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『オメガバース』?『魔法』?なんか、凄いところにきたな。

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ルボミールは快く引き受けてくれた。
だが、それが決定だとは思っていなかった。
京のその読みは間違っておらず、決定事項ではあるが一度議会で通す必要があるということになった。

それを聞きながら、『いや、ありがたいけど、一回話し合ってくれ』と、思ってしまう。
勝手に進めて後で根に持たれても困る。
そのためには一機くらいプロジェクタを提供しても構わないだろう。
何せイケブクロには電気屋さんがそこそこある。

すると、ルボミールの横に控えた茶髪の男が、ハカセが映した映像に向かって手をかざした。
どんな仕掛けかわからないが、手が淡く光だしたではないか。
京は呆気に取られているだけだったが、それにハカセが食いついた。

「え~それどうやったの?」
「なんだ貴様は」
「そういう君こそだれ?」
「・・・。私はラルフ」

無視をしようとしていたようだが、殿下の方を見た後嫌そうにしながらもこたえた。

「ご挨拶が遅れました。私はダンです。どうぞお見知りおきを」

茶髪の男に引き続き、ずっと黙っていた白銀の髪を持った男が丁寧にしてくれた。

「東雲京です。こちらこそよろしくお願いします。」

・・・と、こちらが挨拶をしているのにも関わらず、ハカセは目の前のものに夢中になっていた。
あくまで自己紹介のダンに話しかけつつも、ラルフの光る手を見つめていた。

「へぇ。?か。よろしくね。ダン。
ボクはハカセだよ。ボクはトシマ区で技術担当でケー様の右腕みたいな感じ?
でね?ラルフ、それ何??」

いや、そのお前の態度では右腕は無理だろう・・・

「・・・。何って魔法で」
「「魔法・・・!」」

えっ・・・・魔法?!

驚きのことにトシマ区陣は固まる。
どんな原理なのだろうかとその手を見ていたが、・・・まさか魔法とは思わなかった。

「いや・・・そうか。異世界転生があるくらいなんだからあるか。魔法」
「魔法っ・・・へぇ!
それどんな原理なの?どんな構造なの?
映るかなぁ(ハカセの特殊撮影機)えぇ?どんな波長なの??
えーやだめっちゃ気になる。
それって有限?無限?」

思わずハカセの前に手を出して止めると、深いため息をつく。
大変な勢いで迫れられたダンも引き気味である。

「ねぇ。ラルフ。ボクと仲良くしよう」

いたたまれない空気になっているのに、そんなことを気にしないのがハカセである。
京の手をはがすとラルフに食いついた。・・・しかし、途端に視線がこれ以上ないほどに冷たくなる。

「冗談でしょう。
何故私がΩと仲良くせねばならないのです」

ここに来て初めてそんな目を見たかもしれない。
下種な眼はみたが、嫌悪に満ちた目でハカセを払った手をハンカチで拭いていた。

「でたー。また『おめが』だって」
「そんなことも知らずに外交をしようというのか?
ハッ!流石無能なΩだ。貴様らなど這いつくばって我らαの眼に入らないところに去れば良いのだ。
殿下!コイツらに甘い顔を成されては駄目です!発情期で・・・っ・・・・ぐ」

その言葉の冷たさに京は探るようにダンをみる。
どうやら自分達は『おめが』というものらしい。
そして、彼は酷く嫌悪し、差別感情を持っている様子だ。

ここまで露骨なのは初めてだな。

日本ではあまりない光景にちょっと驚いてしまう。
すると途端み冷気を放ったのはルボミールである。
比喩的表現ではなく、本当にあたりが氷出した。

「っ・・・でん、かっ」

ラルフの足元が凍り付いていく。
怯えている様子にただならぬ気配を感じる。
もしかしてドライアイスを当てられているようなイメージなのだろうか。

「ハカセ」
「そうだね。足なくなっちゃうかもね」

名前を呼んだだけなのに、意図を組んだハカセ。
もう慣れっこなので京は何も言わないが、後ろで見ている如月以外のSPはさすがだなとそれらを静観していた。

「ルボミール殿下。何をお怒りなのか良くわかりませんが、やめていただけますか」
「・・・」
「私達は余り争いごとが好きでありません。
自分達を守るために武力を使うことはありますが、他者を傷つけるために手はあげません」

そういうと、冷気が収まっていく。

「今のは殿下がなさったのですか」
「・・・。・・・、・・・、・・・あぁ」

そう言って目を伏せるルボミール。
その表情は何処か沈痛な面持ちだ。

「・・・、怖いか?」
「?・・・、・・・あぁ。魔法のことですか?
確かに怖いですね。私に向けられたら一たまりもないでしょう。
ですが・・・不思議と貴方は私にそうすることは無いと思ったので」
「・・・」
「それよりも、彼の治療をなさらなくてよいのですか」

そう言いながら、冷気が無くなり崩れ落ちたラルフを見下ろす。
もし、他の人間がそうされていたのであればきっと慌てていたと思う。
だが、この男はハカセを見下したのが京を怒らせた。
とは言っても無慈悲に無視をすることもできない。

この部屋で負傷したラルフに誰一人近寄らず、問いかけもしないこの状況は異常に見えた。
きっと、客である京が言わない限り動かないと思ったのだ。

「・・・。」
「私には気にせず治療をどうぞ。貴方の臣下なのでしょう?」
「今以降外す。・・・ダン」
「はい」

そう呼びかけるとダンと呼ばれた男がラルフの足元に近寄ると手をかざす。
そして回復すると部屋から追い出されていった。


本当はこの空気で話を続けたい気分ではなかったが仕方がない。



「それで『おめが』というものを教えていただけませんか。
この地に足を踏み入れた時からずっと『おめが』と言われ見下した視線を感じているのですが、私達にはその『おめが』というのがどういったものかわからないのです」

「Ωはトシマクの皆さんはご存じないのですか・・・?」
「えぇ。今でた『あるふぁ』も良くわかりません」

もしかして。ギリシャ語のΩ・α・βの事だろうか。

「βもいたりするのですか?」

「βはご存じなのですか」
「いえ。我らのいた地球上にギリシャと言う国があり、『α』から始まり『Ω』で終わる文字があります。
そして『α』の次が『β』なので伺ってみたのですが・・・24もあるのですか」
「24・・・?」

その反応はどうやら違うらしい。
それにちょっと京は安心したのだが隣から『え~』と不満気な変態の声が聞こえてきた。
とりあえず無視をする。

「いえ。ギリシャ文字と24と言うのは忘れてください。『α・β・Ω』とは何なのでしょうか」
「トシマクの皆さんの中には男性女性という性別はありますか」
「えぇ」
「そこに、バースと言う第三性別があるのです」

・・・
・・



そこから詳しいオメガバースと言うものを聞いた。


【α性】
数が少なくエリート的な立ち位置が多く貴族に多い。
勿論平民の中に生まれることもある。
常に理性的に思考を止めない生き物であるが、Ωの発情期には逆らえない。
Ωのヒートにあてられたαはラットと言い、Ωのフェロモンに寄せられコントロールが自我から離れ、
抑えきれないほどのの欲情でΩを犯す。
だが、その「自我から離れる」ことを嫌っており、Ωを避けたがる。

【β性】
最も人口が多い。
αにはどうしても勝てないが、Ωの発情期には影響されない。
αを尊敬し、Ωを見下している。

【Ω性】
αよりも圧倒的に少ない。
優秀なαを誘惑するためαから疎まれている。
だが、Ωが一番αを生みやすい。
発情すると体温が上がり繁殖行動の事しか考えられなくなる。
それをヒートと言いαを誘惑し子種をねだる。

ただし、αから噛まれると番ったという状態になり、そうすると他の男を誘発する様なフェロモンを出さなくなる。

男が女を孕ませることは出来るが、女のαが男のΩが孕ませることが出来るとは思わなかった。
そしてこの世界は女がαの場合、出来ないこともないがΩの男が女を妊娠させることは無いと聞いて、違いにとても驚いた。


「そのため、Ωは信用が出来るαがいるのであれば、お早めに番われた方が宜しいかと思います」
「なるほど。よくわかりました」
「シノノメ殿はこれからも皆のトップに立たれるのだろう?」
「えぇ」
「それであれば早く番を見つけることが最重要だ」


そう返事をしつつ、京はこめかみに手を当てた。
2人の話を聞いていて思ったことがある。

「・・・あの、お二人は私がΩだと・・・?」
「えぇ」
「なぜと、お伺いしても・・・?」

ここに来るまで散々言われていたのだ。
京だって自分がそうなのだろうとは思った。

「・・・。失礼ながら、Ωは体格が小さい方が多いので。それと」
「貴方からはとてもいい香りがする」

ダンの言葉を遮ってこちらを見てくるルボミールに、少し戸惑う。

「・・・なるほど。周りで香りの話をしている者がいたら逃げるようにします」
「それでは遅いな」

だとしたらどうしろと言うのだ。
だがそれよりもだ。ちらりとハカセの方を見る。

「ハカセ」
「うん。繁殖行動ってあのセックスしたくなる奴だね。たぶんみんなトシマ区民そうだね~」

人数が少ないはずのΩがいきなり5000も増えるのか。
というか、先ほど退室したラルフを見るに、根深い差別感情がありそうである。

「結果を出すのは早い。・・・まぁでもそれならそれで仕方がないか。・・・その第三性別は特定する方法はないのですか」
「ないこともないのですが・・・。発情期がくるのであればΩですね」
「そうですか・・・。・・・はぁまぁΩの女性もいるので良いですが」

これからは、家のことなど考えてなくてよいのだ。
気楽に生きていけるのだから、変なことを考えるのはよそう。
聞けば結婚は出来るようだし、Ωの女性と子を成すことも可能そうだ。

「それは、貴方に結婚相手にということか」
「?・・・えぇ、まぁそうですね」

途端に冷たく厳しい表情をしている、ルボミールに疑問を抱きつつ頷いた。
というか、結婚相手じゃなく恋人が先だろう。

「私達には男女の性しかないので、突然第三性別を与えられても持て余してしまいます」
「それなら、俺が教えよう」
「え」
「『しののめきょう』とはすべて名前か?」
「名前と言えば名前ですが、東雲が家名で京が名です」
「そうか。・・・キョウ・・・と呼んでも?」
「・・・。私達の国では初対面では家名で呼ぶのが礼儀です」
「我が国では、名で呼びあうのが礼儀だ。
・・・と、言いたいところだが、ハカセに嘘はバレてしまうようだから正直に言うが、京と呼びたいからそう呼ばせてもらう」

大して話をしたわけではないが、ハカセが嘘を見破ると分かったのはすごいと思った。
魔法だろうか。

「つまり、ラージャ国は失礼な人たちが集まる国ってことか~さっきのラルフって人もクズそうだったもんね~」
「・・・ハカセ。思ったことをすぐに口に出すのはよせ」

右腕と自称するなら気を付けてもらいたいところだが、すでに言ってしまったなら仕方がない。

「ハッハッハ!・・・わかった。『キョウ』と呼ばせてもらえるように頑張ろう。シノノメ殿」


なんと言っていいかわからなかったので曖昧に返事を返しておいた。
Ωはαから疎まれていると聞いたばかりなのだが、それをぶち壊すかの様に接してくるルボミール。
王族なのに警戒すら見せない態度に変わった国だな、と気にしない事にした。

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