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【宝石少年と芸術の国】
裁きを下すは
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シナバーの望むものを知っているのは、ごく一部だ。国民たちは固唾を呑みながらも、それが一体何かという疑問を、隣同士視線で交わし合う。
全てを知るアウィンたちは、驚いてルルを見た。ルルは、金塊と民の命を天秤にかけた。しかしそれは、どちらをとっても終わりにしか繋がらない。なぜなら民の命は、地下深くで国を支える金塊があってこそなのだから。もちろんそれは、ルルが1番分かっている。分かっていてなお、持ちかけたのだ。
シナバーの朱色の瞳が、探るようにじろじろとルルを見る。見られている視線を感じながらも、ルルは背筋を正し、世界の色を踊らせる虹の全眼でまっすぐに見つめ返す。相手の弱みを握り、幾千もの商談をしてきたシナバーにも、今のルルの思考を読み取る事はできなかった。
沈黙が続く中、頭の中に冷静な音が言葉を並べる。
『貴方にまず、呪いを、解いてもらう。確認ができたら、僕が、宝の場所へ、案内する』
「……宝の方を先にするのは?」
『貴方が、頷かなければ、僕は動かない』
シナバーにとって、その条件は呑まざるを得ない。金塊への仕掛けがもっと単純であれば、粘れただろう。しかし他でもない、世界の王が動かなければ、シナバーも身動きができなかった。
「宝を目前に裁かれるというのは、私も頷きがたい」
『僕は裁かない。約束をしよう。けれど全ては、貴方の行動次第だ』
シナバーはシワのある口元を手で撫で、夋巡する。王が裁かないと断言するなど、前代未聞。心があるからこそ、悪人の裁きよりも多くの命を取るのだ。本来世界の王は、命と罪を天秤になどかけず、迷わず罰する。だから恐れられるのだ。
シナバーは手元に隠れた唇をクッと引き上げると、布が重なった胸元を漁る。何かを取り出そうとする仕草に、アウィンは警戒に杖を構えた。だがルルは平然としている。シナバーから殺意や悪意が無いからだ。
懐から取り出した何かを、シナバーはルルたちへ向けて放り投げた。数回地面に跳ねて転がってきたのは、小さなレッドダイヤモンド。しかし中心は黒く染まっている。アウィンはうっと顔をしかめた。ここから呪いを強く感じる。胃から吐き出しそうになるほどの強さは、間違いなく国民に侵食する呪いの元凶。
ルルの瞳が、わずかに細くなった。まるで憐れむように、レッドダイヤを見つめている。呪いの媒体にされた石から、微かに悲痛な音が聞こえた。
「ルル」
ルルは囁きに頷くと『お願い』と、アウィンを見上げた。人間の作り出した魔法によっての呪いは、ただ宝石を破壊すればいいだけではない。魔法には魔法を持ってして、初めて壊せる。
アウィンは静かに頷き返し、杖から剣を抜くと切先をレッドダイヤへ振り上げる。魔術を込めた言霊を小さく唱えながら振り下ろした。硬いはずのダイヤは、魔術を施された刃を受け入れると、ガラスのように脆く砕け散った。
仄暗くも不思議と眩い閃光が辺りに走る。光が止んだ頃、人々は体の変化に気づいた。体が軽い。頭を重くさせていた、思考に渦巻いていた霧も風がさらったように晴れた。呪いが完全に解けたのだ。
『他にないかも、調べて』
「ええ、分かりました」
反抗しないという意思で、シナバーは両手をあげる。アウィンは彼の着る上着の上から触って、呪具が無いことを確かめた。呪いの気配もない。信用して良さそうだ。
『じゃあ、僕の番だね。案内しよう。貴方が望む、宝の元へ』
ルルは女神像の下に被せた砂を払い、現れた石板に埋め込まれた【ルルの石】に両手を添える。指の合間から漏れる光が小さくなると、祭壇広場に小さな振動が起こる。同時に、石板が石を中心に二手に分かれた。しかしその先は鉱石で埋まっていて、道が無い。薄青い手がそっと撫でると、まるで氷が溶けるように消え、粗削りな階段が暗闇に続いているのが見えた。
ルルは立ち上がると、顔を出した道に気持ちを昂らせているシナバーに振り返る。
『僕のあとに、付いてきて』
「承知した」
「ルル、私も同行してよろしいですか?」
「お、オレたちも!」
『いいよ。マリンは、怪我をしているから、ここに居て。他のみんなも、戻るまで、待っていて』
洞窟の中はそもそも狭い。加勢する人数が多ければ多いほど、逆に危険が伴うのだ。しかしシナバーと2人きりにはさせたくない。
見守っていた国民たちは、ルルを信じてみな頷く。女神像の下へ消えていく6人の背中を静かに見送った。
薄暗い洞窟の中で、アウィンが小さな灯りを灯す。階段は気を抜けば滑りそうに雑な作りだが、明らかに自然ではなく誰かの手が入っているのが分かる。足元に注意しながら階段を抜け、湖に出た。
「だけどこんな場所、よく見つけられたな」
「古い紙があって、そこに書いてあったんだ」
「ここから先は、どうなっているのですか?」
『船を、作ったけど……』
「あっそうじゃん滝じゃん!」
別の行き方もあるが、小さな足場しかない。この人数では無理だ。できるなら、この湖全体を鉱石にできないだろうか。さすがにルルだけでは、可能だが体力の消費が大きすぎる。
しかししばらく悩ましそうにしていたルルは、パッと上げた顔を振り向かせる。そうだ、今は同胞がいるじゃないか。
『ファルベ、僕と一緒に、湖を、鉱石にしよう。渡れるよう、階段のようにして。できる?』
「うん、一緒にならできると思う」
人間の血が混ざっているとしても、経験からして、ファルベの方が鉱石を作る正確さは高いだろう。ルルはファルベの作る鉱石の動きを見て、支える役割をする事にした。
2人で手を湖に近づけ、手元へ意識を集中させる。湖の中で生きる微生物によってできる小さな波が、淡い桃色と白を含んだ虹の鉱石に染まっていく。もちろん、微生物に影響が少ないように、鉱石にするのは重量に耐えられるギリギリの表面だけだ。
やがて滝壺に辿り着いた感覚が手に伝わり、2人は手を離した。ファルベは久しぶりにこんなに大きなものを鉱石にしたと、深く息を吐く。ルルも体力を消費したろうに、表情は全く変わってない。それどころかファルベを見る目は少し心配そうだ。疲れはしたが、こんなところでへばってはいられないと、ルルに「大丈夫だよ」と笑って見せた。
『足元、気をつけてね』
一行はルルを先頭に、念の為いつでも怪しい行動に対応できるよう、シナバーを間に挟んでアウィンたちが続いた。
薄い表面だけを鉱石にしたからか、湖の上を歩くと、微生物が振動で反応して足元を光らせた。洞窟の幅が1人ずつ並んでしか通れないほど細くなると、壁が星を散りばめたように明るく、手元の灯りは必要なくなった。
星のような明かりは、微生物が成長した小さな蝶たちだ。しかし以前のように自由に飛び回ってはいない。まるで警戒するかのように、壁に止まっている。
狭い道が終わりを告げたとともに、先頭を歩いていたルルの足が止まる。足元を見れば、そこから先は絶壁になっていた。恐る恐る覗くと、滝壺は薄暗くなるほどに遠い。
「……ルル、アルナイト、本当にこんな高いところから落ちたのですか?」
「えっ落ちたのかっ?!」
「えへへ……」
『気づくのに、遅れちゃって』
「あでも、ルルが膜を作ってくれたから、全然怪我しなかったぞ」
「そういう問題じゃ無いと思うよ」
散々な目に遭っただろうに、どうしてそう呑気に笑っていられるのだろうか。ファルベは苦笑いし、アウィンとフロゥはため息を吐く。一方で、シナバーはただ静かに彼らを眺めていた。
世界の王が人間に育てられ、心を手に入れた。しかもどの王も持っていなかった怒りや、悲しみという感情も持っている。そんな噂は所詮ただのほら吹きだと思っていた。しかし、さっきまで交渉を持ちかけていた人物は確かに王の姿だったのに、今のルルはまるで別人。
(なんて好都合だ)
今まさに、世界の王に裁かれない人間となる。きっと歴史に名を刻む事になるだろう。何もかもが自分の算段通り。いや、嬉しい誤算も加わって、まるで神が味方でもしてくれているかのようだ。シナバーはそう思って疑わない。ルルの言っていた「貴方の行動次第」だという言葉の真意も考えず。
滝は垂直だが、飛沫などを利用して足場を作った。足場はそれなりに大きく、ルルが作った鉱石の手助けもあって、数人が乗っても壊れないようにできている。しかし命綱のようなものはないため、油断は禁物だ。みな慎重に降りていく。それまで1番下は薄暗く、目を凝らさなければ見れなかったが、やがてハッキリと道が見えてきた。
「これから先は?」
『案内して、くれる子が居るから、大丈夫』
「人が居るのですか?」
『ううん』
ルルの小さく踵のある新しい靴が、少しの高さから飛び降りた事で、カツンと音を鳴らす。甲高い音は、洞窟となった道の向こう側へ反響していった。
洞窟は先ほどの空間とは打って変わり、眩しい銀色。しかし反射のせいか、不思議と先は暗くて見えづらい。シナバー訝しそうに周囲を見渡す。案内人のような存在は見当たらない。
「何も見えんが?」
『来るよ』
ルルは黒くなっている先をじっと見つめた。みな虹の瞳の視線に従って目をすがめる。すると、コツンコツンと足音が聞こえてきた。人間とは違う、四つ脚のリズムだ。見えたのはドーゥ。立派な鉱石のツノを持ち、大きな体。アルナイトは「あ!」と嬉しそうな声をあげる。
ドーゥはルルとアルナイトへゆっくり歩み寄り、挨拶するように頭を軽くぶつける。それからアウィンとフロゥ、ファルベの匂いを嗅ぎ、同じように頭を擦り付けた。アウィンたちは、くすぐったそうにしながら頭を優しく撫でる。
「ドーゥとは、珍しいですね」
「初めて見た……」
「この個体、鉱石を主食にしてるみたいだ。もしかして、ここに住んでいるのか?」
『うん。この子はここで、生きてるんだ』
「……門番とはコレの事か」
少し離れて見ていたシナバーは、なるほどと頷く。書物の中に2つの門番の存在が記載されていた。ドーゥは魔獣の中でも警戒心が強く、善悪を嗅ぎ分ける力に優れている。だから門番には最適なのだ。きっと世界の王無しに、この門番をくぐり抜けられないだろう。
ドーゥは品定めするような視線に気づくと、柔らかな表情を険しくさせ、シナバーへ低く唸る。ルルはドーゥの太い首を撫でて宥めた。
「キュウ、クゥー」
『ごめんね、休ませてあげた、ばかりなのに。でも、これで最後だから、案内、お願い』
ルルはドーゥの大きな頭をそっと抱きしめ、伝わらずとも囁くように頭に言葉を並べる。するとドーゥは彼の頬を舐めると、屈んだ。意思は伝わってくれたようで、ルルは「ありがとう」と言うと、大きな背中に乗った。進んでいくドーゥのあとを、様子を伺っていた5人もついて行く。
道は確かに険しいものが多い。しかし過去、大魔法使いが世界の王のために用意した道もある。そこは粗くも比較的なだらかな足場だ。ドーゥは人数も見て、そこを通ってくれた。おかげで負傷者は出ず、無事に金塊へ続く一本道へ辿り着く。
世界の王の手が必要な扉。そこにルルが手を添えると、洞窟全体に振動が起こり、壁はゆっくりと口を開いた。
ルル以外の仲間たちは、目的地に近づけば近づくほどに、不安そうな表情になっていく。シナバーはもう呪具を持っていないのは確か。しかしやましい考えは持っているはずだ。今大人しいのは、ただ金塊にありつくため。ただ金塊を手に入れるだけで気が済む男ではない。
不安に駆られ、アルナイトがドーゥに乗るルルに走り寄る。ルルは心配そうなアルナイトをドーゥの上に引き寄せ、小さく微笑みながら「大丈夫だよ」とだけ言った。約束は約束。しかし誰の命も奪わせない。世界の王としてではなく、この国や人々を愛した自分として。
「奥が明るくなってきた」
『そろそろだね』
道の終わりだと思える場所から、淡く金色の光が漏れている。光を追いかけるように歩いていくと、やがて部屋に足を踏み入れた。みな、前面に広がる黄金の大木に驚きの声をあげた。
こんなに大きな金塊を見る機会は、きっと五大柱でも無い。それほど金は貴重だ。だからこそ、シナバーの人生には必要だった。これで最高級の贅沢ができる。
ルルはドーゥに礼を言って背中から降りると、恍惚した表情で金の大木を撫でるシナバーと向かい合う。
『これで条件は、果たした』
「ああ、まさかこうも素直に案内してくれるとは、思っていなかったが」
『約束だから。けれど貴方も、知っている通り、この金塊は、国を支えている。だから──』
「だから、邪魔者は掃除すればいい」
シナバーはニイッと口の端を不気味に引き上げる。そして腰にくくり付けた鎖に下がる箱を開け、中からとっておきの秘策を取り出した。それは血に穢れた国宝【ラピスラズリ】。美しいはずの姿は、完全に彼の血に染まっていて禍々しい。ルルとファルベには、鼻が曲がりそうな嫌な臭いだ。
「なんて愚かな事を……!」
「約束が違うじゃんか!」
「何を言っている? 民の呪いは解いた。交渉はそこまでだ」
やはり懸念していた通りだ。この金塊全てを手に入れれば、国は崩れる。しかしそれを考慮して一部だけを頂戴するなんて品性は、シナバーは持ち合わせていない。もっと言えば、これまで大人しくしていて、余裕を持っていたのは国宝を手にしていたからだ。
ルルは自分たちを庇うために剣を抜き、前に出ようとしたアウィンを止める。
『アウィン、みんなと、ドーゥの後ろに』
「しかし」
『大丈夫』
ルルは、杖から引き抜いた剣を握るアウィンの汗ばんだ手をそっと包む。
離れさせるという事は、少なからず危険が伴うという事。何を考えているのか、何が起こるのか。尋ねたい事は山ほどあるが、アウィンはその全てをぐっと飲み込み、小さく息を吐く。止めようと、今にも飛びかかろうとするアルナイトたちと、待機しているドーゥの背後に向かった。
ルルはシナバーと静かに対峙する。
『最後の忠告をする。貴方は人だ。国宝は扱えない』
「いいや、心を知った哀れな世界の王よ。この石はもはや、私の血に飲まれた。そなたは間違えたのだよ。あの場で私を裁くべきだったと、後悔するといい!」
シナバーは亀裂から血を流す国宝を、天高くかかげる。
「国宝よ、我が願いを叶えたまえ! この国に生きる生命の命に、今ここに終止符を!」
シナバーの願いは分かりきっていた。金塊を自身のものにするためには、アルティアルが邪魔なのだ。だからやはり、国民の死を願う。
国宝が仄暗く輝く。赤黒く染まったラピスラズリから血が伝い、シナバーの口元に零れた。甘美な味。国宝は自分を選んだのだと確信できた。
『間違えたのは、貴方だ』
頭に並んだ音は、どこか残念そうに聞こえる。シナバーは戯言をと笑った。が、顔が体の違和感に気づいて不自然に強張る。
体が重い。いや、動かない。足元を見たシナバーの目は信じられないと言ったように見開かれた。しかしそれは、遠くで見ていたアウィンたちも同じ。アルナイトに至っては、恐ろしさのあまりフロゥに抱きついている。
「か、体が……金に」
そう、シナバーの足は、大木と同じ金になっていた。足だけには止まらず、金の侵食は徐々に体を這うように上を目指して染まっていく。
「な、なぜだ、王よ、私を裏切ったのか!」
『僕は、裁いていない。言ったでしょう? 全ては、貴方の行動次第だ……と』
それに忠告もした。だがそれを戯言だと選んだのは、シナバー自身だ。シナバーの体は半分、金塊になっていた。体の中まで染まっているのか、息が苦しい。臓器が締め付けられ、痛い。これが心臓に達したら……。
「やめろ、私の望みは違う! 王よ、慈悲を……!」
ただ見つめる虹の瞳に懺悔し、手を伸ばす。しかし神が愛でた双眸は冷たく、なんの感情も感じられない。広い洞窟の中、手の形をした金塊から国宝がこぼれ、地面に落ちる音が響き渡る。
『さようなら、シナバー』
悲鳴を残した手に薄青い両手は、ついに伸ばされなかった。
全てを知るアウィンたちは、驚いてルルを見た。ルルは、金塊と民の命を天秤にかけた。しかしそれは、どちらをとっても終わりにしか繋がらない。なぜなら民の命は、地下深くで国を支える金塊があってこそなのだから。もちろんそれは、ルルが1番分かっている。分かっていてなお、持ちかけたのだ。
シナバーの朱色の瞳が、探るようにじろじろとルルを見る。見られている視線を感じながらも、ルルは背筋を正し、世界の色を踊らせる虹の全眼でまっすぐに見つめ返す。相手の弱みを握り、幾千もの商談をしてきたシナバーにも、今のルルの思考を読み取る事はできなかった。
沈黙が続く中、頭の中に冷静な音が言葉を並べる。
『貴方にまず、呪いを、解いてもらう。確認ができたら、僕が、宝の場所へ、案内する』
「……宝の方を先にするのは?」
『貴方が、頷かなければ、僕は動かない』
シナバーにとって、その条件は呑まざるを得ない。金塊への仕掛けがもっと単純であれば、粘れただろう。しかし他でもない、世界の王が動かなければ、シナバーも身動きができなかった。
「宝を目前に裁かれるというのは、私も頷きがたい」
『僕は裁かない。約束をしよう。けれど全ては、貴方の行動次第だ』
シナバーはシワのある口元を手で撫で、夋巡する。王が裁かないと断言するなど、前代未聞。心があるからこそ、悪人の裁きよりも多くの命を取るのだ。本来世界の王は、命と罪を天秤になどかけず、迷わず罰する。だから恐れられるのだ。
シナバーは手元に隠れた唇をクッと引き上げると、布が重なった胸元を漁る。何かを取り出そうとする仕草に、アウィンは警戒に杖を構えた。だがルルは平然としている。シナバーから殺意や悪意が無いからだ。
懐から取り出した何かを、シナバーはルルたちへ向けて放り投げた。数回地面に跳ねて転がってきたのは、小さなレッドダイヤモンド。しかし中心は黒く染まっている。アウィンはうっと顔をしかめた。ここから呪いを強く感じる。胃から吐き出しそうになるほどの強さは、間違いなく国民に侵食する呪いの元凶。
ルルの瞳が、わずかに細くなった。まるで憐れむように、レッドダイヤを見つめている。呪いの媒体にされた石から、微かに悲痛な音が聞こえた。
「ルル」
ルルは囁きに頷くと『お願い』と、アウィンを見上げた。人間の作り出した魔法によっての呪いは、ただ宝石を破壊すればいいだけではない。魔法には魔法を持ってして、初めて壊せる。
アウィンは静かに頷き返し、杖から剣を抜くと切先をレッドダイヤへ振り上げる。魔術を込めた言霊を小さく唱えながら振り下ろした。硬いはずのダイヤは、魔術を施された刃を受け入れると、ガラスのように脆く砕け散った。
仄暗くも不思議と眩い閃光が辺りに走る。光が止んだ頃、人々は体の変化に気づいた。体が軽い。頭を重くさせていた、思考に渦巻いていた霧も風がさらったように晴れた。呪いが完全に解けたのだ。
『他にないかも、調べて』
「ええ、分かりました」
反抗しないという意思で、シナバーは両手をあげる。アウィンは彼の着る上着の上から触って、呪具が無いことを確かめた。呪いの気配もない。信用して良さそうだ。
『じゃあ、僕の番だね。案内しよう。貴方が望む、宝の元へ』
ルルは女神像の下に被せた砂を払い、現れた石板に埋め込まれた【ルルの石】に両手を添える。指の合間から漏れる光が小さくなると、祭壇広場に小さな振動が起こる。同時に、石板が石を中心に二手に分かれた。しかしその先は鉱石で埋まっていて、道が無い。薄青い手がそっと撫でると、まるで氷が溶けるように消え、粗削りな階段が暗闇に続いているのが見えた。
ルルは立ち上がると、顔を出した道に気持ちを昂らせているシナバーに振り返る。
『僕のあとに、付いてきて』
「承知した」
「ルル、私も同行してよろしいですか?」
「お、オレたちも!」
『いいよ。マリンは、怪我をしているから、ここに居て。他のみんなも、戻るまで、待っていて』
洞窟の中はそもそも狭い。加勢する人数が多ければ多いほど、逆に危険が伴うのだ。しかしシナバーと2人きりにはさせたくない。
見守っていた国民たちは、ルルを信じてみな頷く。女神像の下へ消えていく6人の背中を静かに見送った。
薄暗い洞窟の中で、アウィンが小さな灯りを灯す。階段は気を抜けば滑りそうに雑な作りだが、明らかに自然ではなく誰かの手が入っているのが分かる。足元に注意しながら階段を抜け、湖に出た。
「だけどこんな場所、よく見つけられたな」
「古い紙があって、そこに書いてあったんだ」
「ここから先は、どうなっているのですか?」
『船を、作ったけど……』
「あっそうじゃん滝じゃん!」
別の行き方もあるが、小さな足場しかない。この人数では無理だ。できるなら、この湖全体を鉱石にできないだろうか。さすがにルルだけでは、可能だが体力の消費が大きすぎる。
しかししばらく悩ましそうにしていたルルは、パッと上げた顔を振り向かせる。そうだ、今は同胞がいるじゃないか。
『ファルベ、僕と一緒に、湖を、鉱石にしよう。渡れるよう、階段のようにして。できる?』
「うん、一緒にならできると思う」
人間の血が混ざっているとしても、経験からして、ファルベの方が鉱石を作る正確さは高いだろう。ルルはファルベの作る鉱石の動きを見て、支える役割をする事にした。
2人で手を湖に近づけ、手元へ意識を集中させる。湖の中で生きる微生物によってできる小さな波が、淡い桃色と白を含んだ虹の鉱石に染まっていく。もちろん、微生物に影響が少ないように、鉱石にするのは重量に耐えられるギリギリの表面だけだ。
やがて滝壺に辿り着いた感覚が手に伝わり、2人は手を離した。ファルベは久しぶりにこんなに大きなものを鉱石にしたと、深く息を吐く。ルルも体力を消費したろうに、表情は全く変わってない。それどころかファルベを見る目は少し心配そうだ。疲れはしたが、こんなところでへばってはいられないと、ルルに「大丈夫だよ」と笑って見せた。
『足元、気をつけてね』
一行はルルを先頭に、念の為いつでも怪しい行動に対応できるよう、シナバーを間に挟んでアウィンたちが続いた。
薄い表面だけを鉱石にしたからか、湖の上を歩くと、微生物が振動で反応して足元を光らせた。洞窟の幅が1人ずつ並んでしか通れないほど細くなると、壁が星を散りばめたように明るく、手元の灯りは必要なくなった。
星のような明かりは、微生物が成長した小さな蝶たちだ。しかし以前のように自由に飛び回ってはいない。まるで警戒するかのように、壁に止まっている。
狭い道が終わりを告げたとともに、先頭を歩いていたルルの足が止まる。足元を見れば、そこから先は絶壁になっていた。恐る恐る覗くと、滝壺は薄暗くなるほどに遠い。
「……ルル、アルナイト、本当にこんな高いところから落ちたのですか?」
「えっ落ちたのかっ?!」
「えへへ……」
『気づくのに、遅れちゃって』
「あでも、ルルが膜を作ってくれたから、全然怪我しなかったぞ」
「そういう問題じゃ無いと思うよ」
散々な目に遭っただろうに、どうしてそう呑気に笑っていられるのだろうか。ファルベは苦笑いし、アウィンとフロゥはため息を吐く。一方で、シナバーはただ静かに彼らを眺めていた。
世界の王が人間に育てられ、心を手に入れた。しかもどの王も持っていなかった怒りや、悲しみという感情も持っている。そんな噂は所詮ただのほら吹きだと思っていた。しかし、さっきまで交渉を持ちかけていた人物は確かに王の姿だったのに、今のルルはまるで別人。
(なんて好都合だ)
今まさに、世界の王に裁かれない人間となる。きっと歴史に名を刻む事になるだろう。何もかもが自分の算段通り。いや、嬉しい誤算も加わって、まるで神が味方でもしてくれているかのようだ。シナバーはそう思って疑わない。ルルの言っていた「貴方の行動次第」だという言葉の真意も考えず。
滝は垂直だが、飛沫などを利用して足場を作った。足場はそれなりに大きく、ルルが作った鉱石の手助けもあって、数人が乗っても壊れないようにできている。しかし命綱のようなものはないため、油断は禁物だ。みな慎重に降りていく。それまで1番下は薄暗く、目を凝らさなければ見れなかったが、やがてハッキリと道が見えてきた。
「これから先は?」
『案内して、くれる子が居るから、大丈夫』
「人が居るのですか?」
『ううん』
ルルの小さく踵のある新しい靴が、少しの高さから飛び降りた事で、カツンと音を鳴らす。甲高い音は、洞窟となった道の向こう側へ反響していった。
洞窟は先ほどの空間とは打って変わり、眩しい銀色。しかし反射のせいか、不思議と先は暗くて見えづらい。シナバー訝しそうに周囲を見渡す。案内人のような存在は見当たらない。
「何も見えんが?」
『来るよ』
ルルは黒くなっている先をじっと見つめた。みな虹の瞳の視線に従って目をすがめる。すると、コツンコツンと足音が聞こえてきた。人間とは違う、四つ脚のリズムだ。見えたのはドーゥ。立派な鉱石のツノを持ち、大きな体。アルナイトは「あ!」と嬉しそうな声をあげる。
ドーゥはルルとアルナイトへゆっくり歩み寄り、挨拶するように頭を軽くぶつける。それからアウィンとフロゥ、ファルベの匂いを嗅ぎ、同じように頭を擦り付けた。アウィンたちは、くすぐったそうにしながら頭を優しく撫でる。
「ドーゥとは、珍しいですね」
「初めて見た……」
「この個体、鉱石を主食にしてるみたいだ。もしかして、ここに住んでいるのか?」
『うん。この子はここで、生きてるんだ』
「……門番とはコレの事か」
少し離れて見ていたシナバーは、なるほどと頷く。書物の中に2つの門番の存在が記載されていた。ドーゥは魔獣の中でも警戒心が強く、善悪を嗅ぎ分ける力に優れている。だから門番には最適なのだ。きっと世界の王無しに、この門番をくぐり抜けられないだろう。
ドーゥは品定めするような視線に気づくと、柔らかな表情を険しくさせ、シナバーへ低く唸る。ルルはドーゥの太い首を撫でて宥めた。
「キュウ、クゥー」
『ごめんね、休ませてあげた、ばかりなのに。でも、これで最後だから、案内、お願い』
ルルはドーゥの大きな頭をそっと抱きしめ、伝わらずとも囁くように頭に言葉を並べる。するとドーゥは彼の頬を舐めると、屈んだ。意思は伝わってくれたようで、ルルは「ありがとう」と言うと、大きな背中に乗った。進んでいくドーゥのあとを、様子を伺っていた5人もついて行く。
道は確かに険しいものが多い。しかし過去、大魔法使いが世界の王のために用意した道もある。そこは粗くも比較的なだらかな足場だ。ドーゥは人数も見て、そこを通ってくれた。おかげで負傷者は出ず、無事に金塊へ続く一本道へ辿り着く。
世界の王の手が必要な扉。そこにルルが手を添えると、洞窟全体に振動が起こり、壁はゆっくりと口を開いた。
ルル以外の仲間たちは、目的地に近づけば近づくほどに、不安そうな表情になっていく。シナバーはもう呪具を持っていないのは確か。しかしやましい考えは持っているはずだ。今大人しいのは、ただ金塊にありつくため。ただ金塊を手に入れるだけで気が済む男ではない。
不安に駆られ、アルナイトがドーゥに乗るルルに走り寄る。ルルは心配そうなアルナイトをドーゥの上に引き寄せ、小さく微笑みながら「大丈夫だよ」とだけ言った。約束は約束。しかし誰の命も奪わせない。世界の王としてではなく、この国や人々を愛した自分として。
「奥が明るくなってきた」
『そろそろだね』
道の終わりだと思える場所から、淡く金色の光が漏れている。光を追いかけるように歩いていくと、やがて部屋に足を踏み入れた。みな、前面に広がる黄金の大木に驚きの声をあげた。
こんなに大きな金塊を見る機会は、きっと五大柱でも無い。それほど金は貴重だ。だからこそ、シナバーの人生には必要だった。これで最高級の贅沢ができる。
ルルはドーゥに礼を言って背中から降りると、恍惚した表情で金の大木を撫でるシナバーと向かい合う。
『これで条件は、果たした』
「ああ、まさかこうも素直に案内してくれるとは、思っていなかったが」
『約束だから。けれど貴方も、知っている通り、この金塊は、国を支えている。だから──』
「だから、邪魔者は掃除すればいい」
シナバーはニイッと口の端を不気味に引き上げる。そして腰にくくり付けた鎖に下がる箱を開け、中からとっておきの秘策を取り出した。それは血に穢れた国宝【ラピスラズリ】。美しいはずの姿は、完全に彼の血に染まっていて禍々しい。ルルとファルベには、鼻が曲がりそうな嫌な臭いだ。
「なんて愚かな事を……!」
「約束が違うじゃんか!」
「何を言っている? 民の呪いは解いた。交渉はそこまでだ」
やはり懸念していた通りだ。この金塊全てを手に入れれば、国は崩れる。しかしそれを考慮して一部だけを頂戴するなんて品性は、シナバーは持ち合わせていない。もっと言えば、これまで大人しくしていて、余裕を持っていたのは国宝を手にしていたからだ。
ルルは自分たちを庇うために剣を抜き、前に出ようとしたアウィンを止める。
『アウィン、みんなと、ドーゥの後ろに』
「しかし」
『大丈夫』
ルルは、杖から引き抜いた剣を握るアウィンの汗ばんだ手をそっと包む。
離れさせるという事は、少なからず危険が伴うという事。何を考えているのか、何が起こるのか。尋ねたい事は山ほどあるが、アウィンはその全てをぐっと飲み込み、小さく息を吐く。止めようと、今にも飛びかかろうとするアルナイトたちと、待機しているドーゥの背後に向かった。
ルルはシナバーと静かに対峙する。
『最後の忠告をする。貴方は人だ。国宝は扱えない』
「いいや、心を知った哀れな世界の王よ。この石はもはや、私の血に飲まれた。そなたは間違えたのだよ。あの場で私を裁くべきだったと、後悔するといい!」
シナバーは亀裂から血を流す国宝を、天高くかかげる。
「国宝よ、我が願いを叶えたまえ! この国に生きる生命の命に、今ここに終止符を!」
シナバーの願いは分かりきっていた。金塊を自身のものにするためには、アルティアルが邪魔なのだ。だからやはり、国民の死を願う。
国宝が仄暗く輝く。赤黒く染まったラピスラズリから血が伝い、シナバーの口元に零れた。甘美な味。国宝は自分を選んだのだと確信できた。
『間違えたのは、貴方だ』
頭に並んだ音は、どこか残念そうに聞こえる。シナバーは戯言をと笑った。が、顔が体の違和感に気づいて不自然に強張る。
体が重い。いや、動かない。足元を見たシナバーの目は信じられないと言ったように見開かれた。しかしそれは、遠くで見ていたアウィンたちも同じ。アルナイトに至っては、恐ろしさのあまりフロゥに抱きついている。
「か、体が……金に」
そう、シナバーの足は、大木と同じ金になっていた。足だけには止まらず、金の侵食は徐々に体を這うように上を目指して染まっていく。
「な、なぜだ、王よ、私を裏切ったのか!」
『僕は、裁いていない。言ったでしょう? 全ては、貴方の行動次第だ……と』
それに忠告もした。だがそれを戯言だと選んだのは、シナバー自身だ。シナバーの体は半分、金塊になっていた。体の中まで染まっているのか、息が苦しい。臓器が締め付けられ、痛い。これが心臓に達したら……。
「やめろ、私の望みは違う! 王よ、慈悲を……!」
ただ見つめる虹の瞳に懺悔し、手を伸ばす。しかし神が愛でた双眸は冷たく、なんの感情も感じられない。広い洞窟の中、手の形をした金塊から国宝がこぼれ、地面に落ちる音が響き渡る。
『さようなら、シナバー』
悲鳴を残した手に薄青い両手は、ついに伸ばされなかった。
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