【完結】国王の妾と裏切りを恥じない男の末路

幌あきら

文字の大きさ
上 下
4 / 6

4.妾のストーカー宣言

しおりを挟む
 王妃陣営についたからといって何か状況が劇的に変わったわけではないが、お妾殿の方をすっかりおろそかにしていたので、やはりお妾殿がエリオットの元へ押しかけて来た。

「こらーっ、エリオット! ちっとも状況が変わらないじゃないの。ちゃんと国王陛下には聞いたの?」
 状況を知らないお妾殿はプンプンと怒っている。

 エリオットは澄ました顔をした。
「あ、これはすみません、お妾殿。わたくし、王妃陣営になりました。アルテミア嬢とのお茶の約束も仲介してもらえましたし。現状大満足なんで。もう絡まないでもらえます? 今も仕事中ですし」

 お妾殿は呆気にとられた。
「なんて清々しい笑顔! あほーっ! つーか王妃の企みだったのね、やっぱり」

「それは否定いたしません」

「あっさり認めたー。くそ、こうなったらアルテミア嬢にはあることないこと吹き込んでやるわ」
 お妾殿は悔しそうに顔を歪める。

 しかしエリオットはどこ吹く風だ。
「はっはっはっ! 問題ありません。私とのお茶は王妃命令なんで。アルテミア嬢だって王妃様に逆らうデメリット考えたら大人しく私のものになるでしょう」

「くそっぷりーっ! 私から言い出しといてなんだけど、アルテミア嬢が気の毒だわっ」

 エリオットは微笑んだ。
「同感です」

「自分で同意するなっ! でもいいわ。王妃の差し金ってことが分かっただけ進歩よ。いつの世も妾の敵は正妻と相場が決まっているものね」

「正妻の敵が妾なんでしょう」

「ふん。言ってなさい。国王陛下との逢引き手段を制したからこそ今の私の立場がある。こっそり国王陛下に接触するわ。王妃なんかに邪魔できるもんですか」

「正妻vs妾で妾が勝つことはめったにありませんよ。正妻である以上法律も周囲の目も正妻の味方です」

「正論禁止! それでも私は自由恋愛を推進してみせる」
 お妾殿は強く宣言した。

「いや~、国王が私財はたいて妾囲うのは自由っちゃ自由ですが、王妃に逆らったり国王陛下の公務に差し支えるような真似はしないことですよ。やっぱ妾は日陰者くらいがちょうどいいと言うか。プロの愛人はわきまえるべきと申しますか」

「おまえがプロの愛人を語るか!?」

「とにかく忠告はしました。出過ぎた真似をしてひどいことになっても知りませんからね。あなたが顰蹙ひんしゅくを買うようなことになったら国王だってかばいきれませんからね」
 エリオットはそっと首を横に振った。

 お妾殿はエリオットの釣れない態度を見て少し黙ったが、やがてゆっくりと口を開いた。
「……エリオットは一つ誤解をしているわ」

「何ですか」
 エリオットは急に態度が変わったので一瞬身構えた。
 しかしそれは身構えるほどのことではなかった。

 お妾殿の方は得意げだったが、それは
「私は妾よ。国王に忘れ去られた妾は存在しないも同じなの。私は私のアイデンティティを守るために国王に付きまとって見せるわっ!」
というよく分からない宣戦布告だった。

「うわっ堂々のストーカー宣言だ……」
 エリオットは苦笑するほかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ
恋愛
 ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。  初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——? ⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?

神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。 (私って一体何なの) 朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。 そして―― 「ここにいたのか」 目の前には記憶より若い伴侶の姿。 (……もしかして巻き戻った?) 今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!! だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。 学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。 そして居るはずのない人物がもう一人。 ……帝国の第二王子殿下? 彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。 一体何が起こっているの!?

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

実在しないのかもしれない

真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・? ※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。 ※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。 ※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。

処理中です...