【完結】離婚の慰謝料は瞳くりくりのふわふわ猫でした!

幌あきら

文字の大きさ
上 下
10 / 22

10.初恋相手と元夫との3人って気まずさ全開……!

しおりを挟む
 私が、「この猫ったら、スカイラー様に抱っこされてどういうつもりなのかしら」と軽く思ってリリーを見つめていたら、リリーは何やら思惑がありそうな目つきで私を見返してきた。

 私は「えっ?」と思った。
 リリーが、こんな目で私を見るの?

 リリーの目の奥には何やら奇妙な光があって、何か私に語り掛けようとしているように見えた。
 そして「ニャーゴ」と甘えたような声を出した。
 もちろんリリーの気まぐれなのかもしれないけど、その時、リリーの目の中に、私は何かが見えたような気がしたのだった。

 もしかして、もしかしてだけど、この猫、何かたくらんでいる?

 しかし私はすぐに首を横に振った。
 いやいや、まさかね。相手は気まぐれな猫よ? 猫の気持ちを推測しようとするなんてほとんどの場合で無駄ですからね。

 その時、元夫が急にずいっと身を乗り出して、スカイラー様からリリーを奪い取ろうとした。
 私は「あっ」と小さく声をあげて、元夫を邪魔しようと、服のすそを引っ張る。

 私のその仕草しぐさにスカイラー様は驚いた顔をした。
 私はそのスカイラー様の顔にも「えっ?」と思った。
 なぜそんな顔をなさるの?

 スカイラー様は元夫からリリーをかばうように体をじった。
 元夫は私とスカイラー様に邪魔をされて怒った顔をした。

 スカイラー様は唐突とうとつに、
「離婚したと聞いていましたがね」
と元夫に向かって言った。すっごくとげのある言い方だった。

「離婚しましたよ。でも(リリーちゃんのことがあるから)復縁しようかと提案しているところです」
 元夫はいつも通りの身勝手さで飄々ひょうひょうと答えた。

「復縁……」
 スカイラー様が小声で復唱する。

 私は慌ててかぶりをふった。
「まさか! そんなことは絶対ありませんわ、スカイラー様! 私は復縁する気は一切ございません。今日だって、この人がリリーを探すのに同行させろと無理矢理ついてきただけなんですから!」

「無理やりとは何だ! リリーちゃんを心配する権利は私にもあるとはっきり言っただろう!」
 元夫は憤然とする。

「心配する権利?」
 スカイラー様はやっぱりあまり理解できないような顔をしている。
 私はその気持ちがよく分かった。私も元夫の理屈は全く理解できませんからね。

 スカイラー様は状況に少し戸惑っていたが、
「私は久しぶりにディアンナと二人っきりで会えると思ったのですけどね」
とぽつんと言った。

「えっ!?」
 私の胸が急にドキンドキンと高鳴り出した。
『二人っきり』って、今そう言った?

「えっ!?」
 元夫も驚いた顔をした。
「あなたとディアンナは知り合いだったのですか」

「ニャーゴ」
 リリーが可愛らしい鳴き声を上げた。

 スカイラー様は元夫の質問には答えなかった。
 ただじっと元夫の方を見ている。

「とんだお邪魔虫が付いてきたとびっくりしています。まあ、猫?があなたの目的のようなので、いいのかな? 状況がよく分かりませんが。ディアンナはまた別の機会に誘うことにしましょうかね」

 私の心臓が早鐘はやがねのように鳴り出した。
 私は浮気されたバツイチで、今日だって猫を引き取るのに元夫が付いてくるというわけ分かんないシチュエーションで、それでもスカイラー様は「会いたい」とか「別の機会」とか言ってくれるの?
 それってもしかして……。

 しかし元夫の方はぶすっとして腕を組んだ。
「何ですかその言い方。まさかデキてるのか? ん、んん? もしかして私とディアンナが結婚しているときから……?」

「あなたみたいな浮気人間と一緒にしないで!」
 私はとんでもない侮辱に叫んだ。
「どれだけ私があなたの浮気に悩んだと思っているの!」

「やはりね、辛い思いをしていたんだね、ディアンナ」
 スカイラー様は私に同情するように優しく言った。
「マクギャリティ侯爵と離婚したのは正解だ。良からぬ噂を聞くたびに胸を痛めていた」

「ニャーゴ」
 またもやリリーが可愛らしい鳴き声を上げた。

 元夫は顔を真っ赤にして怒った。
「ふんっ。ま、まあいいんだ。私はリリーちゃんさえ手元に戻ればな、ディアンナのことなんてどうでもいいんだ!」

 私は被せるように訂正する。
「リリーは私のものよ、何を言っているの。離婚の慰謝料なんですからね!」

 元夫はじろりと凄味すごみを含んだ目で私を睨んだ。
 そして、何も言い返さず、スカイラー様のこともじろりと睨むと、くるりときびすを返してその場を去っていった。

「お客様がお帰りだ」
 スカイラー様は冷たい声で執事に命じて、元夫をお見送りするように言いつけた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました

しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。 そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。 そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。 全身包帯で覆われ、顔も見えない。 所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。 「なぜこのようなことに…」 愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。 同名キャラで複数の話を書いています。 作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。 この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。 皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。 短めの話なのですが、重めな愛です。 お楽しみいただければと思います。 小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

完結 歩く岩と言われた少女

音爽(ネソウ)
恋愛
国を護るために尽力してきた少女。 国土全体が清浄化されたことを期に彼女の扱いに変化が……

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

【完結】真実の愛はおいしいですか?

ゆうぎり
恋愛
とある国では初代王が妖精の女王と作り上げたのが国の成り立ちだと言い伝えられてきました。 稀に幼い貴族の娘は妖精を見ることができるといいます。 王族の婚約者には妖精たちが見えている者がなる決まりがありました。 お姉様は幼い頃妖精たちが見えていたので王子様の婚約者でした。 でも、今は大きくなったので見えません。 ―――そんな国の妖精たちと貴族の女の子と家族の物語 ※童話として書いています。 ※「婚約破棄」の内容が入るとカテゴリーエラーになってしまう為童話→恋愛に変更しています。

【完結】本当に私と結婚したいの?

横居花琉
恋愛
ウィリアム王子には公爵令嬢のセシリアという婚約者がいたが、彼はパメラという令嬢にご執心だった。 王命による婚約なのにセシリアとの結婚に乗り気でないことは明らかだった。 困ったセシリアは王妃に相談することにした。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

処理中です...