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八 中間テスト結果発表~聖一の豹変!
しおりを挟む八 中間テスト結果発表~聖一の豹変!
中間試験 結果発表
『主席 藤原 桃代』
『次席 藤原 光』
『参席 九条 聖一』
この前、初めて試験があった。
ぼくは、学年で二番の成績をおさめた。
桃代はなんと、一番だ。
「さすが桃代ちゃん、光くんもすごいっすね」
掲示板を見ていると、横から健誠先輩の声がしてびっくりした。
「どうして、せんぱいが一年生の掲示板にいるんですか!」
「ちょっと気になって。いや~、桃の花言葉どおりですね。」
「花ことば?」
「そう、『天下無敵』の桃の花」
天下無敵の妹。
すぐにめそめそするお兄ちゃん。
・・・・・・。
「もうぼく、クラスに行きますから!先輩も戻ってくださいっ!」
*
結果発表がおわった教室は、いつもと違った。
聖一の様子が、前とは比べものにならないほど変わっていた。
話しかけても、そっぽを向いて、ほかの男友だちの輪に入ってしまう。
その放課後、聖一はぼくに言った。
「うそつき。光、きみは大うそつきだな!」
「何、とつぜんどうしたの聖?」
「気安く呼ばないでくれないか」
「えっ?いまなんて」
「気安く呼ぶなって言ったんだ。試験の点数がまあまあ?勉強あんまりしてないとか、まっ赤なうそじゃないか!」
「いや、そんなつもりで言ったんじゃ・・・・・・」
「それなら、一生懸命勉強した僕は、あんまり勉強しなかったきみに負けたのか?」
「勝ち負けって・・・・・・」
「僕はきみに見下されてたのか?きみはこころの中では僕をばかにしていたのか?」
「そんなことない!」
「もういい」
*
つぎの日から、ぼくの学園生活がおかしくなった。
変わってしまったのは聖一だけではなかった。
「ぼくの教科書みなかった?」
「ぼくのふでばこ、落ちてないかな?」
「ぼくと実験のペアになってくれないかな?」
「つぎの授業、いっしょに行こう?」
「ねえ、このむずかしい宿題、どうやって解く?」
同じクラスの男の子達はみんな、ぼくを避けるようになった。
「光くん、よかったら失くしたノートと、同じ教科のノート貸すわ」
「教科書は先生に報告したほうがいいよ」
「これ。ふでばこだと思うんだけど。光くんのかな?」
女の子達は、親切にしてくれる。
「ありがとう・・・・・・」
仲間外れくらい、大丈夫。
桃代だって、乗り越えた。
ぼくは、お兄ちゃんだ。
妹に、格好悪いところなんて、見せたくない。
ぼくは、打たれ強いから、こんなの平気。
何度だって、『仲間に入れて』って言える。
だから、きっと、そのうちみんなも。
聖一だって、熱がさめて落ちついたら、前みたいに元どおりさ!
『ごめん、光。言いすぎた!』
そう笑って、頭をかくに決まってる。
だいじょうぶ。だいじょうぶ。
*
何日たっただろう。
どうしてだろう。
仲間外れは、変わらないまま。
「聖!待って!どうしてぼくを避けるの?」
背を向ける聖一に、ぼくは思いきって話しかけた。
聖一が振り向く。
ぼくを見る目は、氷のようにつめたい。
「僕はきみをライバル、いや、敵だと思っている」
「え・・・・・・」
「もう、仲良くなるつもりはない」
「そんな・・・・・・。あんなにふたりいっしょで、まいにち楽しかったのに」
「もう変わったんだ。僕がきみを追い抜いたら、また仲良くしてもいいよ?」
「・・・・・・成績が原因なんて・・・」
「それまではありえないね。もう、僕に話しかけないでくれるかな?」
聖一のぼくを刺すような鋭い目が怖い。
頭の中が、がんがんする。
ぼくの頭は石で叩かれたんだ、きっと。
からだじゅうが痛い。
早く帰らなきゃ。
寮にもどって、早く眠ろう。
たくさん寝て起きたら、きっといつもどおり。
そうだ!元気なぼくにもどるんだ!
だいじょうぶ!
こんないたみ、へいきさ!
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