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4.妾のストーカー宣言
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王妃陣営についたからといって何か状況が劇的に変わったわけではないが、お妾殿の方をすっかりおろそかにしていたので、やはりお妾殿がエリオットの元へ押しかけて来た。
「こらーっ、エリオット! ちっとも状況が変わらないじゃないの。ちゃんと国王陛下には聞いたの?」
状況を知らないお妾殿はプンプンと怒っている。
エリオットは澄ました顔をした。
「あ、これはすみません、お妾殿。わたくし、王妃陣営になりました。アルテミア嬢とのお茶の約束も仲介してもらえましたし。現状大満足なんで。もう絡まないでもらえます? 今も仕事中ですし」
お妾殿は呆気にとられた。
「なんて清々しい笑顔! あほーっ! つーか王妃の企みだったのね、やっぱり」
「それは否定いたしません」
「あっさり認めたー。くそ、こうなったらアルテミア嬢にはあることないこと吹き込んでやるわ」
お妾殿は悔しそうに顔を歪める。
しかしエリオットはどこ吹く風だ。
「はっはっはっ! 問題ありません。私とのお茶は王妃命令なんで。アルテミア嬢だって王妃様に逆らうデメリット考えたら大人しく私のものになるでしょう」
「くそっぷりーっ! 私から言い出しといてなんだけど、アルテミア嬢が気の毒だわっ」
エリオットは微笑んだ。
「同感です」
「自分で同意するなっ! でもいいわ。王妃の差し金ってことが分かっただけ進歩よ。いつの世も妾の敵は正妻と相場が決まっているものね」
「正妻の敵が妾なんでしょう」
「ふん。言ってなさい。国王陛下との逢引き手段を制したからこそ今の私の立場がある。こっそり国王陛下に接触するわ。王妃なんかに邪魔できるもんですか」
「正妻vs妾で妾が勝つことはめったにありませんよ。正妻である以上法律も周囲の目も正妻の味方です」
「正論禁止! それでも私は自由恋愛を推進してみせる」
お妾殿は強く宣言した。
「いや~、国王が私財はたいて妾囲うのは自由っちゃ自由ですが、王妃に逆らったり国王陛下の公務に差し支えるような真似はしないことですよ。やっぱ妾は日陰者くらいがちょうどいいと言うか。プロの愛人は弁えるべきと申しますか」
「おまえがプロの愛人を語るか!?」
「とにかく忠告はしました。出過ぎた真似をしてひどいことになっても知りませんからね。あなたが顰蹙を買うようなことになったら国王だって庇いきれませんからね」
エリオットはそっと首を横に振った。
お妾殿はエリオットの釣れない態度を見て少し黙ったが、やがてゆっくりと口を開いた。
「……エリオットは一つ誤解をしているわ」
「何ですか」
エリオットは急に態度が変わったので一瞬身構えた。
しかしそれは身構えるほどのことではなかった。
お妾殿の方は得意げだったが、それは
「私は妾よ。国王に忘れ去られた妾は存在しないも同じなの。私は私のアイデンティティを守るために国王に付きまとって見せるわっ!」
というよく分からない宣戦布告だった。
「うわっ堂々のストーカー宣言だ……」
エリオットは苦笑するほかなかった。
「こらーっ、エリオット! ちっとも状況が変わらないじゃないの。ちゃんと国王陛下には聞いたの?」
状況を知らないお妾殿はプンプンと怒っている。
エリオットは澄ました顔をした。
「あ、これはすみません、お妾殿。わたくし、王妃陣営になりました。アルテミア嬢とのお茶の約束も仲介してもらえましたし。現状大満足なんで。もう絡まないでもらえます? 今も仕事中ですし」
お妾殿は呆気にとられた。
「なんて清々しい笑顔! あほーっ! つーか王妃の企みだったのね、やっぱり」
「それは否定いたしません」
「あっさり認めたー。くそ、こうなったらアルテミア嬢にはあることないこと吹き込んでやるわ」
お妾殿は悔しそうに顔を歪める。
しかしエリオットはどこ吹く風だ。
「はっはっはっ! 問題ありません。私とのお茶は王妃命令なんで。アルテミア嬢だって王妃様に逆らうデメリット考えたら大人しく私のものになるでしょう」
「くそっぷりーっ! 私から言い出しといてなんだけど、アルテミア嬢が気の毒だわっ」
エリオットは微笑んだ。
「同感です」
「自分で同意するなっ! でもいいわ。王妃の差し金ってことが分かっただけ進歩よ。いつの世も妾の敵は正妻と相場が決まっているものね」
「正妻の敵が妾なんでしょう」
「ふん。言ってなさい。国王陛下との逢引き手段を制したからこそ今の私の立場がある。こっそり国王陛下に接触するわ。王妃なんかに邪魔できるもんですか」
「正妻vs妾で妾が勝つことはめったにありませんよ。正妻である以上法律も周囲の目も正妻の味方です」
「正論禁止! それでも私は自由恋愛を推進してみせる」
お妾殿は強く宣言した。
「いや~、国王が私財はたいて妾囲うのは自由っちゃ自由ですが、王妃に逆らったり国王陛下の公務に差し支えるような真似はしないことですよ。やっぱ妾は日陰者くらいがちょうどいいと言うか。プロの愛人は弁えるべきと申しますか」
「おまえがプロの愛人を語るか!?」
「とにかく忠告はしました。出過ぎた真似をしてひどいことになっても知りませんからね。あなたが顰蹙を買うようなことになったら国王だって庇いきれませんからね」
エリオットはそっと首を横に振った。
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「何ですか」
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しかしそれは身構えるほどのことではなかった。
お妾殿の方は得意げだったが、それは
「私は妾よ。国王に忘れ去られた妾は存在しないも同じなの。私は私のアイデンティティを守るために国王に付きまとって見せるわっ!」
というよく分からない宣戦布告だった。
「うわっ堂々のストーカー宣言だ……」
エリオットは苦笑するほかなかった。
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