宝石少年の旅記録

小枝 唯

文字の大きさ
上 下
177 / 210
【宝石少年と芸術の国】

リベルタの商人

しおりを挟む
 アルナイトの灰色をした大きな瞳が、とある絵画をじっと見つめている。工房に来てもう二時間は居るのだが、微動だにせず取り憑かれたように見ていた。唯一の観賞者から熱烈な視線を受けているのは、二日前にルルを描いたラフ画。色鮮やかなのに、不思議と静かな美しさがある。
 アルナイトは一つの事を始めると、過集中してしまう癖がある。一度集中すれば、周囲の物音も気配も遮断して、それしか見えなくなるのだ。今まさに、いつの間にか背後に居る人物に気付けていない。

「仕上げんのか」
「うっわ!」

 心臓が胸を突き破る勢いで、バクバクと鳴っている。アルナイトは急に現実へ引き戻した声に振り返ると、ピンと伸びていた背中が、力が抜けてへなっと丸くした。

「せんせぇ……急に声かけないでよぉ」

 急にではないし、結構長い間後ろに居た。しかし気付かれないのはいつもの事で、すっかり慣れたジオードは小さく鼻を鳴らす。

「いつのだ?」
「え? あーこれこないだ、ルルが来た時に描かせてもらったんだけどさ。あ、時間は二時間ね」
「あ? アイツは人間じゃないのか」
「オリクトの民だよ。肌の色もオレらと結構違うんだぜ?」

 ジオードは顔をしかめると、濁った目を数回瞬かせて目尻を指で軽く押す。

「……だからあの格好か」
「そうそう、綺麗だよなぁ」
「で? ただ綺麗で見てたのか? そんな余裕があるようには見えんがな」

 言い方に棘はあるが、ジオードは内心少し心配もしていた。アルナイトが想いを込め、長い間睨めっこし続けた絵。それを知っているからこそ、まだ描き上がっていない事に、他人ながら焦りを感じていた。
 アルナイトの絵は最初から最後まで細い筆で、下書き無しで仕上げられる。もうその頭の中で完成し、それを正確にキャンバスに落とすのだ。それは大したものだが、今回の作品はまだ途中しかできていない。どうやらまだ、頭の中の絵が完成しきっていないようだ。

「外で、リベルタの商人が来ている。見てきたらどうだ」

 つまりは気分転換を勧めている。しかしアルナイトには響かないようで、ジオードの提案にではなく、絵に対して首を傾げている。
 アルナイトはおもむろに筆を取る。あっという間に自分の世界に沈み込んだ彼女に、ジオードは仕方なさそうに息を吐いた。こうなればしばらく現実に帰ってこない。

「また来るぞ」

 返事は当然帰ってこない。分かっていてもひと言残して、ジオードは自分の工房へ帰った。

 絹のような髪が、数ミリ程度の筆で描かれる。まるで星空のような輝きを見せる髪は、今にも触れそうだ。暗い血色をした唇からは呼吸が聞こえてきそうで、こちらに向けられる仮面の下は見た事ないのに、どうしてか視線を感じる。
 筆が離れたキャンバスの中に、ルルが居た。透明な鉱石の中で静かに座り、絵の外を見ている。時間にして三時間。見事な出来栄えだ。
 頭の中でカチリと何かがハマる音がした。それまで絵画に掛かっていたモヤが、一気に晴れていく。その瞬間、アルナイトは勢いよく立ち上がった。

「分かった!」
「うおっなんだ急に」

 声に反応したのはジオード。自分の絵に区切りがついたので、また様子を見に来たのだ。しかしアルナイトは彼がさっき居た事をすっかり忘れているのか、明るい灰色の目を不思議そうにパチクリさせる。
 きっとこのあと「先生なんで居るの?」と言われるだろう。そう言われるより先に、ジオードが口を開いた。

「様子を見に来ただけだ」
「そっか、びっくりしたぁ」
「それは俺のセリフだ。で? 何が分かったんだ」

 ジオードは尋ねながら、仕上がったであろう肖像画に視線を落とす。いつも以上に夢中になったのか、三時間で完成させたのはたいしたものだ。ミリ単位の違和感はあるが、実物を見れなかったのだから仕方ない。見て描けばすぐ直る。

「完成したんだ、頭の絵!」

 アルナイトは目を輝かせて興奮気味だ。芸術祭で発表する絵のイメージがついたという事だろう。
 工房のイーゼルに掛かった、大きな絵。月明かりが差し込む水中のような冷たい青の中、白く輝く星空のに見える花が咲き乱れている。奥で巨大な花が咲いているのだが、彼女いわく、ここに何を座らせればいいか、ずっと分からなかったのだそうだ。

「なんか、ルルって不思議な綺麗さがあって夢中になってさ……考えたらピッタリだって!」
「まあ、励めよ」
「えへへ、上手く描けたら褒めて!」
「何言ってんだ」

 ジオードは呆れたように鼻を鳴らす。アルナイトは不貞腐れるように口を尖らせるが、すぐ笑顔になった。優勝してもしなくても、全力で向き合った絵をジオードは必ず評価してくれる。そして、不器用にも頭を撫でてくれるのだ。それを知っているから頑張れる。
 アルナイトは画材を並べながら頭を捻る。やっぱりこの絵には、絵の具にならない鉱石が必要だ。砕いて、絵の具に混ぜて乗せれば美しい煌めきが加わる。ふと、首に巻いた国石、ラピスラズリが目に入った。

「ねえ先生、やっぱり国宝って綺麗?」
「あん? なんだ急に」
「ん~なんとなく」

 何故ジオードに尋ねるのか。それは、彼が芸術祭で国宝を手にした事があったからだ。
 八年前、二人がアルティアルに訪れた年に、ちょうど芸術祭が開かれた。途中参加だったが、見事ジオードの絵が優勝。その絵は、フロゥが夢中になったオリクトの民を描いたものだ。
 しかしジオードは国宝をただ一目見ただけで、何かしようとはしなかった。目的が違うからだ。別に彼は、国宝を扱いたいから参加したのではない。ただ自身の実力を知るための、優勝という実績が欲しかったのだ。

「まあ、国宝と言われるだけはあったな」

 八年も経ったが、記憶の中では色褪せない。目を閉じればいつでも思い描けるくらい、印象に残っている。きっと死ぬ時に見る走馬灯で、必ず鮮やかな姿を見せるだろうと思えるほど。
 国宝は、他の鉱石とは違う。世界の王が生み出した、生命の源だ。生き物には強すぎる。一度見ただけで、ジオードにとっては充分だった。

「国宝ってさ、なんでもお願い聞いてくれるのかな」
「大抵の事はできるだろう」
「じゃあさ、忘れちゃった事とか思い出せるかな?」
「は?」
「だって先生との思い出、もっと昔のも思い出したいもん」

 その言葉に、ジオードは濁った目を見開くと、表情を固めるように眉間を寄せた。それに気付かないアルナイトは、彼が口を開きかけた事も知らず、道具を片付けて立ち上がる。

「ルルにモデルお願いしてくる」
「あ、おい」
「晩御飯には帰りまーす!」

 止めようとした少しシワのある手は、虚しく空気を掴む。スケッチ用の手帳とペンを持って、アルナイトは元気に手を振って外へ出て行った。
 閉まった扉を、ジオードはもどかしそうにしばらく眺めていた。

(……何を焦る必要がある。俺は俺の絵を描かねば)

 半ば自分に言うように胸で呟き、自分の工房へ戻る。そのままになっている椅子に腰を下ろして筆を取れば、すぐに絵に没頭できた。今はとにかく思考を断ちたい。それなのに、こんな時に限って筆が動かなかった。
 頭の中がうるさい。ずっともしもを考えている。もしアルナイトが優勝したら。彼女の願いが、空白の記憶を取り戻す事だったら?

(何が、俺との記憶を思い出したいだ。お前の記憶は……)

 彼女が優勝するかなんて確実はない。しかし弟子を名乗るだけある技術を持っている。優勝候補だ。負かせると言えば、フロゥかジオードだけ。だがジオードは過去優勝したため、参加者ではなく審査員側だ。
 フロゥの絵も立派だ。しかしアルナイトが完璧な絵を描けば、勝てるかは難しい。邪魔をするのは、芸術家としてありえない。

「……アルナイト、俺はそんなに間違えたか」
「芸術家に悩みは付きものだね」
「!」

 頭を邪魔する自分の声に、聞き知った声が混ざった。突然の事で、ジオードにしては大きく肩を跳ねさせる。勢いよく振り返った彼の様子に笑ったのは、マリンだった。
 すぐ顔をしかめるジオードに、マリンは土産を持った手を振って見せる。

「悩みの味方は甘い物だろ? どうだい?」
「作業中なのが見えんか」
「筆も置いて?」

 いつの間にか、持っていたと思っていた筆を置いている事にジオードは気付いた。
 マリンは時々、ジオードの工房を訪ねる。家の地下が工房のため、外に出ず作業ができた。だから出不精になってしまう彼を連れ出しに来るのだ。
 偏屈なジオードと楽観主義なマリン。一見して気が合わないように見えるが、逆に仲がいい。長寿の耳長族であるマリンの見た目は若いが、歳で言えばジオードよりも上だ。それもあってか価値観が似ていて、出会ってから八年、交流が続いている。ジオードにとって、数少ない友だ。
 マリンは近くの椅子に腰を下ろし、二人の間で茶菓子を包んだ布を開ける。中は砂糖でできた丸いお菓子とクッキー。砂糖菓子の中には、ほろ苦いチョコが入っている。これはジオードのお気に入りだ。

「さっきアルナイトに会ったよ。なんだか上機嫌だったなぁ」
「絵が見えたんだと」
「じゃあ安心だね。調子が悪そうだって、心配してたじゃないか」
「…………あの旅人に、アルナイトの性別がバレた」
「なんで?」
「臭いがなんだとか言ってたな」
「あ~、あの子目が見えないからかな。きっと他が敏感なんだね」

 マリンはアルナイトの性別も、二人の関係もジオードの口から聞いていた。彼が全て話したのはきっと、少しでも救われたかったからだろう。マリンは全てを知っても、特に嫌悪したりとやかく言う事もしなかった。生きていれば色々ある。お互い様なのだ。

「ジオード」
「なん、ぐっ」

 マリンはジオードの口に、砂糖菓子を突っ込んだ。急になんだと睨まれ、彼は可笑しそうに笑った。ジオードは仕方なく口の中に転がる甘ったるい鉱石のようなそれを破る。中から、トロッとした苦いチョコレートが溶け出した。
 大人しく飲み込み、コーヒーで流す様子をマリンは微笑んで見守った。ジオードはアルナイトの事になると冷静さが欠ける時が度々ある。

「大丈夫だよ。ルルは傷つけるような子じゃない。いい友達になれるよ。僕らみたいに」
「何を馬鹿な。昨日今日の他人に」
「もうアルナイトにとっては他人じゃない」
「他人だ。アイツはいつ殺されるかも分からん」
「ジオード、もうここは安全だ。それに彼女は充分大人だし、自分で選択できる」
「それを間違えたらどうするんだ」
「人生なんだ。間違えるのだって仕方ない」
「それで死んだらどうする……!」
「そうならないためにお前がいるんだろう? もう少し自分を信じろ」
「信じろだと? 俺はもうすぐ何も見えなくなる。そんなヤツに何ができるって言うんだ」

 ジオードの目は、ほとんど見えていない状態だった。視力だけではなく、色彩も見れなくなっている。まだ僅かな色は分かるが、完全に見えなくなるのも時間の問題だ。
 ここに来てから、年々色が分からなくなってくる。それは誰よりも絵の世界に溺れた彼にとっては絶望だった。だからか、見えなくなればなるほど、キャンバスと向かい合う時間が増えている。

「治る方法は、僕も探してるよ。リベルタにはいい医者もいるんだ。やっぱり相談しよう」
「そんなのは理想論だ」
「お前は悲観しすぎるんだよ。ジオード、アルナイトを思うのは分かるけど、頼むから自分の事も考えてくれ」

 マリンの声は悲痛そうだった。それが今はジオードにとって心を掻き立てる。やがてマリンから顔を逸らすように顔を手で覆った。

「今日は帰れ」
「……ジオード」
「帰れ」

 マリンは出かけた言葉を飲み込み、椅子から腰を上げて工房から出て行った。
 ジオードは見送る事なく、少しの間意味もなくそのまま座っていた。やがてため息とは言えない息を深く吐き、工房の階段を上がる。部屋に出た時、ドアを誰かがノックした。静かな音は、マリンがよくするノックの音に似ている。
 帰れと言ったのにまた来たのかと、ジオードは眉をしかめながらもドアを開ける。

「帰れと言った……あ?」
「こんにちは、ご主人ですか?」

 ドア前に居たのは、マリンではなかった。見覚えのない顔で、この国の者ではないのが分かる。背の曲がった老人だった。しかしにこにこした顔は親しげだが、何やら胡散臭い。
 疑心の目で睨むジオードに男は柔らかな口調で言った。

「あぁ、貴方が巨匠のジオード殿。お会いしとうございました」
「なんだ貴様は。勝手に名を知られる筋合いはないぞ」
「アタクシ、リベルタから参りました商人でございます。こういった物を売っておりまして」

 商人が取り出したのは、一本の筆。それは持ち手が半透明のダイヤでできた代物だった。だがジオードは装飾など興味ない。彼が見たのは、筆の質。
 視力が衰えても、知識が補う目利きの力は健在だ。微かに光が反射する筆は確かに良質な物だ。

「お話、聞いてくださいますかな?」
「……入れ」

 ジオードはじっと男を品定めするように見つけたが、最後には彼を部屋に招いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...