平安学園〜春の寮〜 お兄ちゃん奮闘記

葉月百合

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五 昼 学校の食堂 ぼくのお友達と不思議な先輩!

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  ひる 学校がっこう食堂しょくどう ぼくのお友達ともだち不思議ふしぎ先輩せんぱい

 

 入学にゅうがくして、一ヶ月いっかげつ
 ぼくにも、ともだちができた。
 まえせきすわで、名前なまえ九条聖一くじょうせいいいち
 移動授業いどうじゅぎょうひるはんは、一緒いっしょ行動こうどうしてる。
 もう『せい』と『ひかる』とうほど、なかがいい。
 体育たいいくのバスケットでは、いきったパス。
 きなものも、おもしろいものも、たのしいものも、みんなてる。
 冗談じょうだんにつぼってわらいが止まらないことも、しょっちゅう。
 聖一せいいちはさらさらのかみで、まつげもながくて、女子じょしにもてている。
 もすらっとたかくて、ぼくからみても、美少年びしょうねんだ。







 桃代ももよとは、ちがうクラスになった。
 桃代ももよもぼくも、あたらしいともだちとの時間じかんえて、りょうかえってからでないと、はな時間じかんもない。
 今日きょうひさしぶりに、おひる一緒いっしょべる約束やくそく
 この学校がっこう全生徒ぜんせいとに、購買券こうばいけんくばる。
 その購買券こうばいけん一ヶ月いっかげつ、みんな上手じょうずにやりくりする。
 売店ばいてん文房具ぶんぼうぐ学校指定がっこうしていのものはもちろん、なんでもさん。
 みものやお弁当べんとう、パンにおにぎり、ちょっとしたおやつもっている。
 売店ばいてんべものをって、きな場所ばしょべていいきまり。
 食堂しょくどう献立こんだて豊富ほうふ
 あれもこれもべてみたくて、ぼくは毎日まいにち食堂しょくどうかよっている。

「もも、きいてる?」
「ちゃんときいてるよ」
「だからね、もう本当ほんとう調子ちょうしがくるうせんぱいなんだ・・・・・・」
「どんなふうに?」
「どんなふう?うまく説明せつめいするのむずかしい」
「ふーん」

 ああ、もう!
 ぼく、ちが先輩せんぱいがよかった・・・・・・。

ひかるちゃん、しっかり!」

 最近さいきん桃代ももよに、おな部屋へや先輩せんぱいはなしばっかりしてるがする。
 桃代ももよいわく、『ひかるちゃんの大嫌だいきらいと大好だいすきはおんなじ』なんだそう。
 まったく、ちない。







 源健誠みなもとけんせい先輩せんぱい
 はじめて挨拶あいさつしたとき。
 あんなにむかむかしたのははじめてだった。
 ぼくが、

はじめまして』

挨拶あいさつしようとするのをさえぎった第一声だいいっせい

『そのかおおとこだなんて、なんてもったいないんだ!』

 健誠先輩けんせいせんぱい真面目まじめかおをして、おおきく見開みひらいていた。
 そして、こころそこから残念ざんねん気持きもちをめて、盛大せいだいなためいきをもらした。
 最悪さいあく第一印象だいいちいんしょう
 時間じかんまもらない。寝坊ねぼう遅刻ちこくたりまえ
 にもかくにも、だらしない。かみはいつもぼさぼさ。部屋へやほんかみくずでいっぱい。
 ぼくがわないかぎり、洗濯せんたくされたふくていかない。
 ったことは、三歩さんぽあるいたらわすれている。
 ただ、ひとつだけ。
 ぼくもすごいとおもうところがある。
 それは、部屋へやでずっと勉強べんきょうしている、集中力しゅうちゅうりょく
 ぼくには、真似まねできない。







「いろんな人達ひとたちが、『ブッダくん』『ブッダせんぱい』ってんでいるから、とってもすごいひとなんじゃないかな?」

 桃代ももよがカキフライをふうっとまして、頬張ほおばった。

「それか、とてもみんなにしたしまれているひとかな」
「どうだろうね・・・」
「もう、ひかるちゃん。挨拶あいさつできたときの、第一印象だいいちいんしょうをひきずりすぎ!」
「はあ・・・・・・」

 ぼくはお茶碗ちゃわんったまま、ためいきをついた。

ひかるちゃん、そのとりのからあげと、わたしのカキフライ。ひとつ交換こうかんしよう!」
「うん、いいよ」
「やったー!」

 とりのからあげも、カキフライも、くちれると、じゅわっとしるひろがる。
 小鉢こばちなかのポテトサラダも、いろとりどり。
 にんじん、きゅうり、たまねぎ。なんとゆでたまごに、魚肉ぎょにくソーセージ。

ひかるちゃん、ってると、そのせんぱいみたいにブッダになれないよ!」
大丈夫だいじょうぶ。ぼくは『ブッダ』目指めざさないから」

 桃代ももよよりぼくは早食はやぐいで、デザートにばす。
 小粒こつぶのいちごと、真四角ましかく牛乳寒天ぎゅうにゅうかんてん白蜜しろみつがかかっている。

「そういえば、もも。ともだちいっぱいできてよかったね」
「うん!いま、クラスのおんなみんなで交換日記こうかんにっきいてるの」
たのしい?」
「うん!みんな、いろいろおしえてくれて、おもしろいよ。もちろん、口外厳禁こうがいげんきん!」
「ふーん」
こまったら、おにいちゃんに、なんでも相談そうだんするんだぞ」
「うん!」

 桃代ももよも、交換こうかんしたとりのからあげをもぐもぐべて、満足まんぞくそう。

中間試験ちゅうかんしけん勉強べんきょうもしなきゃなぁ」
「そうだ!りょうでいっしょに勉強べんきょうしようね!」

 いままで元気げんきはなしていた桃代ももよが、きゅうかおちかづけてひそひそとしゃべりだした。

ひかるちゃん、気付きづいてないとおもうけど」
「うん、どうしたの?」
「そのブッダせんぱい、ひかるちゃんの真後まうしろで、ずっとごはんべてるよ?」

 桃代ももよ衝撃しょうげき発言はつげんに、ぼくはいしのようにかたまった。
 ゆっくりと、そーっと、うしろをる。
 健誠先輩けんせいせんぱいほんひろげながら、ごはんべていた。

大丈夫だいじょうぶ。ブッダせんぱいも、ほん夢中むちゅうがついてないよ!」

 しーっと、くちびるまえゆびてて、桃代ももよはいたずらっぽく微笑ほほえんでいる。
 もも。
 そういう大事だいじなことは、もっとはやく、おにいちゃんにおしえてほしい・・・。
 ぼくははげしいあらしのように動転どうてんして、その言葉ことばくちからでてこなかった。
 そう。
 それからしばらくして、事件じけんこったんだ。

 桃代ももよが、おなじクラスのおんな子達こたちにいじめられた。





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