平安学園〜春の寮〜 お兄ちゃん奮闘記

葉月百合

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四 入学式前の朝ご飯といってきます!

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  入学式前にゅうがくしきまえあさはんといってきます!

 

 りょうは、相部屋あいべやだ。
 ぼくはまだ、おな部屋へや先輩せんぱい挨拶あいさつができていない。

かえってこない?」 
「そうなんだ。今朝けさはまだねむっていたから、そっとでてきた」

 消灯時間しょうとうじかんになっても、部屋へやにいない。
 夜中よなかにちょっとめたとき、蝋燭ろうそくあかりがれていた。
 つくえかっているおおきな背中せなかが、そのひとなのか、ゆめなのか。
 寝台しんだいのまわりは、書物しょもつあふかえっている。
 ごみれも、勉強べんきょうあとがたくさんあふれている。
 かおたかったけど、布団ふとんかぶっていてられなかった。

「わたしは、すてきなおねえさんだったの。美桜みおせんぱいっていうのよ」

 りょう生活せいかつをいろいろおしえてくれて、案内あんないしてくれたと桃代ももよはご機嫌きげんだ。

ひかるちゃんのせんぱいは、どんなひとだろうね。たのしみね!」
「うーん。どうだろう」







 たのしみなのは、ごはんだ。
 昨日きのうよるはんはご馳走ちそうだった!
 ったこともないのに、ホテルのビュッフェでべているような気分きぶん
 ゆめをみているようだった。
 あの分厚ぶあついローストビーフ!
 まるで漫画まんがてきそうなお肉料理にくりょうり
 あの衝撃しょうげきを、ぼくは絶対忘ぜったいわすれないだろう。
 外側そとがわはちりちりときあがっているのに、なか夕焼ゆうやけみたいないろをしている。
 ぱくりとくちなかにいれて、める。
 めばむほど、肉汁にくじゅううまみがひろがって、みこむのがもったいない!
 日本にほん文化ぶんか大事だいじにしている学校がっこうだから、和食わしょくだけかなって期待きたいしていなかった。
 期待きたいなにも、食堂しょくどう献立こんだては、ぼくの想像そうぞうはるかにえていた。
 となりにすわったおなりょう先輩せんぱいおしえてくれた。
 小町こまちさんひきいるはるりょうのお料理りょうりけて美味おいしいって評判ひょうばんらしい。
 和食わしょく洋食ようしょく中華ちゅうかにイタリア、フランス、韓国かんこく世界中せかいじゅう料理りょうり
 Bきゅうグルメにジャンクフードも、おやつにつくってくれるそう。
 それが学校がっこうの、りょう方針ほうしんなんて!
 ぼく、いっぱいべて、いっぱいおおきくなる!







 今日きょう入学式にゅうがくしき
 つぎ入学式にゅうがくしきにどきどきして、なかなかつけなかった・・・・・・。
 うーん、ちがうんだ!
 つぎあさはんたのしみで、なかなかつけなかった!
 ちにったあさはん
 りょうでのはつあさはん
 みんながならんでいるれつうしろ。
 ぼくと桃代ももよ一緒いっしょに、おぼんってならんだ。
 お勝手かって食堂しょくどうをつなぐカウンターしに小町こまちさん。
 りょう生徒せいとひとりひとりと、挨拶あいさつをしている。

「おはよう、ひかるくんと桃代ももよちゃん」
「おはようございます!小町こまちかあさん!」

 桃代ももよねそうなくらい、元気げんき挨拶あいさつした。

「お、おはようございます」

 そんな桃代ももよとは反対はんたいに、ぼくはどぎまぎとしたきながら挨拶あいさつした。
 おにいちゃんとしてかんがえたら、格好悪かっこうわるいかなぁ・・・・・・。

昨日きのうは、ぐっすりねむれたかしら?」
「はい、おかげさまで!」
「ぼくもぐっすりねむれました」

 ぼくはかおをあげて、こたえた。

「そう、よかった。さあ、あさはん、めしあがれ!」

『いただきます!』と、ふたりこえわせて、る。
 あさはんがのったおぼん慎重しんちょうにゆっくりとはこぶ。

「わあ~。わたし、こんなあさ飯初はんはじめて!」
「ぼくもだよ!」

 ぼくは自分じぶんべるごはんを、自分じぶんつくっていた。
 かあさんも、お仕事しごと大変たいへんだから。
 もしかしたら、桃代ももよもそうだったのかもしれない。
 とうさんは、かあさんよりも、お仕事しごと時間じかんおおいはず。

「いただきます!」
「う~ん。おいしい!」

 きたてのしろいごはんは、ふっくらしていてすこあまかおりがする。
 お豆腐とうふとわかめのお味噌汁みそしる
 ひとくちんだだけで、からだがぽかぽかあたたかくなる。
 紅鮭べにじゃけざかな
 かわはパリパリ、オレンジいろのしょっぱさとごはん相性抜群あいしょうばつぐん
 納豆なっとうにかりかりうめ
 大根だいこんとにんじんの甘酢漬あまずづけも!
 そしてなにより、ふわっふわしっとり厚焼あつやきたまご・・・・・・。
 きっとこれから、朝起あさおきるのがどおしくなる。

学校がっこう一日目いちにちめもいいになりそうね、ひかるちゃん!」

 桃代ももよがデザートのみかんを頬張ほおばりながら、にっこりわらった。

「うん!いいになるよ!」


 




 あさはんわって、みがいて、学校がっこうへいく支度したくませる。
 玄関げんかんでは、小町こまちさんが寮生りょうせい見送みおくっている。

をつけて、いってらっしゃい!」

 ふと、ひとりでかぎをかけて、いえかけていたことを、おもす。
 かあさんは、ぼくより朝早あさはやいから。
 この平安学園へいあんがくえん制服せいふくは、和風わふう洋風ようふうしてったかんじ。
 おとこは、ワイシャツのうえに、作務衣風さむいふう紺色こんいろ上着うわぎ
 した袴風はかまふうのスラックス。靴下くつしたくつ自由じゆう
 上級生じょうきゅうせいは、ワイシャツのわりにタートルネックやパーカーをているひともいる。
 正式せいしき行事ぎょうじのときは、みんなかならずワイシャツをるのが学校がっこうのきまり。
 おんなは、茜色あかねいろ着物風きものふう上着うわぎおびのようなベルト。ひざたけのスカート。
 おとこ一緒いっしょで、靴下くつしたくつ自由じゆう
 桃代ももよ似合にあっている。
 七夕たなばた乙姫おとひめさまみたい。

ひかるちゃん、似合にあってるよ!おとこ制服せいふくもおもしろいね!」

 ぼくはまだちょっと、なれていない。
 ああ、もも。
 どこが似合にあっているのか。
 おしえてほしい・・・・・・。

「ももは、大昔おおむかしのおひめさまみたいだよ。おびのりぼんで、ももが蝶々ちょうちょえる」
「ありがとう!ひかるちゃん、上手じょうずね。てれちゃうよ!」

 小町こまちさんが、制服せいふくみだれをなおしてくれる。
 なおしてもらうのは、かおがまっになりそうなほど、ずかしい。

「・・・いってきます・・・・・・」

 いってきますの挨拶あいさつも、おなじくらいずかしい。
 反対はんたい桃代ももよは、をきらきらかがやかせて、感動かんどうしている。

入学式にゅうがくしきは、わたしも、寮父りょうふ清明せいめい出席しゅっせきします。あとで学校がっこう講堂こうどういましょうね」
「はい、小町こまちかあさん!いってきます!」

 桃代ももよはどうやら、小町こまちさんに世話せわいてもらえることが、このうえなくうれしいよう。
 それは・・・・・・ぼくもおな気持きもち。

「はい、いってらっしゃい!」


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