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私、エヴァは、ケイロスという男性と婚約した。
田舎育ちの平民であったが、貴族のケイロスと婚約できたのだ。
何もない田舎なんてまっぴらごめん。
ようやく幸せを掴めたことに、私は喜びに喜んだ。
ケイロンは青い髪に碧眼の男性で、端正な顔立ちをしている。
たまたま私の住んでいる村にやってきたところ、なんとかお近づきになり、彼のハートを射止めたというわけだ。
本当に何もない村。
ここを捨てることに、なんの躊躇もない。
早くこんなところ、出て行きたいのだ。
私はもっと華やかな場所で暮らしたい。
そして憧れの都会生活はもう目前。
幼馴染のマークが、少し寂しそうな顔をしていたのだけは気になる。
黒い髪に黒い瞳。
ケイロン以上に端正な顔立ち。
何故私の婚約が決まったら、あんな寂しい顔をしたのだろうか。
それだけは聞いておきたかった。
だけどケイロスは田舎村にいるのが嫌らしく、速やかに立ち去ろうとしていた。
雪が降る中、馬車に乗り込むケイロス。
「こんな雪の中を行かなくてもよろしいのではありませんか?」
「もうこんな何もないところは嫌だ。さっさと帰ろう。ここには君がいるから来ただけだからね」
「…………」
私はケイロスに促させれるまま馬車に乗り込む。
ああ。
これでこの村ともお別れなのね。
この村以外のことは私は知らない。
雪の中を行く不安感と、新しい世界へ飛び出すようなそんな希望と同時に味わう。
怖くて、楽しそうで……これからどうなるのだろうか。
深々と雪が降る中、馬車が動き出す。
白に満ちた世界。
山の中を馬車が走る。
そして私の不安は的中してしまう。
雪が積もってしまったことにより、崖が見えなくなってしまっていた。
片輪が崖から飛び出し、ガタンと馬車が傾く。
「な、なんだ!?」
「だから言ったではありませんか。こんな中、馬車を走らせるのは無謀です」
「くっ……」
馬車を降りると、ギリギリ寸前のところで落ちずに済んでいるようだった。
ゆっくりと馬車を降りる私たち。
私が馬車から降りると――馬車は傾き、崖から落ちてしまう。
「ああ……なんでこんなことに……」
頭を抱えているケイロス。
御者がオロオロしている。
私はため息をつき、ケイロスの背中に触れる。
「ここから少し山を上がった所に――」
私がケイロスにある提案をしようとした。
だがケイロスは、ドンッと私の身体を突き飛ばす。
倒れた私は呆気にとられ、ポカンと彼を見上げた。
「ぼ、僕はなんとしてでも生き延びる。女である君は体力がない。足手まといだ。僕に付いて来るな」
「え……」
「君は綺麗な女だ……しかし勿体ないが、自分が死ぬぐらいなら君をここで放置して、自分だけでも生き残る。一人の足なら次の町まで行く自信があるんだ」
「…………」
呆然とする私。
ケイロスは引きつった笑みをこちらに向けて、御者と共に歩き出す。
「すまない……君を気にしていたら生き延びることができないから」
「…………」
こいつ、私を見捨てやがった!!
私は怒りに地面の雪をギュッと握り締める。
そしてケイロスの背中を睨む付けるのであった。
田舎育ちの平民であったが、貴族のケイロスと婚約できたのだ。
何もない田舎なんてまっぴらごめん。
ようやく幸せを掴めたことに、私は喜びに喜んだ。
ケイロンは青い髪に碧眼の男性で、端正な顔立ちをしている。
たまたま私の住んでいる村にやってきたところ、なんとかお近づきになり、彼のハートを射止めたというわけだ。
本当に何もない村。
ここを捨てることに、なんの躊躇もない。
早くこんなところ、出て行きたいのだ。
私はもっと華やかな場所で暮らしたい。
そして憧れの都会生活はもう目前。
幼馴染のマークが、少し寂しそうな顔をしていたのだけは気になる。
黒い髪に黒い瞳。
ケイロン以上に端正な顔立ち。
何故私の婚約が決まったら、あんな寂しい顔をしたのだろうか。
それだけは聞いておきたかった。
だけどケイロスは田舎村にいるのが嫌らしく、速やかに立ち去ろうとしていた。
雪が降る中、馬車に乗り込むケイロス。
「こんな雪の中を行かなくてもよろしいのではありませんか?」
「もうこんな何もないところは嫌だ。さっさと帰ろう。ここには君がいるから来ただけだからね」
「…………」
私はケイロスに促させれるまま馬車に乗り込む。
ああ。
これでこの村ともお別れなのね。
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怖くて、楽しそうで……これからどうなるのだろうか。
深々と雪が降る中、馬車が動き出す。
白に満ちた世界。
山の中を馬車が走る。
そして私の不安は的中してしまう。
雪が積もってしまったことにより、崖が見えなくなってしまっていた。
片輪が崖から飛び出し、ガタンと馬車が傾く。
「な、なんだ!?」
「だから言ったではありませんか。こんな中、馬車を走らせるのは無謀です」
「くっ……」
馬車を降りると、ギリギリ寸前のところで落ちずに済んでいるようだった。
ゆっくりと馬車を降りる私たち。
私が馬車から降りると――馬車は傾き、崖から落ちてしまう。
「ああ……なんでこんなことに……」
頭を抱えているケイロス。
御者がオロオロしている。
私はため息をつき、ケイロスの背中に触れる。
「ここから少し山を上がった所に――」
私がケイロスにある提案をしようとした。
だがケイロスは、ドンッと私の身体を突き飛ばす。
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「ぼ、僕はなんとしてでも生き延びる。女である君は体力がない。足手まといだ。僕に付いて来るな」
「え……」
「君は綺麗な女だ……しかし勿体ないが、自分が死ぬぐらいなら君をここで放置して、自分だけでも生き残る。一人の足なら次の町まで行く自信があるんだ」
「…………」
呆然とする私。
ケイロスは引きつった笑みをこちらに向けて、御者と共に歩き出す。
「すまない……君を気にしていたら生き延びることができないから」
「…………」
こいつ、私を見捨てやがった!!
私は怒りに地面の雪をギュッと握り締める。
そしてケイロスの背中を睨む付けるのであった。
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