婚約者に雪山で見捨てられまして

亜綺羅もも

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「…………」

 ぶっきらぼうで無口で……
 だけどたくましくて頼りになる奴。

 マークは小屋に入って来るなり木を集め、火を点けてくれる。

「暖かい」
「そうか」

 やっぱりぶっきらぼう。
 口数が少ないから何を考えているのかも分かりにくい。
 分かりにくいけど……助けに来てくれたのだけは理解している。

「なんで、ここに?」
「雪の中を出て行ったんだ。こんな風になっているだろうと思ってな」
「大正解だったね。いつもマークは正しいから」
「いや、俺にも間違いはあるさ」
「?」

 焚火に手を当てながら、マークの横顔を見つめる。
 村にはマークが好きな女の子が結構いる。
 見た目はいいし、こうやって頼りになるし……
 悪くないと思う。

 でも不思議とマークが誰かと交際をしているなんて話を聞いたことがない。
 なんでだろう?
 子供の頃からマークとは一緒だけど、意外と彼のことを知らないことに気づく。

「ねえ、マークは誰かと付き合ったり、そういうことはしないの?」
「……本命が俺のことをなんとも思ってないからな」
「へー。本命なんているんだ」
「ああ。ずっと好きだった。子供の頃からずっと」
「ふーん」

 子供の頃から好きだった?
 今思い浮かぶのは三名ほど。
 そのうちの誰か気になりだした私は、ニヤリと笑ってマークに聞く」

「もしかして、ララ?」
「違う」
「えー……じゃあ、シーナ?」
「違う……」
「え、じゃあ……」
「お前の考えている女じゃない」

 マークはまたぶっきらぼうに言い放つ。
 私はマークの態度に頬を膨らませ、ジト目を向ける。

「じゃあ誰なのよ? 私が知ってる中じゃ、他に思い当たらないんだけど」
「…………」

 マークは炎を見つめながら、大きくため息をつく。

「言わないと、意外と伝わらないものなんだな」
「え? 何が?」
「……自分じゃこの気持ちが伝わっているとばかり思っていた。だけど、相手には全く届いていなかったみたいだ」
「あんたみたいなぶっきらぼうな態度じゃ、伝わらないでしょうよ。そんな相手がいるならハッキリ言わないと」

 マークは私を見つめる。
 私はその力強い瞳に、ドキッと胸を高ならせた。

「……まさか、婚約して余所に出て行くなんて思ってもみなかった。いつか俺と一緒になってくれるものだとばかり思っていたから」
「……ま、まさか」

 私はマークの気持ちになんとなく気づき、ゴクリと息を呑む。
 まさか……マークが好きな相手って……

「俺が好きなのはエヴァ。お前だ。お前のことがずっと好きだった」
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