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朝目覚めると、同じベッドにユミル様が眠っていた。
私達は結婚をしたのだ。
だからこうして同じベッドで眠っている。
ユミル様との結婚は幸せだと思う。
だって彼は優しいし、私のことを溺愛し過ぎているぐらい愛してくれている。
「…………」
彼の寝顔を見て癒される。
悪魔と呼ばれる人なのに、寝ている姿はとても可愛い。
私は彼の顔にスリスリしてさらなる癒しを求める。
しかし。
「リーン様。今すぐ逃げましょう」
「……あの、コニーさん。私、ユミル様と別れるつもりはありませんよ?」
コニーさんが、コソコソと盗人のような動きで、私たちの寝室へと侵入してくる。
彼女はまるで悪からヒロインを助けにきた英雄のような顔立ちをしていた。
「あなたはユニル様に惑わされているのでございます。いいですね? 私と共に真実の愛を生きるのです」
「何が真実の愛だ? 真実を見なければいけないのはお前の方だろ、このバカが!」
コニーさんの気配に起きたユミル様は、コニーさんの頬を片手でムギュッと掴む。
彼女は喋りにくそうな表情で口を開く。
「おはおうおあいあう、ういうああ」
「何を言っているんだ? それに何をしているんだ、お前は!」
ユミル様の手から離れ、コニーさんは言う。
「おはようございます、ユニル様。私は悪魔であるあなたの魔の手からリーン様を救おうと――」
「俺の悪魔の異名……お前が一番バカなことだと笑っていたよな? 俺に似つかわしくないと――」
「前言撤回いたします。ユミル様は悪魔そのもの。ですので、リーン様一緒に逃げましょう」
朝っぱらからギャーギャー騒ぐ二人。
いつも通り過ぎて、私は平然と起き上がる。
するとユミル様も起き上がり、私の頬に顔を引っ付ける。
「こいつは俺が幸せにする! だからお前は侍女らしく、俺たちの行く末を見届けておけ!」
コニーさんも私の頬に頬を寄せる。
「ふざけんなください、ユミル様。本当にリーン様を幸せにできるのは私でございます。それは彼女もよく理解しているはずなのです」
「そんなわけあるか! リーンを幸せにできるのは俺しかいないんだよ! 朝から寝言を言ってるんじゃない!」
二人は私に頬を寄せながら怒鳴り合っている。
これに慣れてしまった自分も怖いけど……本当になんとも思わなくなってしまった。
しかしこんな大騒ぎ、いつまでするつもりなのだろうか?
もうなんとも思わなくなってけれど……できるならもっと穏やかに暮らしていきたい。
「いいからリーンから離れろ!」
「離れるのはそっちだろうがでございます!」
絶対に譲り合わない二人。
そんな二人は異様なまでに私を愛してくれている。
いつまでも子供みたいに言い合う二人を見て、私は呆れつつも笑う。
ここで私たちの物語は終わりだが、これは……ハッピーエンドと言っていいのだろうか?
本当に、ね?
仲良くしてくれませんかね。
おわり
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