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2、恐怖の真相
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手帳のページをめくり、菊池は続けた。
「 新聞でも報道されて、君も知っていると思うけど・・ 榊原氏の自殺動機について警察が調査を行なっている。 結果、臨床認知されていない新薬を、笠井氏の経営する笠井製薬から入手し、病院内で実験的に患者に投薬されていた事実が判明した。 おそらく、いくらかの謝礼が渡されていたと思う。 いわば、人体実験だ 」
菊地は、手帳を脇に置くと腕組みをし、推察するように言った。
「 それを苦に、榊原氏は自殺したとされているが・・ その現場に居合わせた病院の当直看護士が、病院の屋上から落下する榊原氏の叫び声を聞いている。 普通、投身自殺する人は、叫び声を上げないものだ・・・ 」
下を向きながら話していた菊地は、顔を上げた。 じっと菊地を見つめている友美と、目が合った。
「 自殺ではない・・ と? 」
友美の問いに、菊池は答えた。
「 断定は出来ないけどね。 だが、他殺の可能性は充分ある 」
菊池は続けた。
「 警察側の話しによると、笠井氏と榊原氏の件は、君が遭遇した事件とは、無関係だと言ってるけど・・ 僕は、そうは思わない。 すべて同日に起こった、不可解な事件だし、 関連した、一連の事件と考えるべきだと思う 」
大きく息をつく、菊池。
言葉の雰囲気からは、菊池による独自の推察が披露されるような感じが読み取れた。
友美は、菊池の次の発言を期待し、静かに待った。
腕組みをしたまま、ゆっくりと天井を仰ぐ菊池。 やがて、静かに・・ 呟くように言った。
「 ・・これら、一連の事件の謎を解く鍵・・・ 」
友美は、じっと菊地を見つめている。
天井を仰いだまま、菊池は、目を閉じた。 眉間にシワを寄せ、何かを思案しているようである。 その表情からは、苦悩とも思える心情が読み取れた・・・
視線を下し、菊池は友美と目を合わせると、しばらくの間を置き、決意したかのように言った。
「 友美ちゃん・・・ おそらく君が、この事件の中で一番、触れたくないと思っている人物が、もう1人いるね・・・? 」
菊池の推察に、一瞬、目を見開く友美。 表情には、明らかに恐怖の表情が見て取れた。 硬く握り締められた両手が、膝の上で震え始める。
しばらくの間の後、ある意味、観念したような・・ 絞り出すような声で、友美は答えた。
「 ・・・小沢・・ ユキ・・・! 」
「 そう、7番目の死亡者だ。 君の証言によると、惨劇の最後に、マンション屋上にある給水塔の上から投身自殺したとある 」
震える両手で、自分の腕を抱えると、自身に言い聞かせるように、友美は言った。
「 ・・・ユキは死んだ。 そう、死んだのよ・・! 大丈夫・・ もう、いないの・・・! 死んだのよ、 あの子は・・・! 」
尋常ではない友美の様子に、菊地は声をかけた。
「 大丈夫かい・・? そんなにユキって子は、怖い存在だったのかい? 確か、転校して来たばかりの1年生だったと聞いてるが・・・? 」
下を向き、無言のままの友美。
菊池は続けた。
「 警察関係者から聞いた話しでは、その、ユキと言う女生徒についての証言は、かなり怯えた様子で話していたと聞いているが・・ そもそも・・ 」
「 バケモノよッ・・・! あいつは、バケモノなのっ! 」
菊池の言葉を制し、友美は言った。
「 ・・・バケモノ? 」
顔を上げ、幾分、興奮した様子の友美。
「 みんな殺したのよっ・・! 洋子も純一さんも、お養父さんも加奈子も・・・! 」
菊池は、首を振り、言った。
「 ・・証拠が無い。 ユキの加害説は、君の以前からの主張だが、ハッキリとした証拠が無い 」
身を乗り出し、訴え掛けるかのように、友美は言った。
「 みゆきが血を吐いて倒れた時も、ユキがそばにいたわ。 加奈子は・・ 洋子に言われ、1人でユキを探しに行って死んだのよっ? みんなアイツが関わってる・・・ アイツが・・ ユキが・・・! あ・・ あのバケモノが殺したのよッ・・! 」
「 それは、状況証拠だ。 それだけでは、ユキの加害説は立証出来ない 」
「 私には、分かるのッ・・! あの・・ あの、恐ろしい体験をした私には、分かる・・! ユキは・・ ユキは、バケモノだったのッ・・! 人間じゃなかったのよッ・・! 」
「 わかった。 落ち着いてくれ 」
次第に興奮状態になっていく友美を制し、菊地は言った。
肩で息をしている、友美・・・
菊池は、友美に掌をかざし、気持ちを落ち着かせるよう、ゼスチャーした。
「 いいかい? 落ち着くんだ。 ここで言い合っても、何の解決にもならない 」
視線を下げ、友美は、小さく頷いた。
『 人間じゃなかったのよッ・・! 』
その表現からは、想像を絶する恐怖体験の存在が推察された。 どのような地獄絵図が展開されていたのか・・・ それは、実際に体験した友美にしか説明出来ない状況であると思われる。
話し方から推察するに、友美は、常識的かつ、理性的だ。 その友美が『 人間ではない 』とさえ発言している事実・・・ 通常では考えられない、よほどの状況・事態が起こったのだろう。
菊池は、これ以上、友美の恐怖体験を呼び覚ますのは、友美の精神的苦痛を増長させるだけだと判断した。
視点を変え、菊池は言った。
「 話しを変えよう・・ 君が所属していた、レディース・グループの事について話してくれるかい? 」
「 『 死喰魔 』の事ですか・・? 」
「 ああ 」
「 ・・・・・ 」
「 嫌なら、構わないんだが・・? 」
下を向いたまま、友美は答えた。
「 いえ・・ 別に、そう言う訳ではありません。 ただ、そういった不良グループに入っていた自分が恥ずかしくて・・・ 」
少し笑いながら、菊池は言った。
「 まあ、若気の至り・・ ってヤツだ。 誰にだって、多かれ少なかれ、あるモンさ。 僕も、学生時代は結構、やんちゃをしてたよ 」
両腕を抱いたまま、下を向いている友美。 興奮状態は治まりつつあるようだが、依然、何かしらの恐怖に、精神は束縛されたままのようである。
菊池は、傍らに置いてあった手帳を取るとページを開き、言った。
「 都内でも、かなり大きなネームバリューがあったレディースだったらしいね。 末端のグループまで入れると、総数は約百人・・・ チームの頭だったのは、君の義理の姉だった、笠井 洋子・・・ 」
小さく頷いた友美を目視し、菊池は続けた。
「 グループに入った理由は、やはり、お義姉さんがいたからかい? 」
再び、小さく頷く友美。
「 まあ、身内がいれば・・ 善悪の関係なく、行動を共にするのも道理だ 」
蚊の鳴くような、か細い声で、友美は言った。
「 ・・・小学校1年生の頃から、いつも一緒でしたから・・・ 中学に入ってからは、姉妹と言うより・・ 先輩・後輩のような間柄でした 」
菊池は、無言で友美の話を聞いている。
友美は続けた。
「 洋子の言う事は、私にとって、逆らう事の出来ない『 命令 』・・・ 逆に、洋子がいるから、全てにおいて、私は安泰だった・・・ 」
義理の姉は、大きな存在だったようである。 服従に至る関係構築には、複雑な家庭環境の影響も、根底にあった事と考えられる。 弱冠12~3歳の少女にとって、歳上からの発言は絶対だ。 ましてや、身内ならば尚更の事であろう。
菊池は、友美の置かれていた状況・立ち位置を、推測ながら理解をした。
両腕を、固く抱いたままの友美・・・ 深呼吸をするかのように息を吸うと、菊池に言った。
「 洋子は、私に対して威圧的ではあったけど、束縛はしなかったわ・・・ 暴力を振るう事も無かったし、逆に、いつも気に掛けてくれていた・・・ 」
義理の間柄とは言え、身内だ。 それなりの気遣いは、あったと思われる。
友美は続けた。
「 洋子は、よく警察沙汰になるような騒ぎを起こしていたから、刑事たちは、よく洋子の事を知っていたわ・・ だから最初から、不良グループ同士の事故として片付けようとしていたの・・・ 」
じっと、友美の話を聞いている菊池。
友美は、菊池に尋ねた。
「 でも・・ 本当に、事故だと思っていたのかしら・・・? 」
菊池は答えた。
「 この事件については、ハッキリ言って、警察も迷宮入りの様子だ。 小沢ユキは・・ 君の義理の姉だった、笠井 洋子さんがリーダーをしていたレディース・グループ『 死喰魔 』と、何らかの理由で、対立していたらしいね。 事件当日の夜、話し合いがこじれ、洋子さんが、ナイフでユキを刺した。 その後、そのナイフで、ユキが洋子さんを刺した・・・! とりあえず警察は、そんな見解で、検査処理をし、その後の見解を避けている。 常識では考えられないシチュエーションや、状態、結果、動機・・・ 全てが説明がつかない事ばかりだからね 」
両腕を抱いたまま俯き、じっと目を瞑っている友美。
菊池は続けた。
「 ただ、君のオカルト的とも言える話が、実際に現実に起こったとするならば、全て状況は一致する。 ・・つまり、小沢ユキが『 不思議な力 』を使い、ナイフや拳銃を宙に浮かせ、自動扉を閉め、人を屋上から突き落としたりして殺人を敢行した・・・! 警察は、それを認めたくないんだろうな。 世間も、普通は信じないだろう・・・ 」
友美は、両腕を固く抱いたまま、菊地の話を聞いている。 興奮状態は治まったようだが、やはり、何かしらの恐怖の存在に怯えたままである。
菊池は言った。
「 もう、小沢ユキの事はいい・・ おそらく君は、ウソは言っていないと思う。 ただ、僕が興味を持ったのは、君だ 」
怯える視線を徐々に上げ、友美は、菊地を見た。
「 ・・・・わたし・・・? 」
「 なぜ、君は生き残ったんだ? 」
「 新聞でも報道されて、君も知っていると思うけど・・ 榊原氏の自殺動機について警察が調査を行なっている。 結果、臨床認知されていない新薬を、笠井氏の経営する笠井製薬から入手し、病院内で実験的に患者に投薬されていた事実が判明した。 おそらく、いくらかの謝礼が渡されていたと思う。 いわば、人体実験だ 」
菊地は、手帳を脇に置くと腕組みをし、推察するように言った。
「 それを苦に、榊原氏は自殺したとされているが・・ その現場に居合わせた病院の当直看護士が、病院の屋上から落下する榊原氏の叫び声を聞いている。 普通、投身自殺する人は、叫び声を上げないものだ・・・ 」
下を向きながら話していた菊地は、顔を上げた。 じっと菊地を見つめている友美と、目が合った。
「 自殺ではない・・ と? 」
友美の問いに、菊池は答えた。
「 断定は出来ないけどね。 だが、他殺の可能性は充分ある 」
菊池は続けた。
「 警察側の話しによると、笠井氏と榊原氏の件は、君が遭遇した事件とは、無関係だと言ってるけど・・ 僕は、そうは思わない。 すべて同日に起こった、不可解な事件だし、 関連した、一連の事件と考えるべきだと思う 」
大きく息をつく、菊池。
言葉の雰囲気からは、菊池による独自の推察が披露されるような感じが読み取れた。
友美は、菊池の次の発言を期待し、静かに待った。
腕組みをしたまま、ゆっくりと天井を仰ぐ菊池。 やがて、静かに・・ 呟くように言った。
「 ・・これら、一連の事件の謎を解く鍵・・・ 」
友美は、じっと菊地を見つめている。
天井を仰いだまま、菊池は、目を閉じた。 眉間にシワを寄せ、何かを思案しているようである。 その表情からは、苦悩とも思える心情が読み取れた・・・
視線を下し、菊池は友美と目を合わせると、しばらくの間を置き、決意したかのように言った。
「 友美ちゃん・・・ おそらく君が、この事件の中で一番、触れたくないと思っている人物が、もう1人いるね・・・? 」
菊池の推察に、一瞬、目を見開く友美。 表情には、明らかに恐怖の表情が見て取れた。 硬く握り締められた両手が、膝の上で震え始める。
しばらくの間の後、ある意味、観念したような・・ 絞り出すような声で、友美は答えた。
「 ・・・小沢・・ ユキ・・・! 」
「 そう、7番目の死亡者だ。 君の証言によると、惨劇の最後に、マンション屋上にある給水塔の上から投身自殺したとある 」
震える両手で、自分の腕を抱えると、自身に言い聞かせるように、友美は言った。
「 ・・・ユキは死んだ。 そう、死んだのよ・・! 大丈夫・・ もう、いないの・・・! 死んだのよ、 あの子は・・・! 」
尋常ではない友美の様子に、菊地は声をかけた。
「 大丈夫かい・・? そんなにユキって子は、怖い存在だったのかい? 確か、転校して来たばかりの1年生だったと聞いてるが・・・? 」
下を向き、無言のままの友美。
菊池は続けた。
「 警察関係者から聞いた話しでは、その、ユキと言う女生徒についての証言は、かなり怯えた様子で話していたと聞いているが・・ そもそも・・ 」
「 バケモノよッ・・・! あいつは、バケモノなのっ! 」
菊池の言葉を制し、友美は言った。
「 ・・・バケモノ? 」
顔を上げ、幾分、興奮した様子の友美。
「 みんな殺したのよっ・・! 洋子も純一さんも、お養父さんも加奈子も・・・! 」
菊池は、首を振り、言った。
「 ・・証拠が無い。 ユキの加害説は、君の以前からの主張だが、ハッキリとした証拠が無い 」
身を乗り出し、訴え掛けるかのように、友美は言った。
「 みゆきが血を吐いて倒れた時も、ユキがそばにいたわ。 加奈子は・・ 洋子に言われ、1人でユキを探しに行って死んだのよっ? みんなアイツが関わってる・・・ アイツが・・ ユキが・・・! あ・・ あのバケモノが殺したのよッ・・! 」
「 それは、状況証拠だ。 それだけでは、ユキの加害説は立証出来ない 」
「 私には、分かるのッ・・! あの・・ あの、恐ろしい体験をした私には、分かる・・! ユキは・・ ユキは、バケモノだったのッ・・! 人間じゃなかったのよッ・・! 」
「 わかった。 落ち着いてくれ 」
次第に興奮状態になっていく友美を制し、菊地は言った。
肩で息をしている、友美・・・
菊池は、友美に掌をかざし、気持ちを落ち着かせるよう、ゼスチャーした。
「 いいかい? 落ち着くんだ。 ここで言い合っても、何の解決にもならない 」
視線を下げ、友美は、小さく頷いた。
『 人間じゃなかったのよッ・・! 』
その表現からは、想像を絶する恐怖体験の存在が推察された。 どのような地獄絵図が展開されていたのか・・・ それは、実際に体験した友美にしか説明出来ない状況であると思われる。
話し方から推察するに、友美は、常識的かつ、理性的だ。 その友美が『 人間ではない 』とさえ発言している事実・・・ 通常では考えられない、よほどの状況・事態が起こったのだろう。
菊池は、これ以上、友美の恐怖体験を呼び覚ますのは、友美の精神的苦痛を増長させるだけだと判断した。
視点を変え、菊池は言った。
「 話しを変えよう・・ 君が所属していた、レディース・グループの事について話してくれるかい? 」
「 『 死喰魔 』の事ですか・・? 」
「 ああ 」
「 ・・・・・ 」
「 嫌なら、構わないんだが・・? 」
下を向いたまま、友美は答えた。
「 いえ・・ 別に、そう言う訳ではありません。 ただ、そういった不良グループに入っていた自分が恥ずかしくて・・・ 」
少し笑いながら、菊池は言った。
「 まあ、若気の至り・・ ってヤツだ。 誰にだって、多かれ少なかれ、あるモンさ。 僕も、学生時代は結構、やんちゃをしてたよ 」
両腕を抱いたまま、下を向いている友美。 興奮状態は治まりつつあるようだが、依然、何かしらの恐怖に、精神は束縛されたままのようである。
菊池は、傍らに置いてあった手帳を取るとページを開き、言った。
「 都内でも、かなり大きなネームバリューがあったレディースだったらしいね。 末端のグループまで入れると、総数は約百人・・・ チームの頭だったのは、君の義理の姉だった、笠井 洋子・・・ 」
小さく頷いた友美を目視し、菊池は続けた。
「 グループに入った理由は、やはり、お義姉さんがいたからかい? 」
再び、小さく頷く友美。
「 まあ、身内がいれば・・ 善悪の関係なく、行動を共にするのも道理だ 」
蚊の鳴くような、か細い声で、友美は言った。
「 ・・・小学校1年生の頃から、いつも一緒でしたから・・・ 中学に入ってからは、姉妹と言うより・・ 先輩・後輩のような間柄でした 」
菊池は、無言で友美の話を聞いている。
友美は続けた。
「 洋子の言う事は、私にとって、逆らう事の出来ない『 命令 』・・・ 逆に、洋子がいるから、全てにおいて、私は安泰だった・・・ 」
義理の姉は、大きな存在だったようである。 服従に至る関係構築には、複雑な家庭環境の影響も、根底にあった事と考えられる。 弱冠12~3歳の少女にとって、歳上からの発言は絶対だ。 ましてや、身内ならば尚更の事であろう。
菊池は、友美の置かれていた状況・立ち位置を、推測ながら理解をした。
両腕を、固く抱いたままの友美・・・ 深呼吸をするかのように息を吸うと、菊池に言った。
「 洋子は、私に対して威圧的ではあったけど、束縛はしなかったわ・・・ 暴力を振るう事も無かったし、逆に、いつも気に掛けてくれていた・・・ 」
義理の間柄とは言え、身内だ。 それなりの気遣いは、あったと思われる。
友美は続けた。
「 洋子は、よく警察沙汰になるような騒ぎを起こしていたから、刑事たちは、よく洋子の事を知っていたわ・・ だから最初から、不良グループ同士の事故として片付けようとしていたの・・・ 」
じっと、友美の話を聞いている菊池。
友美は、菊池に尋ねた。
「 でも・・ 本当に、事故だと思っていたのかしら・・・? 」
菊池は答えた。
「 この事件については、ハッキリ言って、警察も迷宮入りの様子だ。 小沢ユキは・・ 君の義理の姉だった、笠井 洋子さんがリーダーをしていたレディース・グループ『 死喰魔 』と、何らかの理由で、対立していたらしいね。 事件当日の夜、話し合いがこじれ、洋子さんが、ナイフでユキを刺した。 その後、そのナイフで、ユキが洋子さんを刺した・・・! とりあえず警察は、そんな見解で、検査処理をし、その後の見解を避けている。 常識では考えられないシチュエーションや、状態、結果、動機・・・ 全てが説明がつかない事ばかりだからね 」
両腕を抱いたまま俯き、じっと目を瞑っている友美。
菊池は続けた。
「 ただ、君のオカルト的とも言える話が、実際に現実に起こったとするならば、全て状況は一致する。 ・・つまり、小沢ユキが『 不思議な力 』を使い、ナイフや拳銃を宙に浮かせ、自動扉を閉め、人を屋上から突き落としたりして殺人を敢行した・・・! 警察は、それを認めたくないんだろうな。 世間も、普通は信じないだろう・・・ 」
友美は、両腕を固く抱いたまま、菊地の話を聞いている。 興奮状態は治まったようだが、やはり、何かしらの恐怖の存在に怯えたままである。
菊池は言った。
「 もう、小沢ユキの事はいい・・ おそらく君は、ウソは言っていないと思う。 ただ、僕が興味を持ったのは、君だ 」
怯える視線を徐々に上げ、友美は、菊地を見た。
「 ・・・・わたし・・・? 」
「 なぜ、君は生き残ったんだ? 」
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