『悪魔』と呼ばれる侯爵様に拾われたが、溺愛されすぎて戸惑っています。

亜綺羅もも

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「今日は狩りに行くつもりだが、ついて来るか?」
「か、狩りでございますか……?」

 まさか人狩りをするというのですか……?
 悪魔と呼ばれているお方……その可能性も否定はできない。
 そんな恐ろしい行事に、ついて行けるわけがない。

 私は震えながら、ユミル様に断りを入れる。

「も、申し訳ございません……私は狩りの楽しみが分かりませんので」
「そうか……ならば仕方ない。俺も止めておくとしようか」
「や、止めるのですか?」
「ああ。狩りなどいつでもできるからな。今はそんなことよりお前を知りたい」

 私を知ってどうするおつもりですか?
 ユミル様の考えが本当に分からない。
 私は戸惑うばかりであった。

 呆然としている私。
 ユミル様はそんな私に、唐突に手を伸ばしてくる。

「ゴミが――」
「ゴミで申し訳ありません! 私などユミル様から見れば、その程度の女でしょう! それぐらいのことは重々承知しております」
「……?」
 
 私をゴミ呼ばわりしたユミル様は、ポカンとして固まってしまっていた。
 固まりたいのはこちらの方だ。

「ま、まぁいい……それでは、一緒に外に出かけるとしようか。今日はいい天気だ。散歩をするには丁度いい」
「さ、散歩……?」

 まさか、私をどこか暗がりに連れて行き、襲うつもりなのでは……?
 もうそろそろ覚悟を決めるしかないのだろうか。
 私はこの人に……

「…………」

 真っ青になっている私。
 その私を威圧的に見下ろすユミル様の姿。 
 コニーさんはそんな私たちを睨み付けているような気がした。
 
 彼女は私たちに近づき、そして私の頭に手を伸ばしてくる。

「頭にゴミがついています」
「ゴ、ゴミですか? ありがとうございます……」

 コニーさんは私の頭からゴミを取り、そして踵を返してこの場を離れようとする。
 しかし、振り返った瞬間に彼女が信じられないような言葉を放つ。

「色目使ってんじゃねえよ……」
「…………」

 コニーさんは私に聞こえないように言ったつもりだったのだろうか、また振り返る時にはにこやかな表情となっていた。
 私は寒気を覚え、彼女から視線を逸らす。

「では行くぞ。ついて来い」
「は、はい……」

 有無を言わさない物の言い方をするユミル様。
 私は彼に従い、この場を出て行くことにした。

 今はコニーさんの方が怖いような気がして、少し救われたような気分。
 何故彼女はあんなことを言ったのだろうか?

 色目など使ったつもりなどないのに。
 外から見たらそう見えるのだろうか?
 どちらにしても、とばっちりだ。
 私にはそんなつもりなど一切ないと言うのに……
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