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【閑話】ラージャの王太子はコミュ力どころか、ハートも強めらしい。
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ピアスを渡された日。
その夜からテレパシーで交わされる2人だけの時間。
ルボミールが『二人だけの秘密だ』と言ったからだ。
言語のことも田畑のことも良くしてもらっているから、断る理由もなかった。
文化も知ることが出来たりして、これから外界に出るにあたって大変ありがたいことだと思う。
そこで話すようになって分かったのだが、やたらとフレンドリーに話しかけてくるルボミール。
それは、一国の次期国王とは思えない様子だ。
例えば・・・。
「言語を教えてくれる・・・?」
相手が言った言葉を反芻する。
すでに島には教師を送ってくれたのにそういうルボミール。
それは、王太子であるルボミール直々に教えてくれるというものだった。
『あぁ。シノノメ殿は多忙なのだから他の者の様に時間は取れないだろう?』
確かにリアルタイムには難しいが、語学はWEB授業になるので録画をいつでも見れる。
それを理由に断ろうと思ったのだが。
『動画と言ったか?アレは確かに優れているが。貴方の直に声を聴いてみたい』
京が話していることは一度翻訳され端末から音声に乗って相手に伝わる。
だが、同時に話しているから聞いてのだから声は聞こえているだろうに。
ピアスを通してテレパシーで話している時は、声を発しているわけではないが、自分の声も相手の声も相違ないと思うのだが。
「ですが、貴方にそこまでしていただくわけには。・・・、っ」
そう答えたのに反応を示さないルボミール。
それをいぶかし気にしていると、途端に手のひらのピアスが熱を持ち始めた気がして魚籠ついてしまう。
あの時のラルフが凍り付いたことを思い出し、手が微かに震える。
落としてしまいそうなピアスに震えたその手首をもう片方の手で止める。
『俺が貴方を傷つけることはない。・・・これから先も永遠にだ』
熱を帯びたと感じたのは勘違いだったようで、手のひらはのピアスは何ともなかった。
手首を握っていた手を離すと指で触れてみるが、熱を感じない。
自分が思っている以上に疲れがたまっているのだろうか。
思えばここに来て自由になったはずなのに、さらに休む時間が無くなった気がする。
ルボミールと同様の紅い輝きを放つピアスを見つめる。
この彼は自分以上に動いてくれているのだろうと思うと、余計に良心の呵責が刺激される。
「・・・俺はルルの気持ちに応えられないのに」
『だが、この世界に来て俺の力は使えるだろう?』
使えないことなどないくらいだ。
今回のこともルボミールがいなかったら近い将来に侵略され戦いに慣れていないトシマ区の民は、Ω以前に略奪や殺戮が行われていたと思う。
ハカセに聞けば随分下種なことを言っていたらしいが陵辱されていたかもしれない。
だが王太子であるルボミールが関係したことで、何かしらの抑制がついたとおもう。
『この世界で安全にいるためには、俺の傍にいることで確実性が上がるのではないか?』
「それは・・・」
『俺を利用しろ』
そんな言葉に思わず息を飲む。
『それにシノノメ殿からの想いは期待していない。
・・・・育った環境も違えば、バースの知識もないのだから当然だ』
優し気で耳心地が良い声と耳障りの良い言葉で京に問いかけてくる。
京はどうにかあきらめて欲しい反面良心が痛む。
これが優れている『α』ということなのだろうか?
良くしてくれているから本当にありがたいが、逆に心配になってくる。
「変な壺とか売りつけられたりしてないか」
『壺?』
「俺達の世界で人が良すぎる人は騙されやすくて、そういう風に言うんだ」
京が言われたことはもちろんないが、あの妹にして兄である。
小説や漫画も読んでいて、そんな情景を思い浮かべてしまったのだ。
『ハッハッハ!・・・人が良いなどと言われたこと初めてだ』
一緒にいすぎて気づかないとかそういう事なのだろうか。
『だが・・・あんまりつれないと攫ってしまうかもしれないぞ?』
クスクスと笑い冗談気に言うルボミール。
「・・・わかった。・・・ルルに言葉を教えてもらうよ。代表として正しい言葉遣いとかあるかもしれないし」
『それは。よかった』
「良かったのは俺の方でしょう?・・・でも、厳しいときは本当に無理をしないで欲しい」
『あぁ。・・・俺にもちゃんと下心があるから安心しろ』
「下心?」
『あぁ。もちろん番いたいとかそういう事じゃない。貴方と同じものが見たいだけだ』
「ルル・・・。俺はそういうのにほだされないぞ?」
『そうなのか?それは残念だ。・・・まぁそれは冗談だが。我が国の言葉を覚えたらファルジ大陸のアストリアに連れていきたい』
「ファルジ大陸のアストリア」
『あぁ。・・・そのほかの国の事、・・・シノノメ殿なら気になるのではないか?情勢や性質を知りたくなるだろう』
この短期間に良くそこまで観察したと思う。
「そうだな。・・・敵になるのかどうなのか知りたいところだ」
『たとえ来たとしても全力で保護しよう』
ラージャは赤の国、アストリアは正式にはアストリア帝国と言い青の国と言われるらしい。
赤の国は商業に栄えた国で、一方の青の国は学問の国と呼ばれ魔法特化の国なんだとか。
知らない言葉がたくさん出てくる。
『もしかしたらシノノメ殿達の帰り方も分かるかもしれないからな』
「ルル・・・そんなことを考えて居てくれていたのか」
『言葉は俺が覚えている。だから安心してラージャの言葉だけでも覚えてくれ』
「・・・。あぁ。ありがとう」
まだ少し悩むことはあるが、それでもルボミールを信じようと思った。
悪事を考えていたなら出会った時に出来ていたはずだから。
その夜からテレパシーで交わされる2人だけの時間。
ルボミールが『二人だけの秘密だ』と言ったからだ。
言語のことも田畑のことも良くしてもらっているから、断る理由もなかった。
文化も知ることが出来たりして、これから外界に出るにあたって大変ありがたいことだと思う。
そこで話すようになって分かったのだが、やたらとフレンドリーに話しかけてくるルボミール。
それは、一国の次期国王とは思えない様子だ。
例えば・・・。
「言語を教えてくれる・・・?」
相手が言った言葉を反芻する。
すでに島には教師を送ってくれたのにそういうルボミール。
それは、王太子であるルボミール直々に教えてくれるというものだった。
『あぁ。シノノメ殿は多忙なのだから他の者の様に時間は取れないだろう?』
確かにリアルタイムには難しいが、語学はWEB授業になるので録画をいつでも見れる。
それを理由に断ろうと思ったのだが。
『動画と言ったか?アレは確かに優れているが。貴方の直に声を聴いてみたい』
京が話していることは一度翻訳され端末から音声に乗って相手に伝わる。
だが、同時に話しているから聞いてのだから声は聞こえているだろうに。
ピアスを通してテレパシーで話している時は、声を発しているわけではないが、自分の声も相手の声も相違ないと思うのだが。
「ですが、貴方にそこまでしていただくわけには。・・・、っ」
そう答えたのに反応を示さないルボミール。
それをいぶかし気にしていると、途端に手のひらのピアスが熱を持ち始めた気がして魚籠ついてしまう。
あの時のラルフが凍り付いたことを思い出し、手が微かに震える。
落としてしまいそうなピアスに震えたその手首をもう片方の手で止める。
『俺が貴方を傷つけることはない。・・・これから先も永遠にだ』
熱を帯びたと感じたのは勘違いだったようで、手のひらはのピアスは何ともなかった。
手首を握っていた手を離すと指で触れてみるが、熱を感じない。
自分が思っている以上に疲れがたまっているのだろうか。
思えばここに来て自由になったはずなのに、さらに休む時間が無くなった気がする。
ルボミールと同様の紅い輝きを放つピアスを見つめる。
この彼は自分以上に動いてくれているのだろうと思うと、余計に良心の呵責が刺激される。
「・・・俺はルルの気持ちに応えられないのに」
『だが、この世界に来て俺の力は使えるだろう?』
使えないことなどないくらいだ。
今回のこともルボミールがいなかったら近い将来に侵略され戦いに慣れていないトシマ区の民は、Ω以前に略奪や殺戮が行われていたと思う。
ハカセに聞けば随分下種なことを言っていたらしいが陵辱されていたかもしれない。
だが王太子であるルボミールが関係したことで、何かしらの抑制がついたとおもう。
『この世界で安全にいるためには、俺の傍にいることで確実性が上がるのではないか?』
「それは・・・」
『俺を利用しろ』
そんな言葉に思わず息を飲む。
『それにシノノメ殿からの想いは期待していない。
・・・・育った環境も違えば、バースの知識もないのだから当然だ』
優し気で耳心地が良い声と耳障りの良い言葉で京に問いかけてくる。
京はどうにかあきらめて欲しい反面良心が痛む。
これが優れている『α』ということなのだろうか?
良くしてくれているから本当にありがたいが、逆に心配になってくる。
「変な壺とか売りつけられたりしてないか」
『壺?』
「俺達の世界で人が良すぎる人は騙されやすくて、そういう風に言うんだ」
京が言われたことはもちろんないが、あの妹にして兄である。
小説や漫画も読んでいて、そんな情景を思い浮かべてしまったのだ。
『ハッハッハ!・・・人が良いなどと言われたこと初めてだ』
一緒にいすぎて気づかないとかそういう事なのだろうか。
『だが・・・あんまりつれないと攫ってしまうかもしれないぞ?』
クスクスと笑い冗談気に言うルボミール。
「・・・わかった。・・・ルルに言葉を教えてもらうよ。代表として正しい言葉遣いとかあるかもしれないし」
『それは。よかった』
「良かったのは俺の方でしょう?・・・でも、厳しいときは本当に無理をしないで欲しい」
『あぁ。・・・俺にもちゃんと下心があるから安心しろ』
「下心?」
『あぁ。もちろん番いたいとかそういう事じゃない。貴方と同じものが見たいだけだ』
「ルル・・・。俺はそういうのにほだされないぞ?」
『そうなのか?それは残念だ。・・・まぁそれは冗談だが。我が国の言葉を覚えたらファルジ大陸のアストリアに連れていきたい』
「ファルジ大陸のアストリア」
『あぁ。・・・そのほかの国の事、・・・シノノメ殿なら気になるのではないか?情勢や性質を知りたくなるだろう』
この短期間に良くそこまで観察したと思う。
「そうだな。・・・敵になるのかどうなのか知りたいところだ」
『たとえ来たとしても全力で保護しよう』
ラージャは赤の国、アストリアは正式にはアストリア帝国と言い青の国と言われるらしい。
赤の国は商業に栄えた国で、一方の青の国は学問の国と呼ばれ魔法特化の国なんだとか。
知らない言葉がたくさん出てくる。
『もしかしたらシノノメ殿達の帰り方も分かるかもしれないからな』
「ルル・・・そんなことを考えて居てくれていたのか」
『言葉は俺が覚えている。だから安心してラージャの言葉だけでも覚えてくれ』
「・・・。あぁ。ありがとう」
まだ少し悩むことはあるが、それでもルボミールを信じようと思った。
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