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夜家に帰宅し、今日あったことを両親に報告した。
お父様は額に欠陥が浮き上がる程に怒り、お母さまは今にも人を殺してしまいそうな目つきになる。
「あのバカ娘……もう我慢ならんぞ」
「あの子もそうですけれど、あの男も許すことができないわ。なんでマリアみたいなできた子のことを信じることが出来なかったのかしら……」
「その程度の男だったということだろう。うん。マリア。あんな男はソフィアにやればいい」
「そのつもりですわ、お父様」
両親は私のために怒ってくれていた。
二人が普通の感性の持ち主で良かったわ。
これでソフィアの味方をするような人たちだったら……頼れる人もいないし、困り果てているところだ。
「それで、あのバカ娘はいつ帰ってくるのだ?」
「さあ? そのまま向こうに住みつくつもりじゃないですか?」
「どっちにしても、もう家の敷地に足を踏み入れさせないつもりだがな! 皆にもよく伝えておいてくれ」
お父様の言葉にお母さまが頷く。
「この家の者は、全員マリアの味方ですから。喜んで協力してくれることでしょう」
「あの子がいなくなって、皆清々してるんじゃありませんか? 相当苛め抜かれたようですから」
「ふん。向こうの家でもそれは変わらないだろうな……嫌われなければよいが、それは無理だろうな」
お父様とお母さまは顔を合わせて笑いあう。
二人ともあんな害悪でしかない不良物件を引き取ってくれて嬉しいみたいだけれど、あの家に仕えている人たちが不憫でならない……
またソフィアは同じことを繰り返すだろう。
だけどもう私たちには関係の無い話。
もうあの子とは縁を切ったようなものだ。
これからは穏やかな時間を過ごすとしよう。
◇◇◇◇◇◇◇
ルーファウス様との婚約が破棄となった。
その噂は瞬く間に貴族の間に広まっていたようだ。
ルーファウス様の屋敷から帰って来た翌日のこと――
突然我が家へ来訪者が現れる。
「あの、マリア様」
「どうかしたの?」
部屋で本を読んでいた私の下に、侍女が声をかけてきた。
「お嬢様にお会いしたいという男性がいらっしゃっていますが……」
「男性? 誰かしら?」
私はあまり深く考えずに、昼過ぎの廊下を歩いて行く。
玄関に到着し、私に会いに来たという男性の姿を見て、私は感嘆の声を上げた。
「ロック様!」
「やあマリア。君に会いに来たよ」
彼はロック・ヴァフリン。
綺麗な花束を持って私に会いに来てくれたようだ。
だけど何故、急に会いに来てくれたのだろう……
その理由が見当たらずに、私は首を傾げていた。
お父様は額に欠陥が浮き上がる程に怒り、お母さまは今にも人を殺してしまいそうな目つきになる。
「あのバカ娘……もう我慢ならんぞ」
「あの子もそうですけれど、あの男も許すことができないわ。なんでマリアみたいなできた子のことを信じることが出来なかったのかしら……」
「その程度の男だったということだろう。うん。マリア。あんな男はソフィアにやればいい」
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二人が普通の感性の持ち主で良かったわ。
これでソフィアの味方をするような人たちだったら……頼れる人もいないし、困り果てているところだ。
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「ふん。向こうの家でもそれは変わらないだろうな……嫌われなければよいが、それは無理だろうな」
お父様とお母さまは顔を合わせて笑いあう。
二人ともあんな害悪でしかない不良物件を引き取ってくれて嬉しいみたいだけれど、あの家に仕えている人たちが不憫でならない……
またソフィアは同じことを繰り返すだろう。
だけどもう私たちには関係の無い話。
もうあの子とは縁を切ったようなものだ。
これからは穏やかな時間を過ごすとしよう。
◇◇◇◇◇◇◇
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「やあマリア。君に会いに来たよ」
彼はロック・ヴァフリン。
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