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 周囲はザワザワしながらルーファウス様に注目していた。 
 その怒りっぷりと、容赦なく詰め寄るルーファウス様に驚いているようだ。

「どうしてくれる? これは貴様程度の男に買えるような代物では無いのだぞ!」
「本当、何故こんなトロい男を雇っているのかしら? あなた、自分が無能だって自覚しているの?」
「……申し訳ございません」

 ひたすらに頭を下げ続ける男性。
 ロック様はルーファウス様とソフィアの態度に見かねて、口を挟む。

「もうよろしいではないですか。彼もわざとではないのですし」
「わざとで無ければ何をやってもいいというのか!?」

 今度はロック様を怒鳴るルーファウス様。
 私はその瞬間、カッと頭に血が上る。

「彼はわざとやったわけではないけれど、あなたはわざとやりましたわよね?」
「……何を言っている?」
「手口がソフィアにそっくり。ルーファウス様はどうやら、ソフィアに悪い影響を受けたようですね。以前のあなたでは考えられないような行動。もう少し優しさもあったと思うのですが」

 ギリッと歯噛みをし、私を睨み付けるソフィア。
 ルーファウス様も私の言葉が気にらなかったらしく、ソフィアと同じ様に私を睨む。

「俺に振られたからと言って、何癖つけるのはどうかと思うぞ! 俺がわざとこいつのぶつかった? どこにそんな証拠があるのだ?」
「この目で見ましたから」
「お姉様またいい子ぶって、皆に良い風に思われようとして……変わっていませんのね」
「変わっていないのはあなたよ。いつも言っていたでしょ。そういう態度や行動は、そのうち全部自分に返ってくるって」
「いつも言っていたでしょ。そんなものは返ってきてから考えると」

 挑発的な目で私を見るソフィア。
 一応、血の繋がった妹だから忠告はしておいたけれど……やはり無意味か。

「まあまあ、落ち着いてくれ。ルーファウス。君のお召し物は私が弁償をしよう。だからここは穏便に……な?」

 私たちをなだめるため、パルバージル公爵が割って入る。
 ロック様と私は静かに頷くも、ルーファウス様とソフィアは私たちを睨んだままだ。

 周囲の空気も悪くなっていく。
 この二人、いつまでこんな調子でいるつもりなのだろう……
 いつか本当に痛い目に遭うわよ。
 そんな風に思っていた時であった。

「もういい加減にしないか」
「うるさい! 今取り込み中だ!」
「ぐわっ!」

 ルーファウス様が誰かに背後から肩を掴まれ、感情的なままに肘を振り回した。
 その肘はその男性の顔に当たり、彼はバタンとその場に倒れ込んでしまう。

「……ジ、ジュドー殿下?」

 なんとルーファウス様が倒してしまったのは――この国の跡継ぎである、ジュドー・アルブリッジ皇太子殿下であった。
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