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「…………」
チュンチュンと可愛い小鳥の鳴き声で私は目を覚ました。
朝だ……朝になった。
朝になったというのに、私は何ともない。
ユミル様が襲いに来るのかと思っていたけれど……
そもそもそんな状況で、私も私でよく眠れたな。
相当疲れていたのだろうか。
私はベッドから起き上がり、カーテンを開け外を眺める。
そこには庭があり、色鮮やかな花たちが、目覚めた私を祝福してくれているようだった。
「おはようございます、リーン様」
「リ、リーン……様?」
部屋に入ってくるなり、恭しく私に頭を下げるコニーさん。
私は彼女の態度に戸惑っていた。
「あの、何故様などと……」
「ユミル様から丁重に扱えと仰せつかっていますので」
「は、はぁ……」
丁重に扱えって……私が逃げないように懐柔でもするつもりなのだろうか。
彼の意図がいまだに掴めない。
とにかく、油断禁物だ。
コニーさんに連れられて、私は食堂へと入る。
するとすでにそこにはユミル様がおり、私を見るなり極悪人としか思えない顔で笑みを浮かべた。
「よく眠れたのか?」
「はい。おかげさまで」
「そうか。だったらさっさと食事をしろ。腹も減っているだろう」
「…………」
私の目の前に豪勢な食事が用意される。
いつもこんな物ばかり食べているのだろうか。
私は喉をゴクリと鳴らしながら、食事を眺める。
「凄い料理ばかりですね」
「ふん。こんなぐらい普通だろ。ほら、さっさと食え」
「い、いただきます」
私は彼の視線を気にしながら食事を始める。
それらは見た目にたがわぬ美味しい料理だった。
するとコニーさんが私に近づいてきて、耳元で囁く。
「普段はこんな物ばかり食べていないのですよ」
「え? どういうことですか?」
「あなたに美味しい物を食べて欲しかったんでしょうね」
「……?」
本当にユミル様の考えが理解できない。
私にこんな豪華な物を食べさせて、どういうつもりなのだろう。
やはり、懐柔するつもりなのか。
確かに、ほっぺが落ちそうなほど美味しい物ばかりで、気が緩みそうになる。
これが狙いなのだろうか……
ユミル様は貴族らしく、綺麗な姿勢で食事をしている。
だが貴族らしからぬ、少し乱暴な話し方。
一体この方は、どういう人なのだろう。
昨日は噂ばかりが気になり、怖いと思っていたが……
本当に綺麗な顔立ちをしている。
「…………」
私は首を横に振る。
これが彼の作戦なのかもしれない。
そうだ。騙されてはいけない。
彼は悪魔と呼ばれる人。
こんな親切にしてくれるのも、きっと裏があるからなのだ。
絶対油断してはいけないわよ、リーン。
チュンチュンと可愛い小鳥の鳴き声で私は目を覚ました。
朝だ……朝になった。
朝になったというのに、私は何ともない。
ユミル様が襲いに来るのかと思っていたけれど……
そもそもそんな状況で、私も私でよく眠れたな。
相当疲れていたのだろうか。
私はベッドから起き上がり、カーテンを開け外を眺める。
そこには庭があり、色鮮やかな花たちが、目覚めた私を祝福してくれているようだった。
「おはようございます、リーン様」
「リ、リーン……様?」
部屋に入ってくるなり、恭しく私に頭を下げるコニーさん。
私は彼女の態度に戸惑っていた。
「あの、何故様などと……」
「ユミル様から丁重に扱えと仰せつかっていますので」
「は、はぁ……」
丁重に扱えって……私が逃げないように懐柔でもするつもりなのだろうか。
彼の意図がいまだに掴めない。
とにかく、油断禁物だ。
コニーさんに連れられて、私は食堂へと入る。
するとすでにそこにはユミル様がおり、私を見るなり極悪人としか思えない顔で笑みを浮かべた。
「よく眠れたのか?」
「はい。おかげさまで」
「そうか。だったらさっさと食事をしろ。腹も減っているだろう」
「…………」
私の目の前に豪勢な食事が用意される。
いつもこんな物ばかり食べているのだろうか。
私は喉をゴクリと鳴らしながら、食事を眺める。
「凄い料理ばかりですね」
「ふん。こんなぐらい普通だろ。ほら、さっさと食え」
「い、いただきます」
私は彼の視線を気にしながら食事を始める。
それらは見た目にたがわぬ美味しい料理だった。
するとコニーさんが私に近づいてきて、耳元で囁く。
「普段はこんな物ばかり食べていないのですよ」
「え? どういうことですか?」
「あなたに美味しい物を食べて欲しかったんでしょうね」
「……?」
本当にユミル様の考えが理解できない。
私にこんな豪華な物を食べさせて、どういうつもりなのだろう。
やはり、懐柔するつもりなのか。
確かに、ほっぺが落ちそうなほど美味しい物ばかりで、気が緩みそうになる。
これが狙いなのだろうか……
ユミル様は貴族らしく、綺麗な姿勢で食事をしている。
だが貴族らしからぬ、少し乱暴な話し方。
一体この方は、どういう人なのだろう。
昨日は噂ばかりが気になり、怖いと思っていたが……
本当に綺麗な顔立ちをしている。
「…………」
私は首を横に振る。
これが彼の作戦なのかもしれない。
そうだ。騙されてはいけない。
彼は悪魔と呼ばれる人。
こんな親切にしてくれるのも、きっと裏があるからなのだ。
絶対油断してはいけないわよ、リーン。
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