4 / 6
4
しおりを挟む
「…………」
「…………」
胸の高鳴りが止まらない。
雪の中だというのに、汗が止まらない。
マークから目が離せない。
彼は少し頬を染め、真っ直ぐ私を見つめている。
私も顔を赤くし、マークの顔を見つめていた。
正直……嬉しい。
マークのことはなんとも思っていなかったと思っていたけど、こうして言葉にされると、彼のことを意識してしまう。
ああ。
私は、マークのことが好きだったのかもしれない。
「……大事なものって、案外いつも傍にあるものだ。お前は都会にいけば何かが見つかると思っているかもしれないが……多分、都会に行っても見つかりはしない」
「…………」
「俺が断言する。お前の大事なものは、全部あの村にある。お前は時折つまらなそうにしているが、本当はあの村が好きなはずだ。何か理由をつけて、逃げ出そうとしていただけだろ」
「……そうなのかな?」
何もない村が嫌だった。
でも、本当は好きだったのか?
何もないけど……温かい村。
雪に囲まれていたも、温もりに満ちている村。
何もないわけじゃなったのか。
自分では気づかないだけで、本当は全部あったんだ。
自分の大事なものは。
「……それで、返事は?」
「え?」
「……あの男のところに行くのか?」
「……行かないよ」
私は起き上がり、マークの前に腰を下ろす。
二人で焚火を見つめる体勢となり、彼は少し戸惑っているようだった。
「私のことを温めて。都会のことなんか忘れるぐらい温めてくれたら、あんたとずっといてあげる」
「…………」
後ろからマークが私を抱きしめる。
温かい……この人なら、きっと私を守ってくれる。
何があろうと見捨てたりはしない。
雪の中で取り残されても、きっと助けてくれる。
実際、助けに来てくれた。
大丈夫だ。
マークは信じて大丈夫だ。
ああ。本当に大事なものって、すぐ傍にあったんだ。
私はマークの服をギュッと掴み、彼の顔を見上げる。
「……もっと早く気づけばよかった。この気持ちに」
「……今からだって遅くはない。これからも俺はずっと傍にいる」
「ん……」
私が目を閉じるとマークは息を呑み、そしてキスをする。
長い長いキスだった。
この寒い雪を溶かしてしまうような熱いキス。
ついさっきまでは死んでしまうのかもという不安もあったが、もう大丈夫。
どんな時も、マークがいれば私はそれでいい。
彼の温かい胸の鼓動を感じながら、私は幸福感に包まれていた。
「…………」
胸の高鳴りが止まらない。
雪の中だというのに、汗が止まらない。
マークから目が離せない。
彼は少し頬を染め、真っ直ぐ私を見つめている。
私も顔を赤くし、マークの顔を見つめていた。
正直……嬉しい。
マークのことはなんとも思っていなかったと思っていたけど、こうして言葉にされると、彼のことを意識してしまう。
ああ。
私は、マークのことが好きだったのかもしれない。
「……大事なものって、案外いつも傍にあるものだ。お前は都会にいけば何かが見つかると思っているかもしれないが……多分、都会に行っても見つかりはしない」
「…………」
「俺が断言する。お前の大事なものは、全部あの村にある。お前は時折つまらなそうにしているが、本当はあの村が好きなはずだ。何か理由をつけて、逃げ出そうとしていただけだろ」
「……そうなのかな?」
何もない村が嫌だった。
でも、本当は好きだったのか?
何もないけど……温かい村。
雪に囲まれていたも、温もりに満ちている村。
何もないわけじゃなったのか。
自分では気づかないだけで、本当は全部あったんだ。
自分の大事なものは。
「……それで、返事は?」
「え?」
「……あの男のところに行くのか?」
「……行かないよ」
私は起き上がり、マークの前に腰を下ろす。
二人で焚火を見つめる体勢となり、彼は少し戸惑っているようだった。
「私のことを温めて。都会のことなんか忘れるぐらい温めてくれたら、あんたとずっといてあげる」
「…………」
後ろからマークが私を抱きしめる。
温かい……この人なら、きっと私を守ってくれる。
何があろうと見捨てたりはしない。
雪の中で取り残されても、きっと助けてくれる。
実際、助けに来てくれた。
大丈夫だ。
マークは信じて大丈夫だ。
ああ。本当に大事なものって、すぐ傍にあったんだ。
私はマークの服をギュッと掴み、彼の顔を見上げる。
「……もっと早く気づけばよかった。この気持ちに」
「……今からだって遅くはない。これからも俺はずっと傍にいる」
「ん……」
私が目を閉じるとマークは息を呑み、そしてキスをする。
長い長いキスだった。
この寒い雪を溶かしてしまうような熱いキス。
ついさっきまでは死んでしまうのかもという不安もあったが、もう大丈夫。
どんな時も、マークがいれば私はそれでいい。
彼の温かい胸の鼓動を感じながら、私は幸福感に包まれていた。
0
お気に入りに追加
476
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。

婚約破棄されたら、王様の専属抱き枕に任命されました!
アイリス
恋愛
幼馴染の次期伯爵クリフから突然婚約破棄された公爵令嬢のリリー。
そこに宰相がやって来て、「呪いを受けて眠れない国王陛下と添い寝するように」と告げる。
超絶美麗な国王と一緒に寝るなんてとドキドキするリリーだが、なぜか国王はずっと前からリリーのことを知っているようで…?
一方、婚約破棄したクリフはどんどん追い詰められていく。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

【完結】政略結婚はお断り致します!
かまり
恋愛
公爵令嬢アイリスは、悪い噂が立つ4歳年上のカイル王子との婚約が嫌で逃げ出し、森の奥の小さな山小屋でひっそりと一人暮らしを始めて1年が経っていた。
ある日、そこに見知らぬ男性が傷を追ってやってくる。
その男性は何かよっぽどのことがあったのか記憶を無くしていた…
帰るところもわからないその男性と、1人暮らしが寂しかったアイリスは、その山小屋で共同生活を始め、急速に2人の距離は近づいていく。
一方、幼い頃にアイリスと交わした結婚の約束を胸に抱えたまま、長い間出征に出ることになったカイル王子は、帰ったら結婚しようと思っていたのに、
戦争から戻って婚約の話が決まる直前に、そんな約束をすっかり忘れたアイリスが婚約を嫌がって逃げてしまったと知らされる。
しかし、王子には嫌われている原因となっている噂の誤解を解いて気持ちを伝えられない理由があった。
山小屋の彼とアイリスはどうなるのか…
カイル王子はアイリスの誤解を解いて結婚できるのか…
アイリスは、本当に心から好きだと思える人と結婚することができるのか…
『公爵令嬢』と『王子』が、それぞれ背負わされた宿命から抗い、幸せを勝ち取っていくサクセスラブストーリー。
【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。
美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?

【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

【短編完結】記憶なしで婚約破棄、常識的にざまあです。だってそれまずいって
鏑木 うりこ
恋愛
お慕いしておりましたのにーーー
残った記憶は強烈な悲しみだけだったけれど、私が目を開けると婚約破棄の真っ最中?!
待って待って何にも分からない!目の前の人の顔も名前も、私の腕をつかみ上げている人のことも!
うわーーうわーーどうしたらいいんだ!
メンタルつよつよ女子がふわ~り、さっくりかる~い感じの婚約破棄でざまぁしてしまった。でもメンタルつよつよなので、ザクザク切り捨てて行きます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる