『悪魔』と呼ばれる侯爵様に拾われたが、溺愛されすぎて戸惑っています。

亜綺羅もも

文字の大きさ
上 下
14 / 14

14

しおりを挟む
 朝目覚めると、同じベッドにユミル様が眠っていた。
 私達は結婚をしたのだ。
 だからこうして同じベッドで眠っている。

 ユミル様との結婚は幸せだと思う。
 だって彼は優しいし、私のことを溺愛し過ぎているぐらい愛してくれている。

「…………」

 彼の寝顔を見て癒される。
 悪魔と呼ばれる人なのに、寝ている姿はとても可愛い。
 私は彼の顔にスリスリしてさらなる癒しを求める。

 しかし。

「リーン様。今すぐ逃げましょう」
「……あの、コニーさん。私、ユミル様と別れるつもりはありませんよ?」

 コニーさんが、コソコソと盗人のような動きで、私たちの寝室へと侵入してくる。
 彼女はまるで悪からヒロインを助けにきた英雄のような顔立ちをしていた。

「あなたはユニル様に惑わされているのでございます。いいですね? 私と共に真実の愛を生きるのです」
「何が真実の愛だ? 真実を見なければいけないのはお前の方だろ、このバカが!」

 コニーさんの気配に起きたユミル様は、コニーさんの頬を片手でムギュッと掴む。
 彼女は喋りにくそうな表情で口を開く。

「おはおうおあいあう、ういうああ」
「何を言っているんだ? それに何をしているんだ、お前は!」

 ユミル様の手から離れ、コニーさんは言う。

「おはようございます、ユニル様。私は悪魔であるあなたの魔の手からリーン様を救おうと――」
「俺の悪魔の異名……お前が一番バカなことだと笑っていたよな? 俺に似つかわしくないと――」
「前言撤回いたします。ユミル様は悪魔そのもの。ですので、リーン様一緒に逃げましょう」

 朝っぱらからギャーギャー騒ぐ二人。
 いつも通り過ぎて、私は平然と起き上がる。

 するとユミル様も起き上がり、私の頬に顔を引っ付ける。

「こいつは俺が幸せにする! だからお前は侍女らしく、俺たちの行く末を見届けておけ!」
 
 コニーさんも私の頬に頬を寄せる。

「ふざけんなください、ユミル様。本当にリーン様を幸せにできるのは私でございます。それは彼女もよく理解しているはずなのです」
「そんなわけあるか! リーンを幸せにできるのは俺しかいないんだよ! 朝から寝言を言ってるんじゃない!」

 二人は私に頬を寄せながら怒鳴り合っている。
 これに慣れてしまった自分も怖いけど……本当になんとも思わなくなってしまった。

 しかしこんな大騒ぎ、いつまでするつもりなのだろうか?
 もうなんとも思わなくなってけれど……できるならもっと穏やかに暮らしていきたい。

「いいからリーンから離れろ!」
「離れるのはそっちだろうがでございます!」

 絶対に譲り合わない二人。
 そんな二人は異様なまでに私を愛してくれている。
 いつまでも子供みたいに言い合う二人を見て、私は呆れつつも笑う。

 ここで私たちの物語は終わりだが、これは……ハッピーエンドと言っていいのだろうか?

 本当に、ね? 
 仲良くしてくれませんかね。

 おわり
 


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 最後までご覧いただきありがとうございます。
 これからも恋愛物を中心に投稿していきますので、よろしければお気に入りユーザー登録をしてお待ちいただけると幸いです!
しおりを挟む
感想 32

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(32件)

セライア(seraia)
ネタバレ含む
解除
dragon.9
2021.06.29 dragon.9
ネタバレ含む
解除
Vitch
2021.06.29 Vitch
ネタバレ含む
解除

あなたにおすすめの小説

ある日突然、醜いと有名な次期公爵様と結婚させられることになりました

八代奏多
恋愛
 クライシス伯爵令嬢のアレシアはアルバラン公爵令息のクラウスに嫁ぐことが決まった。  両家の友好のための婚姻と言えば聞こえはいいが、実際は義母や義妹そして実の父から追い出されただけだった。  おまけに、クラウスは性格までもが醜いと噂されている。  でもいいんです。義母や義妹たちからいじめられる地獄のような日々から解放されるのだから!  そう思っていたけれど、噂は事実ではなくて……

逆行悪役令嬢は改心して聖女になる。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 本格悪役令嬢モノにする予定です。少し長い目で見てください。

呪いを受けたせいで婚約破棄された令息が好きな私は、呪いを解いて告白します

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私キャシーは、夜会で友人の侯爵令息サダムが婚約破棄された場面を目撃する。  サダムの元婚約者クノレラは、サダムが何者かの呪いを受けたと説明をしていた。  顔に模様が浮き出たことを醜いと言い、呪いを受けた人とは婚約者でいたくないようだ。  サダムは魔法に秀でていて、同じ実力を持つ私と意気投合していた。  呪いを解けば何も問題はないのに、それだけで婚約破棄したクノレラが理解できない。  私はサダムの呪いを必ず解き、告白しようと決意していた。

私の大好きな彼氏はみんなに優しい

hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。 柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。 そして… 柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました

21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。 理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。 (……ええ、そうでしょうね。私もそう思います) 王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。 当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。 「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」 貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。 だけど―― 「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」 突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!? 彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。 そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。 「……あの、何かご用でしょうか?」 「決まっている。お前を迎えに来た」 ――え? どういうこと? 「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」 「……?」 「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」 (いや、意味がわかりません!!) 婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、 なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

モブ転生とはこんなもの

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。 乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。 今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。 いったいどうしたらいいのかしら……。 現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。 他サイトでも公開しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。