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バルガス・エルファンド様。
この国を治めるお方のお名前。
馬車に乗っていたのはバルガス様だったようだ。
バルガス様を助け、村の宿で寝床を用意した。
怪我はそこそこ酷く、命に別状はないものの、油断はできない状態。
エリオは医者を手配したり国王を順番で看護したりなどと慌ただしい日々を送っていた。
私も国王の看護を申し出、エリオと一緒にバルガス様の怪我な治るまで世話を続ける。
「君たちには世話になりっぱなしだな……何かお礼をしたいと考えているのだが……何か必要な物はあるか?」
「いいえ。お気になさらず。困っている人は無償で助けろというのが我が家の家訓ですので、これぐらいは辺り前のことです」
「……なんと人の出来た男よ」
エリオは助けた引き換えに物を貰ったり何かを催促するようなことはしなかった。
国王も感心しっぱなしのようで、大変彼を気に入ったようだ。
怪我が治るまで、エリオを呼んでは彼と話ばかりしていた。
仕事もあるし国王の世話もある。
だけどエリオは辛そうな顔をしたことは一度として無かった。
「身体は大丈夫ですか? この頃ずっと働きづめで……」
「大丈夫だよ。俺は人のために働くのが好きみたいでさ、疲れたなんて思ったことはないんだ。逆に嬉しいんだよ。誰かのためになれることがね」
笑顔でそう言うエリオ。
ああ。私はこの人が好きだ。
心の底からそう思う。
人の事を想ってあげられる人。
こんな素晴らしい人がこの世にいただなんて。
幸運の女神が私についているようだが、この人と出逢えたのが一番の幸運だったと、今そう感じる。
私はエリオを本気で愛し始めていた。
彼もそんな私の気持ちに気づいているのか、最近は何か言いたげな顔をよくしている。
だけど後一言が中々言えない。
少し照れ屋なのが、玉に瑕と言ったところだろうか。
でも、そんなところも私は好きだった。
「エリオ。それにサラよ。君たちには大変世話になったな」
「いいえ。人として当たり前のことをしただけでございます」
動けるぐらいまで怪我が治ったバルガス様。
後は王都に戻って怪我を癒すとのこと。
彼がこの村を去る時がやって来たのだ。
もちろん、国王からお礼を受け取るつもりもないエリオ。
しかしバルガス様は、思いがけないことを突然言い出した。
「エリオ・ルトナーク。君は村や人々のために仕事をしているようだな。自分だけのためではなく、他人に幸せを運ぶ、そんな素晴らしい人間だと他の者から話を聞いている」
「そんな……大袈裟ですよ」
「私を助けてもらったということもある……良ければ、君に男爵の称号を与えたいと考えているのだが、どうだろうか? 君ならこの村を収めるに足りる人物であろう」
「……勿体ないお言葉。心より感謝いたします」
なんとエリオは、バルガス様から爵位を与えられ、貴族となってしまったのだ。
私はそれを大変喜ばしく思い、胸を弾ませていた。
この国を治めるお方のお名前。
馬車に乗っていたのはバルガス様だったようだ。
バルガス様を助け、村の宿で寝床を用意した。
怪我はそこそこ酷く、命に別状はないものの、油断はできない状態。
エリオは医者を手配したり国王を順番で看護したりなどと慌ただしい日々を送っていた。
私も国王の看護を申し出、エリオと一緒にバルガス様の怪我な治るまで世話を続ける。
「君たちには世話になりっぱなしだな……何かお礼をしたいと考えているのだが……何か必要な物はあるか?」
「いいえ。お気になさらず。困っている人は無償で助けろというのが我が家の家訓ですので、これぐらいは辺り前のことです」
「……なんと人の出来た男よ」
エリオは助けた引き換えに物を貰ったり何かを催促するようなことはしなかった。
国王も感心しっぱなしのようで、大変彼を気に入ったようだ。
怪我が治るまで、エリオを呼んでは彼と話ばかりしていた。
仕事もあるし国王の世話もある。
だけどエリオは辛そうな顔をしたことは一度として無かった。
「身体は大丈夫ですか? この頃ずっと働きづめで……」
「大丈夫だよ。俺は人のために働くのが好きみたいでさ、疲れたなんて思ったことはないんだ。逆に嬉しいんだよ。誰かのためになれることがね」
笑顔でそう言うエリオ。
ああ。私はこの人が好きだ。
心の底からそう思う。
人の事を想ってあげられる人。
こんな素晴らしい人がこの世にいただなんて。
幸運の女神が私についているようだが、この人と出逢えたのが一番の幸運だったと、今そう感じる。
私はエリオを本気で愛し始めていた。
彼もそんな私の気持ちに気づいているのか、最近は何か言いたげな顔をよくしている。
だけど後一言が中々言えない。
少し照れ屋なのが、玉に瑕と言ったところだろうか。
でも、そんなところも私は好きだった。
「エリオ。それにサラよ。君たちには大変世話になったな」
「いいえ。人として当たり前のことをしただけでございます」
動けるぐらいまで怪我が治ったバルガス様。
後は王都に戻って怪我を癒すとのこと。
彼がこの村を去る時がやって来たのだ。
もちろん、国王からお礼を受け取るつもりもないエリオ。
しかしバルガス様は、思いがけないことを突然言い出した。
「エリオ・ルトナーク。君は村や人々のために仕事をしているようだな。自分だけのためではなく、他人に幸せを運ぶ、そんな素晴らしい人間だと他の者から話を聞いている」
「そんな……大袈裟ですよ」
「私を助けてもらったということもある……良ければ、君に男爵の称号を与えたいと考えているのだが、どうだろうか? 君ならこの村を収めるに足りる人物であろう」
「……勿体ないお言葉。心より感謝いたします」
なんとエリオは、バルガス様から爵位を与えられ、貴族となってしまったのだ。
私はそれを大変喜ばしく思い、胸を弾ませていた。
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