婚約破棄され売れ残りなのに、粘着質次期宰相につかまりました。

みゆきんぐぅ

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婚約編

即決即断!・・・なんで、貴方がでてくるの?

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宰相の息子である自分が宰相にならなければならいと思い込んでいた。
むしろ、そうではなく能力がある者がなるべき役職なのに。
それに気づかされたシャリオンの行動は早かった。
次の日、すぐに王都に戻ったが父上に時間が取れたのは夕方を過ぎた頃だ。
そして、自分の思いを伝えた。
領地に残り、シャーリーのサポートをしたいという事を。

シャーリーにも相談済みで、彼は応諾してくれ、レオンが良ければサポートではなく、領主も交代してかまわないといわれた。

レオンはしばらく考えた後に、「わかった。整い次第領主を頼む」と、言われた。

領主として勤勉しながらも、しっかり勤める事を父上に誓い、それと同時にいっそうに結婚相手を探すと伝える。
そこまではよかったのだが・・・。

「なに?」

途端に眉を潜めレオン。
シャリオンは勘違いかも?と、繰り返す。

「結婚相手は領民から選ぶのもありかと」

今はこの国の人間になってはいるが、元は小国であった時期もある。
だから、誇りがあるのだろうか?と、考える。

「今私に婚約の申し込みがあるのは、少し問題がある者が多いです」
「それは、まぁ、なぁ」
「そうこうしてるうちに、私の適齢期も過ぎてしまいますよ」
「しかし、」
「それに、どんな貴族をだしても、棄却されそうな気がするんです」
「ライガー殿下か・・・。彼にも困ったものだ。
・・・隣国の貴族でも探してみるか?」
「王族から婚約破棄された私の元に嫁いでくれる貴族がいると思いますか?」
「う、うーむ」

シャリオンの言葉に納得したのか唸るレオン。

「子を成してくれさえすれば、それで良いですよ。相手の意思は尊重しますが、社交界には出しません」
「シャリオン。しかし」

心配してくれるのは嬉しいが、そろそろそんな時期ではないのだ。
しかし、そんな時だった。
ノックもなしに扉が開かれた。
そこには、厳しい顔をしたガリウスがいた。
チラリとこちらを一暼したが、レオンへ視線を流す。

「私が立候補します」

今し方次期宰相にと推したガリウスが言った言葉に息を飲んだ。

結婚、していいということか?

聞かれたくないから部屋から出したが、魔法でも使って聞いていたらしい。

「なにを、」

百歩譲って聞いていたとしても、その言葉を受け入れられない。

「ガリウス。・・・お前聞いていたのか」

レオンは呆れたように、だがどこか助かったと言うような表情見せる。

「申し訳ありません。ですが私は本気です。・・・私なら貴族、・・・子爵家の者ですし、シャリオンの相手でも歳的にも問題ないと思います」
「っ」

そう言いながら、またあの視線でこちらをみてきた。
いや、・・・今までよりもギラついたようにみえて、シャリオンは思わず一歩足を引かせてしまった。

「それは、・・・それはいい。しかし、本当に良いのか?ハイシア家になるわけだが」
「私は所詮次男ですので」
「そうか。うむ、シャリオン、・・・シャリオン?」

浮かれたようなレオンの声に、シャリオンは何も言えなくなってしまった。
しかし、黙り込み俯いたシャリオンに気付いたのか、覗き込まれようとした瞬間だった。

ガリウスに突然腕を引き寄せられた。

「ですが、まずは本人同士で話を。そうですね?シャリオン」
「っ・・・、あぁ」

そう答えるのでやっとだった。

⬛︎︎



王都にあるハイシア家のシャリオンの自室に、ガリウスと2人きりだった。
普通ならソファーセットに向かい合わせで座るのに、この日は隣に掛けるガリウス。

おまけにやたら近くて足が当たってしまう、そんな距離だった。
距離を取ろうとするのに、ガリウスが詰めてくるのだ。
そうしてるうちに、シャリオンの逃げ場はなくなり、今に至る。

なんだか、今からでも使用人を呼びたい気持ちに駆られるが、もう夜であるためそれも悪い。

「そんなに嫌わないでください」
「嫌ってる、わけでは」
「嘘ですね。貴方は私のことを嫌ってます」

嫌うとはちょっと違う。
客観的に見てもガリウスは良い人間だ。
だが、ちょっと苦手ではあるが。
こんなふうに詰めてくること含めてだ。

「貴方は私が話しかけると、表情が固くなるんですよ。それで、怯えてみせる。先程も私を見て逃げてましたよね?」

いつの事だろうか。
悪いが少なくともあの部屋に入ってきてからずっと逃げているのだが。
そんな事を思っていると指先で顎をすくわれ、ガリウスの方に向かせられた。
こんなに近くにいるのに、頑なに前を向き視線を逸らしていたのに、またあの視線を絡められた。
しかし、視線よりももっと警戒することになる。

「その表情が、酷くそそります」

その言葉を理解するまでシャリオンは固まってしまうが、それを溶かしたのはガリウスだ。
困惑し驚くシャリオンの唇に口付けてきたのである。

「!っ・・・ガリウスっ」

必死に腕を突っぱねるように立てるが、ガリウスとシャリオンは体格差がある。
なによりシャリオンはシャーリーに似て線が細く、力では叶わないのだ。
抵抗を押さえつけるだけでなく、フッと笑うガリウス。

「良いですよ。もっと抵抗してください」
「?!」

くすくすと笑いながら再び近寄ってきた唇に、首をそらせた。
それで逃げ切れるわけがなく、露わになった首筋に唇を重ねられた。

「ひぃっ」

薄い皮膚を唇が撫でるように肌の上を滑る。
くすぐったくて身をよじるが、それで逃げられなかった。

「っ」
「フフッ・・・大丈夫。子を成したいのでしょう?」
「!」
「痛いこともしません。・・・気持ちよくて辛いのはあるかもしれませんが」

なにをされるのか分からないほど子供ではない。

次はなにをされるのか・・・

そう思うだけで体が震えた。
それが恐怖なのかなんなのかシャリオンにはわからない。

だが今前を見たら口付けられることは簡単に想像できた。
結局、首をそらせることしか出来ないでいると、ガリウスの舌が首筋を舐めた。
熱い舌が人の弱点とも言えるそこをゆっくりと舐める。
ただゆっくりと舐められたのは一度だった。
大した抵抗がないのがわかったからなのか、その首筋にちゅちゅっとバードキスをくりかえしたり、舐めたり吸われた。音が立てられ、その舌の感触のたびにゾワリと震えた。

「っゃ・・・っだぁっ」

唐突なことにシャリオンの視界は次第に歪んでいく。絶対にこの男の前では泣きたくなどないのに力で押さえつけられ、意味のわからないことに感情が昂っていく。

「貴方にあった時からずっと、みてたんです」

そんなこと知っている。
それから逃げていたのだから。
それは、幼い時からずっと。

殿下との婚約が決まってすぐだ。
ガリウスとは幼なじみではないが、貴族だから顔なじみではあった。

「貴方に婚約者がいると知った時、本当に絶望を感じましたよ」
「っ」
「でも、・・・何がなんでも手に入れようと思いました」

その言葉に全身が冷たくなる。
怯えていたのも抵抗も忘れて、そろりと男の顔を見上げれば、二マリと笑った。

「なん、で」
「何故だと思いますか」

わかったら聞くわけないだろう。
ガリウスの思惑が分からなくて困惑する。

今までシャリオンが次期宰相とされてきても、嫌悪を示す様子はなかった。
本心は見えなかったが、いや見えていたならその時にさっさと譲っていただろう。

だとしても、ライガー殿下との婚約を破棄させて何があるというのか。
ライガー殿下が王太子ならまだしも、彼には王位継承権はない。

「っ何が目的だっ」

完全に面白がっているその態度に次第に頭にくる。
忌々しげに男を睨む。
でも、答えてくれる気は無いようだ。

「1つわかったことがある」
「なんですか」
「お前と婚約は絶対にしない!」

特にその余裕ぶった態度は気に入らなかった。

「そうなりますか。やっぱり」
「当たり前だ!
何を考えてるか分からないような人間を伴侶に選ぶわけないだろっ
領地が悪用されるかもわからないっ」
「酷い言いようですねぇ。貴方にこれまで申し込んできた男達に比べれば私の思惑など純粋で可愛いものですよ」
「お前が可愛い??疲れて頭がおかしくなってるなら部屋で休め!この家にはお前の部屋もあるだろ!」

再び胸を押しやれば、今度は大人しく引いた。
体を離されると、シャリオンは逃げるように席を立つ。
逃げるなんて不本意ではあるが、体格差はどうしようもなかった。
それに、過去の男達の悪行を知っているような口振りが気がかりだ。
そんな素行の悪い家の者だと知っているのであれば教えて欲しかった。

「でも、良いのですか?レオン様はお喜びのようでしたが」

そんなにお前を血縁にしたいなら、養子にでもすれば良い!

なんて、心の中では思ったが、そんなことをされたら今度こそシャリオンの居場所がなくなってしまうような気がして息を飲んだ。

父上は・・・ガリウスが息子に欲しいのだろうか・・・

次期宰相としての立場は、自分の能力がガリウスに劣っているのがわかっているから納得できた。
だが、「息子」まで欲されてしまったならば、と考えるてしまう。
口元に手を置き呆然とする。
貴族というものを理解しきれてなかった。
愛情とかそんなものは二の次だと、頭ではわかっていたはずなのに。

「・・・そういうことか」

だが、父上がなにを求めているのかわかった気がした。
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