10 / 14
10
しおりを挟む
ユミル様は、とにかく優しい。
私にいい物を食べさせようとしたり、欲しい物を買ってくれたり。
とにかく甘やかされている気分。
「おい、他には欲しい物はないのか? あるなら言え。俺が買える物ならばなんでも買い与えてやろう」
「い、いえ……そんな頻繁に買ってもらわなくても……」
食事をしながら、こちらが欲しい物がないか尋ねてくるユミル様。
私は彼の好意に戸惑うばかり。
コニーさんは私の後ろに位置しており、ポツリと私にだけ聞こえる声で言う。
「愛情表現が下手くそな方ですから。あなたに振り向いてほしくて必死なのです」
「あ、愛情表現?」
コニーさんはそう言った後舌打ちをした。
先日まではユミル様が怖かったが、今はコニーさんが怖い。
こんなに嫌われるなんて、私なにかしたのかな?
しかし愛情表現だなんて……
私を見つめながらほんのりと頬を染めているユミル様。
私はそんな彼が大変可愛らしく思え、またキュンキュンしていた。
「今日は外に出かけるとするか」
「はい」
ユミル様の誘いに、私は快く頷く。
この間とは違う。
清々しい気分で出かけることができる。
一緒に屋敷を出て、町の中を練り歩く。
私の隣で歩くユミル様はとても綺麗で、そして可愛らしかった。
「寒くはないか? 寒かったらか、肩ぐらいは抱いてやってもいいんだぞ」
そんなことを言うユミル様は頬を赤くしている。
私はクスクス笑いながら、彼の顔を見つめた。
この間までア―ロイのことで悩んでいたのが嘘みたい。
と言うか、ユミル様の事を怖がっていたのも嘘みたいだ。
こんな人となら、ずっと一緒にいても楽しいかも。
ずっと一緒にいても……幸せかもしれない。
だけど、必要以上に貢ぐ癖は治してもらわないと。
このままではいつか破産してしまう可能性だってないわけではない。
「ユミル様、こんにちわ!」
「ユミル様、いつもありがとうございます」
町を歩いていると、ユミル様に笑顔で挨拶をする人ばかり。
本当に慕われているお方なんだな。
「どうした、俺の顔になにか付いているか?」
「いいえ。ただ、優しいなと思いまして」
「……ふ、ふん! 俺は優しく何てない! 勘違いするな!」
顔を真っ赤にして先に進んで行くユミル様。
本当にお可愛いお方。
笑いを殺しながら私は彼の後ろをついて行く。
楽しい時間。
優しい時間。
幸せな時間。
本当にかけがえのない時間だった。
だが、その最高の時間は、一瞬で最悪な物に変化しようとしていた。
「リーン……見つけたぞ」
「……お、お義兄様」
ア―ロイが数人の従者を引き連れ、ユミル様の町へとやって来たようだ。
私は彼を見て真っ青になる。
まさか……ア―ロイに見つかってしまうとは……
私にいい物を食べさせようとしたり、欲しい物を買ってくれたり。
とにかく甘やかされている気分。
「おい、他には欲しい物はないのか? あるなら言え。俺が買える物ならばなんでも買い与えてやろう」
「い、いえ……そんな頻繁に買ってもらわなくても……」
食事をしながら、こちらが欲しい物がないか尋ねてくるユミル様。
私は彼の好意に戸惑うばかり。
コニーさんは私の後ろに位置しており、ポツリと私にだけ聞こえる声で言う。
「愛情表現が下手くそな方ですから。あなたに振り向いてほしくて必死なのです」
「あ、愛情表現?」
コニーさんはそう言った後舌打ちをした。
先日まではユミル様が怖かったが、今はコニーさんが怖い。
こんなに嫌われるなんて、私なにかしたのかな?
しかし愛情表現だなんて……
私を見つめながらほんのりと頬を染めているユミル様。
私はそんな彼が大変可愛らしく思え、またキュンキュンしていた。
「今日は外に出かけるとするか」
「はい」
ユミル様の誘いに、私は快く頷く。
この間とは違う。
清々しい気分で出かけることができる。
一緒に屋敷を出て、町の中を練り歩く。
私の隣で歩くユミル様はとても綺麗で、そして可愛らしかった。
「寒くはないか? 寒かったらか、肩ぐらいは抱いてやってもいいんだぞ」
そんなことを言うユミル様は頬を赤くしている。
私はクスクス笑いながら、彼の顔を見つめた。
この間までア―ロイのことで悩んでいたのが嘘みたい。
と言うか、ユミル様の事を怖がっていたのも嘘みたいだ。
こんな人となら、ずっと一緒にいても楽しいかも。
ずっと一緒にいても……幸せかもしれない。
だけど、必要以上に貢ぐ癖は治してもらわないと。
このままではいつか破産してしまう可能性だってないわけではない。
「ユミル様、こんにちわ!」
「ユミル様、いつもありがとうございます」
町を歩いていると、ユミル様に笑顔で挨拶をする人ばかり。
本当に慕われているお方なんだな。
「どうした、俺の顔になにか付いているか?」
「いいえ。ただ、優しいなと思いまして」
「……ふ、ふん! 俺は優しく何てない! 勘違いするな!」
顔を真っ赤にして先に進んで行くユミル様。
本当にお可愛いお方。
笑いを殺しながら私は彼の後ろをついて行く。
楽しい時間。
優しい時間。
幸せな時間。
本当にかけがえのない時間だった。
だが、その最高の時間は、一瞬で最悪な物に変化しようとしていた。
「リーン……見つけたぞ」
「……お、お義兄様」
ア―ロイが数人の従者を引き連れ、ユミル様の町へとやって来たようだ。
私は彼を見て真っ青になる。
まさか……ア―ロイに見つかってしまうとは……
1
お気に入りに追加
1,028
あなたにおすすめの小説

ある日突然、醜いと有名な次期公爵様と結婚させられることになりました
八代奏多
恋愛
クライシス伯爵令嬢のアレシアはアルバラン公爵令息のクラウスに嫁ぐことが決まった。
両家の友好のための婚姻と言えば聞こえはいいが、実際は義母や義妹そして実の父から追い出されただけだった。
おまけに、クラウスは性格までもが醜いと噂されている。
でもいいんです。義母や義妹たちからいじめられる地獄のような日々から解放されるのだから!
そう思っていたけれど、噂は事実ではなくて……


呪いを受けたせいで婚約破棄された令息が好きな私は、呪いを解いて告白します
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私キャシーは、夜会で友人の侯爵令息サダムが婚約破棄された場面を目撃する。
サダムの元婚約者クノレラは、サダムが何者かの呪いを受けたと説明をしていた。
顔に模様が浮き出たことを醜いと言い、呪いを受けた人とは婚約者でいたくないようだ。
サダムは魔法に秀でていて、同じ実力を持つ私と意気投合していた。
呪いを解けば何も問題はないのに、それだけで婚約破棄したクノレラが理解できない。
私はサダムの呪いを必ず解き、告白しようと決意していた。

私の大好きな彼氏はみんなに優しい
hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。
柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。
そして…
柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。
ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。
なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。
妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。
しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。
この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。
*小説家になろう様からの転載です。

お前との婚約は、ここで破棄する!
ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」
華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。
一瞬の静寂の後、会場がどよめく。
私は心の中でため息をついた。

モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる