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一 お兄ちゃんって呼ばれたい!
しおりを挟む一 お兄ちゃんって呼ばれたい!
ぼくと桃代は、一卵性の双子だ。
ぼくの名前は、藤原光、中学一年生。
妹の名前は、藤原桃代、同じ中学一年生。
顔は、ぼくとそっくり。
とにかく、ぼくの妹は可愛いい。
毛先がくるくるした、艶のある黒い髪。
それを半分だけ後ろで結んで、いつも赤いリボンをつけている。
こげ茶色の瞳は澄んでいて、くりっとした目。
桃代が微笑むと、周りの人を笑顔にしてしまう。
同じ顔をしているぼくがいうのも、ちょっとおかしいかなぁ。
なんだかやっぱり・・・・・・。
自分で自分を褒めてる感じがする。
妹の桃代は、ぼくを『光ちゃん』って呼ぶんだ。
ぼくの目標は『光』と『ちゃん』の間に『おにい』が入ること!
桃代にお兄ちゃんとして、認めてもらうことが目標。
『お兄ちゃん』って、呼ばれたい・・・・・・。
ちなみにぼくは、桃代のことは『もも』って呼んでいる。
呼ぶたびにくるっと振り向く『もも』は、尻尾を振る子犬みたい。
実は、ぼくたち。
まだ再会したばかりの兄妹なんだ。
ぼくたちは、小さな頃から別々に育った。
両親が別れて、ぼくは母さんに。
妹の桃代は、父さんに育てられた。
もちろん、桃代にも父さんにも、度々は会ってはいたけど・・・・・・。
いつもあっという間の、ほんのちょっと。
アイスクリームを食べて、ちょっとだけおしゃべりをして終しまいだった日もある。
あとは、たこ焼きか、ラーメンか、ハンバーガーかどうかの違いだったかな・・・・・・。
父さんのお仕事が忙しすぎて、延期はしょっちゅう!
そういう日は、桃代が母さんに連れられて家に来るんだ。
ぼくと桃代と母さんの三人で、一緒にご飯を食べた。
でも、年齢が一つ一つ大きくなる度、桃代は来なくなった。
桃代が来ない。
父さんのお仕事が忙しい。
桃代が来ない・・・。
父さんのお仕事が忙しい・・・。
桃代が・・・。
父さんが・・・。
桃代が・・・・・・。
父さんが・・・・・・。
・・・・・・。
そんな繰り返しを続けていたぼくたち!
いつも間にか、何年も会っていなかったけど。
そんな日常がついに変わる。
それはある日突然、決まったんだ!
*
小学校の卒業式。
校長先生が壇場で、ぼくたちみんなにこう言った。
「政府がきみたちに願うのは科学とのむきあいかた。先生がきみたちに願うのは、自分の悩みとのむきあいかた。みんながそれぞれ、自分で考え、答えをさがして、選ぶことを先生は願っています。
みんな、卒業、おめでとう」
校長先生の言葉に、ぼくは胸がドキドキして、中学校への期待が風船みたいに膨らんでいった。
*
ぼくが生まれるすこしか、だいぶ前のお話。
世界中で、科学がどんどん発展して、人は科学にたよりきりになった。
小さい頃から、科学にふれることが当たり前。
いろいろなことを自分から学ぼうって思う子どもは、どんどん減ってしまった。
そのかわり、いろいろなことを効率よく、論理的な考え方をする子どもは増えていった。
人の気持ちや感情がうすれて、氷のように冷たくなっていった世界。
それがぼくたちの生まれた時代。
そんな国を変えていこうと、日本の子どもたちは、十二歳まで、日常生活で科学にふれながらくらす。
十三歳から十八歳まで、なるべく科学と離れてくらす。
でも、なぜか・・・ぼくが十二歳まで通っていた小学校は、『江戸』時代の寺子屋みたいな小学校で、だったけど・・・・・・。
父さんと母さんが決めたから仕方ないけど・・・・・・。
ぼくはもっと科学をいっぱい習いたかったなぁ・・・・・・。
小学校の外は、最先端の科学ばかりの世界で。だからぼくにとって、小学校は異空間みたいだったんだ。
国のきまりで、十三歳から十八歳までは、生活や勉強に必要な科学だけを使うことになっている。
はぁ・・・・・・。
そういえば、学校によって、科学とのふれあいかたは、多かれ少なかれ違うんだって、だれかが言っていた。
ぼくは最先端の科学に憧れている。
だって、かっこいいじゃん。
*
私立平安学園。
十三歳から十八歳までの少年少女のための学校。
科学より自然なくらしが身近だった古い時代たち。
時代ひとつひとつのよいところを大切にしている平安学園。
生徒は男の子も女の子も、いっしょに学ぶ。
全寮制の寄宿学校。
そんな学校に、ぼくと桃代は一緒に入学することになった!
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