12 / 14
12
しおりを挟む
「……ふん」
ユミル様は気絶しそうになっているア―ロイから手を放す。
ア―ロイは地面に落ち、ゲホゲホとせき込む。
彼の従者が三人、心配そうにア―ロイに駆け寄る。
「俺は……俺は本気でリーンのことを愛している! お前が飛び出して行ったあの日のことは謝る。しかし、どうしてもお前と一緒になりたかった……それだけは信じてくれ!」
「信じます。だから帰って下さい」
「し、信じてくれるなら帰って来てくれ!」
ア―ロイ様は、必死にそう泣き叫んだ。
しかし私は呆れるばかりで嘆息する。
なんであんな酷いことをしてきた人の元に帰らなければいけないのか。
バカなのかしら、この人。
怒りを通り越して、本気で呆れるわ。
「お前、本気で死ぬか?」
「う……」
悪魔的表面を持つユミル様に見下ろされ、ア―ロイはたじろぐばかり。
このままでは本気で殺しかねない。
そうなれば色々と問題になってしまう……
私は少し焦りながら、ユミル様をなだめようとした。
すると、私の背後から女性の声がする。
「ユミル様。その輩、私に任せていただけませんか?」
「コニーか……」
コニーさんが涼しい顔でこちらに歩いて来る。
私は彼女のことを警戒し、ゴクリと息を呑み込む。
この人は私を何故か敵視しているような毛がある。
一体どのようなつもりでここに来たのだろうか?
コニーさんはチラリと私を見るが、そのままア―ロイの目の前まで移動する。
「ア―ロイ様……でしょうか?」
「あ、ああ。そうだが……それが何か?」
「なるほど」
コニーさんは腕を組み、そして鋭い視線でア―ロイを睨む。
その冷たさに、ア―ロイは顔を青くしている。
「リーン様からお話は聞いております。あなた、リーン様を襲おうとしたらしいですね?」
「ななな……なんだと?」
ユミル様の額にいくつもの青筋が浮かび上がる。
元々人相がよくなく、悪魔なんて呼ばれているのに……それ以上の凶悪面になるユミル様。
もう悪魔王と魔神とかそんな風に呼ばれそうな、本当に怖い顔だった。
ア―ロイは身の毛がよだつような恐ろしい二人から睨まれ、ガタガタ震えるばかり。
コニーさんはそんなア―ロイの肩を掴み、そして言う。
「女性に酷いことをする男は許せない 質でして――」
「んふっ!?」
グシャッ! という音が青空に響き渡る。
なんとコニーさんは――ア―ロイの股間に膝蹴りを入れていた。
それも容赦なく、手加減なく、全力で。
ただでさえ男性は股間に刺激を受けると痛いと聞いているのに……
ア―ロイは泡を吹き気絶し、その場に倒れてしまった。
ユミル様は自分の股間を押さえて、青い顔でコニーさんを見ている。
「これで許してあげますので、さっさと消えろくださいませ」
そう言うコニーさんは、ユミル様以上の悪魔に見えた。
ユミル様は気絶しそうになっているア―ロイから手を放す。
ア―ロイは地面に落ち、ゲホゲホとせき込む。
彼の従者が三人、心配そうにア―ロイに駆け寄る。
「俺は……俺は本気でリーンのことを愛している! お前が飛び出して行ったあの日のことは謝る。しかし、どうしてもお前と一緒になりたかった……それだけは信じてくれ!」
「信じます。だから帰って下さい」
「し、信じてくれるなら帰って来てくれ!」
ア―ロイ様は、必死にそう泣き叫んだ。
しかし私は呆れるばかりで嘆息する。
なんであんな酷いことをしてきた人の元に帰らなければいけないのか。
バカなのかしら、この人。
怒りを通り越して、本気で呆れるわ。
「お前、本気で死ぬか?」
「う……」
悪魔的表面を持つユミル様に見下ろされ、ア―ロイはたじろぐばかり。
このままでは本気で殺しかねない。
そうなれば色々と問題になってしまう……
私は少し焦りながら、ユミル様をなだめようとした。
すると、私の背後から女性の声がする。
「ユミル様。その輩、私に任せていただけませんか?」
「コニーか……」
コニーさんが涼しい顔でこちらに歩いて来る。
私は彼女のことを警戒し、ゴクリと息を呑み込む。
この人は私を何故か敵視しているような毛がある。
一体どのようなつもりでここに来たのだろうか?
コニーさんはチラリと私を見るが、そのままア―ロイの目の前まで移動する。
「ア―ロイ様……でしょうか?」
「あ、ああ。そうだが……それが何か?」
「なるほど」
コニーさんは腕を組み、そして鋭い視線でア―ロイを睨む。
その冷たさに、ア―ロイは顔を青くしている。
「リーン様からお話は聞いております。あなた、リーン様を襲おうとしたらしいですね?」
「ななな……なんだと?」
ユミル様の額にいくつもの青筋が浮かび上がる。
元々人相がよくなく、悪魔なんて呼ばれているのに……それ以上の凶悪面になるユミル様。
もう悪魔王と魔神とかそんな風に呼ばれそうな、本当に怖い顔だった。
ア―ロイは身の毛がよだつような恐ろしい二人から睨まれ、ガタガタ震えるばかり。
コニーさんはそんなア―ロイの肩を掴み、そして言う。
「女性に酷いことをする男は許せない 質でして――」
「んふっ!?」
グシャッ! という音が青空に響き渡る。
なんとコニーさんは――ア―ロイの股間に膝蹴りを入れていた。
それも容赦なく、手加減なく、全力で。
ただでさえ男性は股間に刺激を受けると痛いと聞いているのに……
ア―ロイは泡を吹き気絶し、その場に倒れてしまった。
ユミル様は自分の股間を押さえて、青い顔でコニーさんを見ている。
「これで許してあげますので、さっさと消えろくださいませ」
そう言うコニーさんは、ユミル様以上の悪魔に見えた。
1
お気に入りに追加
1,028
あなたにおすすめの小説


強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します
天宮有
恋愛
私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。
その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。
シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。
その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。
それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。
私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。


ある日突然、醜いと有名な次期公爵様と結婚させられることになりました
八代奏多
恋愛
クライシス伯爵令嬢のアレシアはアルバラン公爵令息のクラウスに嫁ぐことが決まった。
両家の友好のための婚姻と言えば聞こえはいいが、実際は義母や義妹そして実の父から追い出されただけだった。
おまけに、クラウスは性格までもが醜いと噂されている。
でもいいんです。義母や義妹たちからいじめられる地獄のような日々から解放されるのだから!
そう思っていたけれど、噂は事実ではなくて……

愛は全てを解決しない
火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。
それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。
しかしデセルバート家は既に没落していた。
※なろう様にも投稿中。

妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。
雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」
妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。
今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。
私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。

メイクした顔なんて本当の顔じゃないと婚約破棄してきた王子に、本当の顔を見せてあげることにしました。
朱之ユク
恋愛
スカーレットは学園の卒業式を兼ねている舞踏会の日に、この国の第一王子であるパックスに婚約破棄をされてしまう。
今まで散々メイクで美しくなるのは本物の美しさではないと言われてきたスカーレットは思い切って、彼と婚約破棄することにした。
最後の最後に自分の素顔を見せた後に。
私の本当の顔を知ったからって今更よりを戻せと言われてももう遅い。
私はあなたなんかとは付き合いませんから。

守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!
蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。
しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。
だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。
国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。
一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。
※カクヨムさまにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる