幸運の女神である妹を選び婚約破棄するようですが、彼女は貧乏神ですよ?

亜綺羅もも

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 両親もレイアも気づいていないようだが、幸運の女神というのは私だと思う。
 昔から私はお金を拾ったり、欲しい物がある時はお金が舞い込んだりと金銭に困ったことがない。
 逆にレイアはお金を無くしたりなどお金が彼女から離れていっているような様子が見える。
 これだけではまだ判断することはできない。

 しかし以前両親と妹が私を置いて旅行に行った時があった。
 その時、私は町で困っていた商人を助け絵画をいただき、それが結構な金額のするものであったり、貴族の方と偶然知り合い、贈り物にと高価な物をいただいたのだ。
 レイアがいる時はそんなことなかったが……彼女がいない時、そんな嬉しいことが起こったのだ。
 幸運の女神と貧乏神。
 その力が相殺されているらしいが、やはりレイアがいない時に良いことが起きたというのはそういうことであろう。
 
 さらに家族は旅行先でお金を失ったらしく、帰って来てから私に八つ当たりをしてきた。
 そしてレイアが帰って来てからは幸運がまた息をひそめ、その時私は確信したのだ。
 貧乏神はレイアの方であると。

 そんなレイアは自由気ままに生活をし、どんどん綺麗になっていく。
 毎月のように両親から新しいドレスを買ってもらい、金色の髪は艶があり表情も明るく魅力的。
 
 それに対して私は、レイアの着なくなったドレス、手入れをほとんどしていない髪。
 表情は暗いと自分でも思う。
 家族から杜撰な扱いを受けているとそうなってしまうのは仕方がない。

 明るい妹に暗い姉。
 そうなるのは至極当然であった。

 だというのに、そんな私に婚約を申し出てくれたジーク様。
 彼はサラサラの青い髪に宝石のように眩い金色の瞳の持ち主。
 背も高く、その上爵位は公爵という、非の打ちどころの無い男性であった。

「サラ。僕は君を幸せにする。だから僕と婚約をしてほしい」

 会ったのはそれで二回目の事であった。
 一目ぼれだったようだ。
 そう言われたのは私の家のこと。

「はい。喜んで……」

 その時は家族から解放される喜びの方が勝っていた。
 これで家から出て行けるというわけだ。 
 喜びを胸に、その日は浮かれていたと思う。

 しかし夜になった時のことである。

 レイアが私の部屋にやって来て、とんでもないことを言い出した。

「サラ。ジーク様を私に頂戴」
「……何を言っているの、レイア。ジーク様は物じゃないのよ。頂戴と言われてどうぞなんてそんなわけにはいかないでしょう?」

 クスクス笑うレイア。

「あなたの物は常に私の物になるの。ずっとそうだったでしょ? だからジーク様も同じ。私が望めば私の物になるの。だって私には、幸運の女神がついているのだから」
「…………」

 いつも通りのレイア。
 常に私の物を欲しがる。
 今回も私の婚約者を欲しがりだした。

 私は喜びを不安に変え、彼女の醜い笑みを見つめ続けていた。
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