幸運の女神である妹を選び婚約破棄するようですが、彼女は貧乏神ですよ?

亜綺羅もも

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 レイアはジークと結婚し、彼の家へ嫁いだ。
 両親も近くに住まいを用意してもらい、それはそれは幸せな毎日を送っていた。

「君と結婚できて、僕は幸せだよ。サラと結婚していたら、今頃……」

 サラに貧乏神がついているという話を思い出し、ブルッと震えるジーク。
 レイアから真実を聞いて良かった……心底そう感じるジークであった。

「私もジーク様と結婚できて幸せでございます。これ以上の幸せはありません」

 完璧とも言える男性と結婚できたことに喜びを感じていたレイア。

 姉からは全てが失われ、私に全てが引き寄せられる。
 やはり私には幸運の女神がついているのだ。
 これから先、心配することなどない。
 ずっとずっと、ジーク様と幸せに暮らしていくのだ。

 ジークとレイアは穏やかに互いを見つめ合う。
 二人は結ばれるべくして結ばれた。
 そう互いに信じてやまない。
 きっとこれは運命なのだ。

 そう。
 これは運命なのだ。
 破滅へと向かうため、二人は結ばれた。

 二人はある日のこと、叔父が治めるコリンズの町へと足を運んでいた。
 叔父に挨拶をするためである。
 レイアは元住んでいた場所ということもあり、以前のことを思い出し笑みをこぼす。

「サラは今頃どうしているんだろうな?」
「どうでしょう? 死んではいないと思ってはいるのですが……少しだけ寂しいですわね」

 ほんの少し。
 ほんの少しだけではあるが、姉であるサラがいなくなったと考えると寂しさを覚えるレイア。
 だがそれだけだ。
 他には感情は湧かない。
 少し寂しい。それがいなくなった姉に対しての感情の全てだった。

 姉の惨めな姿を思い出し、クスリと笑うレイア。

 自分は姉のようにはならない。
 これからも死ぬまで優雅に生き抜いてみせる。
 それが私に与えられた運命なのだから。

 しかしコリンズの町から帰ると、とある事件が起きていた。
 大騒ぎとなっているバージリアン邸。

「どうした。なんの騒ぎだ?」
「ジ、ジーク様……強盗が入りまして……」
「ご、強盗!?」

 バージリアン邸からは、多くの財宝が盗まれてしまったようだ。
 まだ家が傾くほどではないが、それでも大金を失ってしまった。

 ジークはレイアの顔を見て、ゴクリと息を呑む。

「き、君がいないだけでこんなことが起きてしまうとは……」
「私の幸運の女神が守ってくれていたということですわね……でも、これからは大丈夫でございます。もう私はここを離れませんので」
「それならいいんだが……」

 勘違いをするジークとレイア。
 バージリアンが破滅へと向かっているとは露知らずに……
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