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国王に気に入られたことにより、王都との取引ができ、エリオの商売はさらに上昇気流に乗っていた。
私は彼の隣でサポートをし、ずっとその横顔を眺める毎日。
綺麗な顔をしているのにいつも精一杯働いている。
これも全て誰かのためだ。
「今は確かに儲かっているけど、いつどうなるか分からない。村の皆が裕福に暮らせなくとも、せめて将来不安にならないぐらいにはしてあげたいんだ」
「さすが我らのエリオ様! 私たちはエリオ様について行きますよ!」
「ちょ……様なんて付けなくていいのに……貴族なんて言われても、まだピンと来ていないのに……ね、サラ?」
村の人がエリオを慕っている。
だが彼は貴族の称号を得たのを、いまだに戸惑っているようだ。
私は困った彼の顔を見て、クスクスと笑ってしまう。
「いいえ。もうエリオは……エリオ様は立派な貴族ですわ」
「サラまでやめてくれよ……俺は貴族なんてガラじゃないんだからさ」
村中がドッと沸き、笑い声が青い空に広がっていく。
もう彼を呼び捨てにはできない。
貴族として扱わなければ。
称号をいただくより以前から、彼は貴族に相応しい人物だったのだ。
これはきっと必然。
これが彼の運命だったのだ。
「それよりエリオ様。サラにプロポーズはしたのかい?」
「ななな、何を言ってるんだ! 早く仕事の続きをするよ!」
仕事仲間から何やら耳打ちをされ、顔を赤くしているエリオ様。
彼は私に笑みを向け、そそくさと仕事の手を再開させる。
本当に楽しく、幸せな毎日だ。
レイアと一緒に暮らしていた頃が嘘のよう。
こんな毎日が続けばいいのに。
そんな風に考えていた、その時だった。
不穏な空気が突然流れ始める。
嫌な予感がし、胸がザワついたと思うと、遠くから見知った顔がこちらにやって来るのが見えた。
私は露骨に嫌な顔をし、やって来る二人の顔を黙って眺める。
「サラ!」
「……ジーク様。それにレイアも」
以前よりだいぶやつれたように見えるジーク様とレイア。
ジーク様は私の顔を見るなり、パッと明るい表情を見せる。
レイアはニヤリと片頬を上げ、何やら企んでいる様子だ。
「サ、サラと同じ顔……どういうことだ?」
レイアの顔を見たエリオ様が目を点にさせて私に訊いてくる。
「あれは私の双子の妹、レイアです」
「レイア……」
そのレイアはエリオ様の顔を見て一度立ち止まり、そしてまた悪い笑みを浮かべる。
一体何をするつもりなのだろう……私は二人の顔を見て、ずっと胸をザワつかせていた。
私は彼の隣でサポートをし、ずっとその横顔を眺める毎日。
綺麗な顔をしているのにいつも精一杯働いている。
これも全て誰かのためだ。
「今は確かに儲かっているけど、いつどうなるか分からない。村の皆が裕福に暮らせなくとも、せめて将来不安にならないぐらいにはしてあげたいんだ」
「さすが我らのエリオ様! 私たちはエリオ様について行きますよ!」
「ちょ……様なんて付けなくていいのに……貴族なんて言われても、まだピンと来ていないのに……ね、サラ?」
村の人がエリオを慕っている。
だが彼は貴族の称号を得たのを、いまだに戸惑っているようだ。
私は困った彼の顔を見て、クスクスと笑ってしまう。
「いいえ。もうエリオは……エリオ様は立派な貴族ですわ」
「サラまでやめてくれよ……俺は貴族なんてガラじゃないんだからさ」
村中がドッと沸き、笑い声が青い空に広がっていく。
もう彼を呼び捨てにはできない。
貴族として扱わなければ。
称号をいただくより以前から、彼は貴族に相応しい人物だったのだ。
これはきっと必然。
これが彼の運命だったのだ。
「それよりエリオ様。サラにプロポーズはしたのかい?」
「ななな、何を言ってるんだ! 早く仕事の続きをするよ!」
仕事仲間から何やら耳打ちをされ、顔を赤くしているエリオ様。
彼は私に笑みを向け、そそくさと仕事の手を再開させる。
本当に楽しく、幸せな毎日だ。
レイアと一緒に暮らしていた頃が嘘のよう。
こんな毎日が続けばいいのに。
そんな風に考えていた、その時だった。
不穏な空気が突然流れ始める。
嫌な予感がし、胸がザワついたと思うと、遠くから見知った顔がこちらにやって来るのが見えた。
私は露骨に嫌な顔をし、やって来る二人の顔を黙って眺める。
「サラ!」
「……ジーク様。それにレイアも」
以前よりだいぶやつれたように見えるジーク様とレイア。
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レイアはニヤリと片頬を上げ、何やら企んでいる様子だ。
「サ、サラと同じ顔……どういうことだ?」
レイアの顔を見たエリオ様が目を点にさせて私に訊いてくる。
「あれは私の双子の妹、レイアです」
「レイア……」
そのレイアはエリオ様の顔を見て一度立ち止まり、そしてまた悪い笑みを浮かべる。
一体何をするつもりなのだろう……私は二人の顔を見て、ずっと胸をザワつかせていた。
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