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装備は強化する必要があるね。

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初日は田畑を2日目は語学のWEB授業を開始した。
そして今日はトシマ区にルボミールが滞在し3日目だった。
今日はトシマ区の案内をする予定だ。

その時間まで部屋で書類を片付けている時だった。
ハカセがにへらっと笑いながら部屋に入ってきて嫌な予感がした。

「あいつらが連れてきたやつの中に、ルボミール達以外にαぽいのがいるよ」

なんでそんな重要なことをへらへらしていうのか?と、思ってしまうがハカセは緊張感があることになるとそういう風になる性質がある。面白がっているハカセにため息をついた。

「どうしてそんなことが分かるんだ?
あちらではバースの特定は発情期があるかで見てると言っていたじゃないか」
「それだけじゃないと思うけどね。だってαかどうかだってしりたいでしょう~?」
「まぁそうだろうが。・・・。・・・というかそう言うということは特定できるのか?」
「うん!」

そう言ってブイサインをするハカセ。
相変わらずすごい奴だと思いながらそちらに視線を向けた。

「どーする?」
「・・・。そいつは何もしてないんだろ?」
「うん」
「それならどうしようもないだろう」
「いいの?」
「・・・なにが言いたい?」
「だって、向こうはβとΩを送るって言ってたのにさ、αがいる上に王子とその下僕も来てるし。
約束を反故してない?」

言葉のチョイスが相変わらず酷くて頭が痛くなる。
ハカセはこのまま翻訳機を使って話していた方が良いような気がする。
勿論翻訳語の言葉は敬語にしてもらいたい。
ハカセの言い分も分かるのだが、相手がそういう意図があったとして事実確認をしても正直には言わないだろうが、断定するには早計だと思った。
それに、相手はΩを劣等種として扱い、α至上主義の国のようなので、初日に何も下してこなかった彼等を疑いきれなかった。
番云々を別として、何かを企んでいるとは思うがまだ手を出してこないという体裁を出してくれているのだ。
様子をうかがうしかない。

「・・・そうと判断するのはまだ早い。
先日の話だと、Ωは発情期が来たらΩだと特定できるが他の種は判定が気軽には出来ないようだった。
・・・あちらがバース性を特定するのが難しいということはそれはある意味チャンスじゃないか?」

そういうとハカセはまらなそうにしたのが一変してフフフと笑った。

「まぁそういう見方もあるかもね」
「ハカセ。その件も含めて抑制剤を確実なものにしたい。精度を高めてくれないか」
「うん。抑制剤はボクの管轄じゃないけどもうやらせてるよ」
「そうか。流石だな」

そう褒めると、ハカセは嬉しそうにほほ笑む。

「ボクの方が全然使えるでしょー?」
「?・・・ハカセを頼りにしてるけど?」

誰と比べたのか分からなかったが、事実をそういえばハカセは京を抱きしめた。
Ωの特徴としては小柄ということらしいが、ハカセは京よりも大きい。
京をすっぽり包み込みながら顎を頭に置いた。

「ボクがオメガバースなんてふざけたもの壊すから、ケー様は安心してね」
「そんなことできるのか。本当にハカセはすごい」
「えへへ~」
「それが出来るなら、ラージャに住んでるΩ達も住みやすくなるかもな」
「・・・。他国の・・・それもあったことない人間の事なんて考えてるの~?
相変わらず博愛主義だね。ケー様は」
「博愛ではないが・・・。差別が嫌いなだけだよ」
「ボクだったらケー様以外、気にしないけどね」

そうクスクスと笑うハカセは京から離れると研究所に戻っていった。
机の上には試作品だという、バースを測定する機械がおかれていた。


☆☆☆


「如月。区内に防犯カメラの増設と、ラージャから入ってくる人数はどれくらいが適正か割り出してくれ」
「はい」
「島に入ってくるαにだけGPSを植え込もうと思ったが、やはり全員につけることにすることを踏まえておくこと。
それと、植え込むのが難しい場合絶対外れないような・・・そうだな腕輪などの実現性も調べておいてくれ」
「かしこまりました」

そういいながら京は高級ホテルに向かっていた。
ルボミール達はそこに滞在してもらっているからだ。

そこのインペリアルスイートに向かう。


「こんにちは。ルル。トシマ区を案内する前に時間を頂きありがとうございます」

警護の兵士たちに部屋を通され、姿を見るとお礼を言った。
挨拶部分はルボミールに教わったことに驚いたのか、ダンはこちらを見てきたがすぐ視線を戻した。

「あぁ。シノノメ殿にならいつでも時間を作る」

なんてことを言うルボミールに苦笑をする。
すると、傍にかけていたダンが席を立つ。彼はルボミールの側近だ。
先日まではラルフと2人体制だったのに1人になってさぞや大変だろう。
部屋を出ようとするのでそれを引き留める。

「結果貴方にも話す話だと思うので同席されて構いませんよ」

彼はルボミールを見ると、コクリと頷いたのを見てダンは腰を掛ける。
つづいて京もルボミールの前に腰かける。

「先日少し伺いましたが、バース性特定について貴方達はどう行っているのでしょうか?」
「その前に、口調はどうにかならないだろうか」
「え?」
「君とハカセはもっとフランクに話している様じゃないか」

それはハカセとはもう10年以上の付き合いである上に、ハカセがあんなのだ。
だがまぁその申し出は別に気にならなかった。

「王族の方々に口調を崩すのは気が引けるが、・・・まぁルルがそうしてほしいならいいけど」

貴族はプライドが高い人物が多いのに、変わった人物だ。
それに、ルボミールには色々お世話になっている。
口調を崩すくらい構わない。・・・というか、京もその方が楽だ。

「ありがとう。シノノメ殿」
「どういたしまして。これくらいでお礼が言われる方が困っちゃうのだけど。
このホテルはどうだった?」
「とても最高だったよ。こんなおもてなしをされる宿泊施設はわが国ではないな」

そういうガーネットの瞳は本当にそう思っているらしくキラキラと輝いていた。

京もこのホテルには以前泊ったことがあるが、そのときはオーシャンビューになるなんて思いもしなかった。
青々と続く景色を眺めつつ、ルボミールに視線を戻した。


「それは楽しんでもらったみたいで良かったよ。それでバース性の特定なんだけどどうしているの?」
「それは魔法だな。教会で司祭に鑑定魔法をかけて貰うのだが、それは高価であまり平民ではやられることはよっぽど秀でた人間がいない限りは使われないと聞いている」
「なるほど・・・。ねぇそれってもしかして、教会の組織が大きく関連してたりする?
だから、発情期が来たら分かるといったの?」
「・・・。そうだ。彼等に依頼したら1ヵ月は待たされただろうな。
王族とは言え彼等の組織を動かすのは少し難しいんだ」
「へぇ」
「貴族で有力な家で協力する貴族もいるから蔑ろには出来ないところも痛い」
「なるほど。でもあんまりバースって重要視されてないの?」
「そんなことはない。早期に分かれば対応もできるからな」
「そっか。・・・もし、俺達がその特定できる技術を確立したら、それで1企業起こしてもいいだろうか」

そういうと、ルボミールとダンは驚き固まった。

「他国の人間が店を開いたりするのはまずい?・・・売上何%か支払おうと思っているけど。
正直この世界で使える外貨が欲しいんだ」
「いや。そんなことはない。
確かに申請などの必要性はあるがそれをしてもらえれば、こちらとしては一向にかまわない。
それと、利益を収めることは不要だ。国民のバースが分かることは国の為でもある」
「いいの?・・・なら、売り上げの2割は孤児院に寄付しようかな」

ただよりは怖いものはない。
そういうと、彼等は再び驚いたようだった。

「シノノメ殿のが困っているのではないのか」
「まぁ困っていないわけではないけどね。・・・でね。どうやら今回連れてきたβとΩの中にαがいるみたいなんだ」
「「!?」」
「あ。それを責めるつもりはないから安心してほしい。とりあえず見に行かない?」



☆☆☆



後日。


あの日、畑に向かいαの捜索を行った。
見つかったαの彼だけはラージャに戻され教会で判定を受けさせたところ、教会での特定もαだった。
体格はβとさほど変わらないそれに教会側も驚いていたそうだ。

この事があり、判定装置の確実性をあげるために、判定する人物が見えないようにした上で、検査をするという実験をし100%当てたことにより、ラージャで王族配下のもとバース特定をする営業を得ることができた。

それをピアスを通じておしえてくれたルボミール。
王太子殿下はそんなに暇ではないと思うのだが、時間を作ってくれたようだ。
なお、ピアスはまだ開けてないので手に持った状態だが。

『我が国でもバースの特定は重要事項でもあったのだ。だが教会側が判定を国営化し無料にすることを渋るうえに。値段を下げることも「神への冒涜」としなかなかうまくいかないような状態だったのだ』

京としてラージャで使える金が欲しかったし、されてばかりだったので力になれたならよかった。
とはいえ、発明したのはハカセであるが。
だが、この手段も先が短いと思える。
京達は10分の1でやっているため、教会も値段を下げてくるか妨害工作もしてくるだろうからだ。
それまでに、新しく稼ぐ方法を見つけなければ。
それにしても商業が強い国のラージャでよかったと思う。

「力になれたならよかった。それはハカセが作ったんだ。彼がいなかったらこうはならなかった」
『ハカセ・・・。彼は一体なんなんだ』
「うーん。それは俺も知りたいところだな。なんでそんなものが作れるなんて本当にすごい」
『・・・』
「貴方達と話せているのもハカセのおかげだしね」

そう言いながら自動翻訳をしてくれている、イヤフォンとマイクを指さした。
勉強をしてはいるがまだ話せるほどではないから、手放せない逸品である。

『君たちはどんな関係なんだ?ずいぶん仲良さそうだが』

なんて聞かれてきょとんとする京。

「え。ハカセ・・・?そうだな切っても切れないというか、家族くらいには大切なひと、・・・ルル?」
『・・・』
「・・・。えーっと嫉妬してる?」
『少し』
「えーっと俺はそいうつもりはないし」
『シノノメ殿からの想いは期待してないが、他の男に嫉妬しないとは言ってない』

即答えたそれは全く『少し』には見えなくて苦笑した。

「ハカセはルルの言うところの同性なんだから、そういう対象ではな絶対なりえないんじゃない?」

ハカセは男である時点で京の恋愛対象ではない。
おまけにΩであるのだから余計にそうだろう。

『同性だからと言って愛し合わないということはないだろう』

真顔でそう言われたのだが。
なんでもありなのかと聞きながら思いつつ、ならばなぜΩ迫害なんてあるんだと、この世界の理に頭を悩ませる京だった。

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