15 / 16
15
しおりを挟む
「お言葉ですが、それを決めるのはサラです。あなたの元へ行くかどうかは彼女に決めてもらいましょう」
「それなら答えは決まっています。私はこれからも、エリオ様と共に生きてまいります」
私の言葉に魂が抜けたように愕然とするジーク様。
そして膝をつき、私にしがみついて来る。
「お願いだ……お願いだから僕と一緒に来てくれ……君がいないと僕は――」
「エリオ様、と仰いましたね?」
「え、あ、はい……」
私とジーク様を無視して、レイアがエリオ様に話しかける。
またいつもの癖が出たのだと思う。
また私の物を欲しがる癖を出して……
レイアはエリオ様が私のものだと考えたのだろう。
彼に対して興味を持ち、蠱惑的な視線を彼に向けている。
「サラなんかより、私の方がいいと思いますよ? 彼女より明るいし、何でもできますから」
エリオ様はレイアの言葉に顔を赤くする。
照れ屋な彼が積極的な彼女に迫られているのだ、その反応は仕方ないことだろう。
「…………」
またレイアに奪われてしまう。
そう考えると、ジーク様の時とは非ではない痛みが胸を襲う。
しがみ付くジーク様を無視し、私は息苦しくなり、真っ青な顔で二人のやりとりを見つめていた。
お願い、エリオ様……私を選んでください。
「あの……嬉しいのですが、俺はサラのことが好きなので……」
「レイア……お前は僕を捨てるというのか?」
「あら? もうジーク様はお終いではありませんか。だって家もお金もないのですから。誰がどうみても、今はこのエリオ様の方が良いと考えるはずですわ」
「お話の途中で悪いのですが……俺はあなたを選ぶようなことはしませんよ」
「……何故ですか?」
ジロッとエリオ様を睨むレイア。
エリオ様は落ち着いた表情で彼女に言う。
「だって、サラは心の内から光を放っているのに対して、あなたはドロドロとした闇を放っている。心が醜いのでしょう。同じ顔をしているけれど、中身は驚くほどに違う。そんなあなたを選ぶわけがありませんよ」
「なっ……!」
「お金が必要ならあなたたちに差し上げましょう。ですが、サラに手を出すことは許さない」
「わ、私だって一緒にいてもいいでしょう?」
エリオ様は静かに首を振る。
私の呼吸はいつの間にか元に戻っていた。
完全に安心しているんだ。
エリオ様の真摯な想い。
人を外見だけで判断しない、人の本質を視る眼。
そして自分が正しいと思うことはハッキリと口にする、ここ一番の強さ。
先ほどの不安が嘘のように消え、エリオ様がキラキラして見える。
「あなたがいると、サラの心が乱れる。お願いですからここから去ってください」
笑顔でそう言うエリオ様。
「いいから私もここに住まわせなさいよ! あんたは黙って、私を養えばいいの!」
「いい加減にしろ!」
「はぁ!?」
レイアに対して、周囲にいる村の人たちが怒り出した。
「お前みたいな見るからに性悪の女、サラとは大違いだ!」
「サラはエリオ様と一緒に村の皆に優しくしてくれるいい子なんだよ! そのサラが嫌がるのなら、ここに残らせないわよ!」
「そうよそうよ! 出て行け! 今すぐ村から出て行け!」
村の人たちの「出て行け」コール。
レイアは顔を真っ赤にして、エリオ様を睨み付ける。
「ふ、ふん! 冗談を本気にして! あんたみたいな田舎村の貴族なんて、こっちから願い下げよ!」
レイアは初めて私から自分の物に出来なかったこと、そして村人たちの反応に憤怒し、踵を返して去って行ってしまった。
「お金が必要なら用意しますので、あなたもこの村から出て行ってください」
「エリオ様……何故そのようなことを?」
「君の妹さんの旦那さんだ。助けてあげるには理由は十分だよ」
ジーク様はエリオ様の申し出に感謝しているのか、おいおい涙を流しながら彼の事を見上げている。
こんなに格好悪い人だったのだかな……
ジーク様の情けない顔を見てそんなことを考え、私は苦笑いを浮かべていた。
「それなら答えは決まっています。私はこれからも、エリオ様と共に生きてまいります」
私の言葉に魂が抜けたように愕然とするジーク様。
そして膝をつき、私にしがみついて来る。
「お願いだ……お願いだから僕と一緒に来てくれ……君がいないと僕は――」
「エリオ様、と仰いましたね?」
「え、あ、はい……」
私とジーク様を無視して、レイアがエリオ様に話しかける。
またいつもの癖が出たのだと思う。
また私の物を欲しがる癖を出して……
レイアはエリオ様が私のものだと考えたのだろう。
彼に対して興味を持ち、蠱惑的な視線を彼に向けている。
「サラなんかより、私の方がいいと思いますよ? 彼女より明るいし、何でもできますから」
エリオ様はレイアの言葉に顔を赤くする。
照れ屋な彼が積極的な彼女に迫られているのだ、その反応は仕方ないことだろう。
「…………」
またレイアに奪われてしまう。
そう考えると、ジーク様の時とは非ではない痛みが胸を襲う。
しがみ付くジーク様を無視し、私は息苦しくなり、真っ青な顔で二人のやりとりを見つめていた。
お願い、エリオ様……私を選んでください。
「あの……嬉しいのですが、俺はサラのことが好きなので……」
「レイア……お前は僕を捨てるというのか?」
「あら? もうジーク様はお終いではありませんか。だって家もお金もないのですから。誰がどうみても、今はこのエリオ様の方が良いと考えるはずですわ」
「お話の途中で悪いのですが……俺はあなたを選ぶようなことはしませんよ」
「……何故ですか?」
ジロッとエリオ様を睨むレイア。
エリオ様は落ち着いた表情で彼女に言う。
「だって、サラは心の内から光を放っているのに対して、あなたはドロドロとした闇を放っている。心が醜いのでしょう。同じ顔をしているけれど、中身は驚くほどに違う。そんなあなたを選ぶわけがありませんよ」
「なっ……!」
「お金が必要ならあなたたちに差し上げましょう。ですが、サラに手を出すことは許さない」
「わ、私だって一緒にいてもいいでしょう?」
エリオ様は静かに首を振る。
私の呼吸はいつの間にか元に戻っていた。
完全に安心しているんだ。
エリオ様の真摯な想い。
人を外見だけで判断しない、人の本質を視る眼。
そして自分が正しいと思うことはハッキリと口にする、ここ一番の強さ。
先ほどの不安が嘘のように消え、エリオ様がキラキラして見える。
「あなたがいると、サラの心が乱れる。お願いですからここから去ってください」
笑顔でそう言うエリオ様。
「いいから私もここに住まわせなさいよ! あんたは黙って、私を養えばいいの!」
「いい加減にしろ!」
「はぁ!?」
レイアに対して、周囲にいる村の人たちが怒り出した。
「お前みたいな見るからに性悪の女、サラとは大違いだ!」
「サラはエリオ様と一緒に村の皆に優しくしてくれるいい子なんだよ! そのサラが嫌がるのなら、ここに残らせないわよ!」
「そうよそうよ! 出て行け! 今すぐ村から出て行け!」
村の人たちの「出て行け」コール。
レイアは顔を真っ赤にして、エリオ様を睨み付ける。
「ふ、ふん! 冗談を本気にして! あんたみたいな田舎村の貴族なんて、こっちから願い下げよ!」
レイアは初めて私から自分の物に出来なかったこと、そして村人たちの反応に憤怒し、踵を返して去って行ってしまった。
「お金が必要なら用意しますので、あなたもこの村から出て行ってください」
「エリオ様……何故そのようなことを?」
「君の妹さんの旦那さんだ。助けてあげるには理由は十分だよ」
ジーク様はエリオ様の申し出に感謝しているのか、おいおい涙を流しながら彼の事を見上げている。
こんなに格好悪い人だったのだかな……
ジーク様の情けない顔を見てそんなことを考え、私は苦笑いを浮かべていた。
13
お気に入りに追加
3,806
あなたにおすすめの小説
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
妹に婚約者を取られましたが、辺境で楽しく暮らしています
今川幸乃
ファンタジー
おいしい物が大好きのオルロンド公爵家の長女エリサは次期国王と目されているケビン王子と婚約していた。
それを羨んだ妹のシシリーは悪い噂を流してエリサとケビンの婚約を破棄させ、自分がケビンの婚約者に収まる。
そしてエリサは田舎・偏屈・頑固と恐れられる辺境伯レリクスの元に厄介払い同然で嫁に出された。
当初は見向きもされないエリサだったが、次第に料理や作物の知識で周囲を驚かせていく。
一方、ケビンは極度のナルシストで、エリサはそれを知っていたからこそシシリーにケビンを譲らなかった。ケビンと結ばれたシシリーはすぐに彼の本性を知り、後悔することになる。
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中

妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?
カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。
フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。
【完結90万pt感謝】大募集! 王太子妃候補! 貴女が未来の国母かもしれないっ!
宇水涼麻
ファンタジー
ゼルアナート王国の王都にある貴族学園の玄関前には朝から人集りができていた。
女子生徒たちが色めき立って、男子生徒たちが興味津々に見ている掲示物は、求人広告だ。
なんと求人されているのは『王太子妃候補者』
見目麗しい王太子の婚約者になれるかもしれないというのだ。
だが、王太子には眉目秀麗才色兼備の婚約者がいることは誰もが知っている。
学園全体が浮足立った状態のまま昼休みになった。
王太子であるレンエールが婚約者に詰め寄った。
求人広告の真意は?広告主は?
中世ヨーロッパ風の婚約破棄ものです。
お陰様で完結いたしました。
外伝は書いていくつもりでおります。
これからもよろしくお願いします。
表紙を変えました。お友達に描いていただいたラビオナ嬢です。
彼女が涙したシーンを思い浮かべ萌えてますwww
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。
王太子に婚約破棄言い渡された公爵令嬢は、その場で処刑されそうです。
克全
恋愛
8話1万0357文字で完結済みです。
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に投稿しています。
コーンウォリス公爵家に令嬢ルイ―ザは、王国の実権を握ろうとするロビンソン辺境伯家当主フランシスに操られる、王太子ルークのよって絶体絶命の危機に陥っていました。宰相を務める父上はもちろん、有能で忠誠心の豊かな有力貴族達が全員紛争国との調停に送られていました。万座の席で露骨な言い掛かりで付けられ、婚約を破棄されたばかりか人質にまでされそうになったルイ―ザ嬢は、命懸けで名誉を守る決意をしたのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる