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辺境の国ハルディラ。
かつては大陸を制覇せんとするほど栄華を極めたこの国は、先王の時代に勃発した反乱の鎮圧失敗を機に徐々に勢いを落とし、辺境の小城へと追いやられた。辛くもいくつかの領土を取り返したが、その栄光は今や見る影もない。
先王は、先の戦いでの敗戦は隣国との国境に居住する先住部族エンヴィの敵の手引きが招いたとして、彼らを厳しく弾圧した。繰り返される襲撃にたまりかね、首長は直接王の元へ出向き申し開きをしたが、先王は頑として許さずそのまま殺害、それがエンヴィの生き残りたちに強い憎しみを残した。
現王グラモスは父王のそういった愚行こそが反乱を招いたのだと考え、明らかな迫害は行わなかった。しかし、だからといって特段彼らを保護するような手筈も取らなかった。結果、エンヴィとの確執、戦火の火種を残したままとなった。
グラモス王は、領土回復に躍起だった先王の時代に疲弊した国力の回復を第一とした。しかし、決して国民にとって融和的な施策がとられたわけではなく、人々は豊かではなかった。それでもグラモス王は、先王を反面教師として、燻る不満が爆発するほどには抑圧しなかったため、先代よりは良いと思わせることで反乱を抑えていた。それでも反乱が起きたときは、どんな小さなものでも徹底的に潰した。それも他の国民に対する見せしめだった。
グラモス王は王位継承争いなどが起こることも嫌い、後妻を娶ったり外で子を作ったりすることもなく、派閥を一掃し権力を一極集中させた。自分の言うことをきく臣下だけを集め執り行われる政は、徐々に腐敗していった。そのことに王自身が気付くことはなく、進言できる忠臣も最早いなかった。
王の一人息子であるアーティフ王子は、争いを嫌う平和的な気質だと人々の間で噂され早期の世代交代が密かに望まれていた。しかし、それは根拠のないただの国民の希望的観測だった。王子は唯一の王位継承車でありながら、ほとんど公の場に姿を現すことがなかった。
まことしやかに流れる下賤の噂話を耳にした王は、王子の無能ぶりを吹聴するよう図る。若き王子は何事にも無気力で各才がなく、後世に期待はできそうもない、と。そうしていつしか、アーティフ王子に期待する人々の声は聞こえなくなっていた。
誰一人、王子の本当の姿を知るものはいなかった。彼が13歳の時、母を亡くしてから後のこの十年間は誰一人。
かつては大陸を制覇せんとするほど栄華を極めたこの国は、先王の時代に勃発した反乱の鎮圧失敗を機に徐々に勢いを落とし、辺境の小城へと追いやられた。辛くもいくつかの領土を取り返したが、その栄光は今や見る影もない。
先王は、先の戦いでの敗戦は隣国との国境に居住する先住部族エンヴィの敵の手引きが招いたとして、彼らを厳しく弾圧した。繰り返される襲撃にたまりかね、首長は直接王の元へ出向き申し開きをしたが、先王は頑として許さずそのまま殺害、それがエンヴィの生き残りたちに強い憎しみを残した。
現王グラモスは父王のそういった愚行こそが反乱を招いたのだと考え、明らかな迫害は行わなかった。しかし、だからといって特段彼らを保護するような手筈も取らなかった。結果、エンヴィとの確執、戦火の火種を残したままとなった。
グラモス王は、領土回復に躍起だった先王の時代に疲弊した国力の回復を第一とした。しかし、決して国民にとって融和的な施策がとられたわけではなく、人々は豊かではなかった。それでもグラモス王は、先王を反面教師として、燻る不満が爆発するほどには抑圧しなかったため、先代よりは良いと思わせることで反乱を抑えていた。それでも反乱が起きたときは、どんな小さなものでも徹底的に潰した。それも他の国民に対する見せしめだった。
グラモス王は王位継承争いなどが起こることも嫌い、後妻を娶ったり外で子を作ったりすることもなく、派閥を一掃し権力を一極集中させた。自分の言うことをきく臣下だけを集め執り行われる政は、徐々に腐敗していった。そのことに王自身が気付くことはなく、進言できる忠臣も最早いなかった。
王の一人息子であるアーティフ王子は、争いを嫌う平和的な気質だと人々の間で噂され早期の世代交代が密かに望まれていた。しかし、それは根拠のないただの国民の希望的観測だった。王子は唯一の王位継承車でありながら、ほとんど公の場に姿を現すことがなかった。
まことしやかに流れる下賤の噂話を耳にした王は、王子の無能ぶりを吹聴するよう図る。若き王子は何事にも無気力で各才がなく、後世に期待はできそうもない、と。そうしていつしか、アーティフ王子に期待する人々の声は聞こえなくなっていた。
誰一人、王子の本当の姿を知るものはいなかった。彼が13歳の時、母を亡くしてから後のこの十年間は誰一人。
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