまとわりついている。
手をやった感触にサッと血の気が引いた。
そこに固い何かがあった。
まさかと思いつつも、手で伝うとそれは一周回っており、それが首輪なのだと理解する。
爪にカツンと当たる感覚は鉄の様にも感じる。

「っ」

取ろうとしても取れなくて、次第に焦りが募っていく、
横に引っ張っても、前に引っ張っても取れない。

ガリウスもゾルもいない。一緒に来ていた3人の姿もない。
焦ってはいけないと思うのに慌ててしまう。
そんなときだった。

「そんなことしても外れないし、傷つくだけだ。やめておけ」
「!」

扉が開いた音もしなかった。
そのことに驚きながらも、悠然とこちらに歩いてきたのは・・・。





「メサ・・・?」






ハイシア家に出入りをし、つい先日も会ったばかりの男。
行商人のメサだ。
助けに来たと思いたかったが、いつも出入りするメサをは全く違う。
謙遜するようなところは一切なく、むしろ傲慢そうなその態度に困惑する。


「体調はどうだ」
「っ・・・、」


不意に伸ばされた腕をよけようとしたが、その腕に捕まってしまった。

「っ・・・離しっ」
「そう睨むな。可愛い顔が台無しだ。・・・と、言いたいところだが、その表情もいいな。
貴方にそんな目で見られたことがない」

クスクスと笑う男。
態度が悪い、と言うかこれが素の対応なのだろう。
睨んでいるのに、『良い』と、変なことを言われてしまいどう反応していいかわからなかった。

「だが、そういう態度はよくないな。これからずっと俺と一緒になるのに」
「!・・・どういう、いみ・・・?」

冗談を言っているようには見えないその表情。
手荒に引き寄せられた腕は未だに離されない。
それどころか、体が未着するほどの距離に引き寄せられた。
腕を張って拒否しようとするが、びくともしなかった。
シャリオンは拒否をすることで、男が余計に興奮することを知らないのだ。

「ぃっ・・・やめっ!」

抵抗すればするほど、男の眼がギラつき愉快そうに笑みを浮かべる。
シャリオンの動きを封じながら、体の上をゆっくりと撫でていく手が気持ち悪い。
本当にここはどこで、どうしてこんなことを?

「!っ・・・メ・・・メサ!っ・・・説明して」
「時間延ばしをしても無駄だ」

勝手に人の体を撫でまわす手を掴む。
にやりと意地悪い表情を浮かべていた。

「無駄って、・・・なんでだっ」
「フッ・・・助けに来ると思っているのか」
「っ」

ジロリと男を睨む。

「どういう・・・」

頭の隅でそれを考えていた。
ハイシア家につかえるウルフ家は優秀だ。
その者達が、自分を長く見失うことは考えにくい。
・・・そう思いたかった。

気を失ってどれくらいたったのだろうか。
未だにここに居るということは、遠くに離されたのだろうか。

冷静にならないと

腕の力を抜いて、一息置くと男が不審げにこちらを見てきた。


「思ってない。・・・助けに来ないということは、僕はそれだけの価値だということだ。
ハイシア家に今は婚約中のガリウスがいる」
「・・・」

そういうと、男の掴んできていた手が急に離された。
話してくれる気になったということなのだろうか


「どうしてこんなことを・・・」
「知ってどうする。俺はお前を自由にしてやる気はない」
「っ・・・」
「それとも、俺に媚びてみるか?・・・貴方の色香に惑わされて要らないことを言ってしまうかもな」

何をされたのか分かってサッと血の気が引く。

この男に、・・・媚びる・・・?

「っ・・・色香ってなんだ。僕はそんなもの」
「気づいていないのか?あの男と婚約してから貴方は・・・。・・・いやそんなことはどうでもいいな」
「!!!」

一瞬何が起きたかわからなかった。
手も触れてないのに、・・・それどころか手の届く距離でもないのに、服の前がビリビリと敗れていく。
それは渡されたタリスマンごと切られ、ベッドから転がり落ち床で割れる音がした。

「いい格好になった」
「っ・・・まさか、・・・黒魔術」
「知っていたのか」
「アボット侯爵が」
「・・・おしゃべりめ。・・・まぁいい。とりあえずその肌についた見苦しい跡を消そうか?シャリオン」
「!」

そういってベッドに上ってきた男に引きつってしまう。

「他の男に抱かれることに、触られることに慣れろ。じゃないとお前はこの先、生きてはいけない」
「!?」

そういわれた言葉の意味を理解できなかった。
いや。したくなかった。

「っ・・・」

初めてこんなことをしたときは、ガリウスを好きではなかった。
だけど、自分が自分でもわからなくなるくらいに感じていたというのに。

今はメサにどこを触られて感じない。
気分が悪くなる一方で、・・・シャリオン自身困惑していた。

嫌で嫌で、目元には涙が浮かぶ。
その瞳で男を睨むがいびつな笑みを浮かべる。

「別に感じなくてもいい。・・・することは同じだ」
「!」

そういうと男は自分の前をくつろげると、シャリオンのモノとは正反対に興奮しているソレに香油をまぶし手で扱き広げる。

「痛みの中でお前がどういう存在なのか理解するにはいい機会だ。良かったな?」
「ッ」

足首を掴まれると無理やり引き寄せられ、足を広げられる。


ッ・・・・ガリウス・・・!

絶望の中、シャリオンは何度もその名前を呼んだ。





ちゃんと好きだと言っておけばよかった


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