上 下
4 / 56
本文

自給自活を目指してる。

しおりを挟む
この2カ月、帰ることをあきらめてはいなかったが、望みが低いと思っていた。
だから、あのおとぎ話の伝承のような話を聞いてもそれほどショックはなかった。
であれば、京達のすることは一つである。

あの地で生きていくこと。
周りは海で一人ではないことは、不幸中の幸いだと思っている。

まずは島での自給自足を目指すところではあるが、早急に議会を進めているところだ。

ここに来て確信したが、トシマ区民にはお世辞にも治安が良いようには見えなかったからだ。
だが、交流断絶と言うのも考えていない。

そんな理由から、京は様々なこと話し合いたいところなのだが、・・・相手の不躾な視線が気になってしまう。

にいたため視線を浴びることは慣れたものの筈なのだが、ここまで露骨なのは久しぶりである。
異国の服や大分骨格が違うとは言え、不躾な視線は不愉快に感じながらも、態度には出さないようにしていた。
異世界からの人間に敵意を感じるのは当然だ
むしろ彼らが手を出さないことは救いなのかもしれない。
必要以上に考えないようしていた時だった。途端にその視線がなくなる。

え?

逆に気になって見回したくなりたくなるが、対話相手のルボミールに視線を合わせる。
そういえば、ルボミールにはそういう視線がないな。と思っている問いかけられる。

「なにか助けが必要であれば力になる」

力強く言ってくれるそれは、人となりを知らなくても安心感をもてるから不思議である。

「1番は地球に街ごと帰れることです」
「・・・。気持ちはわかるが、それは難しいだろう」
「えぇ。お話を伺いそう思っていたところです」
「なんでも力になろう。そうだな。そちらはざっとどれくらいの人間が来ている?受け入れの準備をしよう」
「!・・・ありがとうございます」

異世界転生してきた赤の他人に、よくそこまで親切に出来るものだと感心してしまう。

「大変ありがたいお申し出なのですが、もう少しこちらで頑張ってみようと思います」
「それは、・・・大丈夫なのか?」
「我々の課題として、まずはこの土地の言語を覚える事です。私はこれが(イヤフォン)あるのでお話が出来ますが」

そう言いながら、京はイヤフォンを指差した。
言語が満足に使えない者達をバラバラに住まわせるのは心配である。
なにより、サバイバルをし慣れていない自分達を考えたら野放しに受け入れられない話であった。

「言語か・・・」
「言葉を教え垂れる先生はいらっしゃいますか」
「難しいな・・・」

ハカセの作ったこのアプリは翻訳しているが、周囲の会話を聞き取り常にデーター収集をしているらしい。
この2ヶ月で集めてきたと誇らしげに言っていたが、どうやって集めたのかは聞いてない。
ハカセはよくこう言う事をするのだが、毎度驚くがそこで詳しく聞いてしまうのは地雷である。
もう要らないと言っても止まらぬ勢いで話してくるのだ。アレは説明じゃ無い。自己満足の領域だ。
なので、語学は現地の人間に教わりたいのである。

「偏見がなく幼子を教えている者を探そう」
「ありがとうございます」

こちらは、大人が多いのだがそれでも子供に教えるような教師が良いだろう。
その需要風景を録画し繰り返し見させよう。

「語学を覚えたらどうするつもりだ?」

上手くいく未だはないのだが、一つ構想はある。
もちろん、このことはトシマ区の区民に票をとり過半数を取ったうえでの話しだ。
一緒にこの世界に来たトシマ区民は、責任などは嫌うが、結構協力的で保守的すぎない人物が多いようだ。
そんな彼等と決めたのはトシマ区の一部観光地化である。
ここに来てより確信したのだが、文化に大きく違いがある。だがそれだけでメリットがある。
資源と言えるものがなくても、それが大きな資金を生み出すだろう。

「ハカセ。駅前辺りの動画はあるか」
「あるよ~。イケブクロがいい?」
「あぁ。そこら辺がメインになるだろうからな」

そういうとハカセはきょろきょろとした後、良い場所を見つけたのか胸ポットから映写機を取り出す。

「そこ退いて~」

屈強な男たちをしっしっと仕草で退けるハカセに苦笑した。
叱ってはいるが、この男は毎度のことにこう言うことはなかなか聞いてくれず諦めている。
代わりに京がそちらを見て詫びる。

「うちの者が失礼を。
ただいまご説明に重要な者を準備しておりますので」
「構わない。それでどう言ったことをしようと思っているのかな?」

しかし、答えたのはルボミールである。
もしかしたら発言権がないのかもしれない。

「はい。私達の装いですでにお分かりかと思いますが、・・・文化に大きく違いがあるようです。
ですので、それを街の収入減にしようかと」
「なるほど。・・・旅行目的と言うわけか」
「えぇ。・・・ハカセ」
「いつでも、どーぞ」

その言葉にコクリと頷くと、ハカセは壁に画像を映し出す。

そして映し出した動画に部屋の中の全員が息を飲んだ。

「こ、・・・これは」
「いや、それよりもこの城、・・・ん!?なんで城がこんなに密集しているんだ」

ざわめく声に、こっそりとしたり顔をする。
トシマ区で一番栄えている駅と背景に高層の建物を見せると全員が息を飲んだ。
正直いまこれほどのものを建設するのは難しいが、相手にはそんなこと関係が無いだろう。

「トシマ区を見てみたくはありませんか?」

そう、京はニコリとほほ笑んだ。

「これは・・・すごいな」
「これはほんの一部です。それとアレは城塞と言うわけではなく、商用施設です」

戦争を仕掛けると思われても困るので前もって言っておく。

「俺も見てみたいものだ。今度見せては頂けないか?」
「えぇ。是非」
「それで、食料のほうは大丈夫なのか?」
「・・・。それは課題の一つです。」
「・・・なに?それは語学や資金よりも先のことではないか」

厳し声に京は苦笑を浮かべる。

「正確に言えば、数年は持つのです。・・・ですが保存食だけなので、新鮮な食物を入手したいのですよ」

その言葉に眉を顰めるルボミール。

「私達、トシマ区民は新鮮な食べ物食べないと死んでしまうのです」

なんて、冗談を言ったのだが。
真顔になった後に、ルボミールが口を開く。

「具体的に何を必要なのだ」
「・・・。あの、いえ、今のは冗談ですので」

異世界人に相手には冗談を選ばなければならないようだ。

「保存食は味が濃いものが多いですので、ずっと取り続けるには体にわるく短命になりやすいというのはあります。
なので、なるべく早く生鮮食品を自活でいるようになりたく」
「すぐに手配しよう。島で作物をと言う事であれば、農民を準備しよう」
「あ・・・えぇ。ありがとうございます」
「なんでも言ってくれ」


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

黙示録戦争後に残された世界でたった一人冷凍睡眠から蘇ったオレが超科学のチート人工知能の超美女とともに文芸復興を目指す物語。

あっちゅまん
ファンタジー
黙示録の最終戦争は実際に起きてしまった……そして、人類は一度滅亡した。 だが、もう一度世界は創生され、新しい魔法文明が栄えた世界となっていた。 ところが、そんな中、冷凍睡眠されていたオレはなんと蘇生されてしまったのだ。 オレを目覚めさせた超絶ボディの超科学の人工頭脳の超美女と、オレの飼っていた粘菌が超進化したメイドと、同じく飼っていたペットの超進化したフクロウの紳士と、コレクションのフィギュアが生命を宿した双子の女子高生アンドロイドとともに、魔力がないのに元の世界の科学力を使って、マンガ・アニメを蘇らせ、この世界でも流行させるために頑張る話。 そして、そのついでに、街をどんどん発展させて建国して、いつのまにか世界にめちゃくちゃ影響力のある存在になっていく物語です。 【黙示録戦争後に残された世界観及び設定集】も別にアップしています。 よければ参考にしてください。

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】 12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。 近況ボードをご覧下さい。

[完結]堕とされた亡国の皇子は剣を抱く

小葉石
BL
 今は亡きガザインバーグの名を継ぐ最後の亡国の皇子スロウルは実の父に幼き頃より冷遇されて育つ。  10歳を過ぎた辺りからは荒くれた男達が集まる討伐部隊に強引に入れられてしまう。  妖精姫との名高い母親の美貌を受け継ぎ、幼い頃は美少女と言われても遜色ないスロウルに容赦ない手が伸びて行く…  アクサードと出会い、思いが通じるまでを書いていきます。  ※亡国の皇子は華と剣を愛でる、 のサイドストーリーになりますが、この話だけでも楽しめるようにしますので良かったらお読みください。  際どいシーンは*をつけてます。

王子様のご帰還です

小都
BL
目が覚めたらそこは、知らない国だった。 平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。 そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。 何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!? 異世界転移 王子×王子・・・? こちらは個人サイトからの再録になります。 十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。

運命の息吹

梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。 美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。 兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。 ルシアの運命のアルファとは……。 西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

処理中です...