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「こ、婚約破棄ですか……?」
最初から答えは分っていたのかもしれない。
最近のジーク様とレイアの様子を見ていたので、驚くようなことはなかった。
しかし、そうなると分っていたとしても、やはり胸にくるものがある。
辛く泣きたい衝動に駆られる。
「君とは正直結婚したいと思っていた……だけど、君は大事な秘密を僕に隠していたな?」
「秘密……? なんのことですか?」
カッと目を見開いてジーク様は私に怒鳴り付ける。
「とぼけても無駄だ! 君はあの有名な占い師から貧乏神だと宣言されていたそうじゃないか!」
「そ、それは……」
誤解だ。
占い師からそう直接宣言されたわけではない。
それに、貧乏神はレイアの方だと言うのに……
「それに比べてレイアは幸運の女神! 彼女こそ我がバージリアン家に繁栄をもたらす女性! 僕は君の代わりに彼女と結婚をすることにした。レイアも君の両親も承認済だ」
「…………」
ニヤニヤと笑うレイア。
私は今にも泣き出してしまいそうだった。
だけどここで泣くわけにはいかない。
泣いてしまえば、またレイアが勝ち誇る。
また私をバカにするんだ。
だから私は泣くのを我慢した。
できるだけ気丈に振る舞い、ジーク様の申し出を受け入れることにした。
「承知しました……ほんの短い間でしたが、お世話になりました、ジーク様」
「ふん! 結婚前で良かったよ。君という人間を知れたからな!」
それは私のセリフだ。
こんな簡単に婚約関係を破棄するだなんて。
こんなあっさりレイアを選んでしまうなんて。
辛いのは辛いが、少しだけホッとしている自分もいる。
ジーク様は私を信じてはくれなかったのだ。
そりゃ、貧乏神だなんて言われたら遠ざけたいという気持ちは分からないでもないけれど……ちゃんとそのことは見極めてほしかった。
そうすれば、私が貧乏神じゃないと分かったはずなのに。
これは運命だったのだ。
私は私を睨む付けるジーク様のお顔を見つめながら、無理矢理にそう心に言い聞かせていた。
「ああ、サラ。ジーク様は両親にお屋敷を用意してくれているらしいわ。コリンズ家は叔父様が継ぐことになるから……あなたはこれから勝手に生きて頂戴」
「…………」
レイアは嘲笑しながらそんなことを私に言い放つ。
それは家を勘当されるということだろう。
貧乏神にはそれがお似合い。
妹も両親も、そんな風に笑っている。
私は愕然とするも、心に少し希望のような灯が宿っているのを感じていた。
だってそうでしょ?
貧乏神はレイアで、私は――
きっとどこにいたって上手くいく。
絶望を覚えながらも希望を抱く私。
これは、私の新たなる旅立ちなのだ。
新しい自分になるための、新しい日々の始まりなんだ。
最初から答えは分っていたのかもしれない。
最近のジーク様とレイアの様子を見ていたので、驚くようなことはなかった。
しかし、そうなると分っていたとしても、やはり胸にくるものがある。
辛く泣きたい衝動に駆られる。
「君とは正直結婚したいと思っていた……だけど、君は大事な秘密を僕に隠していたな?」
「秘密……? なんのことですか?」
カッと目を見開いてジーク様は私に怒鳴り付ける。
「とぼけても無駄だ! 君はあの有名な占い師から貧乏神だと宣言されていたそうじゃないか!」
「そ、それは……」
誤解だ。
占い師からそう直接宣言されたわけではない。
それに、貧乏神はレイアの方だと言うのに……
「それに比べてレイアは幸運の女神! 彼女こそ我がバージリアン家に繁栄をもたらす女性! 僕は君の代わりに彼女と結婚をすることにした。レイアも君の両親も承認済だ」
「…………」
ニヤニヤと笑うレイア。
私は今にも泣き出してしまいそうだった。
だけどここで泣くわけにはいかない。
泣いてしまえば、またレイアが勝ち誇る。
また私をバカにするんだ。
だから私は泣くのを我慢した。
できるだけ気丈に振る舞い、ジーク様の申し出を受け入れることにした。
「承知しました……ほんの短い間でしたが、お世話になりました、ジーク様」
「ふん! 結婚前で良かったよ。君という人間を知れたからな!」
それは私のセリフだ。
こんな簡単に婚約関係を破棄するだなんて。
こんなあっさりレイアを選んでしまうなんて。
辛いのは辛いが、少しだけホッとしている自分もいる。
ジーク様は私を信じてはくれなかったのだ。
そりゃ、貧乏神だなんて言われたら遠ざけたいという気持ちは分からないでもないけれど……ちゃんとそのことは見極めてほしかった。
そうすれば、私が貧乏神じゃないと分かったはずなのに。
これは運命だったのだ。
私は私を睨む付けるジーク様のお顔を見つめながら、無理矢理にそう心に言い聞かせていた。
「ああ、サラ。ジーク様は両親にお屋敷を用意してくれているらしいわ。コリンズ家は叔父様が継ぐことになるから……あなたはこれから勝手に生きて頂戴」
「…………」
レイアは嘲笑しながらそんなことを私に言い放つ。
それは家を勘当されるということだろう。
貧乏神にはそれがお似合い。
妹も両親も、そんな風に笑っている。
私は愕然とするも、心に少し希望のような灯が宿っているのを感じていた。
だってそうでしょ?
貧乏神はレイアで、私は――
きっとどこにいたって上手くいく。
絶望を覚えながらも希望を抱く私。
これは、私の新たなる旅立ちなのだ。
新しい自分になるための、新しい日々の始まりなんだ。
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