幸運の女神である妹を選び婚約破棄するようですが、彼女は貧乏神ですよ?

亜綺羅もも

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「み、三日連続だと……?」
「は、はい……」

 ジークらが眠りについている間に、強盗が侵入した。
 それも三日連続でだ。
 どうやら見張り役の人間全てが強盗とグルだったらしく、全員が夜のうちに消えてしまい、いまだ犯人は捕まっていない状態。 
 レイアの顔を見て、苛立ちを覚え始めるジーク。

「レイア……どういうことだ?」
「……分かりません。こんなことは初めてなので」
「…………」

 幸運の女神がついているはずのレイア。
 そんな彼女がいるというのに、財産がドンドン減っていく。
 尋常ではない速度でだ。
 たった三日間で、何故これほどまでに。

 ジークの頭の中に、貧乏神という言葉が過る。

「もしかして、君が……」
「そんなわけありませんわ! サラが貧乏神です。私はそれを知っているし、両親だってそう信じています」
「そ、それならいいのだが……」

 レイアの言葉を聞いても不安を払拭できないジーク。
 だがもう自分の妻のことを信じるしかない。
 彼女こそが幸運の女神であると。

 そこから一週間は何も無かった。
 しかし天気が悪い、曇り空のある日のこと。

 ジークとレイアは、町を散策していた。
 最近起こったことの息抜きにだ。
 良くないことは連続で起きてしまったが、あれから一週間、何も起こっていない。
 あれは何か悪い夢のようなものだったのだ。

 ジークもレイアも、そう思い始めていた。

「このまま幸せに暮らせていけそうだな」
「ええ。ご安心ください。私には幸運の女神がついておりますから」

 レイアに笑みを向けるジーク。
 ジークと腕を組み、笑顔を返すレイア。

 だが、事件は起きてしまう。
 それも信じられないような事件がだ。

「ジ、ジーク様! 大変でございます!」
「ど、どうしたのだ、そんな血相を変えて……」

 嫌な予感に顔を真っ青に染めるジーク。
 彼に仕える男が、走って彼のもとまで走って来る。
 息を切らせながら、だがハッキリとジークに告げた。

「や、屋敷が……屋敷が燃えております!」
「も……燃えている、だと!?」

 屋敷の方角の方へ視線を向けるジークとレイア。
 遠くの方に見える煙。
 ジークはレイアを置いて、走って行ってしまう。

「お待ちください、ジーク様!」

 自分を置いて走って行くジークに腹を立てるレイア。
 だがそれと同時に、屋敷が燃えているという話に寒気を覚えてもいた。

 何故こんなことが起きるのだ。
 私は……幸運の女神のはずなのに。

 現場に到着すると、それはものの見事に炎上している屋敷が目に入る。
 唖然とするジークとレイア。

 自分たちの屋敷がこれ以上ないぐらいに燃えている。
 その事実がまるで夢のように現実と捉えられない二人。
 だがこれは紛れもない事実。

 彼女たちは、凄まじい勢いで富を失いつつある。
 ジークはとうとうこの現実を受け入れ始めていた。
 これは……レイアが原因なのでは?
 そう思い始めたジークは、レイアの横顔を見て、ガタガタ震えていた。
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