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俺は分かりやすいんだろうか。

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本日も晴天なり。
と、いうこと(?)で今日もルボミールに与えられた王太子の執務室の隣の部屋で、島の各担当と打ち合わせである。
島は小さいので大まか、食料生産・学問・産業・財政・防衛の5つの組織で成り立っている。

嵐山から薬の製造はほぼ成功したという報告があり、ちゃくちゃくと観光に向けて準備を進めているところだ。
それに伴っていろんなものが次々と決まっている。

一通り会議を進め問題がない所で、会議が終了し京はオフラインにするとマイクをデスクの上に置いた。
次は、ルボミールに婚約者として一緒にこなしてほしいといわれていた魔法板に手を伸ばそうとしたところで、目の前にお茶を置かれる。

「ニコ?・・・ありがとう?」

お礼を言いつつ、そんなことをしてくれたは初めてで視線をあげる。
そもそも、この部屋にはミニキッチンがあって飲みたい人が好きな時に飲むようにしている。
だから『お茶汲み係』なんて言う化石文化は無いのだ。
お客が来た時にお願いするくらいである。
戸惑っているとニコは如月を見た後、再びこちらに視線を向けてきた。

「少し休まれた方が良いと思います!」

どうやら如月に言われてやってくれたことらしい。
休み明けに会った如月はすっきりした様子で、自らラージャにいるうちは秘書にしてほしいという相談があり、京はそれを許可した。
京もそろそろまわらなくなってきたこともあり、如月が秘書になってくれたのはありがたい。
これまでSPとして神経を集中していたところを、京のサポートにパラメータ全振りをすることに決めたらしい。
秘書になったら彼は様々なサポートをしてくれて嬉しい反面、やたら細かくなったと思う。
特に休憩には事細かだ。
なのだが、如月の言葉はなんだかんだでうやむやにすることを覚えた京に、ニコを投入することにしたらしい。
日本だったらまだ就学している年齢のニコ、何より京はニコに甘いのを目ざとく気づいたようだ。
如月に恨みがましく視線を送りたいところだが、キラキラとした眼差しから視線を逸らせずにお茶に手を伸ばす。

「ありがとう。・・・うん。美味しいよ。ニコ」

すると嬉しそうに顔を輝かせるニコにくすりと笑みを浮かべた。

「良くやりました。ニコ」
「はい!」
「京様は休憩を疎かにしがちです。3時間以上動かない時はお茶を出してください」
「はい!」

初めて引き合わせた時に半泣きになっていたのが懐かしい。
それを、思い出しながら休憩を取るために、ダミアンも含めてみんなで応接セットに移動する。

「今日はの焼き菓子です」
「そう」

焼き菓子はタルトだった。
タルトを見ると劇場近くにあった人気のスイーツショップの『パルステュ』思い出す。
劇場を開くにあたって挨拶周りをしたときに見つけたそのスイーツショップの焼き菓子のフルーツタルトが好きだ。
新鮮なフルーツが乗っているわけではないのだが、甘く煮詰めたジャムは甘すぎず京の口に合った。
月一のイベントデーには毎月顔を出していたのだが、最近は劇場に行けていないからそのタルトもお預け状態である。
口に出していったことはないのだが、いつも多めに買ってみんなにも差し入れていたから、如月が気づいてくれたのかもしれない。

・・・まさか、アレくらいでやきもち焼かれるとは思わなかったからなぁ・・・

本当に些細なことで京は苦笑を浮かべた。
如月と外で飲んだときに男に絡まれたのだが、その時の男はランクの低いαだったのだが彼が何かを言ったらしいのだ。
なぜ、『らしい』なのかというと京と如月はダンの張った結界に入れられて時の出来事だったからだ。
口元を呼んでいた如月は何を言っていたか、大体わかったらしいのだが結局如月は『良くないことを言っている』としか教えてくれなかった。
京としてはもう成人しているのだから言ってくれればいいと思うのだが。
ルボミールにも聞いてみたが、当然教えてくれなかった。

「どうかしましたか?」
「いや。なんでもない」

タルトを見てぼんやりしていると、ダミアンがこちらを見てきた。
京は首を横に振って何でもないと答えるが、如月には伝わってしまったようだ。

「京様。・・・申し訳ありません。次は『パルステュ』のタルトを準備しておきます」
「っ・・・また顔に出ていたか?」

最近よく考えていることがバレてしまう。
それは主にルボミールなのだが、如月にも付き合いからなのか知られてしまうことが多々あるのだ。
なんだかんだでトシマ区で統率者としているわけなのだから、顔に出やすいのは本当に困ってしまう。

特にこれからラージャの各省の人間と話す機会もある。
王太子の婚約者に下手なことはしないだろうが、わかりやすいのは考えものだ。
ラージャはまだルボミールのおかげでどうにかなるかもしれないが、問題は青の大陸にあるアストリア帝国だ。
トシマ区内でいろいろまとめている最中ではあるが、なるべく早くハカセの捜索を再開させたいからだ。

京は気を引き締めるように背筋を伸ばしたころで、ダミアンが訪ねてくる。

「『パルステュ』?」
「中流階級層にあるスイーツショップのタルトで、キョウ様は劇場に来てくださるときにいつも差し入れをしてくださるスイーツショップの名前です。キョウ様はそこのフルーツタルトがお好きなのです」

ダミアンの問いかけに、タルトを配っているニコが答える。

「なるほど」
「ここのフルーツは故郷のものとは全く違うのだけど、とても美味しいんだ」
「買ってこさせましょうか」

今丁度クルトは京の指示でラージャの文化省と法務省に行ってもらっている。
そんな人間に『おやつ買ってきて~』なんて言うわけがない。
京は首を横に振る。

「ありがとう。大丈夫だ」

そんな噂をしているとクルトが帰ってきたのか、ベルと共に扉の上に『クルト』と発光した文字が浮かび上がった。
ダミアンはそれを確認してから扉のロックを解除する魔法をかけると。

これはルボミールが設置したもので、来訪者が解かる魔法道具だ。
『運命』であることを大臣達に告げた後、怒涛な勢いで大臣達が現れた。
それは一日で済んだが内容の無い話で面倒に感じていたため、その心遣いに感謝したものだ。

扉が開かれた場所にはクルトが隣をみて固まっていたが、首をかしげながらもこちらに入ってきた。

「どうかしたか?」
「いえ。・・・隣が騒がしくて」

扉を閉めると施錠する魔法を掛けるとこちらにやってくるクルトを見上げる。

「隣・・・執務室か?」
「はい」
「執務室は防音魔法が掛けられているのではなかったか?」
「今は扉が開かれてたので。まぁ何か問題があればこちらに来るでしょう」
「そうだな。クルトもお茶にしよう」
「わぁー美味しそう。ほかの省なんかだとこういうの無いので嬉しいです~」

そういうと、お茶を自分で入れる。
ウォーターサーバーや茶器は京達の様に魔力が無くても使えるように日本製であるのだが、彼等にも使ってもらっている。慣れた手つきで淹れてくると、ダミアンの隣にかける。

「それで確認してきた件ですが、キョウ様の思った通りでした」
「そうか・・・」

観光化に向けてラージャで違反になるようなことをあらかじめ調べてもらってきた。
そして、もしそれをトシマ区で行った時などの対処をどうするかを確認してきてもらったのだ。
やはりお使いレベルで収まるものではなく、別途会議が必要になったのだが。
会議自体は問題ないし、必要なことだと思っている。
問題は最近過保護さを出してくる相手に、どう説得をするかなぁと思う京だった。

☆☆☆


その日の晩。
晩酌にラージャ産の白ワインに似た葡萄酒を飲んでいるところだった。

「そう言えばキョウ。アストリア帝国にはいつ行ける?」
「え?」
「以前言っていただろう?連れていきたいと」
「言っていたけど・・・」
「あの時と少し状況は変わったが連れていきたいのは変わらない。
皇帝陛下にキョウのことを紹介したいんだ」
「この国のマナーも出来てないのに、他国の要人にあうなんて大丈夫だろうか・・・。いや、作法を教えてもらえないだろうか」
「あぁ。・・・その時はラージャの衣装を着てもらいたいのだが」
「わかった」

そう答えるとルボミールは嬉しそうにする。
京がラージャの衣を着ることが大きな意味があることは分かる。
それを嬉しく思ってくれているのは、京も嬉しかった。

「もちろん。移動中は慣れた服でも構わない。謁見するときだけでいい」
「うん。ありがとう」

ルボミールは京を引き寄せるとさらりと頭を撫でて額に口づける。

「一週間程度予定だ」
「結構行くな」
「何言っている。短いくらいだろう?」
「・・・。ハカセを探すにはそのうち3日くらいしか当てられないぞ」
「!」
「アストリア帝国から魔法図書館はテレポートストーンがあるから、移動は問題ないが。行っただけで見つかるとは思えない」
「ルル、・・・いいのか?」

京が驚いたように言うと、ルボミールは眉を顰めた。

「当たり前だ。あの男はトシマクに必要な男だろう」
「でも、ルルに失礼なことを」

京がすぐにハカセを探しに行けなかったのはそれを含めた準備が必要だったからだ。
感情のままに言っても却下されるの目に見えた。
それに行ったとしても京は行き方どころか、言語を含めたすべてがわからない。
だから、Ωに比較的に協力的なαで青の大陸に詳しい者を探しているところだった。
それらがそろったところで、ルボミールに行かせてほしいと打診しようと思っていたのだ。
・・・だが、実際はそんなαは中々見つからない。

「それはそれだ。・・・それに俺が『Ωの地位を上げろ』なんて言ったから逃走したなら、むしろ謝らなければならない」
「・・・、」
「俺もあの時は少し頭に来ていてな。少々大人げなかった。
ただのΩ・・・いや。たとえαだったとしても、一年や二年をかけてもそう変わるもんじゃないのは分かっていたことだ。・・・キョウ達には考えられないことだろうが・・・この世界では『Ωは虐げてもいいもの』という考え方が根強く残っているのは確かだ。・・・それを覆すには俺達の人生では書き換えられるか微妙なところだ」
「・・・、でも」
「ゆっくりとそれはすすめていく。キョウが安心できるように。そして、ハカセも納得できるようにしたら問題ないだろう?・・・あの男が『運命』を壊したいのは不誠実でふがいないαの所為だ。
俺がどれほどキョウを愛しているか。『運命』など関係なく傍に居てほしいと言う事を、ハカセが理解したなら納得もするだろう」
「・・・、でも・・・どうやって?」

思わず見上げた視線にルボミールに苦笑する。

「そうだな。・・・例えば俺がキョウのことを理解していれば条件の一つになるんじゃないか?
『運命』なだけで惹かれているなら興味なんてないだろう」
「そう、なのかな?」

そうとも言えるかもしれないが、そもそも『運命』で惹かれているから『理解』したいと動くのではないのだろうかと思ってしまう。
するとルボミールはソファーから立ち上がると隣の小部屋に向かった。
暫くして戻ってきた手元には皿があり、つまみの追加だと思った。

「・・・、」

しかし、出されたのはデザートで思わず固まる。
綺麗にフルーツや花で飾られているが、中央のタルトは見覚えがある。
思わずルボミールをみるとにこやかに微笑んでいる。

「ルルに言ったことあった・・・?」
「ああ。劇場にお忍びで行った時にな」
「そうだっか・・・?」

言った記憶はないのだが、ここのケーキはすぐに無くなるからあの時間に買いに行っても買えないから、もともと準備をしていてくれたのだろう。

「今日丁度この話をしてたから驚いた」
「そうだったのか?それはよかった」

暫くは食べられないと思ってたそれに京は嬉しそうにしつつ、フォークを手に取る。
なんでも今日の白の葡萄酒と合わせて食べるのが人気らしい。
京はおすすめの食べ方で食べると、今まで食べていた数倍は美味しいことを知った。

「・・・!」

この味を知ったら、もう紅茶やコーヒーとは合わせられない。
そんなスイーツがあるとは思わなくて、驚いてルボミールを嬉々として見つめる。

「口に合ったようで良かった」
「本当に美味しい・・・。いつものタルトなのに、これと合わせるとなんでこんなにおいしくなるんだ」
「それはさすがに分からないが」
「・・・美味しい。ありがとう、ルル」
「どういたしまして」
「あの、・・・俺そんなにわかりやすいか?
それとも気づかないうちにピアスにテレパシー送ってる??」
「いいや。キョウのこと考えていたら分かることだ」
「っ・・・」
「それは『運命』とは違うことだぞ?・・・キョウのことを見ているからだ。そこは間違えないで欲しい」
「っ・・・、・・・うん」

じっと見てくる眼差しに京はコクリと頷くのがやっとだった。



┬┬┬
「しおり」ありがとうございます!
もう直ぐようやく青の大陸に向かいます。
あと・・・1/3くらいでしょうか!
年内には終わりそうです(+_+)
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