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妹がヤンデレ風味だって気づいていないらしい。

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ニコをこちらで引き取ったった次の日に、ルボミールからニコを京の元に就かせてほしいということを言われた。
王太子と関係のある京の元に行かせたという体裁が欲しいそうだ。

ニコを大切にしている様には見えなかったが、意外にも親は違うのだろうか。
真相は分からないが、真実はそれほど問題ではない。
そうすることで、ニコを引き取れ面倒くさいことが無くなるのであればそれでいい。



しかし、ニコ・・・いや。
ラージャから来たΩ達は、京達が引くほどに自身がなく自分を卑下した。
ちょっと驚いて・・・いや、大分驚いている。

「っ・・・すみ、ませんっ」
「ん?間違えちゃった?うん大丈夫」

間違えたことに酷く怯えてしまっているのだ。
京はなるべく優しく声をかけているのだが、これには苦笑を浮かべるしかなかった。
如月に助けを求めるように視線を送ればコクリと頷き、ニコの足元に跪いた。

「ニコ様。落ち着いてください」
「!!?・・・っ・・・は、・・・はい」

ここに来て人扱いされることも、『様』扱いされることも、京が実は偉い人だと認識したことも酷くニコを戸惑わせている様だった。
そんなニコを困ってみていると、みるみる間に目元に涙をためていく。

えっ

咄嗟にすくっと立ち上がった。
そしてニコの手を握る。

「今日は休みだ」
「っ・・・ごめんなさい・・・っ」

そして泣き出してしまったのである。

そんなときである。
ガチャリと開かれた扉。
そこには妹と、見覚えのある人物がいた。

「懐かしい顔ぶれが来てるよ~。・・・て、ニコちゃん泣かしたの!?キョーちゃんが!??」
「えっ・・・と」
「どうやって??!なにして?2人で何かしたの?!?なんで如月はニコちゃんに跪いてるの!!?」
「「・・・」」


この妹を黙らせてほしいと、切実に思った。


☆☆☆


急な来客にニコの涙は引っ込んだ。
目元を濡らすニコはまだいたいけな子供だ。
本来であればまだ勉強をする年頃なので、自学自習に戻そうとしたのだが、まだ頑張りたいと言ってきた。
感極まって泣いてしまうことはあるが、意外にもガッツがあるニコ。
京はそれを許可し如月に任せる。

来客は嵐山 流と、楓夫妻だった。
嵐山家は東雲家と同様に日本4大財閥の名家である。

本家は東雲家同様にミナト区にあったのだが、ちょっとした事情からトシマ区に家がある。
それはおそらく、京達・・・というか雅と同じ理由だ。

京と雅が別宅のトシマ区に住んでいる理由は雅の暴走歯止めである。
雅は昔から京のいう事しか効かない。

雅と楓は歳が近く趣味が似たようなもので、話があうらしい。
雅はBLで、楓はNLが好きなのだ。
勿論、シチュエーション談義であったり、雅はNLも読むので2人でそんな話をしているらしい。

そんな彼女達は『アニメ〇ト』や乙女ロードにあこがれがあった。
この世界に来た時は友達とそこをめぐっていたらしいのだが、その中に楓も含まれていたのだ。

「雅、なぜ最近アニメイ〇ユートピアに来ないの?」
「キョーちゃんがもう気軽に出ちゃ駄目っていうんだもの」
「風邪か発情期を拗らせたのかと思った。よかったわ。・・・でも、貴方の家にもSPは居るでしょう?」
「いるけど、その状態であのフロアーに入るのはちょっとね・・・」
「まぁ雅の良くフロアーそうなるわよねぇ。
せめて本店の近くにと・・・引っ越して、同じ空気を吸えることで喜びを感じていたのに。
ここに来てようやく来れるようになったのにねぇ」

そう言って楓が京を非難めいてこちらを見てくる。

「・・・。これからたくさんのαが入ってくるのにそんな気軽に歩けなくなるのだから、それの予行練習だよ」
「αねぇ。確かに厳しいのだけど。
ねぇ、流さん。
うちの家の者たちの研究報告はハカセにはしているのかしら」
「しているとは思うが。京は何か聞いている?」

嵐山家に関連の家の一つに製剤会社がある。
そこで、今は風邪薬、もとい抑制剤を作ってもらっている。
これは食料と同じく重要な必需品だ。

「聞いていないな。最近灯台から帰ってこない」
「灯台・・・。あの突然建ったものか?」
「あぁ・アレ、実はラージャから送られた魔法が組み込まれた防御装置なんだ」
「「「えっ」」」
「で、ハカセはそれに嬉々として張り付いている」

三人は魔法に驚いたようだったが、ハカセに関しては『またか・・・』と言った感じで苦笑を浮かべた。

「どんなことかな」
「抑制剤の製剤比率を下げようと思う」
「え」
「この土地に来て第三性別が出来、発情に風邪薬を飲むようになったが・・・どうやら必要以上に接種している人間がいるようなんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「貴方の事ですよ。・・・京は毎日ラージャに出向いているとは言え飲みすぎだ」
「・・・。ここ最近毎日発情がきていて仕方がなくてですね」
「それについてなんだが、毎日飲むと効果が薄くなる。本来の風邪に対してもだ。
そこでだ。
発情したときのことだが、一時的に理性が効かなくなり統合失調症のよりも厳しい状況になる。
そのため、2種類の製剤を作ろうと思う」
「2種類?」
「1つは緊急時の速攻で回避するためのもの。・・・ただ、頭痛や吐き気が、・・・もしくは急激な睡眠を伴う。
副作用は検討中だ。数種類作るかもしれない」
「・・・。確かに。昏睡状態は寝ている最中に終わっているかもしれないが、その時に体が無防備な状態だからな」
「あぁ。・・・もう一つは来る1ヵ月前になったら毎日それを飲み、発情を軽減する。度合いとしては興奮する程度だ」
「なるほど。・・・それで、残りはどれほどなんですか」
「もって半年」
「・・・。わかりました。ハカセには防衛にあたってほしいので、言っておきます。
必要な一覧をこちらにください。
出来るだけこの島内で準備できるような形に持っていけるようにしておきたい」

食料だけでなく薬用の畑も必要で、道路を引きはがしておく必要がありそうだ。
いくつかの公園で先に野菜を作り始めているが、それは暫定対策であって恒久対応ではない。
ただほとんどの領域を畑にする気はなく、植物工場を作ろうと思っている。

「わかった」
「新しい薬が、αに・・・いや、他のバースや現地のΩにもどんな影響があるか知っておきたいです。
恐らく試験項目にあると思いますが、よろしくお願いします」

嵐山はコクリと頷いた。
自分達は発情していなくても、体から出るとされているフェロモンが外に出てしまっている様では、この土地を観光地化するのは到底無理だ。

「素材とαとβでも協力できる人物を派遣出来ないかお願いしてみます。
・・・それと、もう一つ確かめてもらい事があります」
「なんだ?」
「作ってもらっている抑制剤ですが、こちらを発情しているΩの隣でαに飲ませて欲しいのです」
「・・・どういうことだ」
「αにも効果があるかもしれないのです」
「なるほど。それは面白い。αが準備できるのであれば」
「ちょっとまって。キョーちゃん。それどういう意味?」

嵐山が話している最中に割り込む雅。
それも余りつついてほしくないところに引っかかてしまったようで、腕を掴んできた。

「そのままの意味」
「どうしてαに効くってわかるの?」
「それは、あまり聞いてほしくないんだけど・・・?」
「駄目」
「・・・っ~お前の大好きなBL展開があったの!バカ!もう察せっ」

妹にそんなことを知られたくなかったのに。
余りにも恥ずかしくて顔をそむけた。
矢次早に聞かれまた、しつこく責められると思った。・・・のだが。

「・・・だれ?」
「・・・みー・・・?」
「口移しされたの?それともキスされたの??番われては・・・ないね。何をしたの????」
「ちょっ・・・こ、・・・怖いって雅・・・!いったい何」

可愛い妹が眼孔が開くほど近寄ってきて、思わず京は雅を抑えた。

「そのピアスと関係あるの」
「っ・・・本当か、・・・まだわからないけど、『運命』って言われて」

何をそんなに怒っているのか分からないが、落ち着かせようととりあえず答える。
京自身まだ理解してないことに上手く説明できない。
しかし、『運命の番』を楓は知っていた様で反応した。

「まぁ!この世界は『運命の番』がいるのね!」
「・・・楓。静かに」
「はぁい」

場の空気を読まず嬉々として声をあげる楓に嵐山が窘める。
そして『運命の番』は雅も知っていたらしい。
オメガバースと同様に『設定』にあるやつなのだろうと察した。

「京ちゃん。本当にそれ『運命の番』なの?」
「・・・わからない」
「運命なら今頃京ちゃん妊娠してると思うんだけど」
「っ・・・みー!言い方が露骨だっ
・・・それとそのことだけど、たぶん抑制剤の影響だと思う。・・・て、言ってた」

その言葉に目を細める雅。
いつもおちゃらけている雅が、こうなるなんてこと初めて怖くなってしまう。

「よ、・・・抑制剤をのんでいるとαのフェロモンにも影響されないし、俺のフェロモンもどうやら抑えられている様なんだ。・・・だから、切れかけている時に遭遇したときは、・・・・、・・・確かに・・・安心・・・した、ような気がしない、でも、ない」
「・・・」
「雅。・・・落ち着いて?京君怖がってるわよ?」

楓の言葉にようやく雅は落ち着いたのか、渋々と言った感じで距離を離した。

「・・・・、・・・・はぁ・・・・。番って・・・女?」
「・・・男」
「・・・・。・・・・。イケメン?」
「うん」
「即答かよ。・・・・はぁ・・・もう一杯キョーちゃんのネタで妄想しちゃうんだから」

それまで怖い表情をしていた雅の表情が柔らかくなった。
『運命なら・・・しかたないか』なんてつぶやいた。
あんなに怒って見せたのに『運命』だと知ったらそれで飲み込める雅がむしろ羨ましいと思う。
惹かれているのに、まだOKは出せない京はそう思ってしまう。

「その運命と言うのは?」

嵐山だけは話が分かっておらず、楓が説明すると嵐山は厳しい表情をした

「・・・。それは・・・」

そう言って楓を見つめる。
京はその視線の意味を理解した。
嵐山と楓は夫婦だ。
今まではαという存在に対抗するための抑制剤があれば何とかなると思っていたのだが、もし嵐山や楓の運命に当たるαが現れたらと考えてしまったのだ。

「・・・楓・・・」
「大丈夫よ。流さん。私、あなた以外愛さないわ」

京はそれを見て何も言えなかった。
自分があの強制力を拒否しきれなかったからだ。
暫く嵐山は考えていたが口を開いた。

「この地を観光地するのは1年待ってくれないか」
「・・・流さん?」
「1年でどうにかするから」
「・・・。αに聞く抑制剤を作ってくれるだけでもこの島の財政は十分に整うと思うけど」
「いや。まだあきらめない。それにこの抑制剤が聞くなら何かあるかもしれない。
ハカセも防御のほうの魔法を解析しているなら、どの方面にも何か案が無いか聞いてみる」
「魔法に・・・薬・・・。ラージャにも抑制剤があるから薬剤師がいると思うんだ。そっちもあったって見る」
「頼む。・・・それで、今日来たのはそれだけじゃなくて、別の相談があってきたんだが。
・・・・まずは先に指示の電話をいれてもいいか?」
「うん。俺の方もちょっと席を外す」


ルボミールは実験のためにαを派遣してくれるだろうか。
そんな恐怖を感じながらもピアスに意思を送ったのだった。

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