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「み、見つけたぞ、リーン……ここでお前を見たという話を聞いてやってきた」
「な、何をしにやってきたのですか?」
「決まってるだろ? お前を迎えに来たんだよ?」
ニヤリと笑うア―ロイを見て、気分が悪くなる。
吐き気がする。
怒りと恐怖が腹の奥から湧き上がってくる。
絶対に嫌だ。
この人とは一秒だって同じところにいたくないし、一緒に帰りたくない。
私は青い顔でア―ロイを睨み付ける。
すると彼は私の態度に腹を立てたのか、眉間に皺を寄せて怒鳴り散らす。
「なんだその顔は!? 分かっているのか、お前にはルドウィック家で引き取られた恩があるんだぞ! だと言うのに、その態度はないだろ!」
「お、恩は感じています……ですが、それ以上に私はルドウィックを……いえ、お義兄様を恨んでおります」
「俺を恨む……恨むだと!?」
ア―ロイはこれ以上ないぐらい怒りに満ちた顔で私を睨む。
私はア―ロイのその顔を見て、静かに震え出す。
するとユミル様は私の前に立ち、憤怒の表情でア―ロイを見下ろした。
「な、なんだお前は……」
「お前こそ誰だ? 俺のリーンになんの用だ?」
俺のリーンという言葉には引っかかるが……なんと頼もしい。
悪魔と呼ばれるユミル様。
彼が味方と思えば、果てしない安心感を覚える。
そしてそんなユミル様を前にして、ア―ロイは顔を引きつらせていた。
「お、お前のリーン……だと? リーンは俺の物だ! 何を言って――」
「止めてください、お義兄様。私はあなたのものではありません。私はこのユミル様のリーンでございます」
ハッキリと私がそう言い放つと、ア―ロイは顔面蒼白となる。
そしてユミル様は嬉しそうに破顔させ、私の方を見ていた。
これは少し厄介なことになる予感もあるが……今はア―ロイを退けるのが先決。
この後のことは後で考えよう。
「ユ、ユミル……ユミル・アーガラム?」
「ああ。そうだ。お前は俺のことを知っているのか?」
「あ、悪魔と呼ばれる……侯爵、様」
ふんと鼻を鳴らし、ユミル様はア―ロイに一歩近づく。
「俺のことはよく知ってるようだな。そうだ。俺が『悪魔』ユミル・アーガラム。俺と俺の大事な物に手を出す者は、何人たりとも許さん。もしこれ以上リーンに関わるつもりなら――」
ユミル様は目にも止まらぬ速さで、ア―ロイの首を掴む。
そして彼の身体を片手で持ち上げ、死神の如く表情で、彼を見上げる。
「ここで死ぬことになる」
「うっ……」
「死ぬか、今すぐに帰るか。好きな方を選べ」
ア―ロイは真っ青な顔で、ユミル様を睨み返す。
さっさと帰ることを選択すればいいのに。
これ以上ここにいても意味がないと言うのに……何を考えているのかしら、この人。
「な、何をしにやってきたのですか?」
「決まってるだろ? お前を迎えに来たんだよ?」
ニヤリと笑うア―ロイを見て、気分が悪くなる。
吐き気がする。
怒りと恐怖が腹の奥から湧き上がってくる。
絶対に嫌だ。
この人とは一秒だって同じところにいたくないし、一緒に帰りたくない。
私は青い顔でア―ロイを睨み付ける。
すると彼は私の態度に腹を立てたのか、眉間に皺を寄せて怒鳴り散らす。
「なんだその顔は!? 分かっているのか、お前にはルドウィック家で引き取られた恩があるんだぞ! だと言うのに、その態度はないだろ!」
「お、恩は感じています……ですが、それ以上に私はルドウィックを……いえ、お義兄様を恨んでおります」
「俺を恨む……恨むだと!?」
ア―ロイはこれ以上ないぐらい怒りに満ちた顔で私を睨む。
私はア―ロイのその顔を見て、静かに震え出す。
するとユミル様は私の前に立ち、憤怒の表情でア―ロイを見下ろした。
「な、なんだお前は……」
「お前こそ誰だ? 俺のリーンになんの用だ?」
俺のリーンという言葉には引っかかるが……なんと頼もしい。
悪魔と呼ばれるユミル様。
彼が味方と思えば、果てしない安心感を覚える。
そしてそんなユミル様を前にして、ア―ロイは顔を引きつらせていた。
「お、お前のリーン……だと? リーンは俺の物だ! 何を言って――」
「止めてください、お義兄様。私はあなたのものではありません。私はこのユミル様のリーンでございます」
ハッキリと私がそう言い放つと、ア―ロイは顔面蒼白となる。
そしてユミル様は嬉しそうに破顔させ、私の方を見ていた。
これは少し厄介なことになる予感もあるが……今はア―ロイを退けるのが先決。
この後のことは後で考えよう。
「ユ、ユミル……ユミル・アーガラム?」
「ああ。そうだ。お前は俺のことを知っているのか?」
「あ、悪魔と呼ばれる……侯爵、様」
ふんと鼻を鳴らし、ユミル様はア―ロイに一歩近づく。
「俺のことはよく知ってるようだな。そうだ。俺が『悪魔』ユミル・アーガラム。俺と俺の大事な物に手を出す者は、何人たりとも許さん。もしこれ以上リーンに関わるつもりなら――」
ユミル様は目にも止まらぬ速さで、ア―ロイの首を掴む。
そして彼の身体を片手で持ち上げ、死神の如く表情で、彼を見上げる。
「ここで死ぬことになる」
「うっ……」
「死ぬか、今すぐに帰るか。好きな方を選べ」
ア―ロイは真っ青な顔で、ユミル様を睨み返す。
さっさと帰ることを選択すればいいのに。
これ以上ここにいても意味がないと言うのに……何を考えているのかしら、この人。
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